夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『悪い女 青い門』

2006年08月29日 | 映画(わ行)
『悪い女 青い門』(英題:Birdcage Inn)
監督:キム・ギドク
出演:イ・ジウン,イ・ヘウン,イ・イノク,アン・ジェモ,
   チョン・ヒョンギ,ソン・ミンクス他

レンタル新作について書く気でいたら、
その後に観た本作(1998年の劇場未公開作)が凄すぎました。

神代辰巳監督あたりの日活ロマンポルノ
彷彿とさせるかのようなタイトルですが、原題は『青い門』。
家庭の事情から中学すら卒業できず、
まったくの独学で映画の道へと進んだキム・ギドク監督の作品は
観る人を不快にさせると評されつつも、常に話題の中心。
究極の愛か性的倒錯かをめぐって欧州でも話題となった、同監督の『悪い男』(2001)にならい、
のちにDVD化された本作の邦題を『悪い女』としたようです。

韓国、ソウルの南東に位置する海辺の町、ポハン。
民宿「鳥篭」は表向きは普通の宿だが、実際は売春宿。
娼婦のジナは昼間は美術学校へ通い、夜は客の相手をする。
宿を経営する夫婦は警察の摘発を恐れながら、
娼婦を置くことで一家の生計を立てている。

経営者には女子大生の娘ヘミと高校生の息子ヒョンウがいる。
ジナと同い年であるヘミは婚約中だが、
結婚するまではとかたくなに貞操を守り、
誰とでも寝るジナには嫌悪感あらわ。
同じ食卓につくのも、同じ洗面器を使うのも拒む。

やがて、宿の主人やヒョンウもジナと関係を持つようになり、
ヘミに体を許してもらえずに悶々とする婚約者までもが
まさか彼女の実家とは思わず、宿へやってくるのだが……。

こうして書くとエロエロですが、凄い。参りました。
『悪い男』同様、なんでなのか、観た後の爽やかさ。
荒々しく強烈な題材でありながら、
住む世界も人生観も異なる女性ふたりが、
次第に心をほぐす過程の描写は実に細やか。

どの登場人物もどこか共感できる部分を持っています。
ろくでなしのジナのヒモですら、
血まみれになりながらつぶやく最後は泣かせる台詞。
「前に言ったこと、本当だよ。会うたびに抱きたくなるって」。
え?やっぱりエロい?
けど、瀕死の男からこれを言われたら絶対グッと来ましょうぞ。
まさに、「女なら、言われてみたいこんな台詞」

それはそうと、うちの近所のTSUTAYA様。
これは韓国映画です。中国映画のコーナーに置かんといて。
私は『冬ソナ』未見ですが、ヘミを演じているのは
冬ソナのチンスク役の女優さんだそうです。お知らせまで。

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『シムソンズ』

2006年08月25日 | 映画(さ行)
『シムソンズ』
監督:佐藤祐市
出演:加藤ローサ,藤井美菜,高橋真唯,星井七瀬,大泉洋他

期待して借りたハリウッド版『南極物語』(2006)が号泣にはほど遠く、
トミーズ雅の超お薦め、『男たちの大和/YAMATO』(2005)も胸を打たず。
それより本作のほうがよっぽど笑えて泣けたぁ。

これもやっぱり実話に基づく。
1998年の長野冬季オリンピックで正式種目となったカーリング。
2002年のソルトレークオリンピックに
日本代表として出場した4人の青春物語。

オリンピック中継にそっぽを向いていた私は、
カーリングの知識ゼロのまま観始めました。
話題になるには理由がある。天の邪鬼でおらんと
世間で流行るものは観とかなあかんと思う観賞後。

オホーツク海とサロマ湖に面した北海道の町、常呂町。
この小さな町が誇るものはホタテとカーリング。
高校生の和子は洋品店を経営する母とふたり暮らし。
常呂町の住人なら誰もが好きなカーリングにも興味なし。
そろそろ進路を考えなければならないが、何の目標もなく、
一生この町で暮らすはめになるのかと憂鬱な日々。

カーリングはどうでもいい和子だったが、
町の輩出したアイドル的選手、真人にはぞっこん。
彼が帰省の折りに近所で練習中と聞き、和子はリンクに駆けつける。

リンクには和子の同級生、美希の姿もあった。
感じの悪い美希は女子チームで浮いているらしい。
今日も試合運びを巡ってチームメイトと物別れ。
そんな美希をどうやら真人が気遣っているようだ。

帰り際、和子は偶然真人と出会う。
憧れの人と話すチャンスにどぎまぎする和子に
真人は「チームを作って大会に出ないか」と声をかける。
当然真人がコーチだと思った和子は
自分はカーリング経験者だと嘘をついてふたつ返事。

真人が美希のためのチームを作ろうとしての策だったが、
そうとは知らない和子は有頂天。
まずは受験勉強に忙しい親友の史江を強引に引っ張り込み、
さらには酪農家の娘で目立たない存在の菜摘に声をかける。
さて彼女たちのチーム、「シムソンズ」は……。

真人からコーチの話を引き受ける平太役、大泉洋が秀逸。
いい加減そうだけど実は人情味に溢れる奴がぴったり。
衝突しながら信頼関係を築いてゆく過程は青春映画の王道。
だけど根性論に走らない点にも好感。
すべてのスポーツに共通する大事なこと、試合をイメージする姿が鮮やかです。

約30年前、サロマ湖岸の空の下、
網で焼いて食べたホタテの味も甦って。

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『ミュンヘン』

2006年08月22日 | 映画(ま行)
『ミュンヘン』(原題:Munich)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:エリック・バナ,ダニエル・クレイグ,キアラン・ハインズ ,
   マチュー・カソヴィッツ,ハンス・ジシュラー他

二日酔いの頭にはキツそうな163分、
スピルバーグの話題作がレンタル開始となりました。
ネタが重すぎてかえって頭すっきり。
周知のとおり、実話にインスパイアされた作品です。

1972年、ミュンヘン・オリンピックの選手村。
武装したパレスチナのテロ組織「黒い九月」が
イスラエル選手団の11名を人質に立てこもる。
「黒い九月」の要求は、イスラエルに囚われの身の
パレスチナ人234名を釈放せよというもの。
しかし、イスラエル側はこれを拒否。

「黒い九月」はドイツ政府と交渉。
用意させた旅客機で国外への脱出を図るが、
空港で待ち伏せていた狙撃手と激しい銃撃戦となる。
その結果、人質全員が犯人らの手によって殺害される。

イスラエルのメイア首相は怒りを露に復讐を誓う。
欧州で活動するパレスチナの指導者11名を
極秘に追跡、暗殺することを決定。

暗殺者チームとして招集されたのは5名。
リーダーに抜擢されたのはメイア首相の元ボディーガードで
人殺しになど無縁の平々凡々な生活を送るアヴナー。
爆弾製造、文書偽造、事後処理など各方面に長けた
スティーヴ、カール、ロバート、ハンスの4名を従え、
暗殺プロジェクトが始動する。

内容の是非についてはさんざん論議されていますのでここではなし。
私が気になるのは毎度同じ、食卓を囲むシーン。
かなりの料理の腕前を持つアヴナーはメンバーの食事も担当。
顔合わせの日の緊張した中にも和やかな食卓は
『ブレイキング・ニュース』(2004)とも似ています。
自分を見失ったアヴナーが作る大量の料理は狂気を帯び、
情報源のボスと台所で肩を並べるシーンは不思議な空気が漂います。
そのボスが土産にと寄越す豚の血入りのソーセージ、ブーダンノワールと
ロワール地方のチーズはいますぐ食べたい!

『パイレーツ・オブ・カリビアン』のバルボッサ船長、
ジェフリー・ラッシュがイスラエル情報機関の管理官役で登場。
終盤、彼とアヴナーの間で交わされる会話と、
その後に映し出される世界貿易センタービルにもご注目。
『ハルク』(2003)では、どんなに巨大化しても決して破れない(なんで?)パンツを穿いていたエリック・バナ。
何を着ていようとも、あのパンツ姿が目に浮かぶ。

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続・夏休みはぺらんぺらん。

2006年08月17日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
ごめんね、横浜。許して、横浜。

だけど、まだまだ野球に集中できず、
手が伸びるのはぺらんぺらんっぽい作品。
期待せずに借りたらこの2本は予想を超える楽しさ。
ぺらんぺらん度は意外と低かったのでした。

『ダイヤモンド・イン・パラダイス』(2004)は
007シリーズの5代目ボンド、ピアース・ブロスナン主演。
ナポレオンが所有していたといわれる3つのダイヤモンド。
すでに1つめのダイヤを盗んだ天才泥棒マックスは、
2つめのダイヤ強奪にも挑みます。
厳重な警備のもと、FBI捜査官のスタンは
今度こそ盗られてたまるかと気張るも惨敗。

2つめのダイヤを盗み出したのを機会にマックスは泥棒稼業を引退。
盗みの相棒かつ恋人のローラと
バハマのパラダイス・アイランドに飛ぶと、
日がな一日海辺で過ごし、食っちゃ寝の日々。

ロブスターにも飽きたころ、島にスタンが現れます。
スタンが言うには、港に一時停泊中の豪華客船で3つめのダイヤを展示中。
泥棒の血が騒ぐのをマックスが抑えられるわけはないと。

マックス役の男前、ピアース・ブロスナンと
スタン役のハゲ、ウディ・ハレルソンの迷コンビぶりが◯。
サスペンスでありながら、粋なコメディに仕上がっています。
一流役者お揃いのわりにB級の香りが漂うのも良し。

『ナイト・オブ・ザ・スカイ』(2005)は
『TAXi』(1997)の監督による戦闘機アクション。
航空ショーに参加中のフランス軍の戦闘機ミラージュが消息不明に。
捜索の指示を受けたマルチェリ、バロワ両大尉は
ミラージュを発見し、基地に連れ戻そうとしますが、
ミラージュは突然、バロワの機をロックオン。
攻撃態勢に入ったミラージュをマルチェリは撃墜。

マルチェリとバロワが事の経緯を説明すれども、
味方であるバロワの機に向かってミラージュが攻撃することはあり得ないと、
空軍の最高司令部は取り合いません。
やがてふたりは軍籍を剥奪されて……。

単純明快な話かと思いきや、フランスにアメリカに中東、アフリカと多国が絡み、
めちゃめちゃグローバルでややこしいのなんのって。
ボーッと観てると置いてけぼり。

が、本作の見どころは、デジタル処理最小限、
フランス空軍全面協力がウリの戦闘機の飛行シーン。
『トップガン』(1986)にも引けを取らないド迫力。

それにしてもフランスで好まれる俳優の顔って
どうしても男前に見えない怪。

うわ~ん、逆転されてるやん。(T_T)

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夏休みはぺらんぺらん。

2006年08月14日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
阪神の現実から逃避したかった先週末。
とはいうものの、やはり気にはなるので、
ラジオ中継のボリュームを下げて、
その横で当たり障りのなさそうな映画を観ることに。
実況アナの声を適度にかき消すくらいに騒がしく、
でも考え込まなくてもいいような薄っぺら、
ぺらんぺらんの映画がうってつけ。
どちらもレンタル新作です。

まずは『サウンド・オブ・サンダー』(2004)。
ヒドすぎて暑さも吹っ飛ぶ。
SFの巨匠レイ・ブラッドベリの短編小説の映画化です。
タイムトラベルが可能になった近未来、
大手旅行代理店のタイム・サファリ社は
6500万年前へのタイムトラベルで荒稼ぎしています。
客が恐竜を仕留めるスリルを味わえるこのツアーは
金持ちたちの優越感を満たして大人気。

タイムトラベルでは「何も変えない」のが大事なルール。
6500万年前にわずかでも変化をもたらせば、
その後の地球の進化に影響が現れるから。
ゆえに仕留める対象も、緻密な計算によって
その数秒後に死ぬことがわかっている恐竜が選ばれています。

ところがある日の客が6500万年前の何かを持ち帰った様子。
地球上の食物連鎖は微妙に狂わされ、
6500万年分の時間の波が2055年に押し寄せます。
タイム・サファリ社の研究者トラヴィスと
システムの発明者で会社を追放されたソニアが
地球の滅亡を防ごうと立ち向かうのですが……。

トラヴィス役のエドワード・バーンズは
監督としては洒落た作品が多いのですが、
出演作はたまに「なんで?」と唖然とします。
まぁ、あの体格と風貌と独特の声は
いつでも男の色気を醸し出していて憎めないなぁ。

もうひとり、いい役者なのにたまに「なんで?」な出演作なのが
『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)のシラス役、ポール・ベタニー。
『ファイヤーウォール』(2006)では強盗団のボス、ビルを演じています。
ハリソン・フォード演じるセキュリティ・システムの専門家、
ジャックはある日家族を誘拐されます。
ビルの要求は、銀行のコンピュータ・セキュリティを突破し、
高額預入者からビルの口座に1億ドルを移せというもの。

ジャックの人となりもイマイチなら、
家族との絆も中途半端。強盗団も隙だらけ。
しかし、からだが溶けそうなほど暑い今夏、
何も考えずに観るならバッチリ。

しょうもなっ!と思いつつ、この日見た夢には
泥棒の下見に来たとおぼしき怪しい5人の男が登場。
こ、怖かった。映画の見過ぎでしょ。

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