夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『トラペジウム』

2024年05月19日 | 映画(た行)
『トラペジウム』
監督:篠原正寛
声の出演:結川あさき,羊宮妃那,上田麗奈,相川遥花,木全翔也,久保ユリカ,木野日菜,内村光良他
 
仕事を休んで一日中実家の片付けに費やし、へろへろになって一旦帰宅するも、
なんとなく映画を観る元気は残っていそうな気がして、109シネマズ箕面へ向かいました。
 
原作は元乃木坂46の高山一実の作家デビュー作にしてベストセラーとなった同名小説。
月刊誌『ダ・ヴィンチ』に2016年から2018年にかけて連載されていたそうです。
映像化を手がけたのは“SPY×FAMILY”などのスタジオCloverWorksで、アニプレックスの完全子会社。
 
東(あずま)ゆうは城州東高校に通う女子高生で、本気でアイドルを目指している。
ありとあらゆるオーディションを受けて落ちた過去があることは内緒。
ゆうがひそかに目論んでいるのは、城州市の東西南北の高校に通う美少女をひとりずつ集め、
アイドルグループを結成して売り出すこと。
自身は東高校の美少女だから、南北と西に美少女を見つけようと考える。
 
まず向かった聖南テネリタス女学院で美少女発見。
彼女は華鳥蘭子といい、プール付きの豪邸に暮らす凄いお嬢様だが、テニス部ではその下手さで有名。
東高の制服を着てうろちょろしていたゆうがたまたまテニス部員に目をつけられ、
偵察隊だと間違われたうえに蘭子と対決させられる。
テニスなんてまったくできないゆうは蘭子に負け、蘭子は初の勝利に大喜び。
かくして感謝されたゆうは、蘭子とすぐさま友だちになることに成功する。
 
次に向かったのは西テクノ工業高等専門学校。
在校生のほとんどが男子のなか、ロボコンで優れたロボットを披露する大河くるみは巷の有名人。
最初はややこしいファンと思われて取り付く島もなかったが、
同校に通う写真好きの男子高校生・工藤真司の協力を得たゆうは、くるみとも無事友だちに。
 
ある日、くるみと出かけたゆうは、小学校の同級生だった亀井美嘉と再会。
地味でたいして可愛くもなかった印象は消え去り、くるみが見惚れるほどの美少女になっていた。
聞けば美嘉は城州北高校に通っているというではないか。
これで東西南北を網羅できたとゆうは内心ガッツポーズ。
 
4人で行動する様子をSNSに登校してバズりたい。
美少女ぶりが噂になるよう、美嘉が以前から参加していたボランティア活動に顔を出したり、
地元の観光ガイドを買って出たり、ゆうはデビューに向けて計画を進めるのだが……。
 
ゆう以外は誰もアイドルになりたいなんて思っちゃいないし、ゆうの目論みも知りません。
自分の高校では浮きがちだった彼女たちは、ただ親しい友だちができて嬉しいだけ。
アイドルとしての活動も一緒に楽しんでいたけれど、だんだんゆうのことが怖くなります。
 
アイドルになんてなりたくないと言い出したくるみたちに、
人を笑顔にすることができる素晴らしい職業なのに、なんてことを言うんだと怒るゆう。
だけど目の前にいる仲間たちがゆうに怯え、笑えなくなっています。
 
アイドルって大変な仕事ですね。
売れる前から売れた後のことを考えて、全部計算のうえで行動する。
売れたらすぐに身辺を探られるから、以前はボランティアをしていましたと言えるように、
その言葉に偽りがないように、すべて計算尽く。嫌な子です(笑)。
 
みんなが離れていって落ち込むゆうが「私って嫌な子だよね」と言ったとき、
母親がなんと答えるのかと思っていたら、「そういうところもあるし、そうじゃないところもある」と言う。
「そんなことないわよ」と全否定しないのは逆に好印象でした。
 
アイドルが原作者だということで、高山一実自身がこんな計算だらけだったのかと思われそうなところ、
そんなところもあればそうじゃないところもあるだろうと思えるのでした。
それだけがすべてじゃないよね。

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『タイガー 裏切りのスパイ』

2024年05月14日 | 映画(た行)
『タイガー 裏切りのスパイ』(原題:Tiger 3)
監督:マニーシュ・シャルマー
出演:サルマーン・カーン,カトリーナ・カイフ,イムラン・ハシュミ,レーヴァティ他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『バジーノイズ』の次に。
平日の仕事帰りです。すでに120分の映画を観た後に、160分近いボリウッド
絶対寝るよねぇと思ったのですが、面白すぎておお目々パッチリ。(^O^)
 
インドではとっても有名な俳優のひとり、サルマーン・カーン
彼の主演作といえば、なんといっても『バジュランギおじさんと、小さな迷子』(2015)ですが、
こんなアクションばりばりの作品でもめちゃくちゃ面白い。
彼の役どころはRAW(インドの国家諜報機関)の伝説的エージェント、その名もタイガー。
人気シリーズの第3弾とのことなのですが、なぜ私は第1弾と第2弾を観ていないのだ!?
そのせいで上司だとか同僚だとかちょっとわかりにくい部分も若干あるけれど、全く問題なし。
 
RAWのエージェント・タイガーは、潜入捜査中に連絡の途絶えたエージェント・ゴーピーの救出に向かう。
なんとかゴーピーを故郷に連れ帰ることはできたが、すでに瀕死の状態。
息を引き取る直前、ゴーピーは「二重スパイがいる。それはゾヤだ」と言い残す。
 
ゾヤとはタイガーの妻でパキスタン人。信じられぬまま、ゾヤと息子ジュニアが待つ家に帰宅。
愛する妻が二重スパイなどとは考えがたいが、次の任務でロシアに赴いたタイガーは何者かに襲われる。
相手を追い詰めてヘルメットを脱がせると、それは紛れもなくゾヤだった。
 
なぜそんなことを。
ゾヤはまだ子どもだった頃にISI(パキスタン軍統合情報局)のエージェントだった父親を亡くした。
父親の亡き後、ゾヤを引き取って育てたのは父親の愛弟子ラフマーン。
インドを激しく憎むラフマーンは、パキスタンの首相暗殺とその後釜に自身が就くことを目論み、
ジュニアを人質に取ってゾヤを脅していたのだ。
 
タイガーに罪を着せるためにゾヤを利用したラフマーンの罠に落ち、タイガーは監禁される。
インドとパキスタンの和平を望む女性首相やパキスタンとインドの国民たちは何も知らず、
伝説のエージェントを国賊扱いし、皆から狙われるはめになるのだが……。
 
タイガー役のサルマーン・カーンが(濃いけど)カッコイイのは当然のこと。
ゾヤ役のカトリーナ・カイフはめちゃ美人で、キレッキレのアクションも見せてくれます。
そしてゲスト出演しているのがシャー・ルク・カーン
ちょうどこの間、彼が20年以上前に主演した『デーヴダース』を観たばかり。
なんだ、歳を取ってからのほうが断然イケてるじゃあないか。
 
“ミッション:インポッシブル”シリーズのインド版ですよね。
チームのメンバーも良くて、ホントに楽しい。第1弾と第2弾も観なくちゃ。

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『デーヴダース』

2024年05月10日 | 映画(た行)
『デーヴダース』(原題:Devdas)
監督:サンジャイ・リーラ・バンサーリー
出演:シャー・ルク・カーン,アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン,マードゥリー・ディークシト,ジャッキー・シュロフ
 
NGK→TOHOシネマズなんばで『マリウポリの20日間』→第七藝術劇場でこれ。
“ゴールデンウィークインド映画祭”で上映されておりまして、鑑賞料金は2,000円。
だけど、2,000円だからということで、スタンプを2個押してくださいました。
 
ちなみにナナゲイの“インド映画祭”のラインナップはこれを含めて4本で、
未見だったのは本作のみだったわけですが、2002年の作品って、20年以上前じゃあないか。
 
現在58歳だから、本作のときは30代だったのか。うーむ、タイプとは言えません。
本作の中では彼のことをさんざん「美しい」と言っているけれど、どやねん。
 
大地主の息子デーヴダースが弁護士となり、10年ぶりにロンドンから帰国することに。
母親のカウシャリヤは嬉しくてたまらず、息子の帰宅を誰よりも待ちわびているというのに、
デーヴダースが帰国して最初に会いに行ったのは、母親ではなくて幼なじみのパーロー。
 
デーヴダースとパーローはただの幼なじみではなく、お互いに想いを寄せ合っている。
デーヴダースの兄嫁クムドは、姑カウシャリヤが息子のことばかり気にかけるのが面白くなくて、
母親を差し置いてパーローに先に会いに行ったとカウシャリヤにチクるなどして事を荒立てる。
 
パーローの母親スミトラは、わが娘とデーヴダースが結婚する事をつゆとも疑っていなかったが、
カウシャリヤはそれを受け入れたふりをしてスミトラを呼び出し、
さんざんコケにしたうえで、卑しい身分のアンタの娘を自分の息子の嫁にするわけがないと嘲笑う。
 
騙されて見下され、怒りに燃えるスミトラは、パーローをもっと凄い大地主のもとへ嫁がせるのだが……。
 
いや〜、もう、絢爛豪華。キラキラしているお屋敷とか衣装とか宝飾品とか、見ているだけで楽しい。
そこに惹かれて183分、1秒も目を閉じることはなかったのですから、面白かったのでしょう。
だけど、物語を振り返ってみると(振り返るまでもなく)、グダグダだと思うのです。
 
大地主とフツーの地主の間には凄い差があるのでしょうけれど、パーローの家だってじゅうぶん以上にデカい
だから「身分違いの恋」にイマイチ説得力なし。
そして、親を怒らせて想い人と結婚できなかったデーヴダースってば、
3時間超の作品のうち、3分の2ぐらいは酔っぱらっています。
こんなどうしようもない酒浸りの男を見ているだけで引っ張る引っ張る。
 
パーロー役のアイシュワリヤー・ラーイ・バッチャンと、
デーヴダースを介抱する娼婦チャンドラムキー役のマードゥリー・ディークシトがめちゃめちゃ綺麗。
美人ふたりを見ていられたおかげで最後までもったようなもの。
 
インドの女性観や結婚観にちょっと嫌悪感も抱いてしまいます。
本作から20年経って、どれくらい変わったのかなぁ。

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『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』

2024年04月08日 | 映画(た行)
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』
アニメーションディレクター:黒川智之
声の出演:幾田りら,あの,種崎敦美,島袋美由利,大木咲絵子,和氣あず未,白石涼子,
     入野自由,内山昂輝,坂泰斗,諏訪部順一,津田健次郎,杉田智和,TARAKO他
 
日々、というのか、時間単位で変わるの容態。
ただ、面会に行って意識のなかった日というのはまだなくて、
この日も母と私共通の友人を連れて面会に行き、
声をかけたら目を覚ました母が「ありがとう。来てくれたん」と力はなくも笑顔になる。
会いに来てくれた友人は70代後半で、93歳の母よりずいぶん若いけれど、
ステージ4の膵臓癌ともう何年も闘病中で、母の希望の星。
新しい抗がん剤の投与で体調がすぐれないなか、母に会いに来てくれて感謝。
しばし楽しく話をしたあと、今日も母は大丈夫だろうと私はイオンシネマ茨木へ。
 
原作は『ビッグコミックスピリッツ』に2014年から2022年にわたって連載された浅野いにおの同名漫画。
毎度のことながら私は未読、その存在も劇場で本作のポスターを見て初めて知りました。
「デ」が多すぎるねんと目がラリラリしながらも、「ラララランド」みたいになることはない(笑)。
 
ある年の8月31日、巨大な母艦が宇宙から飛来。
それから3年、何がしたいのかもわからぬまま、母艦は東京の上空に浮かび続けている。
当初は怯えていた人々も今はその状況に慣れ、不安は抱きつつ日常として受け入れている。
 
女子高生の小山門出と中川凰蘭は受験勉強に追われながらも、それなりに毎日を謳歌している。
……って、あらすじを書いてみたらこれだけじゃあないか。(^^;
 
でも、一筋縄ではいかない物語なのです。
母艦には地球をわが物にしようと企んでいるらしい侵略者たちが乗っていて、
彼らを一掃すべく米軍や自衛隊がうろうろしています。
忘れた頃にまた空から船が降ってきて、巻き添えをくらった女子高生が亡くなったりも。
いつも一緒にいた仲間を失った門出や凰蘭のやりとりには涙が出る。
 
中盤以降に幼かった頃の門出と凰蘭の過去が描かれる場面は不穏。
実は彼女たちは侵略者のひとりを保護していて、それまで同級生からいじめられていた門出が変わる。
侵略者の一員イソベやんがドラえもんみたいにひみつの道具を持っているのですよね。
それを使って、社会の悪を駆逐しようとする門出が痛々しい。
 
5月に公開が予定されている後章でどうなるのか。
声優としてダブル主演、門出役の幾田りらと“おんたん”こと中川凰蘭役のあの、ふたりとも素晴らしい。
特に、テレビではあまり良い印象を持っていなかったあのちゃん、見方が変わる。
 
個人的には、おんたんのデベ子評が私ののび太評と一致していたのがツボでした。
後章が楽しみです。

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『デューン 砂の惑星 PART2』

2024年04月04日 | 映画(た行)
『デューン 砂の惑星 PART2』(原題:Dune: Part Two)
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ティモシー・シャラメ,ゼンデイヤ,レベッカ・ファーガソン,ジョシュ・ブローリン,オースティン・バトラー,
   フローレンス・ピュー,デイヴ・バウティスタ,クリストファー・ウォーケン,レア・セドゥ,
   ステラン・スカルスガルド,シャーロット・ランプリング,ハビエル・バルデム他
 
の容態が気になるからということもありますが、これはなかなか観に行く気が起こらず。
ひとえに長尺だからなんですけど。166分ですからね。予告編を含めると3時間。
それでもスルーするわけにはいかないから、公開4日後に意を決して109シネマズ箕面へ。
……って、意を決するまでにもっと長い時間がかかったと思っていたのに、4日だけかいっ!
 
パート1の邦題は『DUNE/デューン 砂の惑星』(2020)だったのに、表記を変えるんだわ。
本作に限らず、シリーズものの邦題の表記を変更することにどういう意図があるのかはかねてからの素朴な疑問です。
まぁええけど。
 
砂に覆われた惑星デューンことアラキスは、貴重な香料が産出される惑星。
その利権を巡って争いが起きたのがパート1の冒頭でした。
皇帝からアラキスの統治を任されていたのはハルコネン家。
ところがあるとき、皇帝はハルコネン家を解任してアトレイデス家に任せるわと言い出します。
それに怒ったハルコネン家がアトレイデス家を皆殺しにしようと襲いかかる。
実は皇帝が両家をいがみ合わせるために仕組んだことだとも知らずに。
この腹黒い皇帝役はクリストファー・ウォーケン
その娘役としてこのパート2から登場しているのがフローレンス・ピュー
 
さてさて、皆殺しのはずが、わずかに生き残ったアトレイデス家の戦士たち。
ハルコネン家に囚われて見世物にするために薬漬けにされた者もいるが、
アトレイデス家の後継者ポールは、母親ジェシカと共に逃走に成功し、砂漠の民フレメンに助けられる。
こんな感じの話だったなと観ているうちに思い出す。
 
とはいうものの片仮名がややこしいせいもあって(笑)、イマイチわからんし、
これは睡魔に襲われるパターンかと思ったのですが、映像の迫力が凄すぎて眠くはならず。
で、食い入るように観ていたら、実は意外とシンプルな話なのですよね。
 
公爵家のボンボンかと最初はナメられていたポールだけれど、結構やる。
彼のことを最初から救世主に違いないと見ていたフレメンの長スティルガーが「推す」こともあり、
みんな文句を垂れながらもポールを帯同させていたら、こいつホントに救世主かもと思い始める。
ポールと共に我らが緑の楽園を取り戻そうと奮起します。
 
アラキスには女性の秘密結社があって、アトレイデス家、ハルコネン家それぞれに「教母」がいます。
教母って、聖母マリアのような女性かと思いきや、損得勘定ありまくり。
ジェシカも教母の座に就いてからは人を恐れさせ崇めさせて、
自分の息子ポールをなんとか救世主として認めさせようと画策します。
 
キャストが本当に魅力的で。
美少年ティモシー・シャラメが歳をとるにつれてオッサン化するのではと懸念していましたが、綺麗なまま。
アトレイデス家でポールに武術を指南していたガーニイ役のジョシュ・ブローリンとの再会が嬉しい。
スティルガー役のハビエル・バルデムはポールを盲信しすぎかと思いますが(笑)、渋い。
 
いちばんテンションが上がったのは、ポールがフレメンとして認められるかどうかの「試験」。
砂虫を乗りこなせるかどうか。このシーンには大興奮しました。
 
やっぱり好きだな〜、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。

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