夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ジガルタンダ』

2024年06月10日 | 映画(さ行)
『ジガルタンダ』(原題:Jigarthanda)
監督:カールティク・スッバラージ
出演:シッダールト,ボビー・シンハー,カルナーカラン,ラクシュミ・メノン,アードゥカラム・ナーレン,ナーサル他
 
2014年のインド作品。
これを観られる劇場は全国探してもそうそうありません。
もちろん塚口サンサン劇場ならば引っ張ってきてくれる。
1週間限定だったから、この機会を逃すものかと思って駆けつけました。
 
主人公の名前はカールティク。
カールティク・スッバラージ監督とあえて同じ名前にしているのですね。
スッバラージ監督は当時タミル語映画界の俊英ともてはやされた人で、本作は彼の出世作となり、
ギャング役のボビー・シンハーはインドの主たる映画賞で助演男優賞を総なめにしたそうです。
 
映画監督を目指すカールティクはショートフィルムを制作し、新人発掘番組に応募。
審査員を務める著名な映画監督ムキルから糞ミソに言われてセミファイナルで落選しかけたところ、
もうひとりの審査員でプロデューサーのサンダルからはベタ褒めにされる。
実はサンダルは、自身と犬猿の仲のムキルに対抗したかっただけで、
カールティクを評価していたわけではなかったが、勢いでカールティクを監督にして長編映画を撮ると宣言。
サンダルの言葉を真に受けたカールティクはやる気満々。
 
カールティクが書いた脚本に興味などないサンダルは、映画を撮らせる条件として、
このテーマで映画を撮り上げて、なんとしてでも映画監督として認められたい。
カールティクは親友のオーラニに協力を頼み、南インドのマドゥライに向かうと、
悪名高きギャングのボス、セードゥについて調べはじめるのだが……。
 
寝不足で観に行ったせいもあり、最初の30分くらいは眠気に誘われるときもありましたが、
話が進むにつれて俄然面白くなります。
 
セードゥ本人に取材するのは恐ろしいから、なんとかその周辺にいる人物とお近づきになろうとするカールティク。
セードゥ家に出入りする家政婦の娘が自分に気があると知ってそれを利用したり、なかなかしたたか。
それでも様子を探るのに苦労していたのに、カールティクを怪しむセードゥのほうから手下を監視につけられて、
こいつがまた阿呆なものだから、簡単に手なずけて情報を引き出すことに成功。
そうしたら、カールティクとオーラニの行動がバレちゃって。
 
いとも簡単に人を殺すセードゥですが、カールティクが映画を撮っていると知ると態度が変わる。
取材をさせるようになるけれど、困ったことに自分で演じると言い出します。
主演はヴィジャイ・セードゥパティにオファーしようと、カールティクは考えていたのに。
 
ボリウッドのご多分に漏れず171分の長尺だけど、話は意外とシンプル。
登場人物が多くても、誰が誰やらわからなくなることもなし。
演技ド素人のセードゥを起用して凄い映画を作れるわけもなく、あきらめ気分だったカールティクはどうするか。
笑いものにされたと憤るセードゥの表情が変わってゆくのも面白いです。

暴力で支配して怖がられるのは敬意を抱かれるのは別物だという台詞が印象的。
主演のシッダールト、男前やんか。もっとほかの出演作も観たい。

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『SUGA | Agust D TOUR 'D-DAY' THE MOVIE』

2024年05月26日 | 映画(さ行)
『SUGA | Agust D TOUR 'D-DAY' THE MOVIE』(原題:SUGA | Agust D TOUR 'D-DAY' THE MOVIE)
監督:パク・ジュンス
 
何の割引もない木曜日、実家の片付けで疲れているからあまり遅くなりたくない。
1本だけ観て帰ろうと思ったら、これしか観るものがないじゃあないですか。
でも去年観た『BTS: Yet To Come in Cinemas』(2023)が良くて、BTSが大人気なのは当然だと思いました。
観るものがないから観ようというよりは「観たい」寄り。
 
劇場の選択肢はふたつ。
109シネマズ大阪エキスポシティならば19:50から。109シネマズ箕面ならば18:15から。
そりゃ早く帰れる後者を選びたいところですが、箕面は“ARMY BOMB応援上映会”なんです。
私はARMY(=BTSのファン)とは言えないし、応援上映では浮くよなぁ。
と思いつつ、まぁいいや、ファンの人の応援ぶりを見るのも楽しいしと箕面を選択。
 
行ってみたら、小さめのシアターのエクゼクティブシート5席は埋まっている。
そしてそのすぐ後ろの席の中央に客2人。
私はずっと後ろの席の端っこでおとなしく。客は合計8人でした。
 
BTSのヒップホップ担当、リードラッパーのSUGAによる単独ワールドツアーの模様。
世界10都市、全25公演の最後の公演がフィルムに収められています。
BTSのメンバー3人もゲスト出演していて、ファンなら悶絶というところでしょうか。
 
応援したくて来ている人ばかりだと思うのですが、人数が少ないから恥ずかしいのか、掛け声も拍手も無し。
なにしろ私が前回行った応援上映は『カラオケ行こ!』だからギャップがありすぎる。
きっと誰かひとりが声を出せば、それにみんな乗れそうな気がします。拍手ぐらいは私がすればよかったかなぁ。
 
ヒップホップって歌詞もわからないし、一緒に歌いづらい。
でも一緒に歌えなくたって、合いの手を入れるタイミングやルールみたいなものがあるらしい。
次に行くときは少しぐらい曲を予習しておきたいと思います。
 
なんにせよ、綺麗な人を見るのは楽しい。
SUGAはちょっと松田龍平に似ていると私は思っているのですが、たぶんファンに言ったら怒られますよね。(^^;

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『猿の惑星/キングダム』

2024年05月17日 | 映画(さ行)
『猿の惑星/キングダム』(原題:Kingdom of the Planet of the Apes)
監督:ウェス・ボール
出演:オーウェン・ティーグ,フレイヤ・アーラン,ケヴィン・デュランド,ピーター・メイコン,
   トラヴィス・ジェフリー,リディア・ペッカム,ニール・サンディランズ,ウィリアム・H・メイシー他
 
実家の片付けの合間を縫ってイオンシネマ茨木にて、2本ハシゴの1本目。
 
オリジナルの『猿の惑星』が初めて公開されたのは1968年のことだそうです。
以来、「続」だとか「新」だとかが付いて映像化されつづけているわけですが、
私がちゃんと観はじめたのはリブート版の『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(2011)からでしょうね。
新シリーズの第1弾として製作されたのが本作。
 
前作から300年後の地球というのが本作の舞台で、すっかり猿たちが支配する世界となっています。
監督は“メイズ・ランナー”シリーズのウェス・ボール。
 
文明を築き上げた猿たち。イーグル族は鷹狩りをするチンパンジー。
そのイーグル族の長老夫婦の間に生まれたノアは、次代を担うリーダーとして期待されている。
幼なじみで親友のスーナやアナヤと共に、成人の儀式を迎える準備中。
儀式には鷲の卵が必要とされ、ノアは断崖絶壁の上にある巣からみごと卵を奪う。
 
ところが、夜中に食糧を求めて忍び込んだらしい人間を捕まえようとしたさいに、卵が割れてしまう。
卵がなければ儀式は無理。腹を立てて盗人を追いかけるノア。
そのとき、ボノボ(=ピグミーチンパンジー)の武装集団がやってきたことに気づく。
慌てて自分の村へと戻るも、プロキシマスという暴君率いる軍に襲撃されて村は焼き払われる。
 
目覚めると一帯は焼け野原。仲間は誰も残っていない。
家族と仲間を取り戻すため、ひとり旅立つノアは、途中オランウータンのラカに出会う。
ラカもノア同様にプロキシマスに襲われて仲間を失ったらしく、一緒に行動を開始。
すると、卵を割ったあの人間がまた食糧を求めて近づいてくるではないか。
敵意をむき出しにするノアに対し、ラカは思いやりが大切だと説き、人間に食べ物を与える。
 
何も話そうとしない彼女のことを、ノアとラカは言葉を知らないのだと決めつけていたが、
人間が野生化するなかで彼女は実はとても賢い女性で、名前はメイ。
プロキシマスのねぐらを知っているという彼女と手を組み、そこへ向かい……。
 
これまでのシリーズを観たことがなくてもついて行けると思います。
 
賢い人間を生かしておいて、自分も賢くなるべくいろいろと教えさせるプロキシマス。
ほとんどの人間が殺されるなか、教師として重宝される生活は悪くない。
そんなふうにプロキシマスのもと軟禁状態で暮らしているトレヴァサン役にウィリアム・H・メイシー
メイ役のフレイヤ・アーランはまだ22歳、初めて見る女優です。長編映画の出演は初の模様。
 
いつのまにか猿と人間の立場が逆転していて、昔は人間が猿より上だったと知らないノア。
人間がつくった施設に忍び込み、動物園の絵本を見たときの衝撃。
こんなものを描いていた人間を信じていいものかどうか迷います。
 
ラカから聞いたシーザーの話。人間に育てられた猿で、猿と人間の共生を望んでいた偉大な人物。
その伝説がねじまげて伝えられ、独裁者プロキシマスが君臨しています。
プロキシマスがいかに残虐な猿でも、何百匹もいる猿が一緒に襲いかかれば倒せるやろと思っていました。
なのに足がすくむのは、暴力による洗脳がいかに恐ろしいかということでしょう。
ノアと皆が立ち上がるシーンはちょっと感動的。
 
しかし、いったいいつまで続くのか、このシリーズ。(^^;

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『水深ゼロメートルから』

2024年05月15日 | 映画(さ行)
『水深ゼロメートルから』
監督:山下敦弘
出演:濱尾咲綺,仲吉玲亜,清田みくり,花岡すみれ,三浦理奈,さとうほなみ他
 
イオンシネマ茨木に行く日が続いております。
55歳を過ぎれば何曜日に行こうが1,100円で観られるのは本当にありがたい。
しかもポイントもちゃんと付いて、6本観れば1本タダですからね。
 
小品だと思っていたのに予想外のヒットを飛ばした『アルプススタンドのはしの方』(2020)。
あれは兵庫県立東播磨高校の演劇部顧問が執筆した高校演劇の戯曲が原作でした。
これは徳島市立高校の演劇部員が執筆した高校演劇の戯曲だそうで。
第44回四国地区高等学校演劇研究大会の文部科学大臣賞(最優秀賞)受賞作。
監督は『カラオケ行こ!』山下敦弘だから、期待が膨らみます。
 
夏休みの高校。水の張られていないプールに集まった女子たち。
そのうちの2人、ミク(仲吉玲亜)とココロ(濱尾咲綺)は特別補習のために
体育教師の山本(さとうほなみ)から呼び出され、プール掃除を言いつけられる。
 
ミクは阿波踊りで男踊りを踊りたい。
ココロを待つ間、踊りの練習をするが、後から来たココロはメイクが命。
掃除をする気もなくて、鏡を見ることに余念なし。
 
補習対象者でもないのに2人と共にプールにやってきたのはチヅル(清田みくり)。
水泳部の部長であるチヅルは、野球部の男子とタイムを競って負け、ライバル心を燃やす。
もう1人、やってきたのは、チヅルの先輩で元部長のユイ(花岡すみれ)。
 
こんな4人がカラッカラに乾いた水のないプールで、
部活中の野球部がいるグラウンドから飛んでくる砂を掃いたりサボったり。
 
『アルプススタンドのはしの方』はかなり面白いと思いましたが、これはどうかなぁ。
メイク命のココロがミクのことをブス呼ばわりするけれど、
ココロのメイクはそもそも似合っていないし、自分磨きって何なのよとちょっとイラっ。
文句が多すぎて、そんなんじゃこのさき同性から嫌われるよと思わなくもない(笑)。
 
しかしそこはこっちが文句を言うところではないのでしょうね。
女子高生が夏休みに集まって、なんということのない話をうだうだする。
そこが面白いというのか、そういう作品なのですから。
 
ほかの高校演劇を映像化した作品も観てみたいなと思う。

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『青春18×2 君へと続く道』

2024年05月12日 | 映画(さ行)
『青春18×2 君へと続く道』
監督:藤井道人
出演:シュー・グァンハン,清原果耶,ジョセフ・チャン,道枝駿佑,黒木華,松重豊,黒木瞳他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
藤井道人監督は面白いですねぇ。
公安に目をつけられたに違いない『新聞記者』(2019)や、『ヤクザと家族 The Family』(2020)とか、
『ヴィレッジ』(2023)とか『最後まで行く』(2023)のような重めのサスペンスを撮ったかと思えば、
『余命10年』(2021)のようなラブストーリーもあったりして、ものすごく引き出しが多い。
 
本作はちょっと感傷的すぎるかなと思うほどのラブストーリー。
主演は『僕と幽霊が家族になった件』(2022)がめちゃめちゃよかったシュー・グアンハン。
この人、名前をどう使い分けているのか知りませんが、グレッグ・ハンとも言います。
 
30代半ばのジミー(シュー・グァンハン)は、大学在学中に友人とゲームを開発
起業すると大当たり、会社はどんどん大きくなる。
ところがあるとき、社長の不信任案が出され、ジミーは創業者でありながら追い出される。
最後の東京出張時、社員たちとは別れて旅をすることを思いつくジミー。
 
18年前、台南に暮らす高校生だったジミーはカラオケ店でバイトしていた。
そこへ、日本人のアミ(清原果耶)が住み込みで雇ってほしいと言ってやってくる。
バックパッカーのアミは財布を落としたらしく、途方に暮れていた折にたまたまこの店を発見。
彼女のことを気に入ったオーナーはすぐに採用。アミはたちまち近所の人気者となる。
 
4つ上のアミに恋心を抱くジミーだったが、アミは日本に恋人がいる様子。
それでもあきらめきれず、バイト仲間たちにけしかけられてアミを映画に誘う。
少なからず良い感触を得ていたのに、アミが突然帰国すると言い出し、納得がいかない。
どちらも夢を叶えたら再会しようと言うアミ。それから18年経っていたのだ。
 
アミが見ていたはずの風景を自分も見たくて、長野から福島へと旅するジミーは……。
 
旅の途中で出会う能天気な青年・幸次に道枝駿佑
終盤、ジミーが立ち寄ったインターネットカフェに勤務する女性・由紀子に黒木華
アミの故郷で実家まで車に乗せてくれる男性・中里に松重豊。アミの母親に黒木瞳
 
予告編を観ただけでもアミが何か病を患っていてもうこの世にはいないのだとわかるから、
本編を観ても「えーっ、死んでたの!?」という驚きは皆無です。
ただ、どの時点でジミーがそのことを知ったのかはわからなかったから、
そうか、こういうタイミングで知ってしまったのねとは思いました。
 
ジミーとアミが初デートで観に行く映画は岩井俊二監督の『Love Letter』(1995)。
台湾の人気バンド“五月天(メイデイ)”をミスチルに例えたり、
ジミーが日本語を勉強するきっかけになったのがスラダンだったりと、日本に友好的な台湾のイメージがいっぱい。
トンネルを抜けると雪の世界が広がる様子なども美しく、岩井監督を意識した作品です。
 
だけど、泣くようなところまでは行かないなぁ。ちょっとあざとっぽさを感じます(笑)。
台湾映画好きとしては、これで台湾好きの人が増えると嬉しいとは思う。
台湾に行ったこともない私が言うのはどうかと思いますけれども。(^^;

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