チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

マティス展

2023年05月16日 04時55分56秒 | 美術展

晴、18度、84%

 マティスの作品のみの展覧会は日本で20年ぶりだそうです。エルミタージュ美術館の展覧会の時、2点ほど見て以来のマティスの絵画、この展覧会を昨年より心待ちにしました。五月の青空、上野の森には大勢の修学旅行の学生、海外からの団体旅行者、以前の賑わいを見せていました。 

 マティスがとにかく好きです。明るい色彩は後年の作品ですが、色使いの妙は色調の明るい暗いに左右されることがありません。絵画ばかりか彫刻も手がけたマティスです。日本の美術展も撮影可能な作品が増えてきました。 素描と絵画が並べられての展示も見られます。 色彩豊かな作品群は南仏に移り住んでからだと聞きます。気候や目にする景色は画家の製作に大きな影響を及ぼしています。 一つ一つの作品、メガネをかけたマティスが描いている時の眼差しを感じながら見ました。 

 作品の数は思ったより少なく残念い思いました。一番最後のブースにマティスの「ステンドガラス」の4K映像流れています。これが圧巻です。南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂にあるマティスが手がけた「ステンドガラス」と壁画、その礼拝堂の内部を光の動きを追ってビデオが作られています。 これは私がずっと保存している一枚の写真、祭壇背後の「ステンドガラス」です。小さな礼拝堂に「ステンドガラス」を通して入り込む光は、まるでダンスをしているかのようです。色遣い、構図共にマティスならではの空間を作り上げています。

 このステンドガラスの余韻を持って美術館を出ました。東京都美術館は上野の森の一番奥に位置しています。楠の大木がいく本もある静かな道を賑やかな駅へと向かいました。楠はこの時期静かに香りを放ちます。まるで香りの洗礼を受けているかのような気分でした。

 

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佐伯祐三 大阪中之島美術館

2023年04月19日 05時00分24秒 | 美術展

曇、22度、90%

 十数年前、東京の損保美術館に「ブラマンク」の絵を見に行きました。その時ブラマンクを師事した日本人画家「佐伯祐三」の作品が数点出品されていました。「佐伯祐三」という日本人画家を知ったのはこの時のことです。暗い色調のパリの街角を描いた強いタッチの絵が数点、私は「ブラマンク」より「佐伯祐三」の作品に魅せられました。美術展で絵葉書を買うことはありません。なのに「佐伯祐三」の絵ハガキを3枚求めて、香港の家に持ち帰りました。アクリルの小さな額にその時の気分に一番近い絵を入れました。

 昨年のことです、「大阪中之島美術館」が新しくできました。新聞記事でこの美術館の設立の発端は寄贈された数多くの「佐伯祐三」の絵だと知りました。 有名な「郵便配達夫」も含まれています。昨年のこけら落としの展覧会でも数多くの「佐伯祐三」の絵画が出るとのことでしたが、一年後の一周年記念は「佐伯祐三」の館所持の全作品の回顧展が予定されていました。私は一年待ちました。

 30歳にして亡くなった画家「佐伯祐三」、実際画家として絵筆を握ったのは数年だったとも聞きます。この一年「佐伯祐三」に関する本も読み、一周年記念の展覧会を待ちました。先週土曜日に始まりました。土日は人が多いはず、月曜日は休館日、そこで火曜日の昨日、早朝に家を出て大阪に向かいました。

 入ると直ぐに、 自画像が迎えてくれました。自画像の一群に始まり、時代を追って143点の作品展示です。高揚した気持ちを抑えて、ひとつひとつ見て行きました。

 損保美術館以来、「佐伯祐三」の「赤」の使い方が気になっていました。様々な「赤」が絵に見られます。小さな「赤」のそのスポットの使い方が、暗く重いタッチの絵にすっと風穴を作っています。以前は「パリの街だから、赤が映えるのだ」と思っていたのですが、「佐伯祐三」は日本の田舎の風景にも小さな「赤」のスポットを描いています。あの時代に田舎に赤い屋根などあるはずもないのに、遠くに小さな赤い屋根が見えるという具合です。明るい「赤」もあれば暗い「赤」もあります。そのポツンとした「赤」が私の心に響きます。

 一晩明けた今も少なからず「佐伯祐三」の絵の余韻が残っています。開館同時に多くの方が入館されました。若くして亡くなった「佐伯祐三」の絵に何を感じられたのでしょうか。 「黄色いレストラン」の前で「佐伯祐三」が吸っていたパリの空気が匂いました。在館、1時間あまり、久しぶりに身体の細胞が目覚めたように感じます。

 真新しい美術館、場所柄を損なわないいい建築物です。この回顧展は、先月までは東京でも開催されていました。私は「中之島美術館」の建築も見たく、昨日まで待ちました。

 午後もまだ早い時間に帰宅、10時間ほどのお留守番をしたココが出迎えてくれました。

 

 

 

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「ミロ」の絵 福岡市美術館

2022年07月27日 04時54分43秒 | 美術展

晴れ、26度、90%

 福岡市美術館のコレクションの中で有名なものの一つに「ミロ」の「ゴシック聖堂でオルガン演奏を聴いている踊り子」という絵があります。教科書などに載る有名な絵です。この絵がしばらく他所の美術館に貸し出されていて、常設のコレクションを留守にしていたそうです。戻ってきたこの絵を記念して「お帰りなさい、ミロ」と題し、「撮影可能」の日が数日あります。普段は撮影禁止です。3と6のつく日が撮影可能日、つまり「ミロ」です。

 絵葉書を買うのと違い、自分のカメラに収められるのは嬉しいと、昨日美術館に向かいました、夏休で人が多いだろうと思っていたのですが、まばらです。子供向けの催し物の方では甲高い子供の声がしています。ゆっくりと「ミロ」の絵と向かいあ会うことが出来ました。他に見るものがありませんので、10分ほどで外に出ました。

 晴天、猛暑の大濠公園、 ほぼ毎朝、日の出前後のこの公園を走ります。昼間見る公園はまた違った美しさです。2階のベランダから「ブルーボトルコーヒー」のトラックを見ると炎天下、ここにも行列が。並んでまでコーヒーを飲もうとは思いません。このコーヒートラック九月に福岡に戻って来ます。今より涼しくなっていくつもりです。

 福岡市美術館、なかなか粋な取り計らいをしてくれます。

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フィンレイソン展 福岡市博物館

2022年01月19日 04時00分08秒 | 美術展

晴、1度、74%

 「マリメッコ」をはじめとする北欧の特にフィンランドの布地は日本でも人気を博しています。知名度では「マリメッコ」が抜きん出ていますが「クリッパン」「ラプアンカンクリ」「スティングリンドベリ」「ファインリトルデイ」と布地のメーカーは数あります。明るい色遣い、デザインの妙、惹きつけられる理由はよくわかります。

 私は日本の布もフィンランドの布もフランスの布もインドの布もインドネシアの布も好きです。要するに布好きです。集めてきた布は大きな衣装ケース2つにいっぱい、5年前の帰国の時には整理したのですが、また増え続けています。

 「フィンレイソン」というテキスタイルのメーカーを知ったのは「フィンレイソン展」が東京で始まった時です。調べるとフィンランドで一番長く続く200年の歴史を持つテキスタイルメーカーだと知りました。東京、京都を経て福岡でも展示が始まりました。

 テキスタイルづくりはデザインを起こし、パターン化してそれを織機にかけて織りだします。その工程、布地の用途にふさわしい生地選び、代表的な図柄の展示がなされています。 北欧のテキスタイルは図柄が大きいものが多く、そのインパクトが目を引きます。 模様を繰り返し、色を違えるとこんなにも印象が変わります。 原画と布地の比較です。当然大きな図柄のものは服地よりはカーテンやベットカバーなどに使われます。

 寒く長い冬の北欧フィンランド、家の中は明るく、暖かさを持つ色合いで調えることは生活から生まれた知恵だったのかもしれません。 花柄が多いのは春を待つ表れでしょう。よく見ると「マリメッコ」でも有名な図案「ポピー」でした。もともと明るい国民性も反映しているように思えます。

 布ばかりでなく「マリメッコ」のように食器や生活グッズを今後「フィンレイソン」も販売するそうです。フィンランドのテキスタイルメーカーもそれぞれ色合い、デザインの特徴があります。私の周りもフィンランドの布やトレイなどが生活を彩ってくれています。

 

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「ゴッホ展」 福岡市美術館

2021年12月27日 03時55分47秒 | 美術展

曇、2度、70%

 「ゴッホ展」が福岡にも回って来ました。帰国4年、西洋画の大家と言われる人の美術展は初めてです。福岡で「ゴッホ」がこれだけ観ることができるのも20数年ぶりだと聞きました。訪れたのは初日の開館時、2階の会場前にはすでに人の列が出来ていました。今回の「ゴッホ展」は「クレラー=ミュラー」美術館の所蔵作品が主体です。「クレラー=ミュラー」夫妻が買い集めたゴッホの作品は個人蔵では最も多いものだそうです。

 ゴッホの絵はなぜか人を惹きつけます。ゴッホの生涯を知るとまた興味が深くなります。アムステルダムの「ゴッホ美術館」へも7年ほど前のこの12月に訪れました。東京での美術展には帰国、上京して足を運びました。「クレラー=ミュラー」美術館の所蔵品も観ています。それでもまだ観ていない絵がないかと今回の「ゴッホ展」を楽しみに待ちました。会場に入る前の人たちも私同様、やや高揚気味に感じます。

 入るなり数点の鉛筆画、デッサンが並んでいます。これは初めて観るものです。力強い筆致に至る前の平面的な作品、点描画を模したような作品、そして「ああ、ゴッホ」と思わせる絵と展示が続きます。初めて観る「レストランの内部」と題された作品は点描画でその色合いも一見ではゴッホのものとは思えません。いく作品かある「黄色い家」これは幾度か観たことがあるものでした。「クレラー=ミュラー美術館」で一番大きなゴッホの作品は「夜のプロバンスの田舎道」だそうです。以前にも観たこの絵ですが、この絵の前に立った時、周りの誰もいませんでした。「私独り占め」と心でつぶやきます。うねり上がる「糸杉」はゴッホの象徴的な題材です。道を歩く人の顔をまじまじと。月と太陽が入れ替わる時間帯のプロバンスの匂いまで伝わって来そうなこの絵を前にしばらく佇みました。

 年末の慌ただしくなる前にと初日に行きました。数日経った今もゴッホの絵の余韻が残ります。作品数は50数点と大規模な展示ではありません。私にとってクリスマスプレゼントのような時間でした。

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「民藝の100年」 東京国立近代美術館

2021年11月16日 03時54分41秒 | 美術展

晴、10度、80%

 この秋、東京の美術展で雑誌でも大きく取り上げられているのが「民藝の100年」です。東京駒場の「日本民藝館」の所蔵品を広い会場で余すとこなく見せてくれるというものです。「日本民藝館」はこじんまりとしたスペースですのでその時その時で展示物が入れ替わります。今回の上京の目的は「川瀬巴水」の木版画でした。時間的に余裕があるので「民藝の100年」のチケットも予約しました。

 私の住むこの家は父母から譲り受けたものです。古い日本家屋、玄関を開けて一歩入れば、家具も重々しい「松本民芸家具」ばかり。食器といえば土もので重苦しいと子供心に感じていました。磁器のご飯茶碗やお湯呑みが一つもありませんでした。そんなこの家が嫌いでした。白い生地の磁器のお茶碗でご飯を食べてみたいと、ホームドラマを見ては思っていました。

 父母は口にはしませんでしたが柳宗悦が言い出した「民藝」と呼ばれるものを家に集めていたのです。本棚には「民藝」関係の本が並んでいました。民陶の大きな壺が家のここかしこに飾られていました。上京すれば銀座の「たくみ」という民藝を扱う店に必ず足を運んでいました。今更改めて「民藝」展示を見る必要もないほど身に染み付いた「民藝」です。

 「民藝の100年」を見て改めて身近のある「民藝」を認識します。この家の整理の時、残したのは家具と大きな焼き物だけでした。良いものとわかっていても欠けや傷みが激しいものは捨てました。「民藝の100年」を見ながら捨てたものの大きさを思い知ります。

 この家の家具はほとんど全て「松本家具」です。 受け継いだものもありますが、結婚して私たちが買った家具は「松本民藝家具」でした。結婚当初は磁器の焼き物を食器に数求めました。念願でした。染付、絵付けの軽いお茶碗やお皿です。それがどうしたことか40歳を越した頃から私もまた土ものの食器に目が向き始めました。手に持った時の温かみが違います。テーブルに置いた時の底深い迫力が違います。今の我が家の食卓は洋の東西の土もの、磁器が並びます。

 「民藝の100年」私にとっては展示物を見るというより、父母から私に流れて来た太い意思を改めて見直す機会となりました。美術館を出て小春日和の青い空を見上げました。ふっと「来てよかった。」と胸に湧き上がるものがありました。

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「川瀬巴水」

2021年11月14日 03時53分19秒 | 美術展

小雨、11度、64%

 十月に入ってから主人がどこか旅行に行くようにと度々言ってきました。神戸の友人に会いたい、松本から安曇野を訪れたいなどと思うのですが今一つ腰が上がらずにいました。大きな美術展はコロナでの閉館をおそれてかこの秋は数が少ないように思います。夏の終わりから気になっていた展示会が一つだけありました。「川瀬巴水」の版画展です。出品数が300近く、これだけを一堂に見れる機会はないと東京行きを決めました。

 「川瀬巴水」は大正時代から昭和初期に活躍した版画家です。旅した景色を得意とし、それまでの「浮世絵」と呼ばれる版画とは異にして「新版画」と呼ばれています。「川瀬巴水」を知ったきっかけは福岡の「西公園」をモチーフにした版画一枚からでした。大濠公園の北、海寄りの「西公園」の大正時代の景色でした。どこで見たのかもそれ以後「川瀬巴水」のことは忘れていました。

 300点近い版画、さほど大きくない会場ですが時間指定で入館することもあってか人が少なくゆっくりと見る事ができました。 東京の景色をシリーズとして評価を得たは「川瀬巴水」です。多色刷りの版画は幾枚もの版木を重ねて刷られます。下絵を描く人、版木を彫る人、刷る人と分業の上にできる版画です。絵画とも違う平面状の絵の表現、その緻密さに圧倒されます。北海道から九州まで各地の景色がありました。「西公園」にも再会しました。

 大正時代の日本、都内でも高い建物はありません。版画から伝わってくるのはそうした時代の時間の流れです。景色の中の人たちは穏やかに生きていると感じます。パンフレットの表紙絵左は代表作「芝増上寺」です。雪の中を傘を差し歩く女性の姿です。右は「馬込の月」、藁葺き屋根の上に月がかかっています。馬込は40年近く前もこうした田んぼが残っていました。版画の精巧さにも見惚れますが、それ以上に景色の美しさが残ります。日本の美しさです。日本の風景には「雨」「雪」「月」がよく似合います。

  写生帳です。大正の時代、写生帳を片手に日本を旅した版画家「川瀬巴水」旅の様子を思います。

 日本の風景の版画の余韻は三日経った今も私の心に残っています。

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「電力王 松永安左エ門の茶」 福岡市美術館

2021年10月11日 03時53分22秒 | 美術展

晴れ、24度、84% 

 福岡市美術館で「電力王 松永安左エ門の茶」展が始まりました。「電力王」とは聞き慣れない言葉です。松永安左エ門の電力業界での偉業を讃えた言葉です。昭和の戦前から実業家として活躍した松永安左エ門は長崎壱岐の出身で、還暦を過ぎてから茶の道に入り「耳庵」と呼ばれました。実はこういう人物がいたことを知ったのは帰国して福岡市美術館訪れた時です。福岡市美術館には松永の収集した重要文化財を含むコレクションがあり、常設の松永コーナーがあります。今回は120点ほど一堂に会した展示です。

 茶にまつわる収集物、お茶碗、お釜、水指、茶入れなど多岐にわたって展示されています。 仁清のこの壺は常設展の入り口にいつも見るものです。吉野山の風景、小さな耳がある大きな壺です。 お茶道具を包む布にも目が行きます。南方の更紗です。 志野焼の筒茶碗。 黒織部の筒茶碗。 黒の楽茶碗。いずれも小ぶりな茶碗です。

 以前主人と訪れた時見た尾形乾山のお軸。 「花籠図」と題されています。季節は秋のお軸です。乾山が好きな私はこのお軸を見たさにやって来ました。色合い、構図共に見飽きません。きっと以前主人と来たのも秋だったのでしょう。もう一つ、乾山のお軸、 「茄子」の絵です。これも季節のものです。お軸はまだ数点ありますが、表装に使われている布遣いがどれもしっくりと目に映ります。

 最後の展示物、思いがけないものに出くわしました。エジプトの「コプト織」です。古いものですから小布です。まさかお茶道具と一緒に見られるとは思ってもいませんでした。 以前から「コプト織」に興味がありましたが、実物を見る機会を逸していました。 独特な文様です。 色は掠れていますが、エジプトの古い遺産を感じます。 

 館内は人も少なくゆっくりした時間を持ちました。2階のバルコニーから見る大濠公園です。 毎朝、まだ日が昇る前のこの公園を走ります。明け切らぬ公園の水面もいいものですが、青空の下のこの景色は胸のつっかえを取り払ってくれます。

 日本の実業界で活躍した人が集めた品々、身近の感じることが出来るのは幸せです。

 

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「国宝鳥獣戯画のすべて」 東京国立博物館

2021年04月18日 04時00分11秒 | 美術展

晴、12度、52%

 雨の中、日帰りで東京に行きました。「小村雪岱」の美術展を観るためでした。折良く、4作の「鳥獣戯画」すべてが公開されることを知りこちらも予約を入れました。場所は上野の国立博物館です。京都高山寺にある4作すべてが一同に公開されるのは滅多にないそうです。「鳥獣戯画」は有名ですが、私は断片を見たり、模作を見たり、全編通して観るのは初めてです。

 予約制ですが、相変わらず長蛇の列でした。当日券もあるそうです。国立博物館の展示は工夫が施されています。今回は「鳥獣戯画 甲の巻」はその長さ分「動く歩道」になっていました。「動く歩道」に並びゆっくりと鑑賞する仕組みです。面白い仕掛けですが、人が滞ります。4巻の他にも模作の出展があり、実物の上には拡大された絵と解説がついています。国立博物館の展示にはいつも感心します。私が見知っていた「鳥獣戯画」はほんの一部だと知りました。

 「本作」「模作」の会場の後に「高山寺」にまつわる会場がありました。「高山寺」の開祖「明恵上人」の紹介です。この第3会場の入り口には「明恵上人の坐像」が飾られています。「高山寺」には「国宝」に指定されたものがいくつもあります。明恵上人が木の上で座禅を組む絵もその一つです。高山寺を訪れたら見たいと予々思っていましたが、今回は出展されていませんでした。ところがこの第3回会場の最後、思わず「あっ!」と声を上げたものがありました。明恵上人が常々身近に置いていたという「子犬」の像です。木の上で座禅を組む明恵商人の絵と共にいつか見たいと思っていた「子犬」の像に思わぬところで巡り会いました。写真で見ていたものより大きな像です。ガラスケースの中の「子犬」の像は本当にいい表情をしています。どんな人でもほっとする幼い犬の表情です。

 飛行機で日帰りまでして観に来たふたつの美術展、最後の最後にいいものに出会いました。博物館を出ると雨が上がっていました。上野公園を横切る間、人通りの少ないところでマスクを外して深呼吸、雨上がりの上野の匂いを胸いっぱい吸い込みました。慌しい一日でしたが、2つの展覧会で観たものがふつふつと蘇り久々に心が踊っていました。いい一日をありがとう。

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「小村雪岱スタイル」 三井記念美術館

2021年04月17日 04時00分04秒 | 美術展

曇、16度、92%

 「小村雪岱」という日本画家を知ったのは、2010年出版の「芸術新潮」二月号でした。 大正後期から昭和初期にかけて「日本画」そのものよりも「本の装幀」「舞台装置原画」の制作者として名の通った人だったようです。

 「日本画」に見る日本女性は世代を反映しています。それ以上に描く画家の心が反映していると思います。「小村雪岱」が描く日本女性はとても身近に感じることが出来ます。美しいけれどすぐ側に居そうなそんな日本女性です。「おお、美人」ではないのです。それでいて小柄な日本女性の身体のしなやかさや着物のシャンとした後ろ姿が描き込まれています。

 日本を永く離れていましたから、「小村雪岱」の展覧会に巡り合うことがないまま10年以上が過ぎました。年明けて、「三井記念美術館」での催しに「小村雪岱」の字を見たときは大喜びしました。コロナのことが心配でやっと重い腰を上げて観に行きました。「三井記念美術館」は日本橋一帯の再開発で新しく出来た美術館です。

 完全予約、時間指定があります。しかも雨ですが会期も残すところ僅かとあって入り口から並びました。新しい美術館、大き過ぎない落ち着いた造りです。会場に入ると人の多さは気にならないほど作品に没頭しました。

 この10年、グラビアなどで「小村雪岱」の絵を見つけると切り抜いてあります。写真で見るそれと実際軸に仕立てられた絵を見るとでは大違いです。江戸時代の「鈴木春信」の女性像に似ているとよく書かれています。この展示会では「鈴木春信」の絵も出品されています。見比べると確かに似ています。「小村雪岱」の描く女性の方がひとまわり華奢です。そして女性の目線が優しさを持っています。「泉鏡花」の本の装丁に至っては布地に書かれた絵の具合が心に染み渡ります。手に取れないのが残念です。「舞台装置原画」と聞くととてつもなく大きなものを想像していましたが、B5サイズほどの大きさに緻密に描き込まれた数々でした。

 数少ない展示だろうと思っていましたが140点にも上る出品でした。個人の所有物もありますが大半は京都「清水三年坂美術館」からの出品でした。「小村雪岱」が書く文章も当時高い評価を受けています。 五十歳前に亡くなっていますが、各方面でいいものを残された「小村雪岱」です。「資生堂」のデザイン室に勤めていたこともあり、その時代には「香水瓶」のデザインも手掛けています。この「香水瓶」を見られるかと思いましたが、残念、出品されていませんでした。

 「小村雪岱」に何故こんなに惹かれるのか?小柄で華奢な女性像、それ以上に色遣いの妙だと気付いたのは会場を出る頃でした。独特な淡いそれでいてモダンな色遣いです。この会場でまだ時間をと思うのですが、次の時間指定の美術展の入場時間が迫っています。長年見たかった「小村雪岱」の絵の余韻をしっかりと胸に雨の中を次に急ぎました。

 

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