町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

京急初のデュアルシート装備編成・新1000形1890番台(20次車)

2023年05月07日 | 京浜急行電鉄

設計変更を繰り返しながら増備が続いている2代目京急1000形は2020年度にも4両編成2本の8両が増備されますが、この編成は座席指定列車と貸切列車での運用を想定し、京急では初となるデュアルシートと中間車にトイレ設備(品川寄りサハ1000に車椅子対応型、浦賀寄りサハ1000に小用トイレをそれぞれ設置)を採用しています。この編成は愛称を一般公募しており、運用開始後の20211224日にフランス語で空を意味する「Le Ciel(ル・シエル)」と名付けられました。これは三浦半島や羽田空港の空を想起させることや、かつての週末行楽特急ラ・メール号(フランス語で海の意)への敬意を込めての命名とのことです。2022526日には、鉄道友の会よりブルーリボン賞を受賞し、2000形以来39年振りで2回目の受賞となりました。

設計のベースになった15次車と併結しエアポート急行の運用に就く1895編成。正面形状は常用貫通扉を備えた15次車を基本にする一方で、車体は雨樋が外に出ない滑らかな断面形状とされました。当初の目的通り団体臨時列車にも使用されますが、現在は平日のモーニング・ウィング号と他形式4両と併結した8両での土日祝日のエアポート急行がメインの運用になっています。

休日限定のエアポート急行運用時は常に浦賀寄りに連結位置を固定しており、貫通路を備えた15次車と連結する際も貫通幌は使用されません。日によっては1000形グループの他に600形や15004両との併結シーンも見られます。

ロングシートモードの車内。デュアルシート装備車ではありますが、クロスシートモードでの定期運用は平日のモーニング・ウィング号のみに留まっています。両先頭車は2007年のステンレス車から途絶えていた乗務員室後部の座席が復活し合わせて圧迫感を軽減する為に非常に細い側窓が設けられ話題を呼びました。

ドア上には1719次車と同一の左右一体型液晶画面と開く側の扉を示すランプを設置。クロスシート時を考慮して天井や妻面貫通扉上に設置しても良さそうですが、ロングシートモードでの運用が中心なのでドア上のみで十分用が足りているようですね。

現在は45本で定期運用も2100形の増結と停車駅の多い休日のエアポート急行の運用に留まっていますが、今後更に増備が開始されれば泉岳寺発着の快特や他社線への進出の可能性もあり、今後が非常に楽しみです。

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リクライニングシート装備で更なる快適性向上、改良を重ね増備が続く京王5000系

2023年05月05日 | 京王電鉄(電車・バス)

京王電鉄の座席指定制列車「京王ライナー」に充当される2代目の5000系は、当初10両編成5本の50両が製造され2018222日のダイヤ改正からライナー運用を開始しました。その後は2019年からの運転本数増加と予備車確保の為、室内の配色を若干変更し座席にドリンクホルダーの設置を行う小改良が実施された5736Fが、更に2022年にはデュアルシートでリクライニング機構を備えた5737Fが増備され、7編成体制となりました。通勤ライナー向けのデュアルシート装備車は他社でも数多く事例がありますが、リクライニング機構を備えた仕様は日本の鉄道車両で初採用となっています。

上り京王ライナー12号に充当中の5737F。先の5736Fから約3年振りとなる増備車で20221224日に営業入りし、同日は「クリスマス初乗り体験会」として抽選で選ばれた招待客を乗せ、若葉台〜つつじヶ丘〜府中競馬正門前間で試乗会も実施されました。京王線は新宿〜八王子間でJR東日本中央線と競合しており、同区間には通勤時間帯に特急が設定されていますが、それらと比較しても料金面では京王側に分があり、互角の水準になったと言えます。

高尾山口始発の「Mt.TAKAO号」に充当の為に送り込み回送で京王線を下る5736F(過去の記事より再掲出)。この編成より利用者アンケートを踏まえた前述の改良が施されました。現状は107本で再び増備は一段落ですが、中間連結部の通り抜けが出来ない編成を解消することが発表された為、7000系の64両を置き換えるべくコンスタントに増備されて行くことが予想されます。

57315735Fと比較すると白が中心の配色になった車内設備。写真は5737Fのものでクロスシートモードではリクライニング機構が使用可能になり、肘掛けに設置のレバーで操作できます。また一般列車運用時のロングシートモード時は座席が窓側に後退するようになり通路幅が拡大され、僅かながら余裕が生まれました。

ドア上の液晶画面。以前記事にした編成と比べると筐体がゴールド系の色から白色に変更されているのが分かると思います。荷物棚上の内装材も白に改められており統一感が出ましたが、何故こうした変更が成されたのか気になる点です。

初代5000系も関東地方の特別料金を徴収しない通勤電車では初の冷房車として利用者から歓迎されましたが、2代目の5000系も先代に劣らぬ画期的な仕様になりました。今後もどこまで数を増やすか楽しみな形式です。

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彩の国の地下鉄電車・埼玉高速鉄道2000系

2023年05月01日 | 首都圏の地下鉄

埼玉高速鉄道は営団地下鉄(東京メトロ)南北線の終点である赤羽岩淵を起点とし、埼玉県川口市方面に延長する形で埼玉スタジアム2002の最寄り駅である浦和美園に至る路線を運営する第三セクター事業者で、沿線自治体の川口市・鳩ヶ谷市(20111011日で川口市に編入)・浦和市(200151日に周辺の市と合併し、さいたま市浦和区)と営団地下鉄、国際興業・東武鉄道・西武鉄道の出資のもとで1992年に設立されました。路線開通は2001年で、開通と同時に営団南北線・東急目黒線への相互直通運転を開始しており、路線バスへの依存度が高かった川口市東部・北部と旧鳩ヶ谷市域の交通状況を一気に改善しています。2023318日からは東急・相鉄新横浜線開通に伴い相模鉄道との直通運転(直通運転への充当車両は東急・相鉄車のみ)も開始した他、将来的には浦和美園から東武野田線の岩槻駅を経て、東北本線(宇都宮線)の蓮田駅までの延伸も計画されています。

開通に備えて導入され現在も運用されているのがこの2000系で、営団地下鉄に検査業務を委託する前提で計画された為、「埼玉高速線の車両に係わる業務受委託契約(新造車両)」が1996年に締結され南北線9000系の技術情報の提供を受けて製造されました。初代車両でありながら形式が2000系とされたのは、登場年と路線の完成した年(西暦2000)に由来します。ベースになった南北線の9000系は流線形に近い形状の前頭部でしたが、本系列では対照的に側面に周り込む曲面ガラスを用いながらも平面スタイルになり、新造時からスカートを設置してシャープさ、力強さを感じさせるデザインとしています。2000年代の新造車両ながらパンタグラフにシングルアーム式を採用せず従来からの菱形を搭載しているのも今となっては珍しくなりました。

先頭部形状の他にもアルミ車体を採用しつつ側扉がヘアライン仕上げのステンレス製標準品になり中央部の側窓がピラーを廃した一枚窓とされ、電気的にもIGBT素子を用いたIPM2レベル方式のVVVFインバーター制御で、ノイズのような独特の磁励音を発する三菱電機製の装置を搭載し、編成が電動車と付随車でユニットを組むMT組成(9000系では三菱電機IGBT-VVVF1415編成のみの他、電動車同士がユニットを組んでいます)など、基礎的な部分は設計を共通化しながらも非常に独自の色合いが濃くなっています。

車内は白の化粧板に石畳をイメージした灰色の床面で清潔感のある配色です。座席はバケットシートではない平板タイプで、埼玉県の県花であるサクラソウの花びらのイラストを入れて人数区分としています。ドア上の大きな画面が目を引きますが、これは2020年から新設されたダイナミックビークルスクリーンと称されるデジタルサイネージで、筐体内部にカメラとIoT機器が搭載され混雑状況や室内の温度をAIが解析し、環境の変化に応じて表示する内容を変更できる鉄道車両では世界初の事例になりました。

新造時から設置されているドア上の2段式LEDによる車内案内表示器。千鳥配置とされ、これが設置されていない側には2006年度より動画広告用の液晶画面が設置され、「SaiNet Vision」として配信を開始し現在は先述のダイナミックビークルスクリーンに置き換えられています。この為、LED表示とデジタルサイネージが同居する珍しい配置になりました。

今後の埼玉高速鉄道では乗り入れ先である南北線・東急目黒線に合わせて8両編成化が計画されており、81編成を先ずは新造導入し2000系は6両編成のまま運用を継続することが明らかにされています。2021430日には埼玉県・さいたま市は岩槻延伸に向けて部局長会議を設置したことを発表しました。実現の頃には2000系も登場から30年を超え、南北線の9000系共々置き換え計画が浮上してくるかと思いますが、色々と注目に値する路線です。

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