一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第9期叡王戦第4局

2024-05-31 23:02:13 | 男性棋戦
きょうは第9期叡王戦第4局(主催・不二家、日本将棋連盟)。藤井聡太叡王がカド番に追い込まれるのは初めてのことで、23回に上るタイトル戦で、そのこと自体が驚異的なのだが、とにかくその状況の藤井叡王がどんな将棋を指すのか、大いに注目された。
対して伊藤七段は、先手番でもある本局が最大のチャンス。藤井叡王からタイトルを奪取すれば、その大殊勲から、今年度の将棋大賞の受賞は確実となる。
対局場は千葉県柏市。アクセスはつくばエクスプレスが通じ、これが秋葉原直通だから便利である。私は東京育ちだから関係ないが、もしマイホームを構えるなら、この沿線が魅力的だと思う。
将棋は角換わりとなった。そこからお互い右金を上げ飛車を引く、例の形になった。
そこから先も見たことのある形になったがそれも道理で、直近では本シリーズ第1局と同じだ。ただしそのときは伊藤七段が後手で、しかもこの形は伊藤七段の得意形にも思えたから、ぼんやりしていると、対局者を間違えてしまう。
伊藤七段、手詰まり模様から穴熊に潜る。角換わりだから固さは求めず、「遠さ」に重きを置いたのだろう。
だがここで藤井叡王の端攻めが機敏だった。私が棋士から指導対局を受けると、よくこの端攻めで攻めつぶされるのだが、プロは端に目が行くようだ。
藤井叡王、飛車が走って香取り。それを伊藤七段は角打ちで受けた。しかしいかにもつらい形で、できれば打ちたくなかったが、仕方なかったのだろう。
藤井叡王、黙って飛車を引く。次、角の頭に歩を打つ手があるから、伊藤七段は先に歩を打って受ける。だが、角を手放したうえ、さらに後手を引くようでは、私的にはもうダメである。伊藤七段、穴熊の構想がマズかったのではないか。
将棋は以降も熱戦が続いたが、藤井叡王が勝ち切ったのだった。
終わってみれば、藤井叡王の強さが目立った。タイトル数を量産するには、負け越しからの逆転防衛は必須である。第4局での指し回しは、さすがだったと思う。
伊藤七段、本局は残念だったが、最終局に勝てばいいのだ。
運命の最終第5局は、6月20日(木)。
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渡辺九段、勝ち切る

2024-05-30 23:38:17 | 男性棋戦
きょうは第65期王位戦挑戦者決定戦が行われた。対局者は渡辺明九段と斎藤慎太郎八段。
渡辺九段は「藤井聡太被害者の会」会長で、藤井王位にいくつもタイトルを獲られた。藤井王位がいなければ二十世名人になっていたはずで、あいや、まだ渡辺九段の二十世名人がついえたわけではないが、藤井王位に誰も勝てない現状では、名人2期の藤井王位が二十世名人の最右翼と言わざるを得ない。
とにかく無冠になってから影が薄い渡辺九段だが、今回は輝きを取り戻す、願ってもないチャンスだ。
対して斎藤八段も、名人に2期連続で挑戦した実績がありながら、前期A級順位戦では、まさかの降級を喫した。順位戦の鬼とも思えた斎藤八段でさえ降級する。これが順位戦、とりわけA級の恐ろしいところだ。
しかし勝負事は分からない。この、どちらも株価が下がっているふたりが、挑戦者決定戦を争うのだ。
しかし挑戦者決定戦ほど、勝ちと負けの落差が大きいものはない。負けたら来期また出直しだが、勝てば全国を回って将棋三昧だ。
将棋は渡辺九段の先手で、相懸かりになった。どっちが先手になっても角換わりになると思っていたから、ちょっと意外だった。今回もABEMAの中継ありで、ありがたい。
そこから進んで、渡辺九段は中住まい、斎藤八段は銀冠に組んだ。居飛車党の不思議なところは、対振り飛車では穴熊など玉をガチガチに固めるのに、相居飛車戦だと、平気で玉が薄い将棋を指すことだ。とくに渡辺九段には、その傾向が強い。ただ本局の場合、金銀を2段目に並べるこの形は、渡辺九段の得意形だと思う。
斎藤八段、7筋の歩を突きあげて、銀を出る。渡辺九段は飛車を逃げる一手だが、そこで斎藤八段は7筋の歩を取り返すのだろう。
だがそうすると、渡辺九段は飛車を切って、角を飛び出す手がある。私が見えたくらいだから狙いが単純すぎるが、存外先手の駒が捌けていないか?
斎藤八段、その狙いにいま気づいたようだが、当初の予定通り、銀で歩を取る。と、渡辺九段が短考で、先の手順を実行した。
斎藤八段もやや虚を衝かれたようで、長考に沈む。明らかにこの筋を軽視していたふうで、私はこの将棋、渡辺九段が勝つと思った。
事実、そこから渡辺九段が徐々に形勢の差を拡げる。そしてこれは、容易に逆転しない形だ。先手陣には嫌味がなく、後手陣は先手が次善手の連続で迫っても、寄りそうな気がする。
渡辺九段の的確な追及に、斎藤八段は金、角を捨て竜を取る非常手段に出たが、渡辺九段は豊富な持ち駒に物をいわせ、勝ち切った。
感想戦では、上の飛車切りのあたりを重点的にやるかと思いきや、わりとアッサリ素通りしたので、拍子抜けした。どうも勝負所は、別のところにあったようである。
さて、渡辺九段の王位戦登場は初めて。渡辺九段は「冬将軍」と異名を持つほど、秋から冬にかけてのタイトル戦(竜王、王将、棋王)に抜群の強さを発揮したが、真夏の王位戦はどうなのだろう。相手が藤井王位でなければ興味津々の戦いなのだが……。
第1局は7月6日、7日。
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第12回 勝手にマッカラン勝負・完結編

2024-05-29 22:36:12 | マッカラン勝負
第32期倉敷藤花戦のトーナメント表をお借りして行っている、「勝手にマッカラン勝負」。きのう㉘日は、礒谷真帆女流初段VS鈴木環那女流三段戦が行われた。
では、結果を記しておこう。

【1回戦】
●船戸陽子女流三段VS○宮宗紫野女流二段
●島井咲緒里女流二段VS○石高澄恵女流二段
●磯谷祐維女流初段VS○井道千尋女流二段
●上川香織女流二段VS○竹部さゆり女流四段

【2回戦】
●田中沙紀女流1級VS○中村桃子女流二段
●中倉宏美女流二段VS○井道千尋女流二段
●渡部愛女流三段VS○伊奈川愛菓女流二段
●堀彩乃女流初段VS○中井広恵女流六段
○礒谷真帆女流初段VS●砂原奏女流2級

【3回戦】
●礒谷真帆女流初段VS○鈴木環那女流三段

2回戦で唯一勝った礒谷女流初段は、3回戦で鈴木女流三段に屈し、これでLPSA勢全員が姿を消した。ということで、これにて今回のマッカラン勝負は終了だが、9名参加して1勝は情けない。
よって私のLPSAサポーターへの寄付も、1口3,000円のみとなった。これはすでに入金した。
ちなみに「1勝」は、2期前と最小タイ記録。ちなみにこのときは私がうっかりし、マッカラン勝負はやらなかった。
来年もこのブログが健在なら、またマッカラン勝負をやる予定だが、そのときは私が後悔するくらい、勝ってもらいたい。
皆様お疲れさまでした。
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第82期名人戦第5局2日目「盤石の防衛」

2024-05-28 23:03:46 | 男性棋戦
第82期名人戦第5局(主催:毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟)2日目、藤井聡太名人の封じ手は、飛車先の歩を突き捨てる手だった。これは大方の予想通り。
豊島将之九段が歩で取ったのはいいとして、唸ったのはその次、藤井名人が5筋の歩を突きあげたことだ。
指されてみればなるほどの手で、どう応じても味が悪い。同じ戦型で、この金が銀のときも歩を突く手があるが、やはりこの筋が急所のようだ。
豊島九段はこの歩を取り、数手後金を摺りこんだが、手数をかけたわりには、でかしていない。
反対に藤井名人は手順に馬を引き、穴熊が指しやすい。
さらに藤井名人は香を立て、金香交換の駒得に成功した。伊藤匠七段とのタイトル戦でもこのマスに香を打って駒得を果たしたことがあったが、藤井名人は香の使い方がうまいと思う。ああまあ、藤井名人は、すべての駒の使い方がうまいのだが……。
さらに藤井名人はその金を、打ちにくい場所に打つ。だがこれはAIも推奨していて、こんな手が一致するようになったら、もう藤井名人の勝ちだと思った。
ABEMA2日目の解説のひとりは郷田真隆九段だったが、藤井名人が6筋に歩を垂らす変化が出てきた。これも藤井名人が序盤で歩を損したから生じたわけで、藤井名人はここまで読んで、6筋の歩を差し上げたに違いない。
反対に豊島九段はほとんどの筋の歩が切れておらず穴熊崩しに有効なと金攻めができない。
藤井名人、端に銀捨ての鬼手が出た。これも、豊島九段が端歩を2つ伸ばしたから生じた手である。私が後手だったらバカバカしくて投了しているところだが、名人戦でそれはできない。
豊島九段、取るに取れず香を受けたが、これで8筋に駒柱ができた。豊島九段はともかく、藤井名人はプロになって、駒柱の経験があるだろうか。
以下も、藤井名人の攻め、豊島九段の受けが続く。受けといっても受け方がいろいろあり、豊島九段がわずかでも間違えると、差が開いていく。
以下99手まで、豊島九段の投了となった。
投了図を見ると、藤井名人の穴熊が手つかずで残っている。これがそのまま形勢の差で、藤井名人の完勝だった。なんでこうなってしまったのだろう。
序盤、AIの形勢判断は、「藤井52:48豊島」が長く続いた。これがほかの戦型ならなんてことはないが、穴熊戦の場合、挽回が難しかったということだ。
むかし私が工場で仕事をしていたとき、作業机の上に敷いた新聞に、小さな穴が開くことがあった。それはそのまま作業をすると、やがて大きな穴になり、破れてしまうのだった。本局の豊島九段も、こんなイメージだった。
こんなことを書くのもいまさらだが、豊島九段は相手の穴熊を警戒し、後手番ではあるが、藤井システムを採用したほうがよかったのではないか。いや、藤井名人の指し手が完璧だったというべきか。
藤井名人は、4勝1敗で最年少名人防衛となった。昨年、最年少で名人位を獲得したのだから当然だ。今回、苦しい将棋もあったが、数字的には余裕の防衛だった。
そしてタイトルは、22連覇の22期となった。タイトル数は早くも自身の年齢を抜いたわけだが、自分の年齢より多くのタイトルを獲っているのは、羽生善治九段、大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人(引退時)の3人しかいない。これから藤井名人は、どれくらいタイトルを積み重ねていくのだろう。
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第82期名人戦第5局1日目「豊島九段、飛車を振る」

2024-05-27 00:08:13 | 男性棋戦
26日・27日は第82期名人戦第5局である(主催:毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟)。藤井聡太名人3連勝のあと、前局は豊島将之九段が1勝を返したが、引き続き豊島九段が崖っぷちであることに変わりはない。
第5局の対局場は北海道紋別市。全国的に名の知れた地名だが、意外にも鉄道は走っていない。むろんむかしは鉄道=名寄本線が通じていたが、1989年5月1日、143km全線が廃止された。「本線」と名の付く廃止は初めてで、鉄道ファンは大いに落胆したのであった。
私がむかし紋別市のビジネスホテルに泊まったとき、プロパンガスが壊れたとかで、シャワーが使えないことがあった。
そこでスタッフ氏(ご主人)が、近くの銭湯まで、クルマで送り迎えしてくれた。私は銭湯の帰りにご主人オススメの寿司屋で降ろしてもらい、寿司をつまんだ。にぎりのセットが2,000円だったと記憶している。寿司はもちろん、美味かった。
さて、第5局は藤井名人の先手である。藤井名人の居飛車明示に、豊島九段は角道を止める。居飛車党はそれでも雁木があるから厄介で、第3局がその形だった。
豊島九段、さらに9筋の歩を突き、様子を見る。第3局はここで飛車先の歩を突いたから、第5局はさらに思わせぶりだ。ABEMA解説の藤森哲也五段は、「振り飛車もあるかもしれませんよ」と期待を抱かせる。
だけどこっちはもう、その手には乗らないのである。どうせまた居飛車だろ?……と思いきや、豊島九段が四間飛車に振ったから驚いた。名人戦における居飛車党の振り飛車は珍しく、ひょっとしたら初めてかもしれない。
当ブログでは以前から、藤井名人の角換わりの勝率が高すぎるから、相手は振り飛車を指すのもひとつの作戦だ、と主張していた。今回それが現実になり、私としてはうれしい。もう角換わりはいい。
ちなみに竜王戦では、第3期に羽生善治竜王が第4局まで、●●●○と今回と同じ星で、第5局に四間飛車に振った。挑戦者の谷川浩司二冠は天守閣美濃に組み、際どい終盤を読み切り、竜王奪取とした。
ただ羽生現九段はオールラウンドプレイヤーで、豊島九段とはやや事情が異なる。もっとも豊島九段がこの大舞台で、気分転換で振り飛車を採用するはずはないから、長く温めていた作戦ともいえる。今回豊島九段は、どんな振り飛車を見せてくれるのか。
藤井名人は穴熊を明示した。AIは穴熊を好まないが、人間は指す。棋士も、そこまでAIに従属はしないのだ。
と、藤井名人は6筋の歩を突き越した。だが、この歩は銀で取られるからタダである。リアルタイムで見ていたから記譜の間違いではないが、こんな手があるのか? 一歩損でも角道を通すことがそのココロだが、銀で取られてまだ銀の進出があるから、藤井名人は金を上がらなければならない。それなのにAIの評価は先手十分。私は訳が分からなかった。
ただ、この手を藤井名人は短考で指した。藤井名人も、豊島九段の振り飛車を視野に入れていたのだろう。
豊島九段、金を三段目に上がり、さらに四段目に上がった。花村元司を思わせる奔放な指し手だが、いかにも振り飛車らしい。豊島九段、振り飛車もイケルではないか。
豊島九段が飛車を転戦し、藤井名人が次の手を封じた。
角換わりは私には、どこが急所だかまったく分からないが、対抗形なら馴染みがある。2日目が楽しみだ。
(つづく)
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