一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第79期A級順位戦9回戦

2021-02-28 00:32:55 | 男性棋戦
26日、第79期A級順位戦9回戦が、静岡市「浮月楼」で行われた。もはや最終戦といえば「浮月楼」で、4年連続である。
名人挑戦を争うのは7勝1敗の斎藤慎太郎八段。それを広瀬章人八段が6勝2敗で追っている。斎藤八段は勝てばもちろん挑戦、負けても挑戦かプレーオフで、相当に有利な状況にある。
また降級のほうは、1勝の三浦弘行九段と2勝の稲葉陽八段がすでに決まっていた。しかし「他人の不幸は蜜の味」であって、私は名人挑戦者より降級者のほうに関心がある。今回、対局前に降級者2名が決まってしまい、興味の半分以上を削がれた感じだ。
9回戦のカードは以下の通り。

佐藤天彦九段(4勝4敗)VS斎藤慎太郎八段(7勝1敗)
豊島将之竜王(5勝3敗)VS広瀬章人八段(6勝2敗)
佐藤康光九段’(4勝4敗)VS菅井竜也八段(4勝4敗)
羽生善治九段(3勝5敗)VS三浦弘行九段(1勝7敗)
糸谷哲郎八段(4勝4敗)VS稲葉陽八段(2勝6敗)

10名の、勝った場合と負けた場合の変動順位も記そう。

①豊島将之竜王 2位~3位
②広瀬章人八段 名人挑戦~3位
③佐藤康光九段 4位~7位
④佐藤天彦九段 4位~7位
⑤羽生善治九段 6位~8位
⑥糸谷哲郎八段 4位~8位
⑦三浦弘行九段 9位~10位
⑧稲葉陽八段 9位~10位
⑨菅井竜也八段 4位~8位
⑩斎藤慎太郎八段 名人挑戦~2位

勝ちと負けとでは最大4枚の違いがある。降級が決まった2名も順位1枚の差を争うことになり、消化試合はまったくない。
無料ネット中継はABEMAがあったが、佐藤天九段-斎藤八段の中継のみだった。降級2名が決まっているから当然かもしれないが、せっかくの5局対局なのだから、同時進行で見たかったところである。
といっても、私も朝からスマホにかじりついているわけにも行かず、夜になって佐藤-斎藤戦を見た。形勢は斎藤八段がよいとのことだったが、よく分からない。よく見たら、後手だと思った斎藤八段が先手だった。
ネット掲示板も見たら、何となく緊張が弛緩している。どうも、広瀬八段が負けたようだ。
ということは斎藤八段の名人挑戦が決まったわけで、これですべてが終わってしまった。A級最終局を「将棋界の一番長い日」というけれど、今年に限ってはそうでなかった。
ちなみに佐藤-斎藤戦は深夜に斎藤八段が勝ち、名人挑戦に花を添えた。豊島竜王以下の猛者を相手に、8勝1敗は立派な成績。名人戦は好勝負になるだろう。
10名の最終成績と来期の順位は以下の通り。

①斎藤慎太郎八段(8勝1敗)(か渡辺明名人)
②豊島将之竜王(6勝3敗)
③広瀬章人八段(6勝3敗)
④糸谷哲郎八段(5勝4敗)
⑤菅井竜也八段(5勝4敗)
⑥佐藤康光九段(4勝5敗)
⑦佐藤天彦九段(4勝5敗)
⑧羽生善治九段(4勝5敗)
⑨稲葉陽八段(2勝7敗)=B級1組1位
⑩三浦弘行九段(1勝8敗)=B級1組2位

3勝だった羽生九段は三浦九段に快勝したが、下位で4勝だった糸谷八段と菅井八段がそろって勝ったため、羽生九段の来期順位は8位となった。羽生九段、来期は正念場である。
またA級順位戦予想クイズは、佐藤康九段-菅井八段戦、糸谷八段-稲葉八段戦を間違えてしまった。8回戦と合わせて、正解6、間違い4。とても懸賞に当たるどころではなく、白旗である。まったく、8回戦と9回戦を全問正解した人はいるのだろうか。いたらすごい。
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羽生七冠、46勝9敗の内訳

2021-02-27 01:50:57 | 将棋雑記
羽生善治九段が七冠を達成した1995年度の成績が「46勝9敗.836」と以前書いたが、棋戦別勝敗を記してみよう。

第53期名人戦七番勝負 森下卓八段 4勝1敗
第66期棋聖戦五番勝負 三浦弘行五段 3勝0敗
第36期王位戦七番勝負 郷田真隆五段 4勝2敗
第43期王座戦五番勝負 森雞二九段 3勝0敗
第8期竜王戦七番勝負 佐藤康光七段 4勝2敗
第45期王将戦リーグ戦 5勝1敗
同七番勝負 谷川浩司王将 4勝0敗
第21期棋王戦五番勝負 高橋道雄九段 3勝0敗
第17回オールスター勝ち抜き戦 ○●(井上慶太六段に敗れる)
第16回JT杯将棋日本シリーズ ●(2回戦・森内俊之八段)
第26期新人王戦記念対局 丸山忠久六段 ○
第45回NHK杯 5勝0敗(決勝戦の相手は中川大輔六段)
第29期早指し将棋選手権戦 5勝0敗(決勝戦の相手は南芳一九段)
第14回全日本プロ 4勝1敗(準決勝で屋敷伸之七段に敗れる)

七冠達成とNHK杯、早指し戦の優勝で、合計9回優勝。これは年度記録だと思う。
タイトル戦7つのうち、ストレート勝ちが4つ。対局を待っていた旅館(会場)には悪いが、タイトル戦が早く終わって、羽生九段には幸いなことだった。
負け数9を個別に見ていくと、タイトル戦で5局負けている。しかしたった5敗しかしていないとは、考えられない。そして、これと王将戦リーグの1敗を合わせた6敗は、実質的に実害がない。
オールスター勝ち抜き戦で井上六段に負けたときは、「羽生七冠」の3局目だったが、「羽生、負けた」とスポーツ新聞の1面に出た。この程度の出来事(失礼)が1面になるとは前代未聞で、このころは羽生フィーバーの絶頂期だった。
これとJT杯日本シリーズの負けで2敗。タイトル戦に出ずっぱりだから、これらの負けも痛くなかろう。
惜しかったのは3月11日に行われた全日本プロの準決勝・対屋敷七段戦で、終盤は羽生七冠に勝ちがあったのだが、一失で敗れた。
もしこの将棋に勝っていれば「47勝8敗.855」となり、1967年度に中原誠五段が達成した最高勝率の記録に同星で並んでいた。
羽生九段はかつて「どんなに勝つ棋士でも、年間に負ける数は同じですから」と謙遜したが、この年度を見るとそうでない。敗数1ケタは奇跡的で、まさに鬼神のごとき勝ちっぷりだった。
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第42期女流王将戦予選の勝敗予想の答え合わせ

2021-02-26 01:03:18 | 勝敗予想
第42期女流王将戦予選は24日までにすべて終わり、16名の本戦トーナメント出場者が決まった。
当ブログでは、1月14日に予選通過者の予想をしたので、その答え合わせをしてみよう。赤字が予想で、当たった場合はそのまま、間違えた場合は、枠抜けした女流棋士を青字にした。

1枠
本田小百合女流三段VS堀彩乃女流1級
礒谷真帆女流初段VS井道千尋女流二段)VS伊奈川愛菓女流初段
礒谷女流初段が本田女流三段に勝ち、うれしい本戦入りとなった。

2枠
塚田恵梨花女流初段VS千葉涼子女流四段
(カロリーナ・ステチェンスカ女流1級VS石高澄恵女流二段)VS加藤圭女流初段
千葉女流四段が加藤女流初段に勝ち、本戦入りを決めた。千葉女流四段は最近好調のようだ。

3枠
甲斐智美女流五段VS香川愛生女流三段
(北尾まどか女流二段VS上川香織女流二段)VS竹部さゆり女流四段
2回戦で甲斐-香川戦があり、これが事実上の枠抜けとなった。

4枠
矢内理絵子女流五段VS中倉宏美女流二段
(和田はな女流2級VS船戸陽子女流二段)VS鈴木環那女流三段
好調の鈴木女流三段が船戸女流二段に屈した。1局のみの予想ではないからアレだが、つくづく予想は難しい。

5枠
岩根忍女流三段VS加藤結李愛女流初段
(宮宗紫野女流二段VS藤田綾女流二段)VS加藤桃子女流三段
これは当たった。

6枠
山根ことみ女流二段VS山田久美女流四段
(相川春香女流初段VS島井咲緒里女流二段)VS清水市代女流七段
清水女流七段と山根女流二段の一騎打ちと予想し実際にその通りになったのだが、このところの山根女流二段が強すぎる。

7枠
上田初美女流四段VS渡辺弥生女流初段
(高浜愛子女流2級VS長沢千和子女流四段)VS和田あき女流初段
予想通り。

8枠
中井広恵女流六段VS中村真梨花女流三段
野原未蘭女流2級VS安食総子女流初段)VS渡部愛女流三段
予想が外れた上、渡部女流三段も初戦に負けてしまった。野原女流1級の本戦入りは見事。

9枠
里見咲紀女流初段VS室田伊緒女流二段
斎田晴子女流五段VS飯野愛女流初段)VS中村桃子女流初段
この枠は誰が抜けるか分からなかったが、斎田女流五段が3連勝で抜けたのは見事だった。ベテラン陣が抜けると、戦いが面白くなる。

10枠
山口恵梨子女流二段VS小高佐季子女流1級
(貞升南女流初段VS山口仁子梨女流2級)VS脇田菜々子女流初段
実力伯仲の枠だったが、山口女流二段がよく抜けた。

11枠
長谷川優貴女流二段VS藤井奈々女流初段
(山口絵美菜女流1級VS武富礼衣女流初段)VS水町みゆ女流初段
この枠も本当に予想が難しかった。

12枠
北村桂香女流初段VS村田智穂女流二段
中澤沙耶女流初段VS石本さくら女流二段
実力者の石本女流二段が抜けた。

以上、正解4つ。一番勝負を当てるわけではないから難しいが、6つくらいは当てたかった。
本戦は前期ベスト4の室谷由紀女流三段、里見香奈女流四冠、伊藤沙恵女流三段、頼本奈菜女流初段の4名を加えて行われる。
本命はもちろん里見女流四冠だが、最近は女流棋士全体のレベルが上がっており、里見女流四冠だって絶対ではない。
個人的には斎田女流五段に頑張ってほしいが、さてどうなるか。
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「プレバト!!」に唸る

2021-02-25 00:47:13 | プライベート
TBSテレビ木曜夜7時から放送されている「プレバト!!」は良番組だ。メインは俳句のコーナーで、毎回数人の芸能人が「今週のお題」の一句を披露し、それを俳人の夏井いつきが査定する。
芸能人は数回の「才能アリ」を経て特待生(5級)に昇格し、そこからさらに昇格を繰り返すと「名人初段」となる。この段位、私たちから見るとおかしいのだが、番組では初段になった時点で「名人」らしい。この名人は「10段」まである。これも私たちからすると、段位は算用数字でなく漢数字で書いてもらいたいのだが、まあいい。
余談だが、将棋界で「名人・十段」同時取得者は、大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、加藤一二三九段の3人しかいない。
この名人の上は★を5つ獲って「永世名人」となり、他者の句を批評できる特典を得られる。現在の獲得者は、大衆演劇の梅沢富美男だけである。
番組で芸能人が披露する俳句は玄人はだしで見事なのだが、それをいつき先生が添削すると、見違えるほどいい句になるのである。たった17文字でこれだけ世界観を表現できるとは、俳句の世界は奥が深い。ただそれだけに、1文字1文字には神経を遣う。たとえば「~へ」と「~に」でも微妙に意味合いが違い、いつき先生は最適な文字をはめ込むのだ。
と思うとなつき先生は「この2文字が要らない」と削除する。「あなた2文字があれば、いろいろなことが表現できますよ」と言う。そして新たな2文字を吹き込み、研ぎ澄まされた17文字が完成するのである。これ、将棋でいえば「3×3」の詰将棋だろうか。あるいはどうぶつしょうぎかもしれない。
私も毎日ブログを書いているので、「締まった17文字」は大いに参考になる。ブログに文字制限はないけれど、いつも書き込み後に何度も読み、ダブついた文章を削っていくのだ。
むかし、プロ野球選手のOBが、「週刊ベースボール」にコラムを書いていた。彼の場合、規定の文字数の3割以上を書いて、無駄と思える箇所を3割削り、良質の文章にしていったという。あれと似ているかもしれない。
私も研ぎ澄まされた文章を書きたいものだ。
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9回裏2死からの悲劇・安田猛投手、逝く

2021-02-24 00:22:03 | プライベート
ヤクルトスワローズの左のエースだった安田猛さんが20日、胃ガンで亡くなった。享年73歳。
安田さんは1972年、大昭和製紙からドラフト6位で入団した。
安田さんの持ち味はテンポのいい投球と抜群の制球力だった。小柄で手足もそれほど長くなかった安田さんは、サイドスローという投げ方から、「ペンギン投法」と呼ばれた。
1973年には81イニング連続無四死球という日本記録を達成した。だがこの途切れ方がある種の悲劇だった。9月9日、阪神戦に先発した安田さんは、9回2死まで阪神打線を無失点に抑えていた。この時点で81イニング連続無四死球である。だがそこから安田さんは連打を浴び、同点にされてしまう。
そこでバッターは田淵幸一である。ランナーは2塁にいるから、セオリーでは敬遠だ。果たして、三原脩監督の指示も敬遠だった。いつの世も個人の記録は、チームの勝利から見たら数字のお遊びでしかない。
安田さんももちろん指示に従ったが、これで緊張の糸が切れたのか、次打者の池田祥浩にサヨナラ3ランホームランを打たれてしまった。結果論ながら、田淵への敬遠が無意味になったのである。
実は、連続無四死球記録の始まりも、田淵の敬遠のあとからだった。最初と最後のこれがなければ、どれだけ記録が伸びていたのかと思う。

王貞治ソフトバンク球団会長は安田さんの逝去に際し、「757号を彼から打ったことを思い出しました」との談話を発表した。この一本は私もよく憶えている。王が本塁打世界新記録の756号を放った翌日だったこともあるが、この試合を私は、父、弟とともに、後楽園球場まで見に行っていたからだ。
1977年9月4日、この日は観客全員に、ご祝儀としてナボナが1個ずつプレゼントされた。
試合は巨人が小俣進、ヤクルトが梶間健一の先発で始まった。試合は9回表を終わってヤクルトが3-1でリード。裏のマウンドには、8回から登板していた安田さんがいた。
巨人は1死から河埜和正が珍しく四球で歩いた。これがケチのつきはじめだったかもしれない。
2死となって、バッターは8番の矢沢正である。矢沢は1967年、ドラフト外で入団。ポジションは捕手だったが、当時は森昌彦(現・祇晶)がレギュラーに鎮座しており、なかなか出番がなかった。1974年の森の引退で、1975年にはレギュラーを取ったが、翌1976年は吉田孝司にその座を奪われていた。
矢沢の打率はよくなかったので、私は(これで終わったな……)と思った。
だが矢沢は、安田さんから2号同点ホームランをかっ飛ばした。このときの興奮を何と表現したらいいのだろう。父も興奮していたが、「河埜を歩かせたのがマズかったな」と冷静な分析をした。
ともあれこうなれば、流れは巨人である。延長戦に入り、10回表を新浦壽夫が抑えると、その裏巨人は、先頭の柴田勲がセンター前ヒットで出塁した。次の土井正三も出塁し、ここで3番・王である。
王は前日の756号で祝杯責めに遭い、二日酔いだった。事実この試合も、8回裏1死1、2塁のチャンスで、安田さんに三振を喫していた。
安田さんは、王のような強打者を抑えることを無上の喜びとしていた。当然この場面も抑える気満々だった。
だが勝負事は分からない。初球、王は安田さんのシュートを強振すると、打球は右中間に飛び込んだ。劇的なサヨナラ3ランである。いやこれも大変な騒ぎになり、ホーム上には長嶋茂雄監督以下全選手が集まり、王を祝福した。756号を生で見られた観客は幸せだが、この試合を見られた私も、幸せだった。
以上、これが王の語る「757号」である。王のサヨナラホームランも立派だが、その陰に矢沢の同点ホームランがあったことを、忘れてはなるまい。
だが矢沢の活躍もここまでだった。翌年、早稲田大学から山倉和博が入団し、開幕戦からマスクをかぶった。矢沢の出場機会は激減し、同年オフの巨人の若返り政策により、土井、高橋善正、上田武司らとともに現役引退となった。結果的に安田さんからのホームランが、現役最後のホームランとなった。
その矢沢は現在72歳で、元気である。もし談話を取れば、王と似たようなコメントになると思う。

ここまで安田さんの暗い部分ばかり書いたが、安田さんは翌1978年に15勝を挙げ、チームをリーグ優勝と日本一に導いた。現役生活は10年と短めだったが、記憶に残る名投手だったと思う。
ご冥福をお祈りします。
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