一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

わらび将棋教室に行く(その2)・怒りがおさまらない

2013-01-31 00:09:15 | 蕨将棋教室
「▲6五銀!?」
これは初耳である。私は▲8三角の一手と思っていた。
余計なことするな、と反論したいところだが私も不勉強で、最新の定跡では▲6五銀を教えているかもしれない。とはいえここで時間を取られたら、後で「▲8三角以下▲8五桂まで」と教えてもボケてしまう。しかし盤上に▲6五銀が置かれている以上、それで指し手を進めるしかなかった。
△7二飛▲6三歩成△同銀▲6四歩△7四銀▲同銀△同飛▲6五銀△7二飛▲5四銀△6二歩…。なんだかドロドロした戦いである。私たちはMinamiちゃんそっちのけで指し手を進め、まるでFuj-一公戦になった。
再び▲1一角成の変化が出る。居飛車側は香を取られてはいけない、が私の主張するところだが、Fuj氏は平然と、馬取りに△2二銀と打つ。どうもやりにくい。
とにかく私は▲6五銀を取り除きたいのだが、Fuj氏はそれが正着と信じているようで、変化が先へ先へと進んでしまう。私は△6九飛と打つが、先ほどと違い先手に銀がないので、先手は▲5八銀が打てない。Fuj氏は(Minamiちゃんではない)は▲5八角とか▲5七金と指したが、これでは振り飛車変調ではなかろうか。
▲8五桂の変化も出たが、今度は△4九竜と切る手があり、▲同銀△7九飛成は振り飛車がおもしろくない。
これもすべて振り飛車が▲6五に銀を使ってしまっているからで、やっぱりこれは疑問手ではないか?と思うが、断定ができない。ただ、Fuj氏は居飛車党で抑え込みの棋風なので、▲6五銀のような手を好む。私は中央志向なので、馬を中央に据える手を好む、ということはあるかもしれない。
別の局面で、…△7二飛▲7三歩△同飛▲8二角△7二飛▲9一角成△6九飛。
「ここで切り合いもあるのかなあ」
とFuj氏。以下▲8一馬△6七飛成▲7二馬…と進める。Minamiちゃんに考えさせようにも、Fuj氏が指し手を進めてしまうから、私も呼応せざるを得ない。しかしこんな変化をやって、どれほどの意味があるのかと思う。先ほどまでのまったりした雰囲気は雲散霧消し、研究会のような雰囲気になっていた。
もう▲6五銀の変化はいいでしょうと、私がやっと▲8三角の局面に戻すが、盤上の△6二銀が、いつの間にか駒台に乗っている。そのまま指し手を進めたため、△7一飛▲6三歩成△同金▲7二銀△7三金▲7一銀成△8三金、の変化になった。もちろんこれも、Fuj氏の意見が入っている。しかしこの手順はないだろう。
別の変化では終盤まで進み、実戦みたいになったのもあった。
Fuj氏は途中から来たから、Minamiちゃんとのこれが中盤戦の研究と勘違いしているのであろう。
とにかくFuj氏がひっきりなしにしゃべるので、こちらも披露困憊である。私は今度こそ正確に局面を戻し、「▲8三角△7三飛▲6五角成△6九飛▲5八銀△9九飛成」を進める。と、△9九飛成のところで「そんなココセを…」とまたもFuj氏がつぶやく。私は構わず、当初の目的である▲8五桂を盤上に現したが、ここまでがいかにも長すぎた。Minamiちゃんがここまでの手順を理解できたとはとうてい思えなかった。
かえりみて不愉快なのは、Fuj氏の「空気の読めない感」である。Fuj氏が将棋に熱心で、最善手を追求しようという気持ちは分かる。またFuj氏は27日のペア将棋選手権では、Minamiちゃんと組んで出場する。「オレが教えて何故いけない?」という反論もあろう。
しかしここでの「講師」は私だった。講師はふたりもいらないのである。
逆の立場で考えてみればよい。将棋でも学校の勉強でも、Fuj氏の講義中に私が乱入し、
「ここはこの手が最善手でしょう」「ここでこう指したらどうなりますか」「ここは指し手が2つあります」「ああそっちを指しますか」「ここではこう受けますよ」「それは…あり得んでしょう」「ここで切り合いもあるのかなあ」「それはココセでしょう」
等等等等、逐一私が口出しをしたら、Fuj氏だってやりにくかろう。
このわらび教室で私がMinamiちゃんに将棋を教え、そこにFuj氏が遅れて現れる、というパターンは、この後もあり得る。そのときFuj氏がW氏やHon氏のように、黙って見ているとはとても思えない。私の指し手に呼応して、必ず何らかの指し手を言うだろう。
そのとき私はもう、用意した言葉を言うしかない。
「これはこれはFujさん。ささ、私の席に座って、あとはFujさんが講義を続けてください。私はあっちに行きますから」
と。

※帰宅後、少ない蔵書の中から木村一基八段著「急戦・四間飛車破り」を見た。すると、Fuj氏推奨の「▲6五銀(本では△4五銀)」はあったが、それは「▲6六角△3三銀」の交換がない場合。この2手が入ると「▲8三角」が書かれてあり、以下▲8五桂まで居飛車不利となっていた。
(2月3日につづく)
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1週間早かった「0624」

2013-01-30 19:30:42 | プライベート
きのうの朝刊で宝くじの当選番号を見たら、28日抽選の「第3553回・ナンバーズ4」が「0624」だった!! 配当金は346,500円。
このブログの読者ならご存知だと思うが、私はミニロトとロト6を定期的に買っていて、その番号には私の誕生日「3・18」と、角館の美女の誕生日「7・31」を絡めている。
そのとき1回分だけナンバーズ4も買っているのだが、その番号は「0318」でも「0731」でもなく、「0624」である。これはいうまでもなく中井広恵女流六段の誕生日である。
だが残念ながら、この回のナンバーズ4は購入していなかった。前回買ったのが19日(土)、すなわち21日(月)抽選分からで、わずか1週間前のこと。何かの都合で購入が1週間遅れていれば、いまごろは約34万円が手に入っていた。
ただナンバーズ4はこれ以外にもイレギュラー的に購入することがある。事実将棋合宿中にも、中井女流六段の前で1枚買ったことがある。
28日は最寄駅まで、北海道への切符を購入に行こうと考えていた。実際は行かなかったのだが、もし駅に向かっていれば宝くじ売り場の前を通ることになり、虫の知らせで購入していたかもしれないのだ。
まあ、「もし」とか「れば」の連発だから、やっぱり当たる運命ではなかったんだろうなあ…とは思うが、以前もナンバーズ4「0731」で似たようなことがあり、きのうはショックで、一日憂鬱だった。

ついでだが、「0731」を絡めたロトくじは、もう当たりそうにない気がする。実は最近、「06」「24」、それに記念すべき月日を絡めたミニロトとロト6で、最近立て続けに、末等が当たった。もちろん購入していればの話だが、何となくこれからは、「06」「24」が来そうな気がする。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

わらび将棋教室に行く(その1)・蕨初参加

2013-01-29 01:02:12 | 蕨将棋教室
25日(金)は、蕨駅前の「蕨市文化ホール内・くるる」にある「わらび将棋教室」に行った。講師は日本将棋連盟棋士の植山悦行七段。原則的に月2回の開講で、時間は午後6時から8時まで。受講料金は2,000円。基本は初心者への講習だが、有段者にも別に時間をとって指導対局をしてくれる。
教室へはすでに、ジョナ研メンバーや大野教室生徒が受講しており、今回私も初出陣となったわけである。
午後5時に仕事を終え京浜東北線に乗り、蕨駅で降りる。しかし建物の反対側に出てしまったようで、「くるる」に入ったのは6時13分だった。
3階の一隅にあるドアを開けると、狭い部屋にものすごく人がいた。その中に中井広恵女流六段の姿があり、成人男性3人に指導対局を行っていた。中井女流六段にお会いするのは久しぶりで、昨年11月の合宿以来だ。その間、メールで2度ほどやりとりしたが、お正月はあけおめメールもせず、そのままご無沙汰になっていた。
私たちは挨拶をかわす。中井女流六段は相変わらず綺麗だった。とても成人した娘さんがいるとは思えない若々しさである。中井女流六段は二言三言話したいふう?だったが、私は照れてしまってダメである。そのままほかに目を転じた。
前方では植山七段が初心者に講義を行っていた。生徒は小学生3人で、付き添いの母親が2人いた。また大野教室のスタッフW氏が、ここでもアシスタントとして甲斐甲斐しく動いていた。
ほかに生徒はHon氏。Minamiちゃんと談笑していた。Minamiちゃんは27日(日)に芝浦で「ペア将棋大会」に出場する。きょうはその最終調整で来たものか。
以上、私も含めて、総勢13人。盛況なのはなによりである。
ちょっと居場所がないので食事を摂りに出ようと思ったら、「あとでみんなで食べましょうよ」とHon氏に止められた。それを見ていた中井女流六段、「Minamiに振り飛車の指し方を教えてあげてください」と申し出てくれた。
ということで、不肖私がミニ講義を行うことになった。
Minamiちゃんは四間飛車に構えた。私はナナメ△6四銀戦法。△7五歩にMinamiちゃんが▲同歩と取ったので、
「振り飛車は攻められたところに飛車を応援するのがいいんだよ。対局中は、あなたの狙ってる手は分かってるんだから、という感じで、ビシッと▲7八飛と指しましょう」
と教える。△7六歩▲同銀△7二飛に、Minamiちゃんは少考後▲8八角。これも立派な手だが、私には最終的に目指す局面があったので、▲6五歩を推奨した。もちろんこの手も、力強い手つきで指すよう奨めた。
私は△7六飛、とおいしく銀をいただく。そこでHon氏が、「Minamiちゃん、ここでいい手があるよ」。私の背後では、W氏が黙って様子を見ている。
Minamiちゃんは少考したあと、▲2二角成~▲7六飛と指し、ニッコリ笑った。
△7六飛は後手が悪いことが分かったので、局面を戻して、△7七角成とする。以下数手進んで△7六飛と銀を取り合ったところで、また設問。桂取りをどう受けるかで、まずは▲7八歩が考えられるが、△6六飛と寄られておもしろくない。
Minamiちゃんはしばらく考えていたが、解答が見つけ出せなかったようなので、▲6七金を教える。振り飛車の左金は5八~4七と使いたいところだが、▲6七金とこちらに上がる手を覚えれば、グンと指し手の幅が拡がる。のちの△6九飛が気になるが、「そこはノータイムで▲5八銀と打ってください」と教えた。「こういう時はね、振り飛車側はたいてい銀を持っているもんなんだよ」。
△7四飛にMinamiちゃんは▲7五歩。私は△同飛と取ってみたが、▲6六角があった。以下△7一飛▲1一角成は後手悪い。
玉の近くに馬を作られる脅威を感じてもらうため、私はここで盤面を逆にした。玉が左に動けず、Minamiちゃんもビビったふうだった。
ただ、▲7五歩は△6四飛で振り飛車がおもしろくない感じである。私は▲7五歩を戻す。
「飛車はさ、どこのマス目にいても16コの利きがあるんだよ。だけど角はね、16利くマスは5五の地点しかないの」
そう言って私は、駒の利きを数えて行く。「でさ、いまは△5四歩があるから5五に角が打てないでしょ。だからそれに近い場所に角を打ちたいんだよね。どこに打ちますか?」
Minamiちゃんはしばらく考え、▲6五角のあと▲6六角を発見した。私はまたも▲1一角成の変化をやる。この香が取られると居飛車が悪い、を覚えてもらうためである。
私はやむを得ない、という感じで△3三銀と打つ。
と、ここで背後が騒がしくなった。Fuj氏が来たようだ。ちょっとイヤな予感がする。
「ここで持ち駒を使って、飛車をいじめてみようよ」
「ふたつ指し手があるけどね」
私の言葉に、Fuj氏が重ねる。すごくイヤな予感がした。少しずつ、私のペースが乱されている気がする。
Minamiちゃんから答えが出なかったので、私は▲8三角を教える。以下△7三飛▲6五角成△6九飛▲5八銀△9九飛成▲8五桂! までが私の教えたい局面だった。
そこでFuj氏が異を唱えた。
「ここは(▲8三角ではなく)▲6五銀でしょう」
Fuj氏がバチッと指す。グッ…勝手に指すのはやめてくれねえか!?
いままでまったりと教えていたのに、ちょっと空気が変わった。そしてこれが、とんでもない展開になるのである。
(31日につづく)
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

三十九たび大野教室に行く(その4)・プロ棋士ふたりによる生解説

2013-01-28 01:09:35 | 大野教室
(再掲)
上手(角落ち)・一公:1一香、1五歩、2一桂、2五歩、3三歩、4三銀、4四歩、5一玉、5三銀、5四歩、6三金、6四歩、7三桂、7四歩、8二飛、8三金、9一香、9四歩 持駒:歩
下手・Honma君:1七歩、1九香、2七歩、2九桂、3六歩、3七銀、3八金、3九玉、4六歩、4七金、5六銀、5七歩、6六角、7六歩、7七桂、8五飛、9六歩、9九香 持駒:歩2
(△7三桂まで)

ここでHonma君は▲8八飛と引いた。私はホッとして△8四歩と収める。以下▲3五歩△6五歩▲同桂△同桂▲同銀△5五桂▲5六銀△4七桂成と進んだが、これは上手十分に思えた。
▲8八飛では▲2五飛を恐れていた。△2二歩の一手だが、▲8四歩が痛打。△同金▲同角△同飛▲2二飛成は下手優勢だし、▲8四同角のときに△3四銀と出ても、▲2六飛でもいいが、▲8五飛と生還されていけない(△同桂は玉を素抜かれる)。
よって▲8四歩には△9三金とよろけるしかないが、▲9五歩△同歩▲9四歩△9二金(△同金は▲8三歩成)▲8三歩成△同金▲8四歩△9四金▲8三歩成で、下手が優勢だった。
本譜△4七桂成にHonma君は▲同銀と取りかけたが、それは△6七金と角を殺して上手優勢。Honma君は▲4七同金だが、こう耐えられてみると上手は歩切れで、自慢できる形勢ではないのに驚いた。
Honma君は▲4五歩△同歩▲3六桂�・▲4四歩と反撃に出るが、これが存外厳しかった。以下あれよあれよという間に下手が勝勢になった。
ふだんなら投了してもおかしくないが、記念すべき第1回の「大野教室杯」だから、簡単に投げるわけにはいかない。私は△2三角と泣きの角を打ち、玉を右辺に逃げ、ひたすら耐え忍んだ。
Honma君は▲6四歩と金頭に叩くが、これがどうだったか。私は△5三金とよろけつつ敵金を取り、▲同と△同飛▲4四金の飛車銀両取りに、△4五の銀で▲4六の飛車を取った。
Honma君は▲5三金とし、これで上手の△7二玉はほぼ受けなしだが、私は△3八金!▲同玉△4七銀成▲同玉△5七歩成▲同玉△6七飛と進める。ここにきて△2三角が利いてきた。まだ金銀があるから、これで詰んでいる。Honmaがここで投了し、私の優勝が決まった。
しかし喜びも半分だった。最初に周りが言うとおり飛車落ちで指し、それで負けたとしてもHonma君のもとにプロ棋士扇子が行き、いい思い出になったのではと思えば、ちょっと本気を出し過ぎちゃったな…と、反省するところもあった。

食事会は、クルマで少し走ったところにある、「ガスト」へ。参加者は大野八一雄七段、植山悦行七段、W氏、Hon氏、Fuj氏、私。
6人分の喫煙席がなく、禁煙席で時間をつぶしてから、移動した。ヘビースモーカーは片時もタバコを手放せないらしい。
各自が食事を終えると、大野七段らがスマホを取り出した。大野七段もスマホを新調したらしい。見るは女流最強戦・中井広恵女流六段VS山口恵梨子女流初段の一戦である。
戦型は恵梨子女流初段の中飛車。中井女流六段は船囲いで応じ、△6八角と飛車取りに打っていた。しかし振り飛車側が軽く捌いているように見える。周りはもちろん中井女流六段の応援だし私も追随するしかないが、どこかで恵梨子初段に頑張ってもらいたい気持ちがある。
植山七段もスマホを眺めていたが、Hon氏の布盤を拡げ、直に並べ始めた。
最近は大野・植山両七段との交流が多すぎてあまり感激もないのだが、目の前の光景を改めて見ると、自分はなんて恵まれているのかと思う。プロ棋士の解説を生で、無料で聴けるのである。
ちなみにあちらの解説は伊藤真吾四段だが、解説というより「怪説」で、こちらの予想とことごとく違っていた。
将棋は恵梨子女流初段が優勢に見える。こちらのふたりはのびのびと解説しているがなかなか辛辣で、中井女流六段との今後の交流を円滑に進めるためにも、その内容をつまびらかにするわけにはいかない。
将棋はごちゃごちゃ進んで、恵梨子女流初段が勝勢になった。やっぱり、このまま押し切ってくれ、と思う。百戦錬磨の大豪と可憐な新鋭。43歳の人妻と21歳の女子大生では、後者を応援するのも無理からぬところである。
ふと見ると、周りも「ここまで来たんだから、エリコ、勝て」の雰囲気になっていた。
ところが恵梨子女流初段は秒読みに追われ、▲3六桂の王手だが、これが痛恨。△3五玉で、中井玉が安全になってしまった。
以下は完全に流れが変わり、中井女流六段の勝勢となった。恵梨子女流初段は投げ切れずに指すが、見るのもつらい形勢だ。
中井女流六段、170手目△3八馬。これで恵梨子女流初段が投了した。
感想戦が終わりしばらく経つと、植山七段のもとに、中井女流六段から電話がきた。いまの将棋の内容を問うてきたのだ。
植山七段は忌憚のない意見を述べる。それは夫婦というより、将棋の真理を極めんとする、勝負師同士の会話に見えた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

三十九たび大野教室に行く(その3)・往生際が悪すぎる

2013-01-27 00:06:30 | 大野教室
「第1回大野教室杯ミニトーナメント」の1回戦は、Hon-Fuj戦はFuj氏が勝った。Ha-Ma戦はMa君勝ち、が大方の予想だったと思うが、Ha氏が堂々の勝利となった。Ha氏は近年メキメキと力をつけており、大野教室一の成長株である。
この結果、私はFuj氏と対局することになった。Fuj氏は私との対局では闘志を燃やすらしく、Hon氏戦は並々ならぬ決意で臨んだらしい。
Fuj氏との対戦成績は私の10勝13敗。この数字が分かるのは、彼が対局のたび、逐一私につぶやくからである。一時期は「ダブルスコア」で私が負け越していたから、かなり追いついた形だ。まあこちらは、あと7回は負けられるというわけである。
Fuj氏の先手で、▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩。Fuj氏は最近振り飛車を勉強しているというから、てっきりそれでくると思ったら、次に▲6八銀と上がられ、ズッコケた。これでは矢倉志向ではないか。
Fuj氏は大の矢倉党で、初期のころはこの手順で相矢倉に導かれ、何度も苦杯を喫したものだった。
しかしいまさらこちらが飛車を振るわけにもいかない。しぶしぶながら矢倉に追随した。
▲3五歩△同歩▲同角。私は△4五歩だが、▲6八角に△5三銀はしくじった。Fuj氏にすかさず▲4六歩と突かれ、こちらの盛大な作戦負けである。△5三銀では△4四銀を急ぐべきだった。
▲4六歩以下は、△同歩▲同銀に△4四歩。本当にもう、泣きたくなった。
以下数手進んで、私は△4五歩と銀取りに突く。もし▲同銀なら△3三桂と跳ねて▲2五飛との両取りである。
しかしFuj氏は決然と▲4五同銀。予定の△3三桂に、▲2三飛成(と銀を取る)△同金▲3四銀打と、Fuj氏の猛攻が始まった。
矢倉はなんだかんだ言っても、攻めている側が有利である。私はひたすら受けまくるが、どうも旗色が悪い。しかしFuj氏に攻め急ぎがあり、私がやや指せる形勢になっていた。
Fuj氏は時間もなく、指し手が単調になっている。こちらはそれが付け目だ。Fuj氏は飛車を入手したが、指し切り模様になってきた。
私は間隙をぬって反撃する。これが急所を衝いたようで、徐々に形勢が開いてきた。さらに私は、Fuj玉を受けなしに追い込む。さすがにこれは勝ったと思った局面が下である。

先手・Fuj氏:1七歩、1九香、2一飛、4四歩、5六歩、6六歩、7二金、7六歩、8六銀、8七歩、8九桂、9一竜、9六歩、9八玉、9九香 持駒:角2、桂、歩
後手・一公:1一香、1三歩、2三歩、3二歩、3四玉、4二銀、5三銀、5四歩、6三歩、6七金、7三歩、7八金、8八銀、9三歩 持駒:金、桂2、香、歩3

▲9六歩に△8八銀まで。典型的な必至で、これでふつうは投了である。ところがFuj氏は秒読みの末、▲1六角と王手してきた。
私は△3五玉だが、Fuj氏は持駒をすべて打ち尽くし、文字通り指す手がなくなり投了した。
私は開口一番、「Fujさん、往生際が悪すぎるよ」と不満を露わにする。植山悦行七段が背後でゲラゲラ笑った。
終盤敗勢のとき、一縷の望みを持って指し継ぐ手を、ジョナ研用語で「Fuj」という。しかしこれは「一縷の望み」がある場合であって、今回のように自玉は完全必至、相手玉も不詰めの場合での指し手は、ただ投了を拒否するだけの、見苦しい手にしかならない。
Fuj氏に真意を問うと、「△7八金を何とか抜くことはできないかと思った。▲4六歩のところでは作戦勝ちで、一公さんが投了するのかと思った。そのくらいいい将棋を逆転されて、投げるに投げ切れなかった」という意味のことを言った。
その気持ちは分からぬではないが、これでは私が先日述べた、「女流棋士の投了が遅い」理由となんら変わらないではないか。
私は各人の将棋に心の中で格づけをしている。それは棋力云々でなく、指し手の「質」みたいなものだ。今回の出来事で、Fuj氏の格がワンランク下がったことは否めない。そしてそれは、容易に戻らぬものである。Fuj氏はK区の現役名人である。名人なら、こんな意味のない手は指してもらいたくなかった。
なお▲1六角では、どうせ指すなら▲2三飛成△同玉▲2一竜だった。これでも全然詰まないが、多少はヒヤッとしただろう。
Ha-Honma戦はHa氏の角落ちで、これはHonma君が勝っていた。これで私とHonma君の決勝戦になった。手合いは私の飛車落ち、という声が上がったが、私はHonma君に平手で負けたことがあった気もする。よく考えればなかったが、そのくらい毎回、接戦だということだ。それで飛車落ちはこちらも拒絶したが、まわりは飛車落ちを譲らない。
そのとき、当のHonma君が「角落ちでいいです」と主張し、めでたく「角」での対局となった。
Honma君の四間飛車に私は金銀を盛り上げる。しかし私が△2四歩~△2五歩と伸ばしたのが疑問で、△2二飛と回ったものの▲3七銀と歩交換を拒否され、△8二飛と振り戻すようではさえなかった。
Honma君は▲8五歩△同歩▲同飛。△8四歩は▲2五飛で飛車成りが受からないから、私は目をつぶって△7三桂と跳ぶ。

上手(角落ち)・一公:1一香、1五歩、2一桂、2五歩、3三歩、4三銀、4四歩、5一玉、5三銀、5四歩、6三金、6四歩、7三桂、7四歩、8二飛、8三金、9一香、9四歩 持駒:歩
下手・Honma君:1七歩、1九香、2七歩、2九桂、3六歩、3七銀、3八金、3九玉、4六歩、4七金、5六銀、5七歩、6六角、7六歩、7七桂、8五飛、9六歩、9九香 持駒:歩2

Honma君はここで考慮に入った。それでも▲2五飛と回れるか?
(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする