一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

十七たび大野教室に行く(後編)・初めての中井広恵

2012-01-31 00:11:04 | 大野教室
彼女は一度どこかで拝見したことがあるが、顔立ちがお父さんそっくりで、吹き出したものだった。しかしいまはすっかりおとなびて、安室奈美恵風の美人に変貌していた。これだから女性は恐ろしい。
食事会は、大野八一雄七段、植山悦行七段、W氏、Kun氏、Hon氏、Fuj氏、Mizumoちゃん、Kokoroちゃん、Minamiちゃん、私と総勢10名の参加となった。
近くの中華料理店に入る。私はHon氏と語り合いたかったのだが、喫煙組と非喫煙組に分かれたため、私はまたも女子高生のテーブルに割り振られてしまった。これは本当に緊張する。では席の配置を記そう。

※非喫煙組
     壁
Minami Mizumo Kokoro

大野  一公  Fuj

※喫煙組
W 植山
      壁
Kun Hon
(Kun氏は非喫煙)

私の目の前に3人の女子がいる。繰り返すが、これで緊張するなというほうが無理だ。お互い黙っているのもおかしいから学園生活のことなんか聞いたりするのだが、あまり突っ込んでも嫌われそうで、その辺のサジ加減がむずかしい。
「オレの高校時代はサ、男子4に女子1の比率だったから、男子クラスと共学クラスがあってさ、新学年のクラス分けは、たいへんなことだったんだよ。オレは1年と2年のときは男子クラスになってさ、3年は…」
結局自分の高校時代のことなんか話して、自虐的な気分に陥るのだった。
食事も終わり、ガストに場所を変えて、雑談を楽しむことになった。
「Honちゃーん、語り合おうよ!」
2台のクルマで移動するが、私はHonカーに向かう。と、3人娘もついてきた。そしてKokoroちゃんが私に、
「(ピーーーーーーー)られたんですか?」
と問うてきた。
「な、なんで知ってんだよ」
お父さんかお母さんに吹き込まれたのだろうか。しかしKokoroちゃん、カサブタを剥がすようなことをよく訊くよなあと思う。
Honカーには、私と3人娘が乗車した。みんなには内緒だぞと、私は例の件をダイジェストで話す。それをHon氏がゲラゲラ笑いながら聞いている。3人娘も大爆笑だったから、まあこれでよかったのだろう。
Kun氏が帰宅したので、ガストには9人の参加となった。ここでの席の配置は、以下に落ち着いた。

      壁
Mizumo Miami Kokoro 植山 Hon

 Fuj   大野  W 一公

みんな基本的にはデザートを注文したが、植山七段とW氏はパスタを注文した。
もう午後8時を過ぎていたので、ケータイで、中井広恵女流六段と貞升南女流1級の女流最強戦を観戦する。私ももちろんスマホを出した。
女流最強戦観戦はいまの時期の風物詩で、とくにHon氏が楽しみにしている。今回は出さなかったが、いつもは将棋盤と駒を取り出し、その局面を並べながら、大野七段と植山七段の生解説を拝聴するわけだ。これは将棋ファンにとって最高の贅沢であろう。ちなみに私は、「同時進行解説」初体験だった。
将棋は、貞升女流1級が超急戦を仕掛けていた。持久戦なら中井女流六段に一日の長があるが、こうしたケンカ将棋は殺るか殺られるかだから、中井女流六段も注意を要する。大野、植山両七段の形勢判断も微妙に揺れ動いていた。
しかし結果は中井女流六段の勝ち。観戦者の心配は杞憂で、本人は冷静に対処していたようだ。
KokoroちゃんとMinamiちゃんが「どいて」と言って、植山七段と席を代わった。Kokoroちゃんが私を見てニコリと笑う。車内での続きを聞かせてほしい、という顔だ。
将来のAKB48に所望されては、私も拒否するわけにいかない。私も覚悟を決めて、とっておきの身の上話を、「初手」から話す。
いささかテーマが重たいが、これはもう何十回も話しているから、話のツボは心得ている。相手が誰でも、一公ワールドに引き込む自信がある。時折り自虐ネタを交えて面白おかしく話すと、彼女らも興味深く聞いていた。
「40ウン歳が16歳の女子高生に熱く語る図」
と言って、大野七段がその様子を写メに撮った。
話が一段落したころ、中井女流六段が訪れたのでビックリした。先ほどからW氏がいなかったが、中井女流六段を駅まで迎えに行っていたらしい。
先ほどまで東京・将棋会館で熱闘を演じていた対局者が、いまこの席にいる。キツネにつままれたようだ。いやそもそも、ここに大野・植山両七段がいるのもスゴイことで、自分がこの席にいるのが信じられない。これも元はといえばLPSAが設立されたからで、LPSAにはどう感謝していいか分からない。
中井女流六段に新年の挨拶をする。中井女流六段からは、元日の年賀メールはいただいたが、大野教室新年会は私が欠席したので、お会いするのは昨年12月の焼肉パーティー以来となる。
今夜の中井女流六段もキラキラ輝いていて、まともに見られなかった。しばらく拝見しない間に中井女流六段、また綺麗になった。
中井広恵、ジョナ研、大野教室。この3つがなかったら、いまの私はなかったが、中でも中井女流六段には、本当にお世話になった。私は堕落した人間なので、いまは何もできないけれど、自分のできる範囲で、恩返しをしていこうと思っている。
ここでも大いに盛り上がったが、その内容を書いても仕方あるまい。11時45分に散会。今夜も楽しいひとときだった。
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十七たび大野教室に行く(中編)・負けが込む

2012-01-30 00:04:38 | 大野教室
ここでAkiちゃんは▲2八飛と引いた。何とも気合の悪い一手で、これでは女流棋士になれない。これはいよいよ、横歩を取れないオンナに負けられなくなった。
私は△8六歩から飛車先の歩を交換する。するとAkiちゃんは▲6六歩と、角交換も避けてきた。これまた気合が悪い。こちらの闘志が空回りして、なんだかガックリしてしまう。
私は△7二銀から棒銀に出、8六で銀交換を果たす。△8六同飛に▲8七歩では△7六飛が気になるのでAkiちゃんは▲8七銀だが、これでは先手が苦しい。
しかし数手進んで、私が△5八銀とカケたのが悪手だった。▲6八金引に△4七銀成だが、これは1歩得でも成銀がソッポで、大損した。
私の△2二歩に、Akiちゃんは▲2四歩(打)~▲3四銀(打)~▲2三金(▲2三歩成だったか?)の重たい攻め。しかしこれが存外厳しく、以下も的確な攻めで、最後は寄せ切られた。
どうもおもしろくない。将棋はどんなに作戦勝ちになっても、最後に負けたらダメである。Akiちゃんの序盤の指し手を指摘する私の声には、力がなかった。
続いては、His氏とHanaちゃんの対局が組まれそうだったが、結局は私とHanaちゃんとの対局になった。
Hanaちゃんとは、大野教室では2局目。昨年の初顔合わせでは、Hanaちゃんのゴキゲン中飛車に攻め切られた。本局、先後どちらでもよかったが、Hanaちゃんは後手を所望する。Hanaちゃんはゴキゲン中飛車が得意なので、後手番が指し易いのだろう。
Hanaちゃんは攻めッ気100%。今回もバンバン攻めてくる。必然的に私は受けに回るのだが、それは苦にならない。
本局は、Hanaちゃんの攻めを指し切らせたと思ったのだが、巧妙に攻めをつながれる。
傍らでは、Kun氏対Fuj氏・Minamiちゃんペアが熱局を展開していた。Fuj氏とMinamiちゃんは、29日(日)に行われる「LPSAペア将棋選手権」に、プレーヤーとして参加する。これはその練習なのだった。ふたりとも、ガンバッテください。
それはいいが、こちらはいよいよ苦しい。Hanaちゃんは△6五角と金を取ったが、これが頭金の詰みと▲2一竜の取りを見せた必殺手。ここで私は投了した。
Hanaちゃんは本当に強くなった。ただ、ゴキゲン中飛車一本槍で、戦法のレパートリーが少ない。攻めも一本調子で、幅がない。いまは元気だけで指しているが、もし女流棋士を目指すなら、これからは別の勉強法も必要だろう。
これできょうの対局は終了。指導対局1勝1敗はいいとして、一般対局0勝4敗はいただけない。本調子なら4勝0敗だったが、それを言っても負け惜しみにしかならない。将棋は勝たなければダメなのだ。
食事会に出たいところだが、ゲストがまだだ。その前に部屋のパソコンで、先日行われた女流名人位戦予選をみんなで鑑賞する。
まずは高群佐知子女流三段対中倉彰子女流初段の一戦から。これが凄まじい泥仕合だった。好局なのか凡局なのか分からぬが、もし公開対局だったら、手に汗は握っていただろう。
終局図も、あっと驚く形。男性棋戦では、まず現れないだろう。こうした将棋が世に出ないのは、まことに惜しい。
続いて中倉宏美女流二段対相川春香女流3級の一戦を見る。序盤、宏美女流二段が▲5七銀左の爽快手を指して、みんなを驚かせた。宏美女流二段の熱意が窺える、いい将棋だった。
ついでに大庭美樹女流初段対伊奈川愛菓女流1級の一戦も見る。美樹女流初段が、「らしい」指し回しで、制勝した。
Fuj氏によると、LPSA陣9人の女流名人位戦予選1回戦は、5勝4敗だったという。LPSA勢の今後の活躍が楽しみだ。
そろそろ食事会の時間である。そこへ、Mizumoちゃん(高3)が来た。お待ちかねのゲストの登場だ。
(つづく)
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十七たび大野教室に行く(前編)・植山悦行、ボヤく

2012-01-29 03:28:06 | 大野教室
22日(日)は、前日からの雨も上がり、私はまたも「大野教室」に行った。きょう(22日)は午後1時35分ごろお邪魔した。
部屋に入ると、W氏、His氏、Fuj氏、Akiちゃん、Hanaちゃん、さらに少年3人がおり、大入り満員だった。この奥の部屋にもヒトがいるはずだ。W氏に促され奥に向かうと、植山悦行七段、Hon氏、Sai氏、さらにKokoroちゃん、Minamiちゃんもいた。生徒は私も含め大人6人、子供7人。これはたいへんな数字である。
昨年秋の大野食事会で、増える生徒を前に、何か対策が必要だと真剣に話し合ったことがあったが、これはその危惧が現実のものになりつつある。
大野八一雄七段に早速詰将棋のプリントをもらったあと、植山七段に新年の挨拶をし、きょうは植山七段から指導対局をお願いする。Hon氏の左に座り、Hon氏にも新年の挨拶をして、角落ちで対局開始。
きのうは腰が入った将棋が指せず、3局ともボロ負けだったので、本局は負けても丁寧に指すことを心掛けた。
相居飛車の出だしで、植山七段に中央を厚くされ作戦負けに陥るが、私は耐える。端に角を出て、△9五歩▲同歩△同香▲9六歩△同香▲7五角(と金を取る)△同飛▲9六香と進行したが、この取り引きは二枚換えでも、下手が悪かった。
部屋の端では、Minamiちゃんが学校の自習をしている。Minamiちゃんは天真爛漫で、学校の勉強というせせこましいことは似合わないのだが、若いうちはちょっと勉強を頑張ってみるのも悪くはないと思う。
Kokoroちゃんは本を読んでいるが、どこか所在なげだ。こうした場では女子を退屈させたくないが、私がちょっかいを出すとアブナイ光景になるので、何も言えない。
△8六歩▲9九香△9七歩▲8六歩△7四角。これは▲4七銀と▲9六香の両取りで厳しいが、私は▲3七飛と浮いて銀を守る。
△9六角▲9七香△6三角▲6四金。苦しいが、この金が打てて持ち直したと思った。
△4一角▲7四歩△同角▲同金△同飛▲7五歩△同飛。私は角を取り返して、▲7五歩とひとつ呼んでおく。そして次の手が小味な一手だった。
▲2二歩。これを△同玉なら4二の金が浮くので、▲6四角の飛車金両取りで下手勝ち。よって植山七段は△7七香から暴れてきたが、私は丁寧に受けたあと、▲2一歩成~▲3一角。ここで植山七段の投了となった。
すかさず植山七段がボヤく。
「これはこっちが良かったでしょう。二枚換えでも角が入ったもんね。やっぱり(私が)攻めると駄目なんだな。だって大沢さん投げないんだもん。いつもなら『こんな将棋やってられるか』って投了するでしょう? なんでボクのときは粘るかなあ。
△9七歩が悪かったな。いや△7四角で△2七角がいいのは分かってたんですよ。▲3九飛に△5四角成は馬が厚いもんね。△7四角と打ったけど飛車浮かれてねえ。香は取ったけど、▲9七香に△6三角はこれ、馬じゃなくて角だもんねえ。あまり得してないよねえ。
だから私攻めたくないんですよ。いや大沢さん投げないんだもんなあ」
下手が投げないからって上手がボヤくとはアベコベだが、そこが植山七段の「味」である。
ともあれ新年の初勝利が植山七段からとはめでたい。とてもうれしかった。
ここで3時休みに入る。と、Kun氏が見えた。これで役者が揃った感じである。この時間からでは3,500円の「費用対効果」が薄いが、遅い時間に来れば来るほど、教室への熱意があるという証左でもある。
室内に備えられているパソコンで、きょう午前10時から行われた、天河戦・蛸島彰子女流五段対鎌村ちひろ女子アマ王位の結果を確認する。蛸島女流五段の快勝だった。
蛸島女流五段の将棋は安定している。不断の努力が実を結んでいる感じだ。腕に歳は取らせない、というところだろう。
続いて現在対局中の里見香奈女流名人対清水市代女流六段の女流名人位戦第2局を見る。▲5五香まで。どちらが勝っているか分からない、難解な局面だ。
頭が混乱したので、詰将棋に目を落とす。しかし相変わらず分からない。まだ私の頭は本調子ではない。
3時休みが終わり、続いて大野七段と角落ち戦。植山七段との角落ち戦は5勝11敗なのに、大野七段とはここまで4勝27敗。飛車落ちに変えてもらいたいところだが、それでは植山七段の立場がなくなってしまう。
本局は矢倉を目指した。しかし入城をする前に、大野七段に△5五歩▲同歩△5二飛と、中央から動かれた。私は▲5八飛と対抗するが、玉が6九なので、チャンバラはしたくないところだ。▲3五に角がいるので、△5五飛と決戦に来られたらイヤだったが、大野七段は△5五銀。私は▲5六歩と収めてホッとした。
数手後、△5五歩▲6五歩△同銀▲5五歩と進む。さらに△3四銀▲4六角に、大野七段は歩損を覚悟の銀交換から、ガッチャンと△4五銀打。▲同銀△同銀▲6八角に△5六銀打。なんだか上手だけが指し手を進めた感じで、瞬く間に攻め潰された。上手の剛力、恐るべし。
感想戦では、△3四銀に▲4六角と引いたのが悪手とされた。私は▲5五の歩にヒモをつけるのと、2八へ引く手を見て4六に引いたのだが、却ってアタリがキツくなった。このあたりはちょっと考えれば6八に引きそうなものだが、どうも読みが甘い。
これで大野七段には4勝28敗。勝率.125は目を覆いたくなる惨状だ。
続いてHis氏と一局。先日の大野教室新年会にも参加したHis氏、今年も精力的に活動している。
私の先手で▲7六歩に△3二飛。研究家のHis氏、相変わらず将棋が若い。
▲2六歩△4二銀▲2五歩△3四歩に、私は気合で▲2四歩。△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△3三角▲2八飛△2六歩▲7七桂…と進む。
中盤になり、飛車交換から私が先に香得して指し易くなったと思ったが、▲2一飛▲4九金▲5七歩▲6八玉、△2六銀△3三桂△4六角……の局面で、△4五桂ハネに▲5八香と受けたのがだらしのない一手だった。すかさず△3七銀成と切り込まれ、数手後、私は戦意喪失で投了した。
▲5八香では▲4八金と立つか、強く▲2六飛成とするのだった。
続いて初めて見る美少年との対局。少年の先手で、彼の角交換振り飛車となった。私は△3二玉△3三桂△4三金△5二金△5三銀の変則的な構え。
▲6八銀▲7七歩▲8六歩▲8八飛▲8九桂、△6九角△7五銀△7八歩……の局面で、少年が▲7六歩△同銀▲7七歩と銀を殺したが、私の△8七銀成が妙手。▲同飛△7九歩成▲8八飛△8九と▲同飛△7八角成▲5六角△6八馬で後手優勢となった。
しかし▲3五歩△同歩▲3四歩△3六桂▲同銀△同歩に▲3五桂の打ち返しが厳しかった。以下は少年の猛追に逆転負けした。
戻って、▲3五歩には△5五歩と突き、角の動向を聞くのだった。少年は▲8八飛と浮く、と言ったが、それはこちらが勝つ。▲6五角と出た方がむずかしいが、いずれにしても、ここは△5五歩の一手だった。
続いてはAkiちゃんとの一戦である。2012年・女子との初対局、これは負けるわけにはいかない。
Akiちゃんの先手で▲7六歩。△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩。ここでAkiちゃんの次の一手が意外だった。
(つづく)
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旅の第一印象と、藤森奈津子女流四段の笑顔

2012-01-28 02:46:29 | 将棋雑記
旅先の第一印象というのは大事で、それがすこぶるいい印象だと、また次も訪れたくなる。その「いい印象」とは例えば、思わず息を飲む絶景でもいいし、あるいはユースホステルで出会った絶世の美女でもいい。
学生時代に山陰地方を旅行したときのことだ。私はお城巡りが好きで、というか、高い所から下界を見下ろすのが好きで、それが天守閣からでも城跡からでもいいのだが、そのときは米子城跡に登った。
たぶん、城跡に続く階段が本当はあったのだと思う。しかし私は、山の裏道から城跡に登って行った。
しかし、行けども行けども頂上らしきものが見えない。いい加減疲れてきたところで突然、私の眼前に、パアーッ…と、視界が開いた。
そこから見渡す米子市の、広大な景色!! 心の準備を全然していなかったから、いきなりの場面転換に私は、目の前に現れた絶景に、ただただ息を飲むばかりだった。
数メートル先に、高校生と思しきカップルが肩を寄せ合って、暮れゆく秋空を眺めていたのが印象に残った。
これで私の頭には、「米子城跡=絶景」というイメージがインプットされたのだが、数年後にもう一度訪れたときは、私の期待が大きすぎたためか、それほどの感激はなかった。それでも、いまでも米子城跡は、いい印象として残っている。
宿もまた然りだ。なんてことのないユースホステルに泊まる。ところが夕食後のミーティングのときに、かわいい女の子と意気投合して、話が弾んだりする。すると、この宿はもちろん、観光地までもが、いい印象として残るのだ。
この地も2度目に訪れたときは期待外れに終わったのだが、それでも最初のいい印象が崩れることはなかった。

私が初めて「LPSA金曜サロン」に訪れたときもそうだった。これは2008年3月14日で、この日の担当は藤森奈津子女流四段(当時女流三段)だった。
私はそれまで将棋道場に行ったことはあるが、プロ棋士の指導目当てで訪れたのはこれが初めて。当然、ものすごい緊張だった。しかも藤森女流四段は、永遠のアイドル棋士である。これは誇張でも何でもなく、芸能人に生で会える、くらいの感覚だった。
入室すると、スタッフのSa氏が受付をしており、その奥で藤森女流四段が4面指しの指導対局を行っていた。
それまで(女流)棋士には、雑誌やテレビでしか会えないと思っていたから、こんな間近に女流棋士がいることが信じられなかった。
ひとり空きが出て、私は席に座る。藤森女流四段には角落ちでお願いした。
私は緊張の極みだったが、藤森女流四段は、軽口を交えて指し手を進めてくれた。それで私も緊張を解き、わりあい正確に、指し手を進められたと思う。
それでもそこはプロで、藤森女流四段の上手らしい指し回しに、私は非勢に陥っていた。
しかしそこから、わざとなのか自然なのか、藤森女流四段が指し手を緩めてくれ、私は何とか幸いすることができた。
投了を告げるときの、藤森女流四段の天使のような笑顔は、いまでも忘れない。
このとき私は、金曜サロンに対して「いい印象」を持った。そして来週も金曜サロンにお邪魔しよう、と誓ったのだった。
もしあのとき、藤森女流四段がしかめっ面で指導対局を行い、私をコテンパンに負かしていたらどうだったか。私はプロの指導に恐れをなし、金曜サロンは終わりにしていたかもしれない。
こう考えると、あの日藤森女流四段が担当だったことはかなり運命的で、天の配剤だったとも思えるのだ。
現在の私は、物理的な距離もあり、LPSA芝浦サロンから足が遠のいている。藤森女流四段にも久しく指導対局を受けていない。
でも、藤森女流四段の温かい指導対局と太陽のような笑顔は、いまも健在である。また機会を見つけて、あのときのように教えていただこうと思っている。
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十六たび大野教室に行く(後編)・今年もよろしくお願いします

2012-01-27 00:05:02 | 大野教室
大野八一雄七段は、まだむずかしいでしょう、と言ってくれたが、こちらの指し手はマイナスの手しか残っていない。これ以上指してもストレスがたまって、また頭の毛が抜けるだけだ。ここら辺が投げ時である。
感想戦では、▲5六歩のところで▲7九角とするのがいい、と自ら主張した。上手は金が動けないから△5二飛とでもするのだろうが、そこで▲3五角と覗けば、上手は次の角成りが受けづらい。当然、こう指すのだった。
ここでいつもなら一般対局に移るのだが、きょうは生徒が少ないので、再び大野七段に教えを乞う。
この将棋も、上手が5筋で歩交換をしてくる。前局の例があるから、今度は私も角を引いたのだが、これが似て非なる局面で、今度はうまくいかなかった。
私は角金交換から徐々に駒損を重ね、最後は手堅く受けられて投了した。初戦で負けるとそのショックを引きずり、2局目は無残な結果に終わる、というのはいつものパターンだが、今回はそれが顕著に出てしまった。
ここで午後4時50分。もう上がってもいいのだが、大野七段が、もう1局行きましょう、と誘ってくださる。
畏れ多いのでいったんは断ったのだが、ここはお言葉に甘えるのがスジである。やっぱりお願いします、と私は盤の前に座った。
言うまでもないが、これでも指導料金は変わらない。だからといって「おかわり料金」が発生しても困るのだが、申し訳ない気持ちではある。
ところがこの3局目が、前2局に輪をかけてヒドイ将棋で、大野七段の猛烈な攻めに、私は手損を重ねて撤退する一方。最後は6筋からの攻めが受からなくなり、私は投了を余儀なくされた。
手数は40手ぐらいではなかったか。もう終わったの? とW氏は呆れたが、返す言葉がない。
感想戦では、私が▲3五歩と位を取ったのに、上手の△8五歩に▲7七銀としたのが欲張りすぎで、ここは飛車先の歩の交換を甘受し、角筋を通したまま戦うのがよかった、と指摘された。
それと私の反省点としては、3局とも6五の位を取られて指しにくくしたこと。大野七段は否定したが、下手の感覚からすると、△6四歩には▲6六歩としたほうが無難な気がした。
それより何より、私の将棋が予想以上にひどくなっていることに愕然とした。この1ヶ月間旅行三昧で、ほとんど将棋に触れなかった。それがマズかったのだろうか。
また「将棋世界」などの専門誌を読まなくなって数ヶ月が経つが、そのツケもじんわり出てきた気もする。将棋に熱が入っていたころは、つねに手許に将棋世界を置き、中をパラパラと捲っていた。とくに手を読まなくても、プロの将棋を目にしていることで、無意識にイメージトレーニングをしていたのだ。いまはそれがまったくない。
今後も大野教室にお邪魔するのだったら、恥ずかしくない手を指さないために、将棋の勉強を再開せねばならない。どうしようか。
今度こそここで上がってもいいのだが、大野七段にお願いして、前期竜王戦6組の伊藤真吾四段戦、加藤一二三九段戦の自戦解説をお願いする。もちろん「将棋ペン倶楽部」原稿執筆のためである。
初手から、本人の心境を中心に話を聞く。一手一手の指し手の意味を拝聴すると、それらすべてが面白く、これはいい原稿が書けそうな気がした。

結局きょうの生徒は、大人3人、少年2人+kokoroちゃん、Minamiちゃんだった。食事会は大野七段、W氏、Fuj氏、Kokoroちゃん、Minamiちゃん、私の参加。Wカーにギュウギュウ詰めになり、ガストへ向かった。
席の配置は以下のとおり。

     壁
W Kokoro Minami

大野 一公 Fuj

目の前に女子高生がいると緊張してしまう。それを悟られてはバカにされるので、平静を装う。
食事を終えると、W氏が彼女らを家まで送って行った。もちろんW氏は戻ってくる。ここから本格的に大人の会話となる。
「あのう、次の王将戦、やるんでしょうか。もうタイトル戦は始まってますよ。もう、次期の予選が始まってなきゃおかしいですよね」
と私。これは大野七段も答えにくかったようだ。
いろいろ雑談をして、11時半にお開き。川口駅からはFuj氏といっしょだ。
「きょうの大沢さん、話にツヤがありましたよ。まだショックは残っているでしょうけど、去年の秋から比べたら、かなり戻ってきてます」
とFuj氏が言った。自覚はないが、私の話にツヤが出てきたのなら、それはいいことだ。
昨年夏に私がつらかったとき、大野教室は心の拠り所だった。この教室があったから、私は精神に破綻をきたさずに済んだのだ。
体調が恢復したのも、大野教室のおかげといえる。だから私は、大野七段に頭が上がらないのだ。それにしては新年一発目にいきなり休むという不義理をしてしまったが、心はいつも大野教室にある。本年もよろしくお願いいたします。
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