一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

将棋会館道場での惜敗譜

2010-10-10 00:05:43 | 将棋会館道場
女流棋士スーパーサロンのあとは、引き続き将棋会館道場での対局を行う。スーパーサロンの対局後は、会館道場が無料になるのがありがたい。
ところで道場内のテレビモニターには、羽生善治名人・王座・棋聖対森内俊之九段の王将戦リーグが映しだされていた。後手番羽生名人の☖8五飛戦法。羽生名人の手つきがグリグリと力強い。駒に魂をこめているかのようだった。
ちなみに本局は両者100局目の対戦。同じ「昭和57年組」の羽生-佐藤康光戦がとうに100局を越えている。十八世名人有資格者の森内九段としては、羽生-佐藤の対局数に早く追いつきたいところであろう。

きょうは次の2つの局面の符号を記す。局面①は次の一手。局面②はどう指すか。おヒマな方はどうぞ。

局面①
先手(実際は後手)・一公:1六歩、2七歩、3六歩、3八金、4六歩、4七銀、4九桂、5八銀、6八玉、6七歩、7一竜、7六香、8六金、8七歩、9六歩 持駒:角2、歩
後手(実際は先手)・四段氏:1四歩、2三歩、2九竜、3四歩、3七金、6五歩、6六銀、7二金、7三歩、8一桂、8三銀、9一王、9二香、9三歩 持駒:桂2、香2、歩4

局面②
先手(実際は後手)・一公:1六歩、2七歩、3六歩、4六歩、4九桂、5六玉、5八銀、6六歩、7六香、8六金、8七歩、9六歩 持駒:角2、金2、銀、桂、歩
後手(実際は先手)・四段氏:1四歩、2三歩、3四歩、4八竜、6五歩、7二銀、7三歩、8一桂、9一王、9二香、9三歩 持駒:飛、金、銀、桂、香2、歩4

道場の対局開始。初戦は三段氏と。これが、いままで見たこともない展開になる。三段氏の先手で、
☗7八飛☖8四歩☗4八玉☖8五歩☗3八玉☖8六歩☗同歩☖同飛☗7六歩☖8七飛成。以下、2度の☖8六歩~☖8七歩成が利いて、私の楽勝。この三段氏とはもう一局指し、その将棋はそこそこ形になったが、もちろん私の勝ち。どうもこの三段氏の棋力が、いまひとつ分からなかった。3級くらいじゃねえの。
2局目は二段氏との香落ち。☗2三竜☗2一成香、☖3三角☖4二飛☖4三銀の局面で、☖3二銀と引いたのが危険な手。本譜は☗3三竜以下私が勝ったが、☗3三竜では☗1二竜と我慢し、次の☗3四歩を見せられていたら、私が不利だった。
3局目は初段氏との角落ち戦。チェスクロックでお願いします、と言うので快諾する。早指しならこちらも望むところだ。この将棋は相手の無理攻めを冷静に受けて快勝。
初段氏は別の人との対局のときも、チェスクロックの使用を求めていた。
「考えるのがやたら長い人がいるでしょ。何を考えてるんだか」
とか言っていた。これは同感である。
4局目は四段氏と。私の後手番。☗5六歩に☖5四歩と対抗し、相中飛車になった。この四段氏が長考派で、「そうか…」「まずい…」「失敗した…」とブツブツ言う。それでいて形勢は相手がいいからイヤになる。私は午後3時半にLPSA芝浦サロンで、石橋幸緒女流四段との指導対局に予約を入れている。まだ昼が回ったばかりだから遅刻することはないが、展開によっては、これが道場での最後の対局となる。
私の不利で迎えた終盤が、上に記した局面①である(便宜上先後逆)。9九の馬を☖7七馬と王手し、6九の金を☗6八金と上がり、☖同馬☗同玉☖7二金と打った局面である。
ここで正解は☗8二角☖同金☗7三香成まで、後手玉は必死。手筋集にも出ている有名な3手一組の手順だが、私にはこの手がまったく見えなかった。本譜は☗7二同竜☖同銀☗6六歩☖4七金☗同金☖2八竜☗4八銀☖5六桂☗6七玉☖5五銀☗5六金☖同銀☗同玉☖4八竜、で局面②となる。
☖4八竜のとき、四段氏は
「詰まされたらしょうがない」
とつぶやいた。その通りで、後手王には☗8二角☖同王☗7三香成以下の詰みがあった。☖7三同桂には☗7四桂以下。感想戦では四段氏が☖7三同銀を示したが、それは☗8三銀☖同王☗7五桂で詰む(注:読者から、☗8三銀には☖9一王で詰まないのではないか、という指摘があった。確かに☖9一王と戻られると詰まない。なるほど、という手があったものだ。読者氏に感謝しつつ、原文はあえて残す)。残りの応手☖7三同王が厄介だが、☗5一角と打って、あらかた詰みだろう。
それを私は☗2六角とやった。チェスクロックを使ってないので、時間がなかった、というのは言い訳。ここで後手王に詰みがあるとは思わなかったのだ。それに気づいたのは数手後である。
詰みがあるときに詰まさなければ逆転する。以下は☖5八竜☗5七歩☖5一香☗5四桂☖同香☗4五玉☖4一香☗4三銀☖同香☗5四玉☖4一飛☗6二金☖6三銀打☗同金☖同銀☗同玉☖7二銀☗同玉☖6一金☗6三玉☖7二金打☗6四玉☖5二桂☗6五玉☖6四歩☗5六玉☖5五歩☗同玉☖4七竜、まで四段氏の勝ちとなった。負けたから言うのだが、こう小刻みに時間を使われたらかなわない。もう少し早めに着手してもらえないだろうか。
時間は2時すぎになっていた。これはもう、芝浦に向かう一手である。
けっきょくこの日の成績は指導対局に負け、一般対局は○○○●の3勝1敗。連勝券の提示が遅れたので、前回の3.5連勝は白紙になり、6連勝の景品はもらい損ねた。
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長い1日Ⅱ(中編)・チャイルドブランドに圧倒される

2010-10-03 00:38:05 | 将棋会館道場
上田初美女流二段との指導対局を終えたあとは、引き続き将棋会館道場で対局である。スーパーサロンは支部会員料金で1,500円。これで会館道場も無料で指せるのはありがたい。しかし安いからといって料金が値上げされれば、客足は遠のく。この日から値上げされたタバコと同じ理屈である。
下半期の初日である1日は「都民の日」で、東京都の公立小・中学校が休みだ。少年の来場も予想されたが、案の定、道場は少年がワンサカいた。平日でも休みならば会館道場に訪れるとは、よほどの将棋好きに違いない。
初戦は二段君との香落ち戦。☖3四歩☗7六歩☖4四歩☗7五歩。下手の作戦は石田流だ。香落ち戦では、相振り飛車がいちばん困る。いまの若手アマは研究熱心だ。
私は居飛車で臨んだが、☖4五歩~☖3五歩が欲張りすぎの構想で、下手にいいように捌かれ完敗した。
2局目は三段君と対ひねり飛車の将棋になって、途中むずかしいところがあったものの、快勝。
受付近くにいたら、窪田義行六段が見える。また対局だろうか。先月行われた将棋ペンクラブ大賞贈呈式では、窪田六段から頂戴した書状を読み上げさせていただいたことを報告した。窪田六段は魅力的な棋士で、直接お話をさせていただくのは畏れ多いが、誰かとのおしゃべりを聞いてみたい。
さて3局目は…と一局一局書いていくとキリがないので、少し端折って4局目の、中学生の四段君と指した将棋を紹介したい。以前も書いたが、同じ四段(あまり書きたくないが、私は四段で指している。実力は三段だと思う)なら、若いほうが強い。戦う前から勝敗は見えているが、最善は尽くす。
中学生君が先手。これも石田流(早石田)できた。やはり久保利明棋王・王将らの影響が大きいのだろう。
先手は角を換わって☗5五角~☗7四飛。☗4八玉と上がっているので、☖3三角は☗7三角成☖同桂☗同飛成に☖9五角の王手竜がない。そこで私は☖6四角。☗同角☖同銀で、一応落ち着いた。
さらに局面は進んで、盤上に☗8四角があり、私が☖9四歩と何気なく突いた手に、先手が☗1六歩とつきあった手が疑問だった。私は☖7五歩と打って先手角の退路を塞ぎ、つぎに☖8二飛(打)の角捕獲を見る。以下☗7六歩☖8二飛☗7五角☖同銀と駒得し、有利になったと思った。
このあとは私も意外とうまく指し、迎えた終盤が以下のごとくである。

先手・中学生君:1六歩、1八玉、1九香、2二飛、2七歩、2八銀、2九桂、3七歩、6三銀、7四成銀、7五歩、8八竜、9七歩、9九香 持駒:銀、歩
後手・一公:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3二角、3四歩、3八と、4二玉、4四歩、4九馬、5一金、5四金、5七成桂、7一金、8五歩、9一香、9四歩 持駒:金、桂、歩5

☗5四歩☖同金☗6三銀まで。2日前にエントリした「駒数優劣判別法」を当てはめると、この局面は先手16枚対後手24枚で、後手が圧倒的優勢。いや勝勢である。
ところがここから、驚愕の展開となる。
上の局面からの指し手。
☖5三金☗5四歩☖6三金☗同成銀☖3三玉☗3二飛成☖同玉☗5三歩成☖2八と☗同竜☖2六桂☗1七玉 まで、中学生君の勝ち。
☗6三銀の局面は一手スキでないので、☖6八歩でも☖5八歩でも後手勝ち。局後中学生君が指摘した☖2八と☗同竜☖3九銀でも私が勝っていただろう。
それを本譜は☖5三金とやった。はじめは☗5四歩に☖4三金が予定だったが、☗5二銀打がめんどうと見て、私は☖6三金と銀を取る。これが転落の始まりだった。そして☖3三玉が大悪手。☗3二飛成☖同玉☗5三歩成で、後手玉に詰めろがかかってアオくなった。飛車を手にすれば勝ちと考えていたのだからアマすぎる。ただし先手の☗3二飛成は疑問手で、某所某氏の指摘によると、ここは☗2一飛成が正着。☖2一同角に☗2五桂で、後手玉は詰んでいた。したがって同じ玉の移動なら、☖3一玉だったという。
どちらにしても、☖5八歩ぐらいで明快な勝ちだったのに、相手をしすぎて詰めろを掛けられ、ここでクサッた。私の☖2六桂に中学生君の☗1七玉で投了。何てことだ。
「以下☖2二玉は☗4三とで負け」の私の言に、再び某氏が「☖3一金☗5三角☖4一金右…で粘れるんじゃないか」と言ったが、あの勝勢の将棋から受けに回るなんて、バカバカしくて指す気になれない。気持ちが切れての投了だった。
ところでこの日はLPSAが引っ越し作業で、営業は休み。会館道場にて、夜まで心おきなく将棋が指せるのだ。私は午後4時半から始まる「20分切れ負け・金曜トーナメント」にも参加申し込みをしておいた。さらに4局指して、通常対局は4勝4敗。この時点で午後3時40分。相手は中学生が多く、早指しでポンポンくるから、すぐ決着がついてしまう。
このあとは、もし長考派の人と当たってしまったらトーナメント戦に支障をきたすので、私から小休憩を申し出た。
トーナメント戦は少し時間を早めて、4時08分ごろに開始。私の名前が呼ばれないのは妙だったが、シードされていたようだ。これも四段の恩恵か。そんな実力はないのだが。
4時40分ごろ、私の初戦。6局目に当たった二段氏に平手(実際は香落ちだが、先方が平手を所望した)で勝ち、次の3回戦では、3局目に当たった四段氏に勝ち、ベスト4に駒を進めた。
次の相手は、4局目に当たった例の中学生君である。中学生君も前局は私に勝ったものの、キツネにつままれたところもあったろうし、今度は明快に勝ちたいところであろう。
私の先手で対局開始。この将棋は短手数で終わったので、全棋譜を記す。

先手・一公 後手・中学生氏
☗7六歩☖3四歩☗2六歩☖8四歩☗2五歩☖8五歩☗7八金☖3二金☗2四歩☖同歩☗同飛☖8六歩☗同歩☖同飛☗3四飛☖8八角成☗同銀☖2八歩☗同銀☖4五角☗2四飛☖2三歩☗7七角☖8八飛成☗同角☖2四歩☗1一角成☖3三桂☗3六香☖6六銀☗6九飛☖4二銀☗2二歩☖2五飛 まで、34手で中学生氏の勝ち。

☗3四飛と横歩を取った手に対し、後手から角を換えてきたから次は☖3八歩と思いきや、☖2八歩から☖4五角ときた。これは谷川浩司九段が若手のころ流行った戦法で、愛棋家・澤田多喜男氏の名著「横歩取りは生きている」に詳しい。
もちろん☖4五角戦法が流行ったころに中学生君は生まれておらず、いまや絶滅となった戦法までよく勉強しているものだと感心した。
もっとも私はこの定跡はうろ覚えである。30手目☖6六銀に、定跡では☗3三香成を説いているのだろうが、私は☖6七銀成や☖6七角成の殺到を恐れ、☗6九飛という、初心者のようなココセを指してしまう。バカじゃねえの。
後手は冷静に☖4二銀。これは次に☖4一飛で馬を殺す手を見ている。そこで☗2二歩と垂らしたが、その直後に後手の好手が見え、それで受けがないことに気がついた。
果たして中学生君は☖2五飛。☗3八金なら☖5七銀成で、次の☖2八飛成~☖5八銀(☖4八銀)の詰みが受けにくい。ここで私の投了となった。中学生君もポカーンとしていたが、私も全力を出しての結果であり、仕方ない。
もう道場を出たいのだが、また次の通常対局がつく。客が多いので、どんどんつく。しかし対局が始まると、四段(仮)氏が長考派で参った。しかも将棋は角桂交換でこちらが駒損の上に、相手玉は穴熊である。相手が決め手をさせば投了も考えていた。ところがこの四段(仮)氏が緩手を連発し、ねじりあいの末、最後は私が勝ってしまった。
ふう、これでやっと帰れる、と思いきや、まだトーナメント戦の3位決定戦があるという。棄権してもいいのだが、相手は少年であろう。一局でも多く有段者と指したいはずで、もう一局だけ指すことにする。
相手の三段君も例によって石田流。ほかに指す戦法はないのか。将棋は激しい駒の取り合いになった。終盤で三段君が(盤上に☗5五銀があり)☗4四歩と☖4三馬の頭に打った手に対し、私は2二の角とで精算をせず☖9八馬と香を取る。以下☗4三金には☖3一王と耐えた。
三段君は7三成銀を☗6三成銀と寄る。ここで私は☖4一香と打ったが、もったいなかった。ここは相手に駒を渡さないよう、☖4二歩でよかった。以下は物量攻撃に遭い、無残な投了図となった。いやはやしかし、若者は強い。もっとも私も弱いのだが。こんな将棋を指して四段とは呆れる。
結局この日は、午前中の指導対局と合わせて、14局も指した。せっかくだから、星の内訳も書いておこう。勝敗は私から見たものである。

上田女流二段・平手●
通常対局・N二段(香落ち)●、I三段○、K四段●、Y四段●、K二段(香落ち)●、I二段(香落ち→平手)○、S初段(角落ち)○、N三段○
金曜トーナメント戦・I二段○(香落ち→平手)、K四段○、Y四段●
通常対局・A四段(仮)○
金曜トーナメント戦・W三段●

7勝7敗。私の記憶が確かならば、将棋道場で14局も指したのは新記録。どっぷり将棋に浸かった1日だった。…いや、このあと私は、まだ行くところがあったのである。それはどこか。
(つづく)
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長い1日②・将棋会館道場にて

2010-09-19 00:41:26 | 将棋会館道場
藤田綾女流初段との指導対局が終わって、引き続き将棋会館道場で将棋。平日なのに小学生が何人かいる。奨励会は土・日曜に行われるので奨励会員ではない。では研修会員だろうか。分からない。
会館道場の傍らで藤田女流初段との将棋を思い出して棋譜をつけていると、手合い係嬢に私の名前を呼ばれた。
「(大沢さんの)飛車落ちでいいですか」
大駒落ちの手合いで申し訳ありません、というニュアンスが感じられた。しかしLPSA金曜サロンでは、このくらいの手合いはいつものことである。
1級の相手氏は穴熊に囲い、銀損の猛攻をかけてきたが、うまく受けて切らし、快勝した。
続いて中学生低学年と思しき少年と一局。学校のほうはいいのだろうか。段位を見ると「五段」とある。私は連盟道場と駒込サロンでは、駒込のほうが段位が厳しいと思っている。同じ段位ならば、私はサロンの会員のほうを「持つ」。しかし「中学生の(アマ)五段」となれば話は別だ。将来プロ棋士を目指しているかもしれず、私が容易に勝てる相手ではない。ともかく全力を尽くすのみである。
私の先手で☗7六歩。対して少年は王道の☖8四歩。以下☗2六歩☖8五歩☗2五歩☖3二金☗7八金☖8六歩☗同歩☖同飛☗2四歩☖同歩☗同飛☖2三歩☗2六飛☖8四飛☗9六歩、と進んだ。
長手順を書いたが、私はひねり飛車を目指している。と、ポンポン指し手を進めていた少年の手が、ここで止まってしまった。☖8六歩と垂らす手が利くかどうかの考慮だと思うが、私には少年がこの局面を初めて見て、どう指していいのか戸惑っているように見えた。いつぞや渡部愛アマ(LPSAツアー女子プロ)と同じ将棋を指したときも、似た反応だった。
かつて先手必勝の戦法があるとすれば、それは「ひねり飛車」と云われたものだったが、現在は廃れてしまった。現代の将棋界は情報化が進んでいるが、もし最新戦法以外の手を指されて硬直していたのだとしたら、それは地力がない証でもある。プロ棋界でそんなことはあるまいが、もし新人棋士にウイークポイントがあるとしたら、カギはそのあたりにありそうな気がする。
結局少年は☖8六歩と垂らした。以下は☗8五歩☖同飛☗7七桂☖8四飛☗8五歩☖2四飛と進む。☖8六歩のところで少考しただけあって、さすがの手順である。私は勢い☗2四同飛☖同歩☗8四飛と打ったが、ここで☖2五飛と打ち返されていたら、歩切れの私が苦しかったと思う。こうなると☖8六歩の存在も大きい。
しかし少年は☖7二銀。以下☗2四飛☖3四歩☗4八玉☖8九飛☗6五桂と進み、激しい攻め合いに突入した。このまま棋譜をダラダラ書いていると将棋が終わってしまうが、せっかくなので続けて記そう。
☗6五桂以下は☖8八角成☗同銀☖3三角☗2一飛成☖8八角成☗同金☖同飛成☗5八桂☖4二銀打☗1一竜☖8七歩成☗5六香☖5四歩☗1五角☖6二王☗5四香☖7七と☗8二角☖5三歩☗4二角成☖同銀☗4一竜、と進んだ。
角を切り、☗4一竜と回った手が詰めろ金取り。ここでこの将棋は勝ったと思った。少年はやむなく☖6四歩。王の懐を拡げてこの一手だが、イヤなところに逃げ道を開けられたとは思った。しかし☗3二金とボロッと金を取れては、依然として先手快調である。
少年、☖5二金。さすがにいい粘りだ。ここで私が間違える。以下、わずか14手で終わる。偶数手ということは、すなわち私が負けたということだ。もしここまで棋譜を並べた方がいらっしゃったら、ここで後手王を寄せる手を考えてください。
本譜は、☗9一角成☖6七と☗5三香成☖同銀☗同桂成☖同王☗5六香☖5四歩☗4一銀☖2七角!☗3八銀☖5八と☗同金☖6六桂 まで、72手で五段氏の勝ち。
☗9一角成と香を補充したが、一手を争う終盤でこの手は甘いと思いながら指してしまった。後手は☖6七とと一歩を補充しつつ先手玉に迫る。この交換は先手が大損だった。
5手後の☗5六香に☖5四歩がピッタリ。☗4一銀には☖2七角が逆転の一打で、ここは少年の手に力が入った。最後は☖8六に垂れていた歩で☗5八の桂を取られ、その桂を☖6六に打たれて投了した。何とも情けない投了図である。
「こちらがわるかったですよね」
と少年が言う。
「うん」
実際こちらがよかったのだから、否定はしない。短い感想戦をやったが、少年は☗8二角で☗2六角打!がいやだったという。これに☖3五金なら☗3六歩と催促し、☖2六金☗同角は王のラインが受けにくい。
私はまったく考えておらず、私は彼との才能の差を感じた。結果は残念だったが、私も気鋭の五段にここまで善戦できたのだから、佳とすべきだろう。
それにしても☖5二金での局面、後手王に何か寄せはなかったものだろうか。絶対あるはずだが、私には分からなかった。金曜サロンに行ったら、きょう登板の櫛田陽一六段にお聞きしよう、と思った。
窪田義行六段が現われる。昼休みの息抜きだろうか。窪田六段は物心両面から将棋ペンクラブを支援してくださる、数少ない棋士だ。ペンクラブの中でも窪田六段のファンは多い(はずだ)。
「窪田先生、きょうのペンクラブ大賞贈呈式は行かれますか」
「きょうはちょっと順位戦があるので…」
「ああっ、そ、それは行けませんね、し、失礼しました!!」
「いえいえ、行ってもいいんですけれども」
「いえいえいえいえ、そ、それは順位戦に集中していただかないと…」
そうか…昼休みだから道場に顔を見せたのに、私もつまらぬ質問をしたものである。
窪田六段とはそのほかにも二言三言話をさせていただいたが、内容を記すのは控える。
3局目は二段氏との香落ち。将棋を指していると、しばらくして窪田六段が、日本将棋連盟付で送られてきた「将棋ペン倶楽部」最新号を見せに来た。きょう事務所で受け取ったらしく、まだ封は開けられていない。しかしなんで私に見せに来たのか分からない。分からないが、なんとなく分かるような気がした。
二段氏との将棋を再開する。と、また窪田六段がいらした。
「ペンクラブ大賞受賞者の皆さま、会員の皆さまにくれぐれもよろしくお伝えください」
と丁重に言葉をいただく。礼儀正しい先生である。なんだか恐縮してしまう。
またまた二段氏との将棋を再開する。…ウワッ! また窪田六段がいらっしゃる。今度は便箋を私に見せる。
「手紙を書きましたので、これを関係者の方にお渡しください」
いま、わざわざ書いてくれたのだ。しかしそれを私にはくれず、また窪田六段は場を離れる。??
またまたまた二段氏との将棋を再開する。…ウワワッ!! ま、またもや窪田六段のおでましである。先ほどの便箋を入れた封筒に、糊づけしてきたのだ。
「ではこれを、関係者の方にお渡しください」
窪田ワールド全開である。私は、ヘヘーッ、とお預かりした。
ところで対局相手の二段氏、大の長考派で恐れ入った。名将戦の持ち時間(チェスクロック使用で2時間)と間違えてるんじゃないの? というくらい、のんびり考えている。しかも考える時間にメリハリがないから、さらに長く感じる。
形勢は駒得の下手が十分。しかし決めるとなると大変で、そこを模索しているらしい。だが有段者だったら、一連の読みはあるだろう。ところがこの二段氏、私の応手がその読みにない手だと、またその局面から新たに読み直しているふうなのだ。こっちは早いところカタをつけて駒込に向かいたいのだが、相手がこの姿勢だからどうしようもない。時間は刻々と過ぎていく。
今日中に終わるのだろうか、と半ば本気で心配したが、徐々に局面は終盤に入っていく。途中、ハッキリと私がわるい局面があったが、肝心なところで二段氏が寄せ損ねて、私が勝勢になった。しかしそこからもまた長く、終わったのは2時42分だった。この将棋、12時40分には始まっており、私は早指しだったから、二段氏がほとんど考えていたことになる。
連盟道場では原則的にチェスクロックを使用しないが、その弊害がモロに出た形だ。
ともかく想定外のできごとで、大幅に予定が狂った。これでは駒込で指導対局を2局も教えてもらうのは無理だ。私は諦めモードで、千駄ヶ谷駅に向かった。
(つづく)
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