白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

王座戦第4局感想

2019年11月29日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等

<本日の一言>
最近急に寒くなってきましたね。
風邪を引かないように気を付けたいと思います。



皆様こんばんは。
本日は王座戦第4局が行われました。
早速振り返っていきましょう。

1図(実戦)
井山裕太王座の黒番です。
黒1の打ち込みが、白×を大きく飲み込む狙いだということは分かりましたが・・・。



2図(実戦)
黒2からさらに突き進み、黒8の切り!
ここまでは想像できませんでした。
左上白や左下白への攻めまで視野に入れているのでしょうか。
井山王座らしい目一杯の打ち回しですね。
この後、芝野虎丸挑戦者が白Aから反撃したのは当然で、激しい戦いが始まりました。




3図(実戦)
黒がやれる戦いかと思っていましたが、ミスがあったでしょうか。
黒がペラペラに薄い格好になっていますね。
私が黒なら死にそうですが、打っているのは井山王座ですから・・・。



4図(実戦)
色々ありましたが、黒は白×を取って凌ぎました。
ただ、白も×の所の黒を取るなどして、ブクブク地が増えています。
白△に回り、白が良くなったでしょう。
しかし、この後黒が上辺白に猛攻をかけ、最終的に白○を取り込む戦果を上げては分からなくなりましたね。

息詰まる寄せ合いの結果は、白半目勝ち!
芝野挑戦者が3勝1敗で王座を奪取しました。
第1局半目勝ち、第3局1目半勝ち、第4局半目勝ちということで、細かい碁を全て制しましたね。
芝野挑戦者が寄せ勝ったシリーズと言っても良いのではないでしょうか。

これで芝野さんは名人・王座の2冠となりましたね。
物凄い勢いです・・・。
一方の井山さんも、一時期の苦しい状態からは脱しているようです。
天元戦の方は死守したいところですね。
井山さんが頂点に居続けるのか、群雄割拠の時代に突入するのか、どちらでしょうか?



☆各所で指導碁を行っています。皆様のお越しをお待ちしています。

日本棋院有楽町囲碁センター・・・JR有楽町駅前の交通会館9Fです。毎月1回、指導碁当番を担当しています。今後は10月11日(金)、11月15日(金)、12月13日(金)に指導碁を行います。

永代塾囲碁サロン・・・武蔵小杉駅徒歩5分です。毎月第2土曜日に講座と指導碁を行っています。

白石囲碁教室・・・五反田駅徒歩4分です。指導碁や個人レッスンを行っています。

New!上達の約束・・・上達の約束は、お客様の都合に合った会場を選べる回数制のレッスンを行っています。私の担当する五反田教室が新たに始まりました。毎週水曜、19:00~21:30です。


☆「やさしく語る」シリーズ、好評発売中!
やさしく語る 碁の本質」 「やさしく語る 布石の原則」 「やさしく語る 碁の大局観」 ・・・現在、「やさしく語る」シリーズを3冊出版しています。

※4作目「やさしく語る 棋譜並べ上達法」が、8月13日に発売されました!

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馬場滋-仲邑菫

2019年11月28日 22時09分45秒 | 幽玄の間

<本日の一言>
本日は私も対局がありました。
序盤からずっと苦しい碁でしたがひたすら粘り、ついに追いついたか逆転か・・・。
というところで、いつものポカが出てしまいました。
これで負け先行になりましたが、まだ対局はあるので打ち分け以上を目指して頑張ります。



皆様こんばんは。
木曜日は日本棋院棋士の公式対局日です。
本日も日本棋院ネット対局幽玄の間で多くの対局が中継されました(と言っても、いつもより少なめでしたね)。
今回は棋聖戦予選、馬場滋九段(71)と仲邑菫初段(10)の対局をご紹介します。
結構な年の差対決ですが、囲碁界においてはこのぐらいでは驚くに値しません。

1図(実戦)
馬場九段の黒番です。
黒1と攻められて、一旦は白2と逃げたものの、即座に白4と反撃!
白の弱い石が2つになってしまう意味があり、やや打ちすぎと感じるプロが多いと思いますが、これが仲邑初段の流儀ですね。
AI流を積極的に取り入れつつも、自分の感性を優先していることが感じられます。



2図(実戦)
白△とコウを取った場面です。
黒×も黒○も生きていません。
こうなっては、白の優位は明らかでしょう。

ところが、ここから白が決め損ねました。
仲邑初段なら1秒で分かりそうなところでしたが、何か錯覚があったのでしょうね。
ここから形勢が二転三転して、最後は半目勝負に・・・。



3図(実戦)
黒1の当てに対して、普通なら白Aとつなぐところです。
ところが、実戦は手抜きで白2!
当然黒Aと抜いてきますが、白はこのコウを頑張りきってしまおうというのです。

何故なら、黒1に対して白Aとつないでしまうと、白が半目負けになるからです。
きっちり計算ができているからこその頑張りですね。
もちろん、仲邑初段のレベルならこの程度は当然なのですが、なにしろ10歳ですからね・・・。



 
4図(実戦)
白1のコウ立てに受けていると、黒はコウに勝てなくなり、碁も負けます。
そこで、黒2と解消したのは最後の勝負手か、形作りのどちらかですね。
仲邑初段は白3から隅を手にして、勝ちを決めました。


かつて、若手のレベルが上がったことを表現する言葉として「初段が九段に勝ってもニュースにならない」というものがありましたが・・・。
とうとう10歳が九段に勝つようになってしまいましたね。
これで仲邑初段は今年13勝5敗となりました。
個人的には15勝8敗ぐらいと予想していたのですが、勝率では大分上回っています。
ちなみに、私の1年目(21歳)は6勝8敗だったので、仲邑初段の方が大分強い気がします・・・。




 
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11月の情報会員解説

2019年11月27日 23時59分59秒 | 日本棋院情報会員のススメ

<本日の一言>
冬の棋士採用試験の結果が出始めています。
本院は三浦太郎さんと近藤登志希さん、共に11勝3敗で入段を決めました。
関西総本部は中野奨也さんが、これまた11勝3敗で入段を決めました。
今年はどちらもかなりの混戦だったと思います。



皆様こんばんは。
本日は日本棋院情報会員のPRを行いたいと思います。
具体的な解説のレベルについては、↓の過去記事を参考にしてください。
最近の記事では、対局の大雑把な流れをご紹介する形にしています。

第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回
第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回
第21回 第22回 第23回 第24回 第25回 第26回 第27回 第28回 第29回

今月は夢百合杯1回戦から、
一力遼八段-丁浩六段
李軒豪七段-仲邑菫初段
の2局を解説しました。
それではご紹介していきましょう。
ただ、この2局は既にブログで振り返っていますから、視点を変えてみることにします。

1図(一力-丁1)
一力-丁戦、一力八段の黒番です。
黒1、3とは、形構わずの猛攻です。
殺意しか感じられません・・・。



2図(一力-丁2)
黒△のカケ!
強烈な攻めで、思わず石音が高くなりそうですね。



3図(一力-丁3)
白も猛反撃を見せました。
黒×も弱くなり、戦いはますます複雑化していきます。



4図(一力-丁4)
そして、黒1に受けず白2の切り!
これまた凄い反撃で、戦いはエスカレートするばかりです。

上達の約束の動画で、解説にとてつもなく時間のかかる碁があったということを話した記憶がありますが・・・。
それがこの碁です。
序盤から終盤まで、ほぼ戦いしかしていませんからね・・・。
一力八段が勝っていなければ、この碁は選ばなかったでしょう(笑)。



5図(仲邑-李1)
李-仲邑戦、李七段の黒番です。
白1、3の構え方が独特だと思いました。
白1ではA、白3ではBが多数派ではないでしょうか。
AIの影響もあるかもしれませんが、やはり仲邑初段の個性が表れていると見るべきだと思います。
仲邑初段はどっしりとした、隙の無い手を好む印象が強いです。



6図(仲邑-李2)
白△の曲げも、いかにも仲邑初段の好みそうな手です。
この手では白Aも1つの形なのでしょうが、仲邑初段が打つイメージは全く浮かびません。
それが持って生まれた感性というものではないでしょうか。
棋風が色々と変化したとしても、そういった根っこの部分は大きく変わらないものだと思っています。



7図(仲邑-李3)
黒△に対して、白Aと打ったのは明らかに悪手でした。
ただ、なぜそう打ってしまったかを考えてみると、これも仲邑初段の感性が影響したのではないかと思っています。
白Aでは白Bと出るのが正着なのですが、白×がやや緩んだ形をしており、それが心に引っかかってしまったのではないかと・・・。



8図(仲邑-李4)
この白△も無理気味で、白Aなら無事だったでしょう。
仲邑初段もそれは分かっていたでしょうが、守りだけの手はどうしても打ちたくなかったのでしょうね。

本局は良くも悪くも、仲邑初段の個性が表れた一局だったと思います。
10年後か20年後に仲邑初段の打ち碁集が出るときは、必ず収録されるでしょうね。


来月は
女子甲級リーグ 呉依銘二段-於之瑩六段
女流本因坊戦予選 桑原陽子六段-上野梨紗初段
の2局を解説します。

ちなみに、私の解説は「ためになる棋譜解説」というタイトルですが、鶴山淳志八段も「初段をめざす方のための棋譜解説」というタイトルで2局を解説しています。
また、平本弥星六段は「一日一題」というタイトルで、問題形式での棋譜解説を行っています。
ご興味をお持ちになった方は、ぜひ日本棋院情報会員にご入会ください!



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井山裕太-楊鼎新

2019年11月26日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等

<本日の一言>
本日は横浜の宇宙棋院にて、月1回のイベントを行いました。
お越しくださった皆様、ありがとうございました。
なお、申し訳ありませんが来月はお休みとさせて頂き、次回は1/28(火)19:00~となります。



皆様こんばんは。
本日は第21回農心杯第9戦、井山裕太九段(30)と楊鼎新九段(21)の対局をご紹介します。
井山九段は第16回以来、常に大将を努めてきました。
当然とは言え、負けたらチームが敗退という場面でしか対局しかしていないのです。
個人戦とはまた別の重圧がかかっていることでしょう。

それでは振り返っていきましょう。
なお、この対局は日本棋院ネット対局幽玄の間にて、一力遼八段の解説付きで中継されました。

1図(実戦)
井山九段の黒番です。
ここでの白の派手な捌きが印象的でした。
際どい戦いになりますが、研究済みなのでしょうね。



2図(実戦)
しかし、なんと言ってもこの場面は外せません。
黒1~11の名サバキ!
○黒1、3の利かし
○黒5、7のツケ切り
○黒9、11のツケ切り
この3つが有機的に連携しており、白は対応に困ったでしょう。
こうなっては、黒がはっきり良くなったと感じました。



3図(実戦)
左辺でコウが起こりましたが、黒が勝って白×を取り込みました。
白模様の中で大きな戦果を上げています。
その代わり白2、4で黒×を包囲されましたが、黒の大優勢は明らかですね。

もし私が対局者なら、ここで黒Aとコウを解消しようか、それともその前に黒Bを利かしにいこうか、ということを考えるでしょう
形勢が良いので、難しいことをやらずに逃げ切りを目指したくなるのです。



4図(実戦)
ところが、実戦は黒1、3と動き出していきました!
白には×あたりに断点が多く、また中央の大石も生きていないので、これで凌げると判断したのですね。

しかし、リアルタイムで観戦していた私は、「ちょっとやめてよ!」と叫びたくなりました(笑)。
井山九段にははっきりと凌ぎのビジョンが見えていたかもしれませんが、観戦者の私には見えていませんからね・・・。
私の読みの能力を基準にすると、何故こんな危険なことを、ということになります。

しかし、結果は無事凌ぎに成功し、最短ルートで勝ちを決めました。
常に最善を追い求める、井山九段らしさがよく表れた勝ち方でしたね。


井山九段の待望の勝ち星によって日本チームは生き残り、同時に第2ラウンドが終了しました。
2/17(月)から上海で行われる第3ラウンドに望みをつないでいます。
そして、その第3ラウンドの初戦では韓国の大将朴廷桓九段と対局します。
この構図、前回とそっくりですね・・・。
前回は井山九段が破れましたが、今回雪辱を果たしてくれることを期待しましょう。



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申眞諝-楊鼎新

2019年11月25日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等

<本日の一言>
香港区議選は民主派が85%の議席を獲得したそうですね。
区議に具体的な権限は無いとは言え、民意が明らかになったわけですが、今後どうなるでしょうか・・・。



皆様こんばんは。
本日は農心杯第8戦、申眞諝九段(19)と楊鼎新九段(21)の対局をご紹介します。

1図(実戦)
申九段の黒番です。
黒1、3のような手は、意味は分かりませんがよく打たれますね。
AIの打つ手は良い手ということになっています。


2図(実戦)
白1はなかなか打てない手ですね。
普通なら白3などと、黒に迫っていくでしょう。
攻めを放棄して地を稼ぐ、リアリストの打ち方だと思いました。



3図(実戦)
白1~7の打ち方も同様です。
一生懸命地を稼いでいるように見えますね。



4図(実戦)
しかし、その後白×を捨て、黒×に攻めかかる展開になりました。
打ち筋に拘りが無く、ひたすら良い手を追い求めているように感じます。
申九段が楊九段のことを、AIに最も近い碁打ちと評していましたが、分かる気がします。


結果は楊九段が勝ち、7連勝となりました。
これで韓国チームも後が無くなりましたね。
中国チームは無傷です・・・。



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