白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

棋聖戦第7局感想

2019年03月16日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
確定申告は1年間の仕事の成果を具体的な数字で振り返る機会でもあります。
昨年はNHK囲碁講座別冊付録での連載をはじめ、対局以外の仕事は好調でした。
一方、対局では過去最低の成績を記録し、対局料は前年比マイナス60%でした。
全体としては前年比で少しマイナスになりました。
今年は必ずプラスに持っていきたいですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
1日空いてしまいましたが、棋聖戦第7局の2日目を振り返りたいと思います。
本局は歴史に残る名局でした。



1図(封じ手)
封じ手予想は白△でした!
まさかの3連敗4連勝です!
今回はできすぎでしたね(笑)。





2図(実戦)
井山裕太棋聖のこの手にはビックリ!
白Aと打てば簡単に生きられたところですからね。
しかし、その生き方にほんの少し不満があって頑張ったのでしょう。
殺せるものなら殺してみろ」と言っています。

なんと言っても危険な打ち方であり、おそらく最善とは言えないでしょう。
しかし、この一手が歴史的な名局が誕生するきっかけになりました。
ただ勝つだけではなく魅力的な対局を見せるという、井山棋聖の姿勢が表れたと思います。





3図(実戦)
そこで引き下がる山下敬吾挑戦者ではありません。
外側の黒に弱点は多いですが、本気で取りにいきました!
剛腕山下から、殺し屋山下へ・・・。





4図(実戦)
右辺白が助かるためには、黒×か黒〇の一団を取るしかありません。
あるいは黒△を取る振り替わり作戦も視野に入れていたかもしれませんが、一つはっきりしていることがあります。
それは、井山棋聖は白が上手くいくという確証を得ていなかったということです。
こんな戦いを読み切れるわけがありませんからね。

にもかかわらず、井山棋聖はこの道に足を踏み入れました。
棋聖戦の最終局という、最大のプレッシャーがかかる大舞台で・・・。
井山棋聖の揺るぎない信念には、感動すら覚えますね。





5図(実戦)
ここで白Aと打てば黒△を取れました。
右辺白大石は助かりませんが、白地も結構大きくなります。
激戦がようやく一段落するかと思われた場面です。

ところが、実戦は白△!
黒Bと受けてくれれば2目得になりますが、受けずに黒△を助けられてしまうかもしれません。
大きなリスクがありますが、それでもここは2目を稼ぎにいかなければならないと判断したのですね。
大変な読み合いの最中にもかかわらず、精密な形勢判断を行っていたことが分かります。

そして、この手を打つためにはさらに膨大な読みが必要になります。
全身全霊を込めた戦いなのです。

果たして、山下挑戦者も受けずに反発し、激戦はさらにエスカレートしていきました。





6図(実戦)
周囲の黒との攻め合いの結果、白×の29子が全滅しました。
しかし、その間に白が各所で利益を上げ、結果は白6目半勝ちとなりました。
想像も付かない結末でしたね。

平成最後の棋聖戦は、最高の名勝負になりました。
両対局者には心から拍手を送りたいと思います。


さて、これでしばらく更新をお休みしたいと思います。
・・・ワールド碁チャンピオンシップが明後日から始まることを忘れていたのですが、そちらの感想もまた後日ですね。
ただ、もし日本棋士が優勝したら無理をしてでも更新するかもしれません。
井山棋聖と張栩名人の活躍を願っています。
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棋聖戦第7局封じ手予想

2019年03月14日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
本日、日本棋院で杉内寿子八段に声をかけて頂きました。
なんと、週刊碁の私の連載をご覧頂いているとのことです!
杉内八段のファンとしては嬉しい限りですね。
また、いつも杉内八段の碁を楽しみにしていることをお伝えしたところ、「なかなか思うように打てなくて・・・」と仰っていましたが、これは最近の口癖のようですね。
杉内八段の飽くなき向上心の表れと受け取っています。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
仕事がいよいよピンチなので、ブログは完全に休止することにしました。
十段戦女流名人戦も進行中ですが、感想は更新再開後に改めて述べたいと思います。
再開時期は4月初旬あたりを予定しています。

ただ、最終局となる棋聖戦第7局だけは今振り返っておきたいと思います。
井山一強時代がどこまで続くのか、ターニングポイントになる1局かもしれません。



1図(実戦)
山下敬吾挑戦者の黒番です。
白の井山裕太棋聖、またしても弱い石だらけですね。
いつも石を攻められている方には心強いのではないでしょうか(笑)。

ただ、井山棋聖はいつでも石を捨てる選択肢を持っています。
それが多くのアマの皆様と違うところですね。





2図(打ち掛け局面)
山下挑戦者が黒△とノゾキを打ったところで、打ち掛けとなりました。
黒Aからの出切りと、黒Bから黒×を救出する手を見合いにしたものですね。
白はどちらに力を入れるべきでしょうか?





3図(封じ手予想)
封じ手予想は白△にします。
ここは形の急所であり、いわゆる「気持ち良い」手です。

もちろん、対局者は結果を出さなければいけないので、気持ち良いというだけでは打てません。
どの手が最善なのか、きちんと見極める必要があります。
ですが、観戦者は気楽ですからね(笑)。
ここは直感を信じてパッといってみましょう! 
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棋聖戦第6局感想

2019年03月08日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
本日は文京区立小日向台町小学校にて、囲碁の入門講座を行いました。
人数が66名と多く、凄い活気でした。
子供たちは囲碁を楽しんでくれたようですが、私にとっても楽しい時間になりました。
明日は葛飾区立松上小学校に行ってきます。
最後の講座になるので、良い形で締めくくりたいですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋聖戦第6局の2日目が行われました。
早速振り返っていきましょう。



1図(実戦)
封じ手は白△でした!
これで私の予想は3連勝、目標達成です!





2図(実戦)
左下は黒が上手く捌きました。
戦場は右上に移っています。
ここで白1、3とは、あまり見たことのないコンビネーションです。
白AとBが見合いで、手になっていますね。
こういうしぶとい手は、山下敬吾挑戦者の碁によく出てきます。





3図(実戦)
その後、山下挑戦者は黒×に襲い掛かりました。
この黒が死んでしまえば、当然白勝ちですが・・・。





4図(実戦)
そこは井山裕太棋聖、黒△までしっかりと凌ぎきりました。
こうなっては黒勝勢と言って良いでしょう。

しかし、ここから予想外の展開が待っていましたね。
井山棋聖に一瞬の隙が生じ、山下挑戦者はそれを見逃しませんでした。
白の逆転勝ちとなり、とうとう決着は最終局に持ち込まれました。

井山棋聖が優勢の碁を緩まないのは今に始まったことではありませんが、最近はミスが出て逆転されるケースが目立ちます。
やはり状態はベストとは言い難いようですが、最終局までに立て直せるでしょうか?
最終局の勝敗は全くの五分とみます。

最終局は3月14日(木)、15日(金)に行われます。
ぜひご覧ください!
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棋聖戦第6局封じ手予想

2019年03月07日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
本日の対局は負けました。
途中まではまずまずでしたが、いつものようにポカ連発・・・。
これで棋聖戦Cリーグ入りを逃すのですから、流石にがっくりきますね。
幸い、明日明後日と小学校での入門指導が続くので、子供たちから元気を貰ってきます。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋聖戦第6局が行われました。
早速振り返っていきましょう。



1図(実戦)
井山裕太棋聖の黒番です。
序盤早々に白石がバラバラになりましたが、これは一体?





2図(実戦)
と思っていたら、山下敬吾挑戦者の派手な捌き!
有名な手筋ではありますが、実戦ではあまり見かけないかもしれません。
白石にかかる負担もかなりのものですからね。





3図(実戦)
白は強力な厚みを築きましたが、その代わり白×を取られました。
この分かれ、アマの皆様は黒が良く見えるでしょうが・・・。
私も黒が良く見えますね(笑)。
先行投資が大きすぎると感じますが、剛腕の山下挑戦者は左下黒を攻め立てて回収するつもりです。





4図(打ち掛け局面)
井山棋聖が黒△と打ったところで、次の白の手が封じ手となりました。
黒Aの切りと黒Bの渡りを見合いにしたものですね。
これに対して、白Aは黒Bと渡られて甘く、白Bは黒Aと切られて苦しそうに見えるので・・・。





5図(封じ手予想)
中間の白△を予想します。
これが当たれば当初の目標達成となりますが、どうなるでしょうか?
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女流名人戦、開幕!

2019年03月06日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
雨は嫌なものですね。
ジメジメするわ、服は濡れるわ・・・。
でも、この時期だけは恵みの雨と呼んでいます(笑)。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
うっかり見落としていましたが、本日は女流名人戦第1局が行われました。
十段戦と女流名人戦が大阪商業大学で行われるのは定番でしたね。
それでは振り返っていきましょう。



1図(実戦)
謝依旻挑戦者の黒番です。
ここで藤沢里菜女流名人が思い切った打ち回しを見せましたね。
白1、3の二段バネ!

黒Aと切られ、今打ったばかりの白×を取られては良い結果とは言えないかもしれません。
ですが、私は人の碁を見る際、善悪はあまり気にしません。
気持ちの入った打ち回しに注目します。





2図(実戦)
白△のポン抜きを許したのは謝依旻流と言っても良いかもしれません。
こういうところをポン抜かせるのはあり得ないと考えるプロも多いでしょうが、謝挑戦者は平気でポン抜かせます。
個性が表れた場面ですね。





3図(実戦)
黒△と深々と侵入したのも謝挑戦者らしいです。
右辺は白石が多いですし、黒×という弱い石も抱えています。
普通のプロは黒が怖いと感じるでしょうが、謝挑戦者は凌ぎに自信があるのでしょう。





4図(実戦)
黒1に対して、藤沢女流名人が白2、4と応じたのも凄いですね。
白×をポン抜かせた上で、黒×を丸取りしてしまおうというのです。
なんという恐ろしい発想でしょうか。

結果的には白が無理でしたが、観戦者としては非常に盛り上がる展開でした。
第2局も楽しみですね。
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