白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

棋譜紹介(予告風)

2017年03月31日 20時21分47秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された対局を、予告風に紹介してみます。

〇碁聖戦予選C 王銘エン九段(黒)-安斎伸彰七段
AIに近いと言われる棋風の王九段が、破天荒な布石を展開!
プロの目にも意味が分からない!
果たしてこれで勝負になるのか!?

〇本因坊戦予選A 二十五世本因坊治勲(黒)-蘇耀国九段
二十五世本因坊治勲は、前人未踏の1500勝まで秒読み段階に迫っている。
先日も弟子の金秀俊八段に勝利し、貫禄を示した。
本局は序盤から激しい戦いになったが、果たして結末は?

〇扇興杯本戦 謝依旻扇興杯(黒)-上野愛咲美初段
期待の若手、上野初段が謝依旻扇興杯に力比べを挑む!
正面からの殴り合いに終始した1局。

〇十段戦予選A 内田修平七段(黒)-王立誠九段
内田修平七段が次々にパンチを繰り出し、王九段の白石に襲い掛かって行く!
果たして王九段、全てを凌ぎ切れるのか!?

全部は大変なので、とりあえず一部だけ紹介してみました。
棋士の対局は年間に数千局行われますが、囲碁ファンの目に触れる対局はごく一部です。
せめて表に出ている対局だけでも、注目して頂けるように工夫したい所ですね。
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十段戦結果

2017年03月30日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
書き忘れていましたが、昨日33歳になりました。
年を取るにつれて、時の流れを早く感じるようになると言われます。
しかし、32歳の1年間は随分長く感じました。
公私共に印象的な事が多かったからでしょうか。

さて、本日は第55期森ビル杯十段戦第2局が行われました。
結果は井山裕太十段が勝ち、2連勝で防衛に王手をかけました。

井山十段と余正麒挑戦者の対局はいつも好勝負になりますが、今回ばかりは井山十段の完勝でした。
序盤余挑戦者が意欲的な趣向を見せてくれましたが、少々無理で形勢を損なう事になったと思います。
多少形勢が苦しくても、粘って勝負に持ち込むのが余七段ですが、どうもチャンスが少なかったように感じます。
余挑戦者は乱戦で強みを発揮するタイプだと思いますが、焦点の絞りやすい碁形だった事が災いしたでしょうか。
気合は十分でしたが、結果的には力を出せないまま土俵を割ってしまいました。

碁では時々こういう事もあります。
今回は風向きが悪かったという事でしょう。
第3局ではまた熱戦が見られると思います。
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本日の問題

2017年03月29日 23時59分59秒 | 問題集
皆様こんばんは。
本日は有楽町囲碁センターで指導碁を行いました。
お越し頂いた方々、ありがとうございました。
なお、来月の担当は4/3(月)です。
来週とも言いますね。

最近は毎回のようにお客様から著書やブログのご感想を頂きます。
皆様に喜んで頂く事がモチベーションの大部分を占めているので、どうぞ遠慮無くおだててください(笑)。

さて、本日は久しぶりに問題を出してみます。
指導碁に現れた形をそのまま持ってきただけですが・・・。



1図(問題図)
黒△2子を助けてください。
範囲が狭いので、時間をかければ2桁級の方でも正解に辿り着けるでしょう。
実際に盤に石を置きながら考えれば、さらに難易度は下がります。







2図(失敗1)
黒1と繋げば、白2と切ります。
黒の手数が短く、攻め合いは勝てません。





3図(失敗2)
今度は黒1と下を繋いでみましたが、それなら白2と上を切ります。
以下当たり当たりとされて黒が取られます。

このように、どちらを繋ぐのも黒ダメです。
しかし、実は手筋が隠れているのです。







4図(正解)
黒1のアテツケ(アテ込み)が正解です!
まるで飛び道具のような手筋ですね。





5図(続・正解)
白2と切って来た時、黒Aと繋いでしまうと3図と同じ事になってしまいます。
しかし、ダメ詰まりを避けて黒3と繋ぐのが良く、AとBが見合いになって救出成功です。





6図(正解変化)
黒1(△)に白2なら、黒3の繋ぎが先手になります。
白4に黒5と繋ぎ、やはり救出成功です。


さて、時間をかければ2桁級の方でも解けると言いましたが、それは問題として出されているという前提があります。
しかし、実戦ではここに手があるという事実は、誰も教えてくれません。
高段者でも見逃してしまう方が多いのではないでしょうか。
読みの力だけではなく、何か手が無いか? と探す習慣を付ける事も、棋力アップには重要です。
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電聖戦感想その3

2017年03月28日 22時30分20秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
明日は有楽町囲碁センターで指導碁を行います。
ご都合の合う方はぜひお越しください。

さて、本日は電聖戦の感想最終回です。
引き続き一力遼七段と絶芸(FineArt)の対局を振り返ります。



1図
一力七段、白1と右下黒に襲い掛かりました。
黒も反撃して、激戦開始です。





2図
黒1と閉じ込められて、白△がピンチです。
しかし、こうした手所は一力七段の得意分野です。





3図
何と、逆に黒△を取り込んで生還しました!
さらに白△と押さえ込み、黒✖の一団も取り込む構えです。
一力七段、やったか!?





4図
しかし、黒は中央の白を狙って来ました。
中央で白3子をポン抜いた黒の厚みが強力です。





5図
その後黒1、3となり、左辺に巨大な黒地が完成しました。
白△は黒△と攻め合いの形になっていますが、もはや白は攻め合いに勝ったとしても地が足りません。
一力七段、全力で戦いましたが及びませんでした。

ところで、この局面が事前に想定できたとして、形勢判断するにはどうすれば良いでしょうか?
まず攻め合いの勝ち負けを読み切らなければいけません。
また、右上の黒地がどれだけまとまるかも考える必要があります。
さらに、一段落した後のヨセも考えておかなければいけません。
これだけやった上で、最後にお互いの地を数えてようやく終わりです。
人間が精密に形勢判断するには、これだけの手順を踏む必要があります。
たった一つの図でも、かなりの時間を要するのです。

ところが、AIはこの図から終局までの膨大な分岐をシミュレートしてしまいます。
我々も時にはこういった形勢判断方法を行う事もあります。
対局後の検討などで、この手を打っていたらどちらが勝っていたか、という事を調べるために終局まで進めてみるのです。
時間制限が無いからこそできる事ですね。
形勢判断というより、勝敗判断に近い感じもあります。

しかし、AIはそれを対局中にやってしまいます。
それも数秒で・・・。
対AIの戦いでは持ち時間が多い方が有利なのですが、その理由は読みよりも形勢判断の分野にあります。
それを実感するような内容でした。
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電聖戦感想その2

2017年03月27日 23時33分59秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
本日は電聖戦第2局、一力遼七段と絶芸(FineArt)の対局で印象的だった一手をご紹介しましょう。



1図(テーマ図)
絶芸の黒番です。
変わった向きですが、黒△3手による構えはミニ中国の変形で、よく打たれています。
さて、白△と打たれた場面、黒は白Aの切りへの対策が必要ですが・・・。





2図(参考図)
素直に黒1と繋ぐのは基本的な形で、本手と言えます。
この布石での弱点は将来白2の飛び込みが残る事で、黒5までとへこまされる可能性が高いです。
この配置だと黒やや不満と見るプロが多いですが、黒△がAにある時はよく打たれます。





3図(参考図)
黒1と押さえる手もあり、黒△に石がある時はこう打ちたくなります。
白2と切って来ても、取ってしまおうという事です。
ただし非常に味が悪く、何らかの犠牲が必要になるかもしれません。





4図(実戦)
実戦はどちらでもない、黒1!
2図白2と3図白2を両方防いだ意味ですが、いかにも中途半端な印象を受けます。
白Aのノゾキを利かされるかもしれませんし、隅もまだBの所が空いているからです。
こういう中途半端な手は、殆どのプロの感性にありません。
もしプロを目指す子供が最初にこういう手が浮かぶようだと、才能が無いと判断されるでしょう。

Master対棋士第32局の3図と同じ雰囲気です。
違和感は本図の方がずっと強いですね・・・。
私はあちらを真似する事はあっても、本図を真似する事は無いでしょう。
既に絶芸自身がネット上で打っていたので、初見ではありませんでしたが、改めて驚いてしまいますね。
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