白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

大西二段、新人王獲得!

2016年09月30日 19時16分31秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は第41期新人王戦決勝三番勝負の第2局が行われました。
結果は大西竜平二段が難局を制して2連勝、新人王を獲得しました!
それでは早速振り返っていきましょう。
なおこの対局は幽玄の間にて、安達利昌四段の解説付きで中継されています。



黒が大西二段、白が谷口徹二段です。
ここまでは前例もありそうな布石ですが・・・





ここからの大西二段、下辺、右辺、左辺と盤上を駆け回る意欲的な打ち回しです。
対する谷口二段は本格派、白10などじっくり構えて対抗しました。
両者の棋風通りの展開です。





そして黒7まで、黒がさらに駆け回るのに対して白8の打ち込み!
力を溜めてからパンチを繰り出すのが谷口流なのでしょう。





白△まで、黒3子を飲み込んではパンチが入った印象です。
しかし黒も1、3と隅を先手で荒らし、黒5の好点へ向かいスピードで対抗しました。
勝負はまだまだこれからです。





その後白△と下辺の黒地を制限しに来たのに対し、受けずに黒1から仕掛けました!
白6の後黒Aと取ってコウ争いが始まります。





そして白△のコウ立てに受けず、黒1からコウ立て作りをしておいて黒7!
さらに戦線を拡大していきました。
黒9が大きなコウ立てになっています。





結果白7までの振り替わりとなりました。
黒は白△を飲み込みましたが、白7と左辺を破った事で左上の黒全体が弱くなっています。
互角の分かれではないでしょうか。





黒が左上を守った後、白1から7までじっくり打っています。
この隙の無い打ち方も谷口二段らしいですね。





そして黒1には強く白2!
格好良い手ですね。
周囲の強さを生かして目一杯に中央を止めていきました。





しかし中央に地を作る事には拘りません。
黒の動きに対して白4や8など、慌てず騒がずしっかり守りました。
こうなると次に左辺の黒が白Aからいじめられそうなので・・・





黒1と先にコスみましたが、白2が絶好点です。
次に白Aから中央を切断される危険があるので黒3と守りましたが、白4と飛び込んで下辺の黒地がガラガラになってしまいました。
それまでの手厚い打ち回しが生きた形で、こうなっては白優勢でしょう。





非勢の黒も必死に頑張ります。
まず黒△と切り、Aの所のコウ争いに持ち込みました。
このコウに勝ってまず1つポイントを挙げます。





そして白1に対して黒2が素晴らしい一手!
黒Aを狙って、これぞ急所という感じです。





止むを得ず白1、3と後退する事になりましたが、先手で中央をガラガラにして黒4に回ってしまいました。
これで勝負はいっぺんに分からなくなりました。
第1局に続いて半目勝負の様相です。





(変化図)
その後白△と守られた場面です。
ここでもし黒1などと無難に打っていると、恐らく白半目勝ちになります。
黒が少しでも得をするための道は・・・





実戦、黒1の下ハネが勝負手!
ここでもし白3と緩むと2目損となり、白の勝ちは無くなります。
白2と強く押さえたのは必然で、黒3と切って大コウが始まりました。
そしてコウ材は黒の方が多い状況です。
コウ争いを乗り切った大西二段、黒番中押し勝ちを収めました。

第1局、第2局共に、両者持ち味を存分に発揮した素晴らしい戦いだったと思います。
谷口二段は中盤戦で上回る場面も多かったですが、ヨセでのミスが多かったのが残念でした。
一方勝った大西二段は初出場・最年少(16歳)での優勝という凄い記録を打ち立てました!
昔26歳で新人王になった棋士もいましたが、一回り違いますね
谷口二段も20歳ですから、まだまだこれからです。
今後の両者のさらなる活躍に期待しましょう!

なお農心杯は残念ながら日本の張栩九段が敗れました。
第1ラウンドが終わって中国チームのみ3連勝、日本チームと韓国チームが共に2勝2敗となっています。
第2ラウンドは11月25日(金)から始まります。
范廷鈺九段の連勝はどこで止まるのか、そして日本選手はどんな活躍を見せてくれるのか?
勝負はまだまだこれから、第2ラウンドを楽しみに待ちたいと思います。
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本日の対局

2016年09月29日 20時33分18秒 | 対局
木曜日は棋士の手合日です。
それでは本日も幽玄の間で中継された棋譜をご紹介・・・ではありません。
本日は私も3か月ぶりに対局しました。
これだけ間が空くと自分もプレイヤーである事を忘れそうになりますね
それでは振り返っていきましょう。



1図(テーマ図)
私の白番、黒はアンティ トルマネン初段です。
アンティ初段はフィンランド出身、久々に誕生した青い目の棋士です。
日本語もスラスラと操ります。
将来は海外普及で活躍するでしょうが、今は修行の時。

さて局面は白番です。
ここまでの進行に誤算があり、形勢は悪いと思っていました。
ひとまず白△を取られるわけにはいきませんが、私はどう打ったと思いますか?





2図(変化図・黒無理)
白1、3と1目取れば5子が取られる事はありません。
黒4と無理やり連絡を止めようとすれば白5でAとBが見合いになり、黒崩壊します。





3図(変化図・白不満)
しかし黒は無理に取りに行かず、黒4などと中を打ってくるでしょう。
白は黒Aに備えていずれもう一手かかる形です。
黒Bと「2目の頭」をハネる絶好点が残っている今、大勢に遅れる恐れがあります。





4図(実戦)
そこで実戦は白1、3と打ってみました。
少しでも黒に響かせながら連絡する狙いです。
次にAとBを見合いにしています。





5図(変化図・黒正着)
ここで黒1と白からのハネ出しを防ぐのが正着です。
白2となって、白としてはAの切りが残るので3図より良い繋がり方です。

しかし黒としても左上の4子はカス石なので、Aと切られても捨てて全く問題ありません。
黒3、5などと打って左辺白2子は逃げにくい形です。
こうなると黒△がいかにも良い所を押しているのが分かりますね。
黒優勢です。





6図(続・変化図)
この後もし白1と伸びれば黒2、4と左右を繋げてしまいます。
白2子は完全に立ち枯れ、中央の黒模様は両手が入る大きさです。
黒圧勝でしょう。





7図(実戦①・黒失敗)
ところが実戦は黒1と連絡を妨げて来ました。
白2に黒3で取れるという読みですが、これは意外でした。
どうも魔が差してしまったようです。
確かにこれで白を取れるのですが・・・





8図(実戦②)
黒2や6といった形の悪い動き方をしなければいけないのがつらい所です。
黒6でこちらの黒は脱出できていますが・・・





9図(実戦③)
白1、3でこちらの黒が止まってしまいました。
白△との攻め合いは黒が勝っていますが、一手差なので・・・





10図(実戦④)
白2から6まで、全て先手になってしまいました。
この後白AとBも先手です。
白8に回って上辺一帯が真っ白になってしまいました。

こういう展開、見覚えがありませんか?
そう、昨日の農心杯の右下隅での変化とそっくりですね。
この碁でもやはり白が良い分かれとなりました。
ここでのリードが大きかったようで、最後は白中押し勝ちとなりました。





11図(再掲)
6図を再掲します。
この図と前図、どちらが良いかは一目瞭然でしょう。
碁では取れる石をあえて取らない方が良い事もあるのです。


なお本日の農心杯は中国の范廷鈺九段が韓国の李東勲八段に勝ち、2連勝となりました。
明日の第4局が第1ラウンドの最終戦、日本チームは2番手の張栩九段が出場します。
張九段は世界戦での優勝経験があります。
なんとしても范九段の連勝を止めて貰いたいですね。
皆さん、幽玄の間で応援しましょう!
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一力七段、連勝ならず

2016年09月28日 18時40分45秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は第18回農心辛ラーメン杯囲碁最強戦の第2戦が行われました。
相手は中国の范廷鈺九段、またしても世界のトップ棋士です。
第1戦で李世ドル九段を破った一力遼七段、連勝を期待されていましたが残念ながら及びませんでした。
それでは振り返っていきましょう。
なおこの対局は幽玄の間にて、首藤瞬七段の解説付きで中継されました。



序盤、黒番の一力七段が意欲的な打ち方を見せてくれました。
右辺の白石は全体的に位が低く、黒リードの布石でしょう。





しかし黒2と押さえて右下白への攻めを狙った瞬間、白3の切り!
なんとも早い仕掛けです。
早くも戦いが始まりました。





上辺の戦いは黒△で一段落、続いて白1と戦場は右下に移りました。
黒2、4は厳しい切断で、白△を孤立させては黒うまくやったかと思われました。





(変化図)白1、3で隅に生きる事はできます。
しかしますます位が低くなり、黒4と大場に先行して黒が良いでしょう。
白△の2子も自然消滅となりそうです。





(実戦)ところが白1、3と反撃!
黒の勢力を破壊しに行きました。
これが鋭い好手でした。





後は一本道で進みます。
白8の後白Aと這われると隅の黒との攻め合いになるので・・・





黒1と押さえ、白8までの大きな振り替わりになりました。
黒は白7子を取りましたが、白は下辺に大きな勢力を築いています。
元々黒が有利な場所だったので、白としては上々の結果でしょう。
さすがの変わり身作戦でした。





黒1のカカリには、白2以下単純明快に下辺を地にする作戦を採り・・・





白△となって下辺に45目ほどの確定地を確保しました。
どうやら白僅かにリードしたようです。
黒1は非勢を意識した頑張りでしょう。
この手の狙いは・・・





(黒の狙い)白5までと受けさせ、さらに黒6と打って左辺も上辺も打とうという手です。
そこで白は・・・





(実戦)白1から5と我慢し、先手を取って白7に回りました。
スピードを重視した作戦です。
次に黒Aなら、さらに先手を取って白Bに回る予定でしょう。
そこで黒8と打ったのは・・・





(黒の狙い)白1、3と受けさせておいて黒4に先行する狙いです。
黒模様が大きく広がり、同時に白模様を制限する絶好点です。
そこで白は・・・





(実戦)白1と反発して行きました。
黒2と打たれて隅の白地は減りますが・・・





結果先手を取り、白△に回る事ができました。
これで白は優勢を維持しています。
手数が進んだ分、黒の逆転のチャンスが少なくなったと言えるでしょう。
平凡に打っては勝ち目がないとみた黒は・・・





黒1、3とあえて小さいヨセを打ちました。
そして黒5、7がセットの勝負手!
分が悪いのは承知で、生きるか死ぬかの勝負に全てを賭けました。

しかし白は落ち着いていました。
しっかりと読み切って黒を仕留め、勝負を決めました。

本局、一力七段は持ち前のパワーを発揮するチャンスがありませんでした。
恐らく序盤のどこかに問題点があったのですが、そこを的確に衝かれてしまったようです。
以降は隙の無い打ち方で、逆転の糸口を与えてくれませんでした。
流石世界トップクラスの碁だったと思います。

残念でしたが、李世ドル九段を破った一力七段は立派に仕事を果たしました。
残りの日本選手の奮起に期待しましょう。
第3戦は范廷鈺九段と韓国の李東勳八段が対戦します。
その勝者と日本選手(未定)が第1ラウンドの最終戦となる第4戦を戦います。
お楽しみに!
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一力七段、李世ドル九段に勝利!

2016年09月27日 20時14分48秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、第18回農心辛ラーメン杯囲碁最強戦が開幕しました。
農心杯は日中韓3国の各5人で行われる勝ち抜き団体戦です。
日本の先鋒は一力遼七段、そして相手は韓国の李世ドル九段!
相手にとって不足はありません。
今年は天元挑戦、竜星戦優勝と絶好調の一力七段、満を持して挑戦しました。



序盤のこの布石、どこかで・・・
そう、李九段(黒)対アルファ碁の最終局です!
李九段、あえて黒番で受けて立ちました。
負けず嫌いの李九段らしいですね。
そしてこの日の李九段の作戦は徹底していました。




左上隅で地を稼ぎ・・・





右上でもさらに稼ぎます。
2線を沢山這うのではつらいように感じますが・・・




下辺でもまた稼ぎました。
まるで若い頃の趙治勲名誉名人のような稼ぎっぷり!
しかしすっかり外回りになった白が打ちやすいように見えました。
中央が巨大な地にならないよう、黒7は絶対の一手ですが・・・





白1、3で利き筋を作っておいて白5、7のツケ切りで強襲!
周辺の勢力を生かして戦いに持ち込む狙いです。





黒1、3といった手が心配に見えるかもしれませんが・・・





これは黒綺麗にハマリになります。
中央に3子取り残されてしまいました。





という事で実戦黒1、3は止むを得ませんが、中央がいかにも真っ白です。





黒としてはこのまま中央に巨大な地を作られてはいけません。
黒1から9と必死の踏み込み!
一気に難解な戦いになりました。





この戦いで一力七段は冷静に対処しました。
黒石への攻めに拘らず、白1の手筋から白5まで切り離して十分とみています。
確かに白が良さそうです。





しかしここから強いのが李九段です。
黒1、3がうまい手順で、白はぴったり止める事ができません。
白4にも黒5と侵入する事ができました。
ただ、ここで白に手番が回り・・・





狙いの切りに回っては決まったかと思いました。
黒Aには白B以下記号順に追いかけて黒地がズタズタになります。





しかしこのタイミングで中央を動いて来たのが凄い!
白8まで利かすだけ利かしてから黒9に回り、李九段が猛追しています。
流石、簡単には勝たせてくれません。





そして中央でのコウ仕掛け!
次々に勝負手を繰り出していきます。





コウは白が勝てず、ついに半目勝負になりました。
しかし一力七段はヨセに自信を持っています。
最後は白番半目勝ちで、見事勝利を収めました!

先日のジャステック杯に続き、日本棋士の活躍が続いているのは喜ばしい限りですね。
明日の第2戦から第4戦までは毎日対局が行われます。
明日の一力七段の相手は中国の范廷鈺九段、またしても世界戦優勝経験者です。
対局の模様は幽玄の間で中継されます。
一力七段を応援しましょう!
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藤沢三段、勝利!

2016年09月26日 21時13分03秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は第35期女流本因坊戦挑戦手合五番勝負、第2局が行われました。
結果は藤沢里菜挑戦者謝依旻女流本因坊に黒番中押し勝ちを収め、1勝1敗のタイに戻しました。
それでは振り返っていきましょう。
なおこの対局は幽玄の間にて、大橋成哉七段の解説で中継されました。



序盤、黒△に切った場面です。
白の対応としては大体決まっており・・・





白1、3が石の形であり、多くの棋士はこう打つでしょう。
しかし実戦は・・・





白1と当ててからひたすら押し!
いかにも筋が悪いという印象で、知らずに見たらプロの碁だとは気付かないでしょうね
しかし筋や形に拘らないのが謝女流本因坊の流儀です。
中央の黒を強化し、中の白2子を弱くしてしまいますが・・・





その後、白△と隅の黒を強襲!
これが謝女流本因坊の打ちたかった手なのでしょう。
そのための押し連発でした。





黒1の押さえに対する白2の切りも当然予定通りでしょう。
白6と打って黒△を狙い、黒どうするか・・・





黒1と右辺を打ちましたが、白8となって中の黒5子は動きにくい姿です。
白のパンチが入ったようにも見えました。
しかし・・・





左下の大きなヨセを打ち、中央をあっさり捨ててしまいました
要石を捨てて厚くさせてしまうのは通常考えにくいのですが、しかしよく見れば白の厚みが働く場所がありません。
どうやら藤沢挑戦者がうまく立ち回ったようでした。





白は紛れを求めていきますが・・・





ここも戦わずあっさり捨てて、大きな下辺に回って十分と言っています。
確かにその判断は正しそうです。





必死の白は中央で勝負手を仕掛けますが・・・





黒は冷静に対処し、△の抜きに回って勝負は決まりました。

本局は謝女流本因坊がらしい仕掛けを見せましたが、藤沢挑戦者の大局観が上回ったようです。
充実を感じる勝ち方で、五番勝負はますます面白くなってきました。
第3局は10月3日(月)に東京都千代田区の「日本棋院東京本院」で行われます。
お楽しみに!
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