北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

BCP事業存続計画は大丈夫か?COVID-19拡大,緊急事態宣言拡大と都市封鎖実施の可能性

2021-07-31 20:06:46 | 国際・政治
■ロックダウンは現行法で可能
 都市封鎖ロックダウン、そんな事は我が国では不可能だ、と主張していた各国が昨年次々と実施しており今行っている国もあります。日本では備えは大丈夫でしょうか。

 BCP:事業存続計画の改訂を,新型コロナ感染症緊急事態宣言強化による都市封鎖を前に行うべきです。今月初旬まで、日本では都市封鎖を回避しつつ新型コロナウィルス感染症の感染拡大を抑えてきましたが、東京では緊急事態宣言発令後も感染者が増大し続けるという経験の無い状況となっています。すると日本でも都市封鎖はあり得るという認識が要る。

 都市封鎖への法整備の必要性、これは7月30日の政府専門家分科会において将来的な課題として提示されたものです。今年一月の特別措置法改正では私権制限として事実上の都市封鎖を盛り込む法改正が試みられましたが、罰則については共産党や立憲民主党が強く反発し、自民党公明党にも慎重論が在り、強行採決は見送り、自粛要請のみとなりました。

 しかし、政治に自粛要請での感染阻止の選択肢が無くなり、また欧米や南米と南アジアなみの人口比での死者数が出れば、毎日が熊本地震や西日本豪雨と並ぶ死者数が続く訳で、恐らく国民が都市封鎖を受け入れざるを得ず、民主主義国家故に政府も踏み切らざるを得ません。道路交通法や災害救助法、この拡大運用で我が国では都市封鎖は不可能ではない。

 都市封鎖は中国武漢で実施された際に欧米メディアは、我が国では中国の様な強権政治ではないためにロンドンやパリで行うのは無理な話だ、としていましたが、感染拡大と共に泥縄式で実施しました、これは欧米諸国が実施できないとしたのが誤解であったのではなく、死者数の増大を前に都市封鎖以外の措置を政治が選択肢として持たなくなった訳だ。

 感染拡大に歯止めかからず有効な治療法が無い、他に打つ手が無かった為の帰結として実施されたのです。すると、日本でもデルタ株に対し都市封鎖は、在り得る。デルタ株の感染力の強さ、そして当初は95%とされたワクチンの効力が、アルファ株に対しては95%の予防が可能であってもデルタ株に対しては65%となり、現行ワクチンが決定打とならない。

 BCP:事業存続計画、企業は都市封鎖が行われる念頭で、例えば数週間から一ヶ月半程度、従業員が出社不能となり必要な資材搬入や製品流通が出来なくなった場合に倒産を回避する為の事業存続計画を明確化しなければなりません。そんな事は出来ない、と反論されるかもしれませんが、出来なければ数週間から一ヶ月半程度何もできなくなるだけの事です。

 企業は出来る事を今のうちにやっておいた方が良い、その為には都市封鎖が一部都道府県に限るのか、全国一律で行われるのか、最低限の出勤は認められるのか、物流は全て自由に維持されるのか制限があるのか、例えば災害救助法の警戒区域に指定されますと、東日本大震災被災地や熱海土砂災害被災地のように立ち入りが出来ない為、影響は大きくなる。

 BCP:事業存続計画、これは2001年の9.11同時多発テロや1995年の阪神大震災を契機に世界中で認識された企業危機管理の概念で、巨大地震や大洪水、核攻撃や大規模テロといった事態を前に、企業が倒産しない為に実施可能な事業を費用対効果で明確化するものです。都市封鎖下で事業が不能となるならば、都市封鎖解除後の再開計画だけでも必要だ。

 倒産を回避するには。BCP:事業存続計画は”事態発生後の事業人員確保””情報収集””移動手段の確保””インフラの確保””不足人員および資材の輸送計画””協力会社との連携”という準備を行い、”事業優先度の高い分野の列挙””維持でき費用対効果の低い事業分野の列挙””復興事業として回復に必要な新規事業の明確化”など経営学的に挙げるものです。

 目標と集約と配分、必要な概念はこの三類型です。“目標”とは全ての企業行動を曖昧ではなく明確で且つ達成可能な目標に指向する。“集約”とは入手できる人員と施設と資材を必要な地域に展開させる。“配分”とは一義的な事業と二義的な事業とを分け目標を達成するうえで必要な人員と二義的事業を行う為に必要な最小限の分野とに分ける、ということ。

 都市封鎖となれば、例えば工場は操業要員の出勤が不可能となり、無人操業可能な工場を含め原材料の搬入と製品の搬出ができなくなります。ただ、オンライン化可能なサービス業についてはテレワークにより存続できますが、回線をどのように確保するか、サイバーセキュリティの問題も発生します。これらを“目標と集約と配分”に分け計画を画定する。

 RPO目標復旧時点、RTO目標復旧時間、RLO目標復旧水準、MTPD最大許容停止分水嶺、と都市封鎖を念頭とすれば、BCP:事業存続計画は都市封鎖解除後の創業再開を行った場合に製造業の場合は資材搬入と製造に製品搬出と流通を分野ごとに作成するものですが、津波や地震と異なりインフラ破壊は生じない為、この特性を盛り込む必要があるでしょう。

 危機管理司令中枢、業務分担群、実証検証部署、評価支援部署、枠組としてはこのように分け準備する必要があります。危機管理司令中枢、これは高度の経営判断を必要とする為に経営責任者が関与しなければ権限なき責任となり意味がありません。オンライン化が可能であるのか対面が必要なのかにより、宿泊施設借り上げや疎開も検討すべきでしょう。

 業務分担群、2003年のSARS新型コロナウィルス感染症においては製造業などで感染を避ける為に業務を複数の業務が重複する群に分け、全員感染する事の無い様に調整していました。COVID-19については潜伏期間が長く一概に同じ手法が最適とは言い難いのですが、業務を実施する集団を権限も含め細分化し、一度に業務の崩壊を避ける施策が必要です。

 実証検証部署、これは実施がほんとうに可能なのかということを検証する部署です、応え合せが先と成らないよう急がねばなりません。評価支援部署、自社だけが対応したとしても協力企業や取引先が機能不随となっては意味がありません、この調整も平時から行うべきです。中小企業、BCP:事業存続計画は大企業に比較し欠缺があります。やっておく価値はあります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【榛名備防録】戦艦大和の再検討-新戦艦時代,日本の巨大戦艦はほんとうに無駄であったか

2021-07-31 14:10:38 | 防衛・安全保障
■大和型戦艦と翔鶴型空母
 本日から土曜日午後に第一の記事とは別の土日特集の記事を掲載します。第二記事故に備忘録的な備防録という話題を掲載してみましょう。

 日本海軍は戦艦大和のような戦艦ではなく航空母艦を建造すべきだった、こういう指摘が散見されます。翔鶴型航空母艦の建造費は8450万円、大和型戦艦の建造費は1億3780万円ですので、翔鶴型を2隻から3隻増やせた計算です。すると航空戦隊をもうひとつ増強できた計算となるのですが、一つ忘れてはならないことがあります、新戦艦への対抗だ。

 戦艦は空母艦載機で集中攻撃するならば簡単に撃沈できる、こう理解されている方が多いのですが、冷静に思い出して欲しいのは、真珠湾攻撃以降、日本海軍はアメリカの戦艦を撃沈できていません、空母艦載機で相当叩いていますが、大破にさえ陥っていません。日本の戦艦も第一艦隊を決戦兵力として温存していましたので、1944年末まで同様だ。

 アメリカ海軍の戦艦は新戦艦という、ワシントン海軍軍縮条約失効後に建造された戦艦がかなり数に余裕がありましたので、第一線に進出しているのですが、日本海軍の航空攻撃にかなり耐えているのですよね。ただ、空母艦載機を集中させれば戦艦を撃沈できます、1944年の戦艦武蔵、1945年の戦艦大和、ともにアメリカは充分な数で攻撃しました。

 大和撃沈、アメリカは空母12隻を集中しています。1945年4月7日の坊ノ岬沖海戦には、空母ホーネット、空母ベニントン、軽空母ベローウッド、空母サンジャシント、空母エセックス、空母バンカーヒル、空母ハンコック、軽空母カボット、軽空母バターン、空母ヨークタウン、空母イントレピッド、軽空母ラングレー、これだけ投入しているのです。

 新戦艦、ノースカロライナ級戦艦2隻にサウスダコダ級戦艦4隻、そしてアイオワ級戦艦6隻、アイオワ級の5番艦6番艦は日本が戦艦建造を中断したことで、新戦艦は10隻あれば大和型2隻に対抗できるとして建造中止していますが、空母に随伴しうる高速戦艦が10隻建造されているのですね。実際欧州では空母が巡洋戦艦に追いつかれ撃沈の例もある。

 日本が新戦艦に対抗するには、まさか長門型戦艦を高速改装するにも限度が、船体形状を一新させるには新造と変わらぬ手間、がありますし、新戦艦に対抗しうる速力を持つのは1910年代に建造された金剛型戦艦のみでさすがに古い、すると何らかの新戦艦を建造する必要があるのですよね。大和型を否定でも、代替案が必要で空母ではまだ対抗できない。

 大和型戦艦が大きすぎるという視点を仮に首肯するとしましても、戦艦を全否定するには、日本にアメリカの新戦艦へ対抗する手段を欠くことはリスクが余りに大きい、大和型戦艦の頑丈さと日本海軍航空隊のアメリカ戦艦について、真珠湾攻撃に際して停泊中の戦艦を撃沈した以外の作戦行動中のアメリカ戦艦を撃沈できていない現実をみるべきだと思う。

 加賀型戦艦、ワシントン海軍軍縮条約で建造中止となり一番艦加賀のみ航空母艦に改装され、二番艦土佐は標的艦として沈んでいますが、16インチ砲10門搭載で39900tの高速戦艦、もちろんこの設計は古すぎますので要求性能を維持した上で新設計するというところでしょうか、アメリカの新戦艦に対抗するには最低限、この性能が必要となります。

 ただ、大和型戦艦に代えて仮に加賀型戦艦再設計した艦を建造したとして、それほど建造費が変わるよう思えません。少なくとも建造しても空母の建造費を捻出できるほどは無理で、陽炎型駆逐艦数隻分の節約が限界ではないか、大和型は大蔵省に建造費を秘匿するべく陽炎型駆逐艦の架空建造費を上乗せしました、節約できるのはこのくらいでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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令和三年度七月期八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2021.07.31-2021.08.01)

2021-07-30 20:00:56 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 北大路機関は創設16周年を迎えましたが東京は五輪に沸くと共に爆発的感染者に見舞われ緊張度合いが高まっています。

 緊急事態宣言発令地域が拡大されます、首都圏で感染爆発が止まりません、このままでは東京都内だけで一日感染者が一万を超え、全国新規感染者が二十万を超えるのも時間の問題でしょう、この為、政府は東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、大阪府、沖縄県へ、来月2日から8月31日まで、緊急事態宣言を発令する方針で、政府分科会が了承しました。

 千歳基地航空祭の準備が例年であれば盛上るところですが、COVID-19感染拡大は二年連続の千歳基地航空祭中止に見舞われるとともに、そんな悠長な事を云えない程に感染拡大が止まりません。デルタ株の感染力は怪物でし、夏には勢力が弱まる季節性感染症が真夏にこの猛威、なんとか抑えねば勢力が強まる冬の訪れはまさに死の季節になりかねません。

 東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、大阪府、沖縄県へ、緊急事態宣言発令へ。更にまん延防止等重点措置が、京都府、兵庫県、福岡県、北海道、石川県に発令され、期間は来月2日から8月31日までとなっています。既に緊急事態宣言は東京都と沖縄県に発令されていますが、これが継続の上で追加措置となります。しかし、自粛主体の措置で抑えられるか。

 緊急事態宣言が発令された東京では、緊急事態宣言下にあって新規感染者数が下がらないという、これまでの過去三度にわたる緊急事態宣言には無かった事態に見舞われています。死者数は全国で十数名、高齢者を優先したワクチン接種がある程度の効果を示しているのかもしれません、しかし、新規感染者の増大は必然的に重症者増大に繋がるのは、必至だ。

 四度目となりました緊急事態宣言ですが、第一次緊急事態宣言のように全国一律のものではありません、そして安倍総理時代のような全国小中高等学校一斉休校という、非常措置もとられていません。これは社会には大変な負担となりましたが、確実に言えるのは緊急事態という認識を共有し着実に人流を抑制したことだけは間違いありません。しかし今は。

 東京新規感染者3177名、7月28日の発表には驚かされました。テレワークの低調と不徹底の感染対策、首都圏の神奈川県と千葉県及び埼玉県は政府に緊急事態宣言発令を要請する方針が示されたのも28日ですが、思い切った抑制措置をとらなければ、結果的に収拾のつかない感染爆発につながるのではないか、いまが本当に最後の機会でないか、と思う。

 医療崩壊の懸念、ワクチン接種が高齢者に対し進んだことで重症化したまま死亡するリスクはある程度低下したのではないか、こう仮説を立てることはできるのですが、この仮説に依拠した場合でも、重症者と中等症2に区分される方は自発呼吸が出来ず、重症者が増え、ICU集中治療室収容が限度を超えれば、呼吸できない状態の患者が増え生死の問題だ。

 高齢者は守られているのですが、結果として医療崩壊が現状の感染拡大により現実のものとなれば、重症者が溢れた順番に死亡するという、第三次緊急事態宣言における大阪府と同じ状況になりかねません。結果的に感染者数を抑える努力が必要で、例えば学校休校やテレワーク率の明示について、これは特別措置法の限界まで行うべきではないでしょうか。

 都市封鎖は可能かと問われれば現行法の拡大運用で不可能ではありません。政府自民党は経済に大打撃を与える都市封鎖を、現行憲法施政下ではできない為、改憲議論を行っていますが、例えば”都道府県知事権限による道路交通法拡大運用による主要道路通行禁止”や”災害救助法に基づく警戒区域指定による事実上の都市封鎖”は現実に可能なのです。

 現行法で都市封鎖は可能、具体的に言えば、我が国は民主主義おっかですので成治は国民からの支持が無ければ存続できません、そして都市封鎖は法整備が在れば先手を打ち感染拡大を防止する、逆に言えば人口比でイギリスやイタリアにインドネシアやブラジルのような犠牲者が出た場合に、これを国民がそれでも経済が優先と支持するか、により決まる。

 COVID-19, 人口比でイギリスやイタリアにインドネシアやブラジルのような犠牲者といいますと毎日熊本地震や西日本豪雨の、一週間で阪神大震災、二週間で東日本大震災並みの死者が出る、これが延々と続く状態になって、日本は社会が保たれるのか、都市封鎖はそれでも不支持か、という命題となります。こうなると政治には選択肢がもうありません。

 BCP:事業存続計画、時事通信が30日1150時報道で、“政府分科会出席者から将来的なロックダウンを可能とする法整備を求める意見が出された”という一報がありました。しかし現行法では拡大運用で充分可能となっています。すると企業危機管理として、BCP:事業存続計画を改訂し、一ヶ月程度の都市封鎖を、盛り込むべき段階なのかもしれませんね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【創設記念】Weblog北大路機関-創設16周年,第二北大路機関&第52北大路機関とともに歩む

2021-07-29 20:05:33 | 北大路機関 広報
■ありがとう!創設16周年
 Weblog北大路機関は本日創設16周年を無事迎える事が出来ました、ありがとうございます。今回は懐かしい護衛艦くらま参加近海練習航海の写真とともに記念記事を進めます。

 北大路機関は防衛及び安全保障問題について、憲法上の平和主義をふくめ防衛議論を行うには防衛技術や各国情勢、防衛戦略と外交政策などを関心を以て分析を行う必要から創設されました。分析は事実を元に広げねば単なるポピュリズムに陥ります、そして事実は分析を積み重ねなければ視野が限られ全体を俯瞰できません。そのための北大路機関です。

 2005年7月29日、Weblog北大路機関は阪急十三駅にて創設されることとなり、本日2021年7月29日はその創設16周年となりました。十年一昔といいますが16年となりますと、創設当時は護衛艦はるな以下第一世代のヘリコプター搭載護衛艦が現役、74式戦車が自衛隊戦車の主力であり、F-4EJ改ファントムも数は減っていても複数飛行隊が現役でした。

 北大路機関はもともと大学での安全保障関連勉強会、所謂自主ゼミとして創設され、ここからWeb上へ活動を広げてゆきました。自主ゼミであれば16年間を継続させることは世代交代を重ねても難しく、なるほどWebとは現代の巨大なアゴラであり、今更ながらインターネットのサイバー空間は知的集約へ大きな進歩を重ねたものだ、感慨深いところ。

 しかし、危機管理というものを再認識しますと、Weblog北大路機関創設15周年こと昨年2020年にも痛感したところですが、COVID-19のような感染症の世界的流行というもの、知識としてリスクは承知しており歴史でもその再来は十分認識し得る留意事項ではあったはずなのですが、この点においてまだまだ危機管理には想像力の余地の広さを再確認する。

 COVID-19は百年後にも認識される災厄でしょう、実は2020年7月の段階では一時的に感染収束の兆しもあり、これは1919年のスペイン風邪ほどの猛威はふるわず、1959年のアジア風邪程度の許容できる最大の悲劇に収まるのではないかとの淡い期待もありましたが、実際は2021年7月に世界の死者は400万を突破、変異株デルタの感染拡大が今も続く。

 東日本大震災。Weblog北大路機関には阪神大震災の記憶もあり、この種の想定には冗長性と想像力が必要との経験を積む機会でもあったのですが、自然の猛威を東日本大震災においても認識しながら、COVID-19のような感染症まで留意が及ばなかった点は、もう少し安全保障を扱う北大路機関としては認識の視野を広げる必要があると反省点とおもう。

 感染拡大、しかし日本国内では各国と比較し、少なくとも現時点では感染拡大を抑制するとともに耐え難いほどの私権制限を強いる強権国家化も回避できている僥倖がありまして、実際、Weblog北大路機関も運用にさしたる支障はなく、強いていえば自衛隊関連行事の総崩れが二年目を迎える中、行事関連の速報記事の頻度が大幅に低下し残念、という点か。

 防衛情報。北大路機関では昨年より毎週月曜日に第二北大路機関において特集しました速報記事を分野ごとに集約する特集"防衛情報"を掲載し、また毎週火曜日には第二北大路機関への掲載を経ない比較的最新の情報を"防衛情報"として掲載しています。アクセス解析によればこの特集は好評で、写真のみ自前故に若干的外れで恐縮ですが、関心に応えられ幸い。

 Weblog北大路機関創設当時は、とにかく掲載が大変でした、回線はPHS方式で細く不安定、一枚写真を上げるだけでも一分以上、そしてカメラにしても今でこそCFカードがGB単位となり256GBというSDカードを活用していますが、当時は512MBが大容量、開始当初は32MBでフィルム一本分の枚数しか撮影できません、技術進歩はなかなかに凄い。

 北大路機関、安定してきますと毎日更新という方式に転換するまで一年以上を要しますが、記事掲載と作成に余裕がなく、誤字脱字の台風に2359時という期限の焦眉、これも安定化させ2000時台の記事更新というものを定着できたのは相当後になってからのこと、しかしこの期間、創設当初からの読者の方も多く、見守り頂けたのは幸いというところでして。

 京都幕間旅情、京都発幕間旅情、隔週で一回掲載と二回掲載を努めて分けていますが、毎週水曜日を中心に、敢えて軍事関係や防衛関係の論点ではなく、我が国の文化伝統歴史価値観について紹介する記事を掲載、一時この題材は長く掲載から外れていましたが、こちらも2016年からこの2021年で五年目となり、今後も最大限内容を充実させてゆきます。

 榛名防衛備忘録。連載記事を中心に北大路機関では一つの重点記事として掲載して参りましたが、防衛情報と京都幕間旅情の狭間に掲載頻度が低下していまして、しかし防衛情報は単なる時事、榛名防衛備忘録は北大路機関にとり両翼の一翼を担う分析記事です、この点について近く再検討を行う必要を感じていますが、今少しお待ち頂ければ、と思います。

 日曜特集。もともとはフィルム一本分にあたる24枚の写真を毎週行事紹介として掲載してゆくものですが、24枚分の写真に解説を加えますと毎週3000字に迫る文量となり、どうしても半分程度となってしまいます、これでは長々と続くだけであり読む側の立場を考えていないと反省しています。ただ、新たに4行事分の新規記事が完成、順次掲載します。

 日曜第二記事。こちらは2021年より新たに日曜日の1800時台に中編の記事を作成、掲載が薄まっているグルメ関係や鉄道関係と映画関係の話題などを紹介しています。日曜日ということで二つの記事を掲載する、これは2006年に毎日掲載を決定し開始して以来の運用改編ですが、比較的アクセス数も多く、今後とも掲載を継続しますので、お楽しみに。

 第二北大路機関について。Weblog北大路機関よりも掲載内容としては安定化したと考えられます、写真について難しい部分がありましたので、逆にWeblog北大路機関と第二北大路機関を完全に区分することとなり、逆に自由な写真を掲載する事となっていますが、最新防衛情報と写真の特撮を二本柱として記事内容を構成することで“変に”安定化しました。

 予備ブログとしての第二北大路機関、この運用は相当混迷していまして、最初は阪急電車と名鉄電車、舞鶴基地と岐阜基地の写真だけを掲載する、相当とがった掲載内容に集中していましたが、2011年より毎日複数記事掲載と、Weblog北大路機関に掲載しない時事や速報を掲載する予備というよりも補完的なWeblogへ転換していますが、現在の指針は。

 第二北大路機関は12時間を隔てず掲載する、この指針とともに先ず基本的に朝課業前の防衛関連最新記事を0600時代と0800時代に掲載、夕方1900時代に旅行関連の記事を掲載し、防衛関連最新記事は一定記事をまとめてWeblog北大路機関の防衛情報へインポートカテゴリにて掲載、逆に旅行記事はWeblog北大路機関の本文に特撮写真を充てています。

 予備ブログ、こちらはWeblog北大路機関と異なり添付データ上限が厳しく、一回の記事に複数の写真を掲載することは上限を圧迫します。このために特撮写真を作成し、もうどうなっているの的な写真で構成しているのですが、一部の方はお気づきのようですが毎月の掲載記事数にはある法則があります、お気づきの方には粗品をお渡ししているところ。

 第二北大路機関のアクセス数は例年通り低いままですが、予備ブログですので、万一に備えて掲載を維持することを第一として低空飛行のように継続してゆきますが、"北大路機関"というキーワードでの画像検索をおこないますと、総覧する写真のかずかずに、じわりじわりと第二北大路機関掲載写真の比率が増えてゆくのが、ちょっと不思議なのですが、ね。

 第52北大路機関、SNS版北大路機関として2019年より運用開始となりましたものですが、2年目に入りました。こちらは本来ならば予備ブログとしての機能は更新容易なSNS版に転換すべきなのかもしれませんが、いまのところ日記的な用途となっていまして、加えて、第二北大路機関更新情報などはリアルタイムで掲載するよう仕様を設定しています。

 COVID-19新型コロナウィルス感染症変異株デルタ感染拡大、これによりなかなかに息苦しい情勢と社会は二年目となりました。ただ、Weblog北大路機関が行う話題提供と論点提示は不変です。16年目となりましたが次の17年目とその先まで、皆様にお付き合いいただける話題を提供し続ける事が出来れば、幸い。今後とも北大路機関をどうぞよろしくお願いいたします。

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【京都発幕間旅情】千代神社(滋賀彦根)彦根最古社は天宇受売命と共に佐和山彦根山を巡る

2021-07-28 20:20:01 | 旅行記
■武家屋敷が並ぶ閑静な一角
 彦根は荘厳重厚な国宝天守閣彦根城を一通り廻ってみました後の散策が、実のところ趣き深いのかもしれません。

 千代神社。滋賀県彦根市に鎮座します社殿です。末広がり扇おみくじが有名という事で、お守り袋に小さな扇が収められここに籤が記されているという。滋賀を散策する、実は当方全く知らなかったのですが知人から彦根散策の際に薦められましたのがこの社殿です。

 青空のもとに鳥居をくぐりますと、おおきく曲がりまして境内参道は続いてゆきまして手水舎に清めつつ本殿のほうを眺めますと、そうそれほど広い神域ではないのですが、青空の開放感と共に社務所と、そしてその向こうに本殿がこう鎮座していますのがみえました。

 本殿は、檜皮葺三間社流造でありまして、寛永年間の西暦1638年に建立されたものといい、国の重要文化財に指定されています。彦根城から少し歩み進めた閑静な神域が透き通るようですが、実は彦根最古の神社という社殿はこの彦根を巡る数多歴史舞台と共に歩んだ。

 天宇受売命を祀る社殿は芸能の神という神社ですが彦根駅から彦根城の掘割の界隈を散策しまして、少し西へ歩み進めますと至る、彦根の古い町並みから駅の方へ寺町を巡っていますと至ります社殿です。諸説あるようですが現存する社殿では彦根最古の歴史を有する。

 孝元天皇の皇女倭迩迩姫の降誕によって勧請された、と社伝には在ります。孝元天皇年間は紀元前273年から紀元前158年ですので、それはもう連綿と歴史を紡ぐものではありますが、五世紀ごろにかの仁徳天皇の嫡子である履中天皇により再建されたともいいます。

 京町この一帯は江戸時代に武家屋敷が並ぶ閑静な一角でした。千代宮。そもそものこの社殿の始まりの歴史は佐和山の麓にありました千代宮という社殿でして、安土桃山時代後期、彦根山の山頂に遷座する事となったのですね。その遷座を行ったのがかの石田三成という。

 石田三成が佐和山城築城に際しまして、古くから崇敬集める社殿を城郭より見下ろすのは失礼にあたると彦根山に遷座しました。そしてその遷座となりました山頂には今、彦根城天守閣が威容を轟かせている。即ち彦根山はそのまま彦根の街並みの中心となってゆく。

 井伊直政。関ヶ原の戦いに勲功挙げ上州からここ彦根の大藩藩主となりました際、彦根城築城を行う際に、また佐和山の麓に再度遷座されることとなりまして、そして井伊家は寛永年間の西暦1638年に本殿を造営したのですね。この際に造営された本殿が今日のもの。

 彦根藩の千代宮への手厚い待遇は江戸時代を通して続いたようでして、また明治維新の際の動乱にも彦根は巻き込まれる事も無く、そのまま明治2年こと1869年に今の千代神社と改めまして、明治16年の1883年には県社に指定されまして静かな時の移ろいとともに。

 太平洋戦争の戦災を免れた彦根ではありますが、そもそも彦根の古い名は石町、故に昭和公害からは免れませんでした。昭和30年代、公害地獄が戦災復興の美名に覆い隠された時代に当時の社殿、伊吹山はじめ切り出される土砂のコンクリート工場に囲まれてゆきます。

 千代宮は佐和山の山麓の、要するに東海道本線真横に在りましたので貨物輸送にコンクリート工場立地が最適であったのは理解できるのですが、粉塵が重要文化財の隠田さえも固めそうな勢いであったといい、神社は昭和41年こと1966年にまたしても遷座する事に。

 神社は1966年、現在の場所へ本殿を解体し遷座する事となりましたが、東海道本線沿線から彦根城や市役所と歴史通といった風情ある街並みから少し奥座敷、歴史ある寺町に遷座した事は彦根中心部の社殿として改めて崇敬を集める事となりまして、今日に至ります。

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【防衛情報】バイパー攻撃ヘリとチヌーク輸送ヘリ,アナコンダ-ブッシュマスター-フェネク

2021-07-27 20:21:38 | インポート
■週報:世界の防衛,最新13論点
 今回はヘリコプターと空中機動部隊等が運用できる軽装甲車両等の話題を中心に13の最新情報をお伝えしましょう。

 バーレーン陸軍が導入するAH-1Zバイパー攻撃ヘリコプター初号機がベルヘリコプターテキストロン社において製造を完了したとのこと。バーレーン陸軍は2019年にAH-1Zを12機、9億1200万ドル導入する契約を結んでいます。バーレーン政府はAH-1Z導入を強く期待しており、政府視察団のベル社のヘリコプター製造施設訪問等も行っています。

 AH-1Z攻撃ヘリコプターは2021年後半にもバーレーンへ納入される事となっています。このAH-1ZはAH-1W攻撃ヘリコプターを抜本的に改良したもので、アメリカ海兵隊へ配備されています。ロングボウレーダーは搭載しませんがアパッチロングボウに匹敵する性能を有している事が強調されるものの、取得費用もアパッチロングボウ並みの機体です。
■ドイツ軍H-145LUH導入進む
 日本ではOH-6がそのまま後継機無に除籍されましたがドイツは手頃な機体を思い切った導入に臨んでいます。

 ドイツ連邦軍はH-145LUH-SAR救難ヘリコプター7号機をエアバスヘリコプターズ社より受領したとのこと。ドイツ連邦軍は7機の導入計画を進めており、今回の納入を以て完納となります。7機のH-145LUH-SARはニーダーシュテッテン空軍基地とネルフェニッヒ空軍基地に配備、新たにホルツドルフ空軍基地にも配備し即応機を待機させる運用を執る。

 H-145LUH-SAR救難ヘリコプターにはBK-117C2として開発されたH-145を原型として高性能カメラ及び高光度サーチライトと緊急ビーコンロケーターシステム及び医療機器一式とレスキュー用ウインチが装備されているとのこと。H-145はUH-1HやOH-6の後継機として各国に売り込まれており、アメリカ陸軍州兵もUH-72として運用しています。
■ドイツ軍UH-1運用終了
 日本ではベル412が新規調達されていますがUH-1をUH-1Dのまま運用していましたものが遂に除籍されました。

 ドイツ連邦軍はUH-1D多用途ヘリコプターの53年間にわたる運用を終了させました。ドイツ連邦軍は1967年にUH-1多用途ヘリコプターの導入を開始して以来ドルニエ社によるライセンス生産により1981年までに352機のUH-1を製造しています。ドイツ連邦軍では多用途ヘリコプターとして重宝、最後の運用は救難ヘリコプターとしての運用でした。

 UH-1Dは老朽化と共に救難ヘリコプターの運用を順次エアバスH-145-LUH-SARへ移行させています。H-145-LUH-SARはメッサーシュミットベルコウブローム社と川崎重工が共同開発したBK-117の改良型BK-117-C2のエアバス仕様機で、連邦軍に7機が配備されます。多用途ヘリコプターとしてのUH-1はNH-90多用途ヘリコプターに代替されました。
■イギリスCH-47,14機を20億ドル
 CH-47輸送ヘリコプターは輸入すると物凄く高価なのですね。

 イギリス軍はボーイングよりCH-47輸送ヘリコプター14機を20億ドルで取得する構想を発表しました。これはブルームバーグが3月25日に報じたものでこれらの航空機及び関連資材は2030年までに納入を目指すという。ボーイング社では現在、CH-47の生産ライン維持に苦慮しており、アメリカ陸軍のCH-47導入下方修正の穴埋めを模索中とのこと。

 ボーイング社ではCH-47の生産ラインを維持するには年間18機の量産が必要であるとしており、一方、イギリスでは1980年にCH-47初号機を導入して以来整備を継続しており、現在は近代化改修機を含め60機が運用中となっています。ボーイング社では特に初期のCH-47についてイギリスが新造のCH-47へ更新するよう、商戦を強化している構図です。
■オランダCH-47F受領開始
 CH-47輸送ヘリコプターの話題をもう一つ。

 オランダ空軍は4月、CH-47F重輸送ヘリコプター初号機を受領したとのこと。オランダ空軍は長らくCH-47重輸送ヘリコプターを運用しており、今回導入したのは最新型であるF型へ再生改修されたもの。オランダ空軍は先ず6機のCH-47DをCH-47Fへ改修する事としています。オランダ空軍は新規購入と併せCH-47Fの20機体制を目指しています。

 CH-47F重輸送ヘリコプターはアメリカ陸軍のCH-47F-MYII-CAAS仕様にあたるもので、2015年にオランダ政府が導入を決定しています。この決定では、CH-47Dの11機を延命改修できるものは改修し、改修できない機体はそのまま新規製造機に更新する方針です。これらの機体はギルゼレイエン基地の第298統合ヘリコプター航空隊へ配備されます。
■DMVアナコンダ警戒車輛登場
 DMVアナコンダ警戒車輛は軽量ですが興味深い装備と云えるやもしれません。

 オランダ海兵隊はDMVアナコンダ警戒車輛をアメリカ本土での合同訓練へ参加させました。この訓練はオランダ海兵隊第32襲撃中隊が参加したもので、キャンプレジューンにて実施、アメリカは第2海兵師団が参加した。DMVアナコンダはイタリアのイヴェコ社製7t型四輪駆動車の車体部分に180hpのイヴェコ社製ディーゼルエンジンを搭載したもの。

 DMVアナコンダ警戒車輛は厳密には装甲車ではありませんが、装甲化キットにより車体底部と扉部分やフロントガラスが防弾化されており、最高速度は110km/hで航続距離は1000kmと優秀で、後部は荷台で車体上部には12.7mm重機関銃を搭載しています。オランダ海兵隊はこの車輛を2019年1月に36両導入、平凡な車輛ですが実用的な設計です。
■オランダ,ブッシュマスター増強
 自衛隊もブッシュマスターを買い足すか性能は兎も角安価な96式装輪装甲車の量産継続を行うべきではないか。

 オランダ軍はブッシュマスターMEDIVAC装甲救急車5両をオーストラリアのタレスオーストラリア社より納入されました。オランダ軍は2004年にアフガニスタンでのISAF国際治安支援部隊用に最初の25両を緊急導入していらい、ブッシュマスター耐爆車両98両を既に歩兵機動車輛として導入し、装甲戦闘車両を補完する重要な装備となっています。

 ブッシュマスターMEDIVAC装甲救急車には最大8名を収容可能で、装甲救急車として運用する際には、衛生分遣班と担架収容重症者1名及び着席可能である軽傷者4名を輸送可能であり、また装甲防御力は7.62mm徹甲弾の直撃や81mm迫撃砲弾の至近距離での炸裂や地雷の爆発から乗員を防護可能です。また歩兵機動型も1両、同時に納入されています。
■イギリスがマスティフ海外派遣
 マスティフは軽装甲機動車をそのまま巨大化させたような頑丈な耐爆車輛です。

 イギリス国防省は運用するマスティフ耐爆車両の改良型をアフリカのマリへ派遣しました。マスティフはNPエアロスペース社が開発した耐爆車両で、2000年代から2010年代にかけてのアフガニスタンやイラクでの安定化任務に際して巡回中の部隊をIED簡易爆発物やロケット弾攻撃から防護する目的で調達された、その名の通り非常に大柄の車両です。

 マスティフは12両が700万ポンドで強化されており、特に暫定的な車両として設計された為に老朽化が目立っており、この改修では独立懸架装置への換装や運転装置の更新、走行装置や制動システムの更新、中央車輪空気圧制御システムを搭載しています。マリでの安定な任務はCOVID-19影響を受けており、今回漸く新しい装備を搬入できた構図です。
■ベーオウルフ全地形車両
 ベーオウルフ、自衛隊も水に浮くし不整地突破能力の高い車両を極地というよりは被災地輸送と山岳戦を想定し導入するべきです。

 アメリカ陸軍はベーオウルフ全地形車両試作車2両をBAEシステムズ社より納入されました。ベーオウルフ全地形車両はCATV寒冷全地形対応車として計画している全地形車両の候補車輛で、イギリス海兵隊などに配備されているBvS.10装甲全地形車両の非装甲型であり、今回アメリカ陸軍は迅速な配備の必要性から既存車輛の改良型を導入する計画です。

 ベーオウルフ全地形車両は連接車体方式を採用しモジュール方式の後部車体には最大8tの貨物輸送能力を輸すると共に45度までの登坂能力を有しており浮航能力を有しており、当面は北極圏等の極地方での運用を見込んでいますが、酷寒地域や積雪地の他に砂漠や池沼地帯に山間部での運用が可能である本車を後方支援や人道支援任務に投入する方針です。
■MALE長時間滞空型無人機
 MALE長時間滞空型無人機は旧式弾薬をそのまま近代化改修するというもの。

 トルコ空軍が開発するMALE長時間滞空型無人機はKGK-SIHA-82滑空爆弾の投下試験を完了させました。この試験は4月26日に実施され、黒海沖の兵器試験場にて投下、30kmを滑空し目標に命中したとの事です。KGK-SIHA-82滑空爆弾は既存の750ポンド爆弾に誘導装置と滑空翼を装着したもので、500ポンド爆弾型なども開発されているところです。

 MALE長時間滞空型無人機は双発単胴型の無人機で、28時間の滞空が可能、ブロンコCOIN機のような形状となっています。KGK-SIHA-82滑空爆弾の搭載により無人偵察機や観測任務に留まらない長距離打撃力の一端を担うとともに、このKGK-SIHA-82滑空爆弾については射程を45kmに延伸させる構想、1000ポンド爆弾型の開発などが進められています。
■ジャベリン台湾輸出
 台湾は自衛隊の様なカールグスタフさえ第一線に揃っていません。

 アメリカ政府は台湾及びリトアニアへFGM-148ジャベリン対戦車ミサイルの輸出を承認しました。台湾は3900万ドルでジャベリン発射装置40基とジャベリンミサイル360発、リトアニアは5500万ドルでジャベリン発射装置74基とジャベリンミサイル220発を追加取得します。ジャベリンはトップアタック方式で第三世代戦車を撃破可能なミサイルだ。

 台湾陸軍では中国軍の脅威を前に、対戦車火力の深刻な欠如が問題視されており、現在のところ第一線の携帯式対戦車火力には旧式のM-40-106mm無反動砲と戦車への効果が怪しいM-72LAWが主力となっています。106mm無反動砲は第三世代戦車に対し側面の限られた部分を狙う事となり、M-72は軽装甲車に対する限定的な威力しか有していません。
■フェネクへBAAⅡ監視システム
 フェネク装甲偵察車、自衛隊は軽装甲機動車を多用して威力偵察から戦場監視へ転換するのか16式機動戦闘車を用いた威力偵察を行うのか迷いが。

 オランダ軍はフェネク装甲偵察車用にBAAⅡ監視システム188基を7500万ユーロにてヘンソルト社より取得する方針です。BAAⅡ監視システムはレーザー測距装置及び昼間光学TVカメラと熱線暗視装置の複合光学装置です。フェネクはドイツとオランダが共同開発した四輪式装甲偵察車輛、従来の20mm機関砲を持つルクス装甲偵察車を置換えています。

 フェネク装甲偵察車は7.62mm弾への耐弾性能を有しており、伸縮式ポールマストにより偵察を行う車輛です、BAAⅡ監視システムの搭載は旧式化した偵察装備の更新であり、改修作業はドイツのクラウスマッファイベクマン社が対応、センサーは2022年に供給され2023年より改修完了車輛の引き渡しを開始、2027年までにすべての車両を改修します。
■ブラジルLMV-BR受領開始
 LMV-BRは意外に使いやすそうなものですが取得費用とライセンス生産により国内整備できるように運用基盤を構築した場合の費用が気に成る。

 ブラジル陸軍はイヴェコLMV-BR軽装甲車32両を初受領しました。イヴェコLMV-BR軽装甲車はイタリア製軽装甲車両でブラジル陸軍は2019年に63両の取得で契約しており、2023年までに納入する予定です。イヴェコLMV-BR軽装甲車はイギリス陸軍FCLV軽指揮連絡車輛選定でパンサー装甲車として採用される等、広く輸出されている装甲車両です。

 イヴェコLMV-BR軽装甲車のブラジル陸軍納入はセッテラゴアスの現地工場において製造されており、ブラジル陸軍仕様としてエンジンスノーケル等が挙げられる。イヴェコ社では最大186両のブラジル陸軍取得を期待しています。イヴェコ社製装甲車はブラジル陸軍に広く採用されており、六輪型の装甲車であるVBTPは既に480両が納入されています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】フランスラファールF4-1&ラファールF3Rと韓国KF-21ボラン,戦闘機開発競争

2021-07-26 20:11:29 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 日本ではF-2戦闘機後継機開発が本格化しつつありますが、ここでフランスと韓国という手堅く凡庸ながら革新的な手法と宝くじ一発屋方式を比較してみましょう。

 フランスのDGA国防装備総局は最新鋭のラファールF4-1戦闘機について評価試験を開始したと発表しました。ラファールF4-1戦闘機の試験はフランスのイストル空軍基地にて4月26日から29日まで実施され、この概要は一か月後の5月に発表されました。ラファール戦闘機の最新型はラファールF-3Rでインドやエジプトへ順調に輸出が進んでいます。

 ラファールF4-1戦闘機の評価試験へはフランス国内の防衛産業各社を筆頭にダッソー、タレス、MBDA海軍よりラファールM戦闘機2機、空軍よりミラージュ2000戦闘機2機、アルファジェット練習機2機が参加しています。フランス空軍ではラファール戦闘機の改良を継続する一方、ミラージュ2000戦闘機の後継となる次世代機開発も開始されています。
■ラファールF4-1戦闘機開発
 F-2戦闘機もラファールのように改良型を順次開発して往く方式を執れば次期戦闘機へ上手く繋げたように思います。

 フランス軍が評価試験を開始したラファールF4-1戦闘機は新しくヘルメット統合情報表示装置や新型の1000kg級空対地ミサイル等の運用能力を付与されるとのこと。この新型ヘルメットはSCORPIONヘルメット照準器で、フランス軍データリンクシステムの情報を操縦士の視界を動かす事無く視線と共に表示する2010年代からの先端システムのひとつ。

 ラファールF4-1戦闘機には情報表示のほか現行のMICAミサイルの次世代型であるMICA-NG空対空ミサイルの運用能力が付与される、これはアクティヴレーダー誘導の素子にAESAレーダーを採用したものでステルス機等へ探知能力が向上している。フランスではラファールF4-1に続きラファールF4-1RAUの開発が決定しており、改修が継続的です。
■ラファールF3R戦闘機輸出
 日本の戦闘機開発から参考にする場合、ラファールの最新型を開発し続け旧式化したラファールを改修して格安で輸出する方式は興味深い。

 クロアチア空軍が進めるラファールF3R戦闘機中古取得は12機で9億9900万ユーロとなります。これは2021年5月に発表されたもので、9億9900万ユーロの契約にはラファール用のミサイル等の弾薬はもちろん、整備支援や予備部品及び予備エンジン、またフランス国内で行う定期整備やラファール運用要員の教育訓練受け入れなどが含まれます。

 ラファール戦闘機、クロアチア政府は次期戦闘機としてJAS-39戦闘機とともにラファール戦闘機を検討してきましたが、2020年10月4日にフランスより中古ラファール戦闘機12機の無償譲渡を受けると発表しました、今回導入するラファールは比較的新しいラファールF3R仕様であり能力向上に関わる実費については有償供与となりましたかたちです。

 クロアチア空軍では現在運用している機体がMiG-21戦闘機24機であり、整備性の高い機体ではあるのですが老朽化が深刻であり、第二世代戦闘機から第4.5世代戦闘機に置き換わる事で防空能力が大幅強化されます。ただ、機体は無償であっても引き渡しに関わる実費で12機で9億9900万ユーロという費用は、戦闘機というものの費用を考えさせられます。
■KF-21ボラン試作機開発状況
 F-2戦闘機を眺めていた隣国では戦闘機開発が進められていますが。

 韓国が開発を進める准第五世代ステルス戦闘機KF-21ボランはKAI韓国航空宇宙工業社において5機の試作機製造を進めている、韓国のハンギョレ新聞が報じました。試作初号機は4月9日にロールアウト式を行い、現在はKAIのKF-21試作機製造ラインと向かいに在る実験棟において試験中で、ハンギョレ新聞によれば一年ほどで試験を完了するという。

 KF-21ボランは2022年にも初飛行を予定しており、2026年に完成、2028年までに先ず韓国空軍が40機を調達し、その上で2032年までに全体で120機を量産するとともに、国際共同開発として開発費の一部を分担するインドネシア空軍へも配備される計画だ。しかし、開発の遅れが指摘されてており、KAIは今回特別にハンギョレ新聞へ報道公開している。
■KF-21ボラン初号機への疑念
 戦闘機開発は一筋縄ではないか無いという事をF-2後継機開発に際しても冷静に見るべきでしょう。

 韓国が開発を進めるKF-21ボラン戦闘機初号機は事実上のモックアップの可能性が指摘されている。KF-21戦闘機は韓国がインドネシアとともに開発を進める准第五世代ステルス戦闘機であり、4月9日に初号機がロールアウトしている、しかし韓国国内報道koreajoongangdailyによれば、この機体は飛行する事無く解体されている展示用という。

 KF-21ボラン戦闘機初号機について関係者の話として、機体は自立する事は出来ず支柱により転倒を防いでいたと、韓国退役将官の発言を報じている。もっとも、エンジンは実物が用いられており、純粋なモックアップではなく、間に合わせで飛行は勿論自立さえ出来ないものの既に存在している部品を組み込んだ半分実物の実機に近いモックアップという。

 初号機は着陸装置と燃料系統や燃料タンクとエンジン及びコックピット等は実物を搭載しているが、この報道について韓国空軍は最終的な地上滑走試験を行うまえの計画段階の一部としているが、本来であれば初号機はそのまま地上試験を経て飛行しなければならないものであり、飛行する事無く展示会場で組み立て解体される初号機には謎と不合理が多い。
■KF-21ボラン初号機疑念背景
 国際共同開発はF-2のFSX計画とは違う意味で斜め上の状況となっているのが隣国のよう。

 韓国空軍が4月9日に発表したKF-21ボラン戦闘機初号機がそのまま会場で解体された事について、韓国国内報道では初号機を当日に訪韓していた、インドネシアのスピアント国防相へ展示し、インドネシアの開発費分担金支払い見合わせが、そのまま共同開発計画中止に繋がらないよう繋ぎ止める目的があったのではないかと考える向きがあるようだ。

 インドネシア政府はKF-21ボラン戦闘機開発遅延と性能不足を憂慮し、また当初韓国政府が約束した開発計画へのインドネシア防衛産業の参画が認められない状況から分担金支払いを延期させていた。しかし、スピアント国防相がKF-21実機を視察した事で一転、開発費分担を再開している。その初号機が飛行不能のはりぼでとすれば再度一転しかねない。
■時事:自衛隊五輪支援8500名
 ここからは時事です。東京オリンピックがいよいよ開始されましたがテロ攻撃等への警戒も怠る事は出来ません、警察と共に自衛隊も協力します。

 防衛省自衛隊は東京で行われる東京オリンピック及び東京パラリンピック支援へ陸海空自衛隊より8500名を派遣することとなりました。新型コロナウィルスCOVID-19の世界的感染拡大を受け一年延期された五輪、防衛省自衛隊では東京五輪準備支援隊を2013年より運用していますが、本番においては聖火台支援や各国国旗掲揚、会場警備に当ります。

 東京オリンピック及び東京パラリンピック支援について、岸防衛大臣は18日に支援隊編成完結式において隊員を激励しました。なお、当初計画では各国要人の空港から式典会場へのヘリコプターによる空輸支援等が含まれていたと考えられますが、最近のCOVID-19変異株デルタの感染拡大を受け五輪は無観客へ、各国要人の来日も大幅に減少しています。
■アフガン五輪休戦は成らず
 アフガニスタンの治安悪化はオリンピック期間中もオリンピック休戦とはなりませんでした。

 アフガニスタンでは7月19日、日米欧主要国大使館15か国とNATO北大西洋条約機構代表が連名で首都カブールへの攻撃を武装勢力タリバーンへ要請しました。アメリカ軍およびNATO有志連合軍の撤退により急速に情勢が悪化しているアフガニスタンではカブールにある各国の大使館や領事館などの運営にも影響が及びかねない情勢となっています。

 タリバーンとアフガニスタン政府との間での停戦交渉が7月上旬にカタールの首都ドーハで行われていますが、成立には至らず、また例年7月20日にはイスラム教の祭典犠牲祭イードアルアドハーに併せ停戦が行われていますが、外国軍隊の撤退を受け2021年はイードアルアドハー停戦は行われていません。アメリカ軍の完全撤退完了は8月31日の予定です。
■時事:五輪米製無人機1852機
 東京オリンピックに関する話題ですがブルーインパルスよりもむしろこちらに考えさせられました。

 東京五輪開会式において小型無人機1852機が活用され地球儀などを上空に描きました。東京五輪開会式1852機の無人機運用を防衛利用する、こう考えると凄い可能性を秘めているのですね。今回使用されたのはアメリカのインテルが開発したシューティングスター無人機、なにかT-33シューティングスター練習機を思い出すものですが、比較的安価です。

 インテル社によればシューティングスターは200機での飛行展示費用が9万9000ドルとい、これは01式軽対戦車誘導弾の半額程度でしかありません。日本国内で運用できるということはT-33を川崎重工でライセンス生産し自衛隊へ配備したように、自衛隊にこの無人機を採用する事も可能だ。勿論、攻撃用ではありませんが、防御用に非武装の無人機は有用だ。

 1800機あればスウォーム攻撃、ミツバチの大群のような攻撃が可能になると考えるのは初歩の初歩でして、攻撃用ではなくまもりの壁として、敵対するドローン攻撃から地上の非戦闘員を防衛するドローンの壁に使えるし、対戦車ミサイルによる攻撃をドローンの壁で防ぐ事も出来る。しかもこれは一機3億するスキャンイーグル無人機より格段に安価です。
■時事:シューティングスター
 シューティングスターができる能力は意外と多いのかもしれません。

 東京五輪開会式に飛行しましたインテル社製1800機の無人機活用法を考える、例えば海上での護衛艦防空用に、デコイとして活用する事も出来る、ミサイルシーカーからみれば2000機のドローンがレーダー反射板と共に一定間隔で150mの幅をもって海面すれすれを飛行しているのと、となりの161mの護衛艦はレーダーで見分けつかない。正に新時代だ。

 従来は中国が最も先進的で、同程度の技術を既に2010年代広範に行っていましたので、日本でも示せたのは大きな意味がありました。問題はあれを防衛利用する気構えが在るか、もちろん当事者としては防衛装備庁は技術研究本部時代から球体型ドローンという建物内を飛行できるものを開発していました、問題は予算を担うもっと上の気構えという所ね。

 一方、電子妨害による脆弱性をどのように対応するか、という事。GPS電波でさえも欺瞞される可能性があり、AI運用はまだ過渡期、補助的でありドローン運用を完全にAIのスタンドアローンとして師団長級の権限をAIに付与できる段階には至っていません、すると、例えば非可視光レーザー通信による管制など、装備化への技術が求められることでしょう。

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【日曜特集】中部方面隊創隊五〇周年記念祭【12】六〇周年記念祭へ期待(2010-10-17)

2021-07-25 20:01:16 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■50周年新旧装備品展示を巡る
 中部方面隊創隊五〇周年記念祭は全ての展示が終了しました。そしてここからは装備品展示を巡り歩み進める事としましょう。

 輸送防護車のような車両で普通科部隊用の高機動車を置き換えられるならば、軽装甲機動車は騎兵中隊のように乗車戦闘に特化し下車戦闘と占領は他の中隊に任せる、包囲も迂回も突破も機動力とともに運用、その分だけ攻撃限界線を遠くに採る、それが理想と思う。

 3-1/2tトラックの防弾型、73式大型トラックと呼称した方が通りが良いように思うのですが、こちらはそのキャビン部分に防弾板と防弾ガラスを追加し、小銃の銃撃程度には生存性を確保したもの。国際平和維持活動等で安全性を確保するべく開発されたキットです。

 野外炊具が牽引態勢で、第36普通科連隊第1中隊の装備です、観閲式には参加していない。驚くなかれ、これが一台あれば一個中隊220名分のご飯と副食を同時に調理可能です、牽引しつつ炊飯も出来るという事ですが、その場合は炊飯のご飯がえらいことになるという。

 吹き上がる清冽な真水、これは乾杯のシャンパンでも戦車が消火栓を踏みつぶしたのではなく散水の様子です。これからヘリコプターがここ式典会場へ装備品展示にて着陸する為、砂塵対策だ。2003年でしたか、訓練展示でUH-1が舞見上げた砂で当方一行は真っ白に。

 03式中距離地対空誘導弾、青野原駐屯地への帰路に向けての準備が行われている。できれば91式戦車輸送車に74式戦車を搭載する様子も見たかったのですが、戦車は特殊大型車両である為に今津駐屯地への帰路に就くのは法律上深夜から、となってしまう。不便です。

 防弾型の3-1/2tトラックには野外炊具一号が牽引状態となっています、大事なものですからね。しかし、稀に思うのですがキャブオーバー型の3-1/2tトラックの車体部分を応用して装輪装甲車か耐爆車両を設計した場合、国産トラック技術ならば良いものができないか。

 装備品展示の96式装輪装甲車、この2010年中部方面隊創設50周年記念行事における展示は国際平和維持活動を想定したもので、96式装輪装甲車が待機するのは手前に宿営地ゲートを模した展示が為されています。ゲートを護る防御力の多少高い装甲車、というもの。

 モニターシステム。なにも砲艦の展示ではなくPKO任務に際して宿営地の警備を行う為の遠隔監視モニターシステムの展示です。これこそこの50周年行事の前年にあたる2009年までイラク復興人道支援任務へ派遣していた、そんな緊張名残りの時代のものといえます。

 モニターシステム、ちなみにこんな感じでみえるのだとか。ちなみに不審な武装をした人間とか財布を落とした状況をAIで認識するような技術は無い、とのこと。一応イラク派遣のサマーワ宿営地は最新の野戦築城の技術を用いて造成した、施設科研究の集大成という。

 AH-1S対戦車ヘリコプター、着陸態勢へ。50周年という事で様々な取組がありました、ただ、45周年行事のようなチアリーディングとか、脱線したようなものは無く自衛隊らしい行事に徹していたと思う。そしてこの行事の翌年に、あの3.11東日本大震災が起こった。

 駐屯地業務隊の消防車、ヘリコプターの発着ということで万一の火災に備えて消防車が展開している。なお、この翌年の東日本大震災以降、自衛隊への理解度が大きく高まり、この伊丹駐屯地でも毎年記念行事の際には訓練展示への戦車砲爆音にも理解が示されました。

 AH-64D戦闘ヘリコプターの地上展示、増槽を搭載して航続距離を延伸させていまして、01の表記の通りこの機体は航空学校のもの、もともと戦闘行動半径の大きなAH-64Dですが、祝賀飛行を経てこの搭載燃料だけで兵庫県伊丹と三重県の明野を往復できるのですね。

 007のオープニング。ではなく106mm無反動砲の旋条だ。こちらは50周年記念行事ということで過去に運用された装備も資料館や補給処から装備品展示に並んでいまして、60式106mm無反動砲は過去、普通科中隊対戦車中隊や師団対戦車隊などに配備されていました。

 60式106mm無反動砲はジープや73式小型トラックに車載運用され車上から射撃が可能ですが、陣地からの射撃も可能だ。無反動砲の名の通り強烈な後ガスにより反動を相殺する手法は105mmの大口径砲を極めて軽量に実現しまして、予備自衛官部隊等に最適と思う。

 58式/M-101榴弾砲、こちらも過去の装備です。特科連隊の第1大隊から第4大隊までに配備され普通科部隊の直掩火力として、また敵迫撃砲を制圧する用途で用いられました。軽量でUH-60JA多用途ヘリコプターで吊下げ空輸も可能、空中機動部隊には今も有用では。

 105mm榴弾砲は軽量さを活かしてイギリス陸軍がアフガニスタン派遣に際し、敵部隊が接近困難な山間部に輸送ヘリコプターにて搬入し射撃陣地を構築した事例が。ただ陸上自衛隊ではこの任務は実質、榴弾砲ではなく別の、120mmRT重迫撃砲に置換えられています。

 64式81mm迫撃砲、アメリカ製M-29迫撃砲を参考に国産化したもので重量52kgと射程3000m、空冷用砲身と全周射撃を可能とした円盤型底板が特色ですが、現在はイギリス製L-16に置換られた、こちらは重量36kgと軽量で射程も5650mと長い。後に米軍も採用へ。

 M-29迫撃砲は世界中で採用されていまして、今でも現役の国が多い。しかし陸上自衛隊では第一線火力を充実させるとの観点からL-16を1994年に採用しています。フランス製120mmRT重迫撃砲と併せて迫撃砲が充実し、特科火砲はその後減退時代へと入りました。

 03式中距離多目的誘導弾、欧州とアメリカが共同開発したMEADS中距離拡大防空システムに相当するものですが、MEADSは開発への同床異夢で結局開発中止となってしまいまして、繰り上げ当選の様ではあるのですが西側諸国では最新鋭のミサイルとなっています。

 改良ホーク。旧型装備という。…。改良型を旧式装備と呼ぶのは日本くらいでしょうか、改善Ⅲ型等は03式中距離多目的誘導弾にほぼ近い性能を発揮する。ただ、改良に相当予算を投じていまして、ホークが無ければ今頃普通科部隊は全員73式装甲車に乗っていたとも。

 70式地雷原処理装置。旧式というよりは現役の装備で、北海道では96式装輪装甲車や73式装甲車に車載して運用しています。92式地雷原処理装置が開発されていますが、70式地雷原処理装置は人員用通路を啓開のに必要な装備、奥に見える爆導索にて地雷を処理する。

 74式戦車、こちらが新装備扱いに。この2010年は10式戦車が制式化された年度でして、戦車400両防衛大綱定数時代には2016年に10式戦車が第3戦車大隊へ配備される計画もあったようですが、残念ながら防衛政策の変更で戦車大隊は2021年に廃止改編されます。

 50周年記念行事ということでテレビの収録も。しかし、この74式戦車を新型戦車と紹介しているのは、ちょっと不自然です。50周年なのですから富士駐屯地の戦車教導隊あたりから90式戦車くらい借りてきてほしかった、と思ったりする。今は16式機動戦闘車が並ぶ。

 96式装輪装甲車の宿営所警備展示、ゲートを模していまして、このゲートにはスパイクが内蔵されていて強行突破された際には車輪を無力化できる構造に。2010年から十年を経た2020年は世界がコロナウィルスCOVID-19に蹂躙、2030年はどうなるのか、楽しみだ。中部方面隊創隊五〇周年記念祭特集は第12回の今回が最終回です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】一畑電車で出雲大社へ,北松江線と大社線にて活躍する旧京王5000系電車

2021-07-25 18:22:51 | コラム
■一畑電車の旧京王電車
 一畑電車通称”バタ電”、京都から遠く出雲大社へ旅行へ歩み進めまして面白い電車に乗りました際のおはなし。

 一畑電車、長らく一畑電鉄と思っていましたが一畑電車というのが正しいという。出雲市駅は日本でも数少なくなった寝台特急の基点駅ですが、ここから出雲大社まではバスで十五分くらいと考えていたものの一時間近くかかるといい、電車を利用することとしました。

 京王5000系電車。ほう、と思われる方も多いでしょうか、近年はBSデジタル放送にて古いサスペンスドラマや刑事ドラマなどがリバイバル放映されていまして、昔の東京、高度経済成長時代や安定成長時代の東京、京王5000系電車はその情景として映る電車の一つ。

 出雲大社と松江を結ぶ一畑電車、松江市の松江しんじ湖温泉駅と出雲市の電鉄出雲市駅を結ぶ33.9kmの北松江線と出雲大社前駅と川跡駅の8.3kmを結ぶ大社線の二つの路線から鉄道事業を行っています。出雲市駅から出雲大社へ参拝に進む際には川跡駅で乗り換える。

 一畑電車は独自車両も開発取得していますが、主力は全国大手私鉄中古車両です。なかでも京王5000系電車は2100系として1994年に2両編成を4編成の8両、5000系として文字通り5000系の2両編成を2編成4両導入しています。通勤電車ながら妥協しない構造だ。

 京王5000系、京王電鉄、いや当時は京王帝都電鉄でしたか、1963年に導入を開始した通勤車両で京王電鉄では1996年に引退していますが、当時最新鋭の空気バネ車体を採用、釣掛駆動もカルダン駆動にも対応し手堅い車両として1964年にローレル賞を受賞しています。

 一畑電車に転用された旧京王5000系は黄色、JR西日本山陽本線117系のような、塗装に貫通扉部分を旧国鉄ぶどう2色とした独特の塗装が採用されていましたが、一部車両がクリームホワイトにラインの京王塗装として運行、往年の色彩が鉄道愛好家を驚かせました。

 南海21000系電車を3000系として京王5000系とともに2017年までは2両編成を4編成8両導入していました、懐かしい写真になる、こういいますのも南海21000系は高野線に上るズームカーの原型として1958年に導入、丸い形状は丸ズームとして親しまれました。

 電鉄出雲市駅のホームにて。出雲市駅は日本でも数少なくなった寝台特急の基点駅ですが、ここから出雲大社まではバスで十五分、くらいと考えていたものの一時間近くかかるといい、また一畑電鉄の電車でもなかなかに遠く感じましたが、それも愉しい旅行の一時です。

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【土曜特集】横須賀いせ-しらぬい寄港の春,艦艇日記【7】巨大な護衛艦いせ(2019-04-14)

2021-07-24 20:01:18 | 日記
■艦艇日記軍港めぐり遊覧船
 横須賀軍港めぐり遊覧船もいよいよその航路は終盤に差し掛かってまいりました。

 いせ、ときわ。ヘリコプター搭載護衛艦は巨大だ。基準排水量13500tで満載排水量は19000t、しかし、いずも型と違い純然たる水上戦闘艦として設計されている護衛艦ひゅうが型はソナーを有し敵潜水艦へ短魚雷を投射する為に突進するだけの機動力を有している。

 はたかぜ、むらさめ、の護衛艦を眺めます。はたかぜ、は現在護衛艦から練習艦へ種別変更されています、順次はたかぜ型の二隻は練習艦種別変更となる計画で、二番艦しまかぜ、も間もなく練習艦となる計画です。そろそろ、はつゆき型護衛艦由来練習艦もお役御免に。

 いせ。艦尾は巨大です。ひゅうが型護衛艦はF-35B戦闘機を運用するには十分な余裕はない、とされているのですが、198mの全長は決して不充分ではなく、アメリカ海軍強襲揚陸艦では90mの短距離滑走で運用されているのですね、そしてこちらは速力で8ノット速い。

 はたかぜ、むらさめ、てるづき、たかなみ、おおなみ。F-35B運用に、ひゅうが型が過小というのであれば、間もなく護衛艦増強で2個群体制へ改編される掃海隊群の旗艦に二隻が移管され、いずも型護衛艦の拡大改良型2隻が建造される可能性も、あるのでしょうか。

 艦隊護衛艦の建造は、しらぬい竣工により一段落しているのですが、むらさめ型後継艦は数年以内に具体化し、十年程度後には建造に移行しなければならないでしょう。この場合は船体の大型化はあるのか、どのような任務の多様化に対応する設計となるのでしょうか。

 いせ、はたかぜ、むらさめ、てるづき、たかなみ、おおなみ。艦対艦ミサイルの長射程化とイージス艦艦対空ミサイルの長射程化、LRASM艦対艦ミサイルは射程560kmとなり、スタンダードSM-6は射程370kmとなる、この為の水上戦闘艦センサーはどう発展するか。

 F-35Bはその一つの回答になると思うのです、もちろんX-47Bのような機体という選択肢もありますが、ニミッツ級のような船体でなければ搭載できません、P-1哨戒機は敵防空艦勢力圏内に入るにはリスクが残る、すると消去法でステルス機の第五世代機が残るという。

 しらぬい、きりしま、はるさめ。アーレイバーク級では建造費低減へ搭載艇を断念し複合艇としているのですが、護衛艦ではこうした動きはありません、すると無人哨戒艇や水中センサーの揚収装置に転用できる事を意味しまして、ある意味将来発展性といえるのか。

 Mk.41VLSを有している艦であれば、それこそPCとUSBの関係のように多種多様な装備の運搬能力を意味します、未来は突然やってきませんが段階的に変容してゆくものです、各種装備の長射程化、そのセンサーとしての母艦機能、既存艦を発展させてゆくのでは。

 DD-X,しかし次世代の護衛艦で絶対に忘れてはならないのはステルス性でも打撃力でも将来発展性でも無く、乗員が乗りたいと思える艦、居住性ではないか、とも。日本の水上戦闘艦はこの部分が米艦よりは高くとも欧州艦よりは遥かに低く、米艦よりは待遇が低い。

 横須賀軍港めぐり遊覧船は、そんなことを考えると共に改めていまの駆逐艦はすごいぞ最高だ、特に日本の場合はDDの大きさに上限が殆ど無い現状となっている為に駆逐艦の上限が普通に世界最大と世界最大級駆逐艦がうろうろしているという状況に思い馳せました。

 いまの駆逐艦はすごいぞ最高だ、この艦船日記は更に次の一歩を海から山、横須賀の稜線めぐりへと歩み進める事となりました、横須賀の在る三浦半島は鎌倉時代に裏街道が整備され、稜線沿いに武蔵から鎌倉に至る街道と、鎌倉時代には衣笠城が既にあったのですね。

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