北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】サンアントニオ級後期艦と中国075型揚陸艦量産,ヴィズヴィ級近代化改修

2021-05-31 20:20:07 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 防衛情報、今回は揚陸艦など海軍関係の話題について11の最新論点をお伝えしましょう。

 アメリカ海軍はサンアントニオ級輸送揚陸艦についてフライトⅡと呼ばれる後期建造型艦からMk41VLSや長距離打撃兵器の搭載を内定しました。サンアントニオ級は計画当時、最初から8セルのMk41を搭載し、ESSM発展型シースパロー対空ミサイルによる個艦防空を予定していましたが、予算面などからRAM個艦防空ミサイルに変更されていました。

 サンアントニオ級フライトⅡは14番艦ハリスバーグからであり、現在はフライトⅠとなる2隻が建造中です。サンアントニオ級は画期的なステルスマストを採用した事で知られますが、フライトⅡからは建造費を抑えるべくモノポールマストを採用し、また、NSM海軍ストライクミサイルを搭載し、水上戦闘艦に伍する水上戦闘能力の付与も計画されています。
■中国075型強襲揚陸艦3番艦
 中国海軍はアメリカのタラワ級に匹敵する大型の強襲揚陸艦を量産しています。

 中国海軍は滬東中華造船所にて2021年1月29日、075型強襲揚陸艦三番艦の進水式を実施したとのこと。075型強襲揚陸艦は2020年に一番艦が竣工している中国海軍初の強襲揚陸艦で全通飛行甲板構造を用いている大型艦で、満載排水量は35000tから40000t規模とみられ、アメリカ海軍のワスプ級強襲揚陸艦等を強く意識したものと考えられています。

 075型強襲揚陸艦はその格納庫容積の大きさから各種ヘリコプターを35機から40機を搭載出来るとも推測され、短期間に大量の建造を進めている事で近年特に増強が著しい中国海軍歩兵、水陸両用戦部隊の拡充とともに中国政府の進める海洋政策や周辺諸国との関係が新しい強襲揚陸艦と共に周辺地域への新たな不確定要素をもたらすものとなっています。
■チリ,中古艦にSM-2ミサイル
 チリ海軍は様々な中古艦艇を巧みに運用し独特の強力な海軍体系を構築しています。

 チリ海軍はオーストラリアより中古導入したアデレード級フリゲイトへ長射程のスタンダードSM-2blockⅢAを搭載する方針です。これは2月6日に行ったアメリカ国務省が対外武器供与に関する情報公開へ含まれていたもので、MK 89 Mod0ミサイル誘導装置2基とスタンダードSM-2blockⅢAミサイル16発を8500万ドルで有償供与するとありました。

 アデレード級フリゲイトはオーストラリア海軍がアメリカのOHペリー級ミサイルフリゲイトを6隻ライセンス生産したもので、2005年より退役が始り、2019年に最後の2隻が除籍されました、この1992年に竣工したメルボルンと1993年に竣工のニューカッスルがチリ海軍においてアルミランテラトーレ、カピタンプラットとして再就役し、運用中です。

 OHペリー級はミサイルフリゲイトではありますが、Mk13単装発射機を用いており、これは長射程ながら長大なスタンダードSM-2blockⅢAを収容する事は出来ません。しかしオーストラリア海軍は近代化改修一環としてESSMミサイル用に各艦8セルのMk41VLSを艦首部分に追加しており、スタンダードSM-2blockⅢAはここに搭載すると考えられます。
■米フリーダム級に重大問題
 沿岸海域戦闘艦については野心的すぎる設計から問題が連発しているところですので今更感がありますが。

 アメリカ海軍のフリーダム級沿海域戦闘艦において動力系統に重大な問題が判明しており、アメリカ海軍では製造を担当するロッキード社との間で問題が根本的な是正を行われない限り、新しいフリーダム級の建造及び引渡を拒否する方針を明らかにしています。また既存の就役艦についても欠陥是正が行われるまで、運用の一部が制限されるもようです。

 フリーダム級沿海域戦闘艦は1990年代のフロムザシー構想と将来海軍水上戦闘艦計画ストリートファイター構想に基づき、画期的なステルス設計ときわめて高速の速力を発揮する多目的戦闘艦艇を巡洋艦などのセンサーノードとして運用する水上戦闘艦構想として進められ、軽金属多用の船体をウォータージェットにて40ノットで航行させるというものです。

 今回発見された問題はロールスロイスMT30ガスタービンとコルトピルスティックディーゼルエンジンを連結するシャフト部分、この基部となるボールベアリングで、当初設計よりも遥かに短い期間でベアリングが摩耗する点でした。これはギア部分にも悪影響を与える為、アメリカ海軍では再設計を進めると共に既存艦を35ノット以下で運用する方針です。
■ウクライナ海軍小型艦84隻
 フィリピン海軍が昨年に小型舟艇をアメリカから大量調達していましたが、今度はウクライナです。

 ウクライナ政府は2020年12月8日、アメリカ政府との間で海軍用小型舟艇84隻の供与に関する協定を締結しました。これはアメリカ政府が国防権限法2021に関する連邦議会下院335-78-NDAA2021決議に基づくもので、ロシアの脅威を受けるウクライナへの防衛協力へ盛り込まれているものです。舟艇の形式や詳細などは明らかにされていません。

 ウクライナ海軍はソ連崩壊後に旧ソ連黒海艦隊を継承しましたが、多くがロシア海軍へ脱出され、建造中の艦艇などは中古空母の中国輸出や放置により崩壊、若干の警備艦などが維持されていましたが2010年代クリミア併合とウクライナ東部紛争に際して少なくない数がロシア海軍に撃沈乃至拿捕されており、小規模であっても再編成が急務となっています。
■マレーシア海軍AW-139配備
 AW-139,海上自衛隊のMCH-101と同じレオナルド社製で二回りほど小型の航空機です。

 マレーシア海軍はレオナルドAW-139MOHヘリコプター3機の受領を2022年より開始する計画です。レオナルド社とは旧アグスタウェストランド社を社名変更したもの。このAW-139MOHヘリコプターはマレーシア海軍が進める海上作戦ヘリコプター計画に基づき導入されたもので、海軍ESSCOM東部サバ州防衛司令部へ配備される計画となっている。

 AW-139MOHヘリコプターは15名の人員輸送能力があり、レオナルド社の中型機としては最大の規模であるとともに人員輸送及び海上哨戒任務に用いられる計画です。マレーシア海軍では中国海軍の南シナ海海上行動の増大を背景に海軍近代化を進めており、将来的にはフリゲイトへ艦載機としてAW-139MOHヘリコプターも候補と上がるのかもしれません。
■MCM機雷戦艦最新情報
 MCM機雷戦艦、海上自衛隊も参考とすべき水中無人機母艦という発想の艦艇です。

 オランダ海軍とベルギー海洋軍が導入計画を進めているMCM機雷戦艦用レーダーとして、タレス社製NS-50レーダーの搭載が決定しました。NS-50は小型艦艇用に開発された世界最小の4DアクティヴAESAレーダー、航空機やミサイル、小型無人機の警戒監視能力と共に艦砲火器管制レーダーとしての機能や短射程艦対空ミサイル管制能力を有します。

 NS-50レーダーを搭載するMCM機雷戦艦はオランダとベルギーが二カ国で12隻を導入する次世代掃海艇で、従来の掃海艇が単一の機雷掃討に当っていたのに対し、MCM機雷戦艦は複数の無人掃海艇を包括管制し、搭載する無人機と併せ広範囲の機雷掃討を行う艦艇ですが、併せてこのNS-50レーダーを搭載する事で水上戦闘の一翼を担う事が可能となる。
■ロシア,原潜建造加速
 原潜の建造は時間がかかるものですがロシアはその加速化を21世紀にモジュール建造を導入する事で達成しようとしています。

 ロシアのセヴマシュ造船所は原子力潜水艦造船を担う際に画期的なブロック工法を採用する事で泉水艦建造期間を18カ月近く短縮する事が可能となったと発表した。ロシア海軍では潜水艦建造に際して平均的な建造期間として七年間から八年間を要しているが、建造期間を短縮することで短期間での潜水艦戦力近代化と人件費の縮小が可能となるだろう。

 ボレイ級戦略ミサイル原子力潜水艦、ヤーセン級原子力潜水艦がセズマシュ造船所で建造されている潜水艦であり、ロシア海軍の新造原子力潜水艦は基本的に此処で建造されている。特にボレイ級は老朽化が進むタイフーン級戦略ミサイル原潜などの置き換えから建造が急がれており、ロシアとしては新技術に挑戦してでも早期に建造を行う要望があろう。
■ヴィズヴィー級近代化改修
 ヴィズヴィー級は大きさで護衛艦あぶくま型の四分の一程度の艦艇ですがステルス設計により世界中から注目を集めたものでした。

 スウェーデン海軍はヴィズヴィー級ステルスコルベットについて、どの近代化改修と後継艦開発に関して2300万ドルの契約をサーブ社との間で締結しました。ヴィズヴィー級コルベとは満載排水量650t、57mm艦砲とRBS-15対艦ミサイル8発に400mm魚雷等を搭載しヘリコプター甲板を有しますが、なにより画期的なステルス形状で有名となりました。

 ヴィズヴィー級は非常に優れたステルス設計と40ノットに上る高速性能で有名となり、特に荒天下では700t級の水上戦闘艦が50kmで探知される状況でも8kmまで発見されない程ステルス性が高く、スウェーデン海軍には5隻が導入されましたが、一番艦は1995年に起工したものの進水式は2000年、更に竣工は12年と建造に17年を要した事で知られます。

 スウェーデン海軍は現在運用中のヴィズヴィー級について戦闘システムを一新すると共に本型に搭載されていない個艦防空システムを追加する構想で、更に開発中のサーブ社製軽量魚雷を搭載する方針とのこと。スウェーデン海軍では本型について先進的すぎる設計と配置から使いにくいとの指摘もあり、2040年代まで継続するべく改修を継続する方針です。
■米新補給艦ジョンルイス
 アメリカは艦隊補給艦の刷新に本格化しました。

 アメリカ海軍は新型給油艦ジョンルイスを1月12日に竣工させた。前型にあたるヘンリーJカイザー級給油艦は16隻が建造され、基準排水量9500t、全長206mと満載排水量は40700tで艦艇用及び航空機用などの18000バレルの燃料とドライカーゴ690立方メートル及び20フィート冷蔵冷凍コンテナ8基、1986年から1995年に掛けて建造されている。

 ジョンルイスはジョンルイス旧補給艦の一番艦で全長227m、満載排水量49850tとヘンリーJカイザー級よりも二割程度大型化している。現在建造中のものは二番艦、そして六番艦までが予算化されている。本級は空母戦闘群が必要とする膨大な燃料を輸送すると共に、ヘンリーJカイザー級よりも各種のドライカーゴ輸送能力を強化した設計となっている。
■フィリピン,哨戒艇にATM搭載
 フィリピン海軍も中国の脅威を真剣に受け、予算の上限は厳しいものの海軍力の構築を全力ですすめています。

 フィリピン海軍は新しくイスラエルよりシャルタグMk5ミサイル艇8隻を導入する。フィリピン海軍は中国海軍との緊張増大を背景にミサイル艇を導入するFAIC-Mミサイル哨戒艇計画を進めており一年前の2020年1月にイスラエルよりミサイル艇を導入する方針を既に確定しており、この契約は2億ドル規模のフィリピンには大きな海軍近代化計画だ。

 シャルタグMk5はミサイル艇ではない。しかしフィリピン海軍ではイスラエルのラファエル社製スパイクNLOS対戦車ミサイルを搭載する事でミサイル艇として運用する方針だ。スパイクNLOSは光ファイバー誘導方式を用いており、対艦ミサイルではないものの地上目標も狙いラファエル社が販売する対戦車ミサイルの中では射程が最も長い25kmに上る。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【総火演2021特集-第三回】島嶼部防衛想定の後段演習は水陸機動団と機動師団の連携協同

2021-05-30 20:20:06 | 防衛・安全保障
■島嶼部防衛想定の後段演習
 Web実況とともに書き起こした話題の再現富士総合火力演習は今回が第三回です。

 島嶼部防衛、こちらもCMの話題でした、島嶼部防衛への機動師団のさまざまな活動領域と装備を提示していましたが、水陸機動団を全面にだしている内容、すると島嶼部事態の場合は水陸機動団だけでよいのか、他の部隊はどうするのかという認識と憂慮を改めて。

 水陸機動団、精鋭要員を集めているのは頼もしいですが、ほかの師団と旅団をどうするのか、と。そもそも水陸機動旅団を専従とさせるのではなく、即応機動連隊のように全国の師団、特に機械化の進んだ総合近代化師団などにAAV-7を装備する水陸機動連隊を、と。

 AAV-7を装備する水陸機動連隊を加えて。戦車と連接して水陸機動作戦を行う、水陸機動団の支援部隊や増援部隊としての師団や旅団はあっていいと思う。もっとも総合近代化師団と総合近代化旅団は現時点で北海道にあるのみですので、地理的な問題はありますね。

 海上自衛隊輸送艦の基地と離れすぎており、例えば水陸機動旅団を考えるならば呉基地に近い広島海田市の第13旅団とか、佐世保基地に近い福岡の第4師団、首都圏はなかなか部隊を転出させにくいが大湊基地に近い第9師団などに水陸機動連隊を置いては、とおもう。

 ともに即応機動師団ではなく地域配備師団、即応部隊を割かずに転用する余裕はある。島嶼部防衛を考えれば逆に総合近代化旅団は最適と思う、100名規模の警備隊は各個撃破されうるが、この100名が普通科に加えて10式戦車の2個小隊を加入していれば、話は別だ。

 後段演習開始、F-2戦闘機は雲の上から参加という、ライブ配信では音も聞こえない、音響ステルスは抜群だ。いちおう想定ではE-767の支援を受けているという。そろそろライブ配信の時代なのだから富士総合火力演習も浜松会場を設けて、多くの人が見れるようにしては。

 浜松ではE-767の飛行展示やF-2戦闘機の機動飛行をおこない、ここもライブで結んではどうだろうか。沼津市の片浜訓練場とライブで結んで輸送艦からLCACでの揚陸を中継してもよい、すると畑岡会場とともに多くの方が見学できる、広報にも資するだろうに、ね。

 統合による情報収集として後段演習ではレーダーサイトやP-3C哨戒機や沿岸監視隊などが紹介、今年度はP-1哨戒機が上空に、というアナウンスですがライブ映像のみ、現場は富士山が見えないほどの悪天候だ。師団情報隊の装備としてスキャンイーグルが紹介です。

 電子戦部隊なども紹介されました。12式地対艦誘導弾と03式中距離地対空誘導弾、車載型ネットワーク電子戦システムNEWSなどが畑岡には並びました。敵船団の泊地占領を火力戦闘システムFCCSにより捕捉し対処するという想定、当たり前ですがSSMは撃てません。

 SSMは射程が長い、東京まで届く射程ですからね。護衛艦からのミサイル攻撃はなぜかアーレイバーク級やタイコンデロガ級のハープーン発射映像、まさか中古艦を買うのか。そんなわけはないのですが、海上自衛隊から映像提供は無かったのでしょうか、統合運用が。

 F-2の弾着は例年通りTNTで再現されました、F-2,天候が悪いと参加しませんが、実際の戦闘を想定するならば悪天候での低空飛行も展示できる程度の水準を維持してほしい、だめならばアメリカ海兵隊のように陸上自衛隊が自前で航空火力を整備する必要も出てくる。

 アメリカ海兵隊の様な陸上航空団を陸上自衛隊に、と云いますと時代錯誤とか批判も出てくるのかもしれませんが、何しろ航空支援の可否は陸上戦闘が出来るかどうかまで関わってくる問題ですので、現状、航空自衛隊がもう少し低空飛行訓練や地形追随訓練が欲しい。

 低空飛行訓練や地形追随訓練、これを行うには制空戦闘第一は理解できるのですが、対地攻撃への専従部隊を整備しておくとともに、もちろんF-15にも行えとは言いませんが、F-2戦闘機は悪天候下の低空飛行訓練を重ねてくれませんとそう是ざるを得なくなります。

 16式機動戦闘車は後段演習では完璧な偽装とともに、無人機はスカイレンジャーとスキャンイーグルが飛行しているとのことですがスカイレンジャーは見えるもののスキャンイーグルは確認できず、飛ばしているのか、と不安も。ライブ映像ではヘリコプターがみえる。

 UH-1がホバーリングしていますが、ここから偵察小隊の進入へ。要するにスカイレンジャーは退役したOH-6D観測ヘリコプターの後継なのですね。AH-1Sの機関砲などによるヘリコプター火力の展示は前段演習で割愛されていまして、要するに悪天候ということだ。

 偵察小隊は偵察オートバイで参加、中距離以遠の監視能力の欠如が偵察オートバイの難点といえるのですが、これは今後どうなるのか。NEWSの電子攻撃が続いて行われる想定、ライブ配信が中断していないのでNEWSの稼働はなし。電子戦訓練環境も課題ではある。

 中距離多目的誘導弾は調整の関係からできいないという、前段演習では射撃していましたが、この後段演習の概況を世界中にWeb配信しているわけでして、弾薬の費用は理解できるのですが、展示へ射撃することも抑止力ではあるのですがね。せめて数を並べて欲しい。

 16式機動戦闘車は射撃、射撃陣地の草木による偽装が例年と違いしっかり行われていました、退官したもと陸自の方で造園業という職業が多いのに何かなっとくした。須走海岸へ敵上陸、そうこうしているうちに装甲している敵が走行して向かってきたという情報が。

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【京都幕間旅情】京阪特急8000系エレガントサルーンはコロナ時代先読む特別車を備える

2021-05-30 18:11:04 | コラム
■8000系特急と1000系準急
 8000系特急のプレミアムカーはコロナ時代の社会的距離を求められる最中では結果的に先読みだったのだよなあ、結果論だけれども、と思う。

 京阪8000系特急電車、テレビカーの愛称と共に1989年に登場しました。3000系特急電車として先代のテレビカーに続いて導入されたもので、1997年よりダブルデッカー車を編成に組み込む事でテレビを電車で視られるスゴさがテレビ普及したのちも新鮮さを維持した。

 テレビカー。2011年よりテレビは撤去されていますが、地上波をそのまま視聴でき、クロスシートに各々スピーカーが置かれていて、基本はNHKですが車掌さんにお願いするとチャンネルを”回して”くれました。故に乗るとナイトスクープやってたりプリキュアだったり。

 エレガントサルーン。これが現在の愛称なのですが、どうしてもわたしなどは8000系を視るとテレビカーと呼んでしまいます、この車輛、テレビ撤去後の車両はプレミアムカーを備えていまして、京阪に特別料金を支払て利用する特別車両が2017年より運行されます。

 プレミアムカー、2+1の広々としたリクライニングシート標準装備でANA出向のアテンダントが乗車しWifi接続可能、料金は大阪市京都市からが500円、コロナ時代に相応しい余裕があり2021年1月31日からは3000系も導入、まさに時代の先を読んでしまった、と。

 準急の京阪1000系電車。京阪電鉄の車両で本線用の中での形式ではもっとも数字の若い1000番系統の車両、1970年代の車両です。実はこの1000系は三代目で、京阪には2200系など1960年代から導入された車輛も現役です、ただあの箱型の5000系は2021年に廃止された。

 京阪電鉄の面白さは古い車両をかなり大切に維持し、そして新型車両と無理のない範囲内で運用している点です。実は前述の5000系電車も、京阪はもう少し使う構想はあったようなのですが、駅ホームドア設置工事という社会的要請が在った為の形式消滅なのですね。

 京阪1000系についても、古い車両をだましだまし使うのではなく、元々600V用車両であった車輛を1500V昇圧に改修し、その後には1C4M制御から1C8M制御方式と界磁チョッパ制御へと改修するなど、性能面での第一線の運用能力を維持して、現役にあるようで。

 大阪に向かう電車として、速度ならば新快速、便利さならば阪急特急、京阪電車は時間がかかるからなあ、こう考えていた事もあるのですが、単に大阪に向かうのではなく、京都散歩という一歩引いた緩やかな散策と共に大阪へ巡るには、中々面白い沿線風景が広がる。

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【総火演2021特集-第二回】戦車射撃前段演習の実況と後段演習前休憩時間の自衛隊広報

2021-05-29 20:00:22 | 防衛・安全保障
■仮想現実-富士総火演2021
 旅をしない旅番組というものがあるようですので、富士総合火力演習をWeb実況の際に書き起こしました内容をそのまま過去の演習写真と共にお送りする規格の第二段です。

 203mm自走榴弾砲は今年度も参加、もう先がない装備と揶揄される重砲ですが地下陣地の破砕などには必要な装備ですので、例えば洋上射撃プラットフォームのような海上から射撃できる装備などと連接させることで、今後も島嶼部防衛の難しい奪還任務など寄与へ。

 87式自走高射機関砲も今年度参加、高射学校の装備は常連となりつつある。ただ、射撃は実施しませんでした。そして車体は87式とおなじ74式戦車は今年も参加しまして、いよいよ半世紀が見えてきた装備ですが、まだ残っていることになにか安心が、とは印象で。

 しかし防衛出動に74式戦車を充てられることを考えるとなかなか酷い話でして、74式戦車は日本まで海を超えてくる戦車に対して十分な戦闘能力は有していません、暗視装置や火器管制装置の換装さえも、今行っても限界を超えているわけでして、例えば砲塔だけでも。

 砲塔だけでも16式機動戦闘車と置き換えるとか、配慮は必要とおもう。よい戦車なのですがなんといっても古過ぎまして、これはPC98やWindows95で事務作業を行わせている事業所のような印象でして、せっかくの高い乗員の練度がもったいない、というところです。

 MPF,後継装備にアメリカ歩兵旅団戦闘団用に開発のMPFではないですが、89式装甲戦闘車の後継となる装軌式共通車体へ16式機動戦闘車砲塔を積むなどの工夫は欲しい。昨今戦車離れの進むと思われるアメリカも、戦車を持たない歩兵旅団戦闘団にMPFを選定中だ。

 90式戦車の射撃は、小隊集中が寸秒の差はありましたが、迫力でした。74式戦車と異なりまだまだ伸びしろの大きな戦車なのですよね。もちろん今のままでは参りませんが、装甲はモジュール化されていることは言い換えれば重量の設計冗長性を担保しているわけです。

 90式戦車は第三世代戦車としての性能は維持しているのですし、エンジン系統の重点再生整備を粉うと共に将来戦闘へは、例えばラインメタルのアクティヴシールドやラファエルのトロフィーのようなアクティヴ防護システムを搭載することで、まだ当面は、と思う。

 10式戦車は16式機動戦闘車の援護下で参加です、これはデータリンク能力が16式機動戦闘車にも十分なものが搭載されているとの展示ともいえるのですが、しかし、協同運用、考えとしては即応機動連隊の16式機動戦闘車が防御している地域に増援へというものか。

 16式機動戦闘車の援護下で機動師団の10式戦車が展開する、という発想なのでしょうか、すると同様の能力が90式戦車のC4I能力でも可能なのか、ここの可否は同時に前述の90式戦車の将来運用能力にも直結しますので、将来陸上防衛計画の現実性が気になるところ。

 自衛隊CM,さて前段演習は上記で完了しまして後段演習への休憩時間となりました、ここでCMが。自衛隊のソレ誤解ですCMですが、ここで気になりましたのは"国際貢献できます"、と紹介されていましたが、嘘ではないのですがしかし現時点で自衛隊のPKO任務は。

 PKO,減りました。4名が南スーダンPKOの司令部に派遣されているのみ、方面総監でさえ5名いますので、いま自衛隊で国際貢献に参加するのは方面総監になるよりも狭き道といえる。CMでは多次元統合防衛力が紹介されていましたが、この点についてもいくつか。

 多次元統合防衛力、これ平時におけるグレーゾーン事態への対処、サイバー戦やフェイクニュースなどの脅威を示すことを提示していたものの、言い換えれば防衛出動以外に実力を行使できる概況を示すとともに、しかし如何にして、とも考えさせられるところ。

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令和三年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2021.05.29-2021.05.30)

2021-05-28 20:21:17 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 五月もいよいよ終わりですがCOVID-19は初夏の兆しが訪れても威力を弱めず、やはり自衛隊行事はすべて中止です。そこで懐かしい小松の写真と共に最近の話題を。

 COVID-19感染拡大9都道府県に対する緊急事態宣言の延長が決定しました。政府は6月20日まで延長し、当該都道府県では飲食店の営業時間短縮要請、飲食店での酒類提供自粛要請、大規模商業施設の時短営業要請、映画館などの営業自粛要請、テレワークの促進要請、都道府県によっては大学講義のリモート実施要請など、お願いされることとなる。

 自粛要請主体の日本型緊急事態宣言、憲法上は私人の私権制限まで踏み込む緊急事態乗降を持たない為に、変異株に対しては充分機能しないのではないかとの危惧はありましたが、その感染拡大は確かに抑制されていまして、多少は安堵しました次第です。ただ、安堵というには感染者数の減少幅が鈍化しているように思うのですよね。そして間もなく五輪だ。

 東京五輪。五輪の楽しみはブルーインパルスが12機編隊飛行をおこなうのではないか、という話題です。松島基地での訓練飛行の様子を見ますと大規模な編隊飛行の準備は行われていないようですけれども、なにしろここまで長期にわたりブルーインパルスを見上げないのは久々というところでして五輪にあわせたブルーインパルス、気になるところです。

 COVID-19感染拡大下、あと二ヶ月ほどで7月23日の東京五輪開会式を迎えます。COVID-19感染拡大がどの程度抑えられるのか。医療関係者の一部には東京五輪中止を求める声がありますが、野球ではセパ交流戦が執り行われ、甲子園もいまのところ第103回選抜高校野球は予定通り8月9日から開幕、Jリーグも開催されているわけですから、ね。

 野球やサッカーなどは可能で東京五輪だけが不可能、と言い切るには若干不思議な印象があります。五輪の商業化に意見はあるのですが、結果的に国家行事となった部分を見ますと一年前のJリーグ中止にセパ両リーグ中止というほどの認識としてのCOVID-19感染脅威とは比較にならないほど抑えられている訳ですから。他方で可能であるならば、はある。

 2022年に延期できるならば、それはもうワクチン普及はもう少し進んでいるでしょうから望ましいとは思います、感染者数だけを単純比較しますと2020年よりは日本国内では増加していることは紛れもない事実です、他方で一年前にやっておけば、という論調には同意しかねます、一年前にはワクチンが無く、そもそも日本はともかくとして世界には厳しい。

 2020年の段階では五輪予選を行えないほどに感染拡大している各国の事情がありましたし、選手と関係者にワクチン接種の目処がついている、日本国内においても遅れているものの高齢者へのワクチン接種に目処が付いた状況ですので、改めて中止する段階なのか、とも考えるのですよね、何より、野球とサッカーは行われていて、そしてマラソン大会なども。

 実施できない事はないと思う、ただ問題は観客を入れる事が可能か、という事です。現在販売されているチケットは当たり前ですがコロナ前に販売されたものですので、社会的距離を留意したものではありません。観客数を定員の半分か五千名を上限とする現在の手法では、感染対策に必要な人流抑制と矛盾します。無観客含め、慎重な判断が必要とおもう。

 さて緊急事態宣言、一年前の緊急事態宣言と比較し緊張感は低く人通りは多くなっているよう思えます、実際そうだという事ですが、変異株を前に在来のCOVID-19対策での成功を誇示するのは危険なように思えるのですよね。医療崩壊直前の泥縄式での集中治療室増床で持ちこたえている現状です、もう一度気を引き締めて自粛が必要だと、思うのです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【京都発幕間旅情】江田島練習艦隊には牡蠣筏が良く似合う,海辺で頂く牡蠣バター焼き山盛り

2021-05-27 20:09:55 | グルメ
■五月二十七日は海軍記念日
 本日は海軍記念日、そして昨日練習艦隊が遠洋航海へ呉から出航しました事を記念し江田島の話題を。牡蠣、江田島を探訪しますとどうしても考えてしまいます。

 江田島。海上自衛隊幹部候補生学校と大地術科学校が置かれている明治時代からの海軍中枢、現代風に表現するならば海上防衛中枢です。幹部候補生学校からは毎年三月に近海練習航海部隊と外洋練習航海部隊が、揃って江田島を卒業し勇躍世界へ初の航海へと旅立つ。

 山陽新幹線広島駅。広島駅から江田島練習艦隊を撮影するには、式典実施の江田島基地へ向かうならばこのまま呉線乗換、艦隊出航を撮影するには広島市電で広島宇品港へ向かい路面電車から江田島高速船へ乗換まして、高田港まで25分の船旅で向かう事が出来ます。

 広島駅に新幹線が到着したらばまず最初に行う事は、まあ電車を降りるのは当たり前として、駅弁売り場にて杓文字牡蠣飯弁当を購入することです。人気の駅弁という事でして、しかし練習艦隊出航の際には比較的早い時間帯に到着しますのでまだ店頭で売られている。

 杓文字牡蠣飯弁当。駅弁は色々あるのですが、この杓文字牡蠣飯弁当は五本指に入るものといえるかもしれません、名古屋とり飯弁当と横浜シウマイ弁当、敦賀鯛押し寿司弁当なんかと並ぶ一品で、牡蠣づくしといいますか、広島にやってきたのだ、と実感する一品だ。

 牡蠣。江田島と云えば海軍中枢であるとともに昭和初期の時代から牡蠣筏による牡蠣養殖が盛んでして、実はここに思い出の場所があります。牡蠣といえば高級品という印象ではあるのですが、産地はそれ程でもないという。鳥取の蟹や大洗の鮟鱇で後に知るのですが。

 鉄板焼き。広島風お好み焼きというよりは鉄板焼きと表現したいところではあるのですが、ここは造船の街でもある故に鋼材を利用しての鉄板焼き、元々鉄板焼きは造船の余剰鋼材から始まったという正に本場だ、ここで練習艦隊出航まで美味しく時間を過ごしたのです。

 高田港近くの水産会社の鉄板焼き、実はこのお店はもう営業しておらず牡蠣養殖と通販に特化してしまった故に今は幻の情景なのですが、店先が練習艦隊出航を真正面から見られるという好立地で、一つお好み焼きでも食べてゆこうか、気軽な気分で注文したのですね。

 牡蠣鉄板焼きも500円で出来ます、との事でしたので、二つ三つか牡蠣を頂いて気力充実の上で練習艦隊出航を撮影しよう、と注文しますと、女将さんが徐に山盛りの牡蠣を葱とバターで炒め始める。成程昼時だし他の従業員さんのも一挙に焼いてしまうのかと感心へ。

 バターの薫り高い牡蠣。驚いたのはその直後でして、全部わたしのお皿に載せられてそのまま、はい一丁上がり、と出てきたのですね。そして練習艦隊出航に纏わる世間話、昔はもっと多くの練習艦が、とか近所のお婆さんが戦時中の江田島空襲を実際みていて、とか。

 牡蠣というと高級品でして、まあ、錦のオイスターバーなんかでは一つ300円で大サービスという表現なのですけれども、江田島では、これ。しかも水揚げから一時間少々、知っていましたか、水揚げ直後の焼き牡蠣は生牡蠣のような磯の香と焼きの香ばしさが揃う。

 美味い、一つ抓んで口に運び広がる鉄分の様な瑞々しさのような、そしてきつい牡蠣の香りと上回る芳醇な身の締りが美味しい。しかし問題なのはこの大きさで一つ一つが贅沢に腕時計並の巨大さで、と食べていて気付きました、あ、練習艦隊出航まであと十分だ、と。

 練習艦隊出航、実はこの日は朝からの悪天候で航空部隊は飛行不可能、という状況でした。しかしもう一皿食べたいな、でもあと三十分で閉店というし、また来よう、さて練習艦隊だ、と出発しました次第です。実際500円で牡蠣山盛り、これは凄い経験だったのですね。

 牡蠣筏。なるほど艦隊だけを撮影したい方には、牡蠣筏が邪魔だなあ、という声を聞くのですけれども、いやいや、これが江田島らしさでして、江田島の写真を撮影に居ているのだからと考える当方、しかしその牡蠣筏はこんな美味しい御馳走を養殖していたのですね。

 新幹線で広島と京都は近くなった、早朝組にはかなわないかもしれませんが、海田市駐屯地祭や岩国フレンドシップデイなんかは新幹線始発でもけっこう何とかなる様にも思います。岩国の場合は折畳自転車輪行と有料席確保が条件なのですようけれども、新幹線速い。

 江田島連取艦隊出航は毎年撮影する機会に恵まれています、毎年はこの撮影位置から撮影しようか、そしてどの高速船の便で江田島高田港へ向おうか、と考えると共に、しかし、あの高田港水産会社の牡蠣筏、その隣でまた牡蠣を頂ければ、なあ、値段は仮に数倍でも。

 広島駅、実のところここ数年は広島の牡蠣といいますと広島駅で手早く頂く事がおおくなっています、帰路の新幹線ぎりぎりの時間まで牡蠣を頂ける、もちろんお酒も。それでも下記のお値段は牡蠣筏から百数十メートルの産地で頂くよりはだいぶんと高くなるという。

 城下町広島、広島駅は中国地方最大の大都市であるとともに観光地でもあります、しかし気になる大混雑具合ではあるのですが、幸か不幸か練習艦隊出航の季節ともなりますと、実は観光シーズンを少し離れている故に、駅商店街もそれほど混雑していないのですね。

 蛸刺身。そう、瀬戸内と云えば蛸が名産でもあり、昔の旧海軍回顧録などをみますと防波堤の隙間に腕を突っ込んでいますと蛸が絡み付いてきますので、駆逐艦など気心の知れた艦艇では蛸の刺身で自衛隊と違い当時は艦内飲酒が可能でしたので肴とできた記録もある。

 牡蠣バター焼き。江田島では女将さんが焼き上げてくれましたが、ここでは筋骨隆々逞しい大将が力いっぱい焼き上げて湯気と牡蠣脂が爆ぜる中でこてにてすっと素早く皿の上に踊り上げるように載せる、じくりとビールやレモンチューハイで蛸を突きつつ待つのです。

 実際広島の牡蠣は美味い、あの“艦隊これくしょん陽炎抜錨します”でも呉れと云えば牡蠣、とでてくるほどです。ちちちと未だ音立てる牡蠣を徐に箸でビールと口に運びますといつも通りの期待通りの、滋味と香りが溢れ、広島に来たのだなあと再確認できるのだが。

 小用港、江田島の小用という呉港とフェリーが結ぶ港では観光用に牡蠣の浜焼きをやっている、そんな話題を最近知りまして、なるほど殻つきの牡蠣を大火力で一気に焼き上げて清酒やビールで頂くという。それならば今度行ってみたいなと思いで至りつつ目の前へと。

 広島風お好み焼きを併せて頂く。新幹線のぞみ号ではなく山陽新幹線なのですから指定席さくら号を、九州新幹線乗り入れの新幹線さくら号は指定席が二列二列の東海道新幹線のグリーン車並みの広さに余裕があり乗り心地良い。それまで一献傾けお好み焼きを頬張る。

 岩国日米友好祭や第13旅団創設記念海田市駐屯地祭の際、もう五年以上実施されていませんが呉地方隊広島湾展示訓練、実施されるならば、今度はもう少し余裕ある期間をゆったりと、美味しい牡蠣を安く頂ける穴場的な場所を、この広島名産の美味しい名物の事とともにもっともっと広島散策してみたいですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】猪名野神社(兵庫伊丹)軍都伊丹市,有岡城址の白雪は清酒発祥の地に佇む

2021-05-26 20:12:28 | 旅行記
■現代の軍都伊丹の社殿
 伊丹市といえば空港の街であり、第3師団の千僧駐屯地祭と中部方面隊伊丹駐屯地祭で毎年二度は探訪する美しい街並みです。

 猪名野神社。兵庫県伊丹市宮ノ前3丁目に所在する神社です。伊丹市といえば、第3師団司令部の千僧駐屯地に中部方面総監部の置かれる伊丹駐屯地、西日本有数の軍都を形成している、といえるのですが此処は元々伊丹城こと有岡城の城下町として栄えていました。

 猪名野坐大神として素盞嗚尊を奉じる社殿は、伊丹城こと有岡城の惣構え北端、岸の砦に当る一角でした。有岡城は摂津国人伊丹氏居城として文明4年の西暦1472年造営、安土桃山時代は荒木村重居城として知られています。創建の後に荒廃し城郭へ、そして再建へ。

 神社では大鳥居から本殿まで長く石灯篭が続いていまして、その奥に本殿が参拝者を迎えています。野宮神社や天王宮と牛頭天王宮と、慕われた社殿でして、十月には猪名野まつりとしまして伊丹駅まで御輿が練り歩きます。方面隊記念日と重なった時もあり、楽しい。

 中部方面総監部のおかれる伊丹市ですが、実は元々中部方円総監部は現在の宇治駐屯地や至近の大久保駐屯地、即ち京都府南部に置かれる計画でした。ただ、自衛隊創設前夜、これでは大阪が遠すぎるといい、極端な話で幕僚がジープを乗り回し候補地を探したという。

 伊丹市は旧軍倉庫群が国有地として維持されていると共に、自衛隊創設時には一段落していた進駐軍と国連軍の戦略拠点であった伊丹空港、もともと大阪第一空港は八尾空港、伊丹が返還される見通しがついた為、民有地払下げの前に自衛隊用地として確保したかたち。

 灘の酒、といわれますように、この伊丹市が軍都となったのは戦後の話でして、実は伊丹市は城下町であり、そして近くに灘が在る通り、ここも酒造の街であった、という歴史があります。そしてここに社殿が創建されたのは、社伝では延喜4年の西暦904年と伝わる。

 拝殿と手桶舎には酒樽を思わせる構造とともに酒樽が奉納されています。実は渡来人により日本に酒造りが渡来したのは遥か昔ですが、清酒という醸造法が確立したのはここ伊丹であるといい、清酒発祥の地、という。このため市内酒造業者の酒樽が寄進されています。

 白雪。駆逐艦の名でも知られ、護衛艦しらゆき、としても知られる名ですが、個人的には日本酒白雪も捨てがたい、そしてこの白雪が醸造されているのが、伊丹市の小西酒造です。小西酒造以外に戦後の時点で、実に22もの酒造会社が伊丹に軒を連ねていたともいう。

 石灯篭が多い神社という印象で、一部には欠けたものもあり歴史を物語ります。この石灯篭は境内に98並ぶのですが、際立って多いとともに、最古のものは寛永年間の1643年に寄進されたものといい、これは酒造業により街が豊かだったことを示すといえるでしょう。

 伊丹にはこの小西酒造が最後の酒造会社となっているというのですが、白雪、その名の通り清酒なのですが果実酒のような仄かではなく明確な甘味があり、初雪が口に解ける様に透き通りいつまでも呑める美しさがあります、呑み過ぎると翌日朝には吹雪状態ですが。

 本殿は貞享年間の西暦1686年の造営といい、創建の時代から開きがあります。実のところ創建は10世紀に遡りますが一時荒廃し、地形上の要衝に在った事から城郭に取り込まれ、しかし城郭が有岡城の戦いの後に廃城となり、その後に社殿が再建された構図のようです。

 有岡城はJR伊丹駅前に遺構が残っておりまして、徒歩にて歩み進めますと意外な程に大きな城郭だったことが重い偲ぶ事が出来ます。そして興味深いのは商店街が遠く遥かに続いている点でして、城跡は城下町ではなく城址が街として発展した事に驚かされるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】F-16戦闘機用MS-110空中偵察システムとSu-34&Su-35戦闘機巡る新情報

2021-05-25 20:20:41 | インポート
■週報:世界の防衛,最新12論点
 今回は空軍関係の話題を中心に12の最新情報を。

 航空自衛隊ではRF-4戦術偵察機の完全退役を受け偵察航空隊が廃止改編されましたがアメリカでの自衛隊向けRQ-4無人偵察機初飛行を受け新たに偵察航空隊が別組織として新編されました。しかし世界を視ますと監視航空機の様な低速の無人偵察機とは別にF-2のような戦闘機に偵察ポッドを搭載し用いる戦術偵察機は新開発、まだまだ必要なのですね。

 アメリカ空軍はF-16戦闘機用MS-110広領域空中偵察システムについてレイセオン-コリンズエアロスペース社との間で契約を締結しました。MS-110広領域空中偵察システムはポッド式偵察装置でF-16戦闘機胴体下部に装着するもの、増槽型のポッドは側面及び下部にセンサー窓を配置しており、F-16戦闘機の高い戦術機動下でも作動が確保されています。

 MS-110広領域空中偵察システムは、長距離目標に対する昼夜天候を問わないカラー映像及び識別用偽色着色映像をリアルタイムで収集且つ伝送可能で、平時の監視任務は勿論、有事の戦術偵察にも威力を発揮します。近年この種の任務はMQ-9,RQ-4といった無人偵察機が多用されている一方、生存性を考えた場合にアメリカ空軍の選択肢は興味深いでしょう。
■アメリカEA-18Gを近代化
 EA-18G,敵の防空網を無力化するEA-18G電子攻撃機の近代化改修が進められます。

 アメリカ海軍はEA-18G電子攻撃機の近代化改修について5年間の改修契約をボーイング社との間で締結しました。EA-18G電子攻撃機は海軍が運用する唯一の電子攻撃機でありアメリカ陸海空海兵宇宙の五軍で唯一の電子攻撃機となっています。この近代化改修は電子監視能力の強化、データリンク性能の強化、次世代妨害装置ポッドの搭載が主眼という。

 EA-18G電子攻撃機の近代化改修は既に3月中に初号機が納入されており海軍での評価試験から既存運用体系の適合化という段階まで進んでいるとの事で、問題が無ければ2021年6月にもフルレート生産により既存のEA-18G電子攻撃機の近代化改修が開始される予定で、海軍は今後五年間で保有するEA-18G電子攻撃機全ての改修を完了させる予定です。
■ロイヤルウイングマン初飛行
 ロイヤルウイングマン無人僚機が遂に初飛行を果たしたようです。第五世代戦闘機の不足を補う一つの選択肢となるか。

 オーストラリア軍が開発を進めるロイヤルウイングマン無人僚機は3月2日、初飛行を実現しました。ロイヤルウイングマンはボーイング社とともに開発を進めていた無人航空機で従来の大型無人機が速度と機動性を犠牲に滞空時間と進出距離を強化していたのに対し、ロイヤルウイングマンは有人戦闘機に連携し共に飛行する機動力を持つ無人機という。

 ロイヤルウイングマンは機体完成後、初飛行に向け地上でのデータリンク実験やナビゲーションシステムの試験などを経て高速滑走試験に移行、そして3月2日の初飛行に至った形です。無人僚機の任務はセンサーを搭載し索敵支援、若しくはミサイル等に追われた際の囮、また将来的には無人空中給油機等の用途が見込まれる新しい世代の無人航空機です。

 無人僚機は高い機動力を以て第五世代戦闘機と協同しますが、僚機は同型機という原則から外れている事は確かです。更に機首を交換する方式というセンサー部分の性能次第で取得費用が増大する可能性はあり、また果たして超音速巡航性能を有する第五世代戦闘機に随伴できるかは未知数の部分があります、今後の展開を慎重に観る必要があるでしょう。
■F-35B機関砲に問題
 F-35Bの機関砲ポッドシステム開発にトラブルです。

 アメリカ海兵隊が運用するF-35Bに機関砲のPGU-32/U-SAPHEI-T砲弾に不具合が発生したとの事です。アメリカ海兵隊は3月12日、ユマ試験場においてGAU-22/A25機関砲よりPGU-32/U-SAPHEI-T焼夷曳光機関砲弾発射試験を実施した際、砲弾が発射直後に爆発し、機体の一部が損傷する事故となりました。人員負傷や墜落事故には至っていません。

 PGU-32/U-SAPHEI-T砲弾の事故はクラスA事故と位置づけられました、これは250万ドル以上の物損か航空機全損若しくは死者が出た場合の事故となります。F-35BおよびF-35Cは機関砲をガンポッド方式で搭載しています。GAU-22/A25機関砲には220発の砲弾が内蔵されており、海兵隊では事故発生を受け、爆発事故の原因を調査しているとのこと。
■インドネシアSu-35導入停止
 インドネシアのSu-35導入計画が停止したもよう。やはりF-35が本命なのか韓国のKF-21はどうするのか。

 インドネシア政府はロシアとの間で2018年に契約されたSu-35戦闘機導入を一時停止した可能性があります。これは2月18日にインドネシア政府が発表した2024年までの国防調達計画にSu-35戦闘機が含まれていなかった点によるもので、正式な費用契約は早くとも2025年以降まで延期される事となります。この頃には仕様も変更されていましょう。

 Su-35戦闘機はロシア製の第4.5世代戦闘機で優れた空戦機動性に対し稼働率を抑える分、取得費用を抑えられる事でも知られます。しかしインドネシアはロシア経済制裁を理由としてSu-35戦闘機の費用支出への難色を示しており、一方でインドネシアからは韓国とのKF-X共同開発、ラファールやF-15仮契約、またF-35希望等様々な発表が流れていました。
■イスラエルはKC-46導入へ
 イスラエルが90億ドルの国防調達計画を発表しました。

 イスラエル政府は2月22日、KC-46空中給油機やF-35戦闘機導入に関する90億ドルの国防支出計画を閣議決定した。イスラエル政府はアメリカ政府との間でこれら装備品とともにV-22可動翼機及びCH-53K重輸送ヘリコプターの取得交渉を進めており、F-35増強計画を加えると全体で380億ドルに達する国防計画を推進中、内90億ドルが決定へ。

 KC-46空中給油輸送機はこの中でも、現在運用するKC-135空中給油機の老朽化が深刻であり、この代替が求められていた。今回の90億ドルに上る閣議決定にはKC-46空中給油輸送機2機の取得費用が含まれており、イスラエル航空宇宙軍では将来的にKC-46空中給油輸送機8機を2億4000万ドルで取得する計画だ。今後はアメリカ国務省の審査を受ける。
■サウジアラビアの兵器国産化点
 サウジアラビアはSu-35など自国内での国防生産基盤構築を進めています、いつまでも産油国としての恩恵だけに甘えるつもりは無い模様だ。

 サウジアラビア政府はロシア政府との間でSu-35戦闘機とS-400広域防空ミサイルシステムの導入及び技術移転の交渉を本格化させました。これはロシアのロステック社セルゲイチェメゾフ最高経営責任者がロシアテレビとのインタビューに応じたものでサウジアラビア政府は2030年までに国軍が必要とする防衛装備50%の国産化を目指す計画の一環に。

 Su-35戦闘機とS-400広域防空ミサイルシステム、この導入は2019年より交渉が開始され、サウジアラビア政府は国営防衛産業SAMIにこの二つの装備の国内生産化を目指しており、現在既にカラシニコフAK-103,TOS-1A広域熱圧焼却兵器等の生産移転交渉が進められています。ただ、アメリカの反発は必至でF-35等にアクセスできなくなる懸念があります。
■エジプトSu-35導入へ警鐘
 エジプトSu-35導入に警鐘をアメリカが鳴らしました。トルコのS-400導入問題とならびトランプ政権からバイデン政権となっても姿勢は堅持される。

 アメリカ政府アントニーブリンケン国務長官はエジプト政府が進めるロシア製Su-35戦闘機導入について懸念を表明した。エジプト政府はSu-35戦闘機の調達へ20億ドルのロシアとの契約を締結しているが、アメリカ政府はエジプト政府へ毎年10億ドルに上る国防援助や、今後エジプト軍が最新のアメリカ製兵器へアクセスできなくなる可能性を示唆した。

 Su-35戦闘機については導入する事によりエジプト軍の装備するF-16戦闘機などとデータリンクを形成する為、ネットワークの一体化が損なわれると共に技術情報が自動的に連接し漏洩する懸念が指摘されている。この点について、アメリカは常に厳しく、トランプ政権時代にトルコ軍がS-400ミサイルを導入した事でF-35戦闘機供与を停止したままである。
■自衛隊GQM-163A取得
 防空戦闘能力強化の一端として日本へGQM-163Aが供与されます。

 アメリカ海軍は日米両軍が運用するGQM-163Aコヨーテ超音速標的機18機について5550万ドルの契約をノースロップグラマン社との間で締結したと発表しました。18機のGQM-163Aは14機がアメリカ海軍に、3機がアメリカミサイル防衛局に、1機が海上自衛隊に納入されます。今回のGQM-163A生産は計画全体では第15次生産分となりました。

 GQM-163Aコヨーテ超音速標的機、これは直超音速目標への対処を訓練する為のドローンで巡航速度はマッハ2.5以上、海面上6mの低高度を飛翔した場合の飛翔距離は90kmに達するといい、全長5m、直径は30cmとなっています。このドローンは所謂シースキミング極超音速ミサイルを再現するもので、艦隊防空の基盤構築には重要な標的用無人機です。
■ヴェトナムがT-6A導入へ
 ヴェトナムがアメリカ製練習機を導入します。

 ヴェトナム空軍はアメリカ政府よりT-6AテキサンⅡ練習機3機導入の提案を受けたとのこと。これは現在ヴェトナム空軍の戦闘機要員養成の一部がアメリカ国内で実施されている為で、既にヴェトナム空軍には34名のアメリカ留学出身要員が操縦要員として任務に当っているとのこと。ここでT-6Aをヴェトナムが導入した場合、訓練の効率化が図れます。

 T-6AテキサンⅡ練習機はスイスのピラタス社製PC-9高等練習機のアメリカ仕様で、一見初等練習機の様なターボプロップ機ではありますが、強力なエンジンを搭載しておりジェット練習機を用いる中等練習課程の一部を担えるだけの性能を有しています。アメリカヴェトナム艦の地域安全保障協力支援戦略的プログラムの一環としての提案といえましょう。
■ハンガリーがロシア機生産
 NATO加盟国のハンガリーにてロシア製練習機の生産が開始されるという。

 ハンガリーのZrtアビエーションエンジニアリング社は3月17日、ロシアのイリューシンIl-103初等練習機のライセンス生産契約を締結したとのこと。ハンガリーはNATO加盟国で、ロシアからの兵器技術移転はクリミア併合を受けての対ロシア経済制裁へ影響する可能性がありますが、イリューシンIl-103初等練習機のハンガリー軍採用は行われません。

 イリューシンIl-103初等練習機は定員4名の初等練習機で単発式、初等練習機としての用途に加えて連絡飛行や後部座席をフラット化し急患輸送にも対応するとのこと。ロシア機らしさといいますか、格納庫以外での長期保管でも機体構造が劣化しない。イリューシンは本機を民間用と強調していますが、NATO加盟国を潜在的市場と考えているのでしょう。
■アルジェリアSu-34導入交渉
 アルジェリアはSu-34戦闘機取得へ前進した。

 アルジェリア空軍はロシアからSu-34戦闘爆撃機14機の導入について大きく前進したとロシア国内報道スプートニクニュースの報道がありました。アルジェリアは2020年にロシア製第五世代戦闘機Su-57戦闘機14機を20億ドルにて取得する契約を結んでおり、この延長線上に強力な打撃力を有するSu-34戦闘機の交渉も2021年内の締結を目指すという。

 Su-34戦闘爆撃機はSu-27戦闘機の余裕ある機体設計を原型とし、カモノハシの嘴やアヒル顔と称される独特の並列複座式の操縦席が外見上の大きな特色となっています。アルジェリア仕様の機体はSu-34MEとされ、ロシア空軍は中期計画に20機のSu-34を取得する計画ですが、この内の14機をSu-34MEへ改修する見込み、Su-34輸出は今回が初となる。

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【防衛情報】AH-64E戦闘ヘリコプターのスパイクNLOS試験とS-97/FARA将来攻撃偵察機

2021-05-24 20:21:18 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 戦闘ヘリコプターの将来は間もなく大きな転換期を迎えるのかもしれません、この視点について今回は幾つかの話題を。

 陸上自衛隊ではAH-64D戦闘ヘリコプターについて、D型に対応するミサイル備蓄の観点から将来の去就が注目されています。戦闘ヘリコプター、第一線の近接戦闘部隊には即座の航空支援と強力な打撃力を発揮する反面、2000年代初頭のイラク戦争と治安作戦等を契機に敵防空火器への脆弱性が指摘、時代は終わったともいわれています。本当でしょうか。

 今回は戦闘ヘリコプターと関連する幾つかの話題についてみてみましょう。先ず、防空火器に対する脆弱性は、特に第一線防空火器の射程延伸によるものが多きいのですが、AH-1S対戦車ヘリコプターの装備したTOWミサイル射程3750mに対しAH-64のヘルファイアは8000m、一時的に脆弱性を払拭しました、それが追い付かれつつある構図ですが、今は。

 アメリカ陸軍はAH-64Eアパッチガーディアンより射程32kmのスパイクNLOSミサイル発射試験を成功させました。これはアメリカ空軍第780評価試験航空隊が実施したもので陸軍が進める視程外多目的兵器開発評価試験の一環です。スパイクNLOSはイスラエルが開発した実用対戦車ミサイルとしては最大の射程を有するもので、航空機搭載は初めて。

 AH-64Eアパッチガーディアンには現在、射程8kmのヘルファイアミサイルが採用されていますが、近年の地対空ミサイル性能向上により8kmの射程は心もとない時代となってきました、この為、光ファイヴァー誘導方式のスパイクNLOSを採用したもので、光ファイヴァー誘導の実用ミサイルはこの他に世界でも日本の96式多目的誘導弾しかありません。

 スパイクNLOSミサイルは搭載方式がヘルファイアの様な兵装架に直に搭載するのではなく箱型発射装置に搭載する方式であり、アパッチには箱型発射装置が装着、ミサイル発射試験は射程の大きさから陸軍ではなく空軍が支援する事となり、第780評価試験航空隊が参加しています。2021年3月の初の射撃試験では32km先の標的に正確に命中しました。

 以上の通り、32kmといいますとかつて航空自衛隊のF-1支援戦闘機が搭載したASM-1の射程が40km、非常に延伸した印象があります。従来は長射程のミサイルを開発した場合でも、目標を戦車とした場合は錯綜地形に隠れた戦車を超遠距離から判別識別し正確に誘導する事が難しい課題があったのです。カメラを持つスパイクNLOSがこれを解決しました。

 一方で、ミサイルにカメラが搭載された時代に在っても、安易に乱射して索敵用に用いる事は出来ません、特にスパイクNLOSの発射機はヘルファイアミサイルよりも大型であり、現在のところ1:1でヘルファイアミサイルを交換する事は出来ないのです。そこでAH-64Eの強力なデータリンク能力を活かし、アメリカでは無人機との連接が、研究されています。

 アメリカ陸軍は運用するグレイイーグル無人機の運用時間が100万時間を超えたと発表しました。グレイイーグル無人機はアメリカ陸軍が新しく装備した固定翼型の無人航空機で、アメリカ空軍が創設された際のキーウェスト合意により固定翼機の大半を空軍の管轄とした陸軍には装備の欠缺となっていた武器体系を補完する新しい航空機となっています。

 グレイイーグルはジェネラルアトミクス社製、2021年3月16日に飛行100万時間を超えましたが、陸軍には250機以上が配備されています、エンジンは200hpと各種ヘリコプターと比較しても低出力ですが各種センサーに加えヘルファイアミサイル4発を搭載可能で、AH-64Eアパッチガーディアンからの航空管制を受け有人無人の混成戦術運用も可能です。

 ヘルファイアミサイルを搭載出来るグレイイーグル無人機、それならば対戦車戦闘は無人機に任せ、戦闘ヘリコプターはいよいよ不要となったのではないか、こう反論されるかもしれません、しかし問題なのは、グレイイーグルの様な無人機がドローンと呼ばれる点、そこにこの種の機体の宿命がある点です、ドローンとは邦訳すると無人標的機なのですね。

 無人標的機はもともと地対空ミサイルの訓練用に開発されまして、そもそもイスラエルが世界初の無人偵察機として開発したパイオニア無人偵察機も元々は無人標的機にカメラとTV動画伝送装置を搭載したものです、故に敵対戦力が高射機関砲や携帯地対空ミサイル以上の防空火力を持つ、例えばロシア軍や中国人民解放軍のような、相手には脆弱性が高い。

 戦闘ヘリコプターの優位性は、匍匐飛行という超低空飛行を多用し敵防空火力の覆域においても接近し、地域制圧火力であるロケット弾と対戦車用のミサイルに点目標を正確に破壊する機関砲を併せ持ち、且つ防弾版等ある程度の生存性を有する点が、既存の武装ヘリコプターや無人機とは異なる点で、今のところこの生存性の優位性は揺らいでいません。

 一方で、戦闘ヘリコプターには高い脅威度の地域へ進出し、任務に当る性能は付与されていますが、進出速度では、これこそ回転翼航空機の宿命なのですが、固定翼航空機には遠く及びません、そこでアメリカ陸軍では、AH-64Eを補完する航空機として複合ヘリコプターという、ヘリコプターの利点を幾つか犠牲とし高速飛行を重視した機体を開発中です。

 アメリカ陸軍のFARA将来攻撃偵察航空機として開発されるS-97レイダー複合ヘリコプターの評価飛行が4月13日と15日に実施されたとのことです。S-97レイダー複合ヘリコプターはロッキードマーティン社とシコルスキー社が開発しているもので、シコルスキー社は1960年代から高速飛行が可能である複合ヘリコプターの技術開発を行ってきました。

 S-97レイダー複合ヘリコプター評価試験はアラバマ州ハンツビルにあるレッドストーン兵器廠において実施され、二重反転ローターと推進用回転翼を組み合わせ、高速度の巡航飛行を可能とすると共に、同様の速度特性を有するV-22やV-280のような可動翼機と比較し、ヘリコプターの様な飛行特性を有し、高速巡航と発着まで速度領域と機動性の欠缺がない。

 FARA将来攻撃偵察航空機は、対戦車ミサイルの運用能力を想定しています。もっとも防弾性能や機関砲の有無等からAH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターを完全に置換えるものではないとしていますが、極めて早い進出速度とヘリコプターと同様の運用特性を有しており、こうした機体へ打撃力付与はヘリコプター体系の転換点となりましょう。

 陸上自衛隊の視点に戻りますと、戦闘ヘリコプターは近代化改修によりスパイクNLOSの搭載能力の付与は充分可能です。そして射程32kmのミサイルは、自衛隊が現在最も注力している島嶼部防衛に際しても、もちろん万能ではありませんが水平線に隠れた航空打撃という運用が可能となるでしょう。ただ、従来の5個飛行隊を維持する必要性は、難しい。

 AH-64D戦闘ヘリコプターはAH-64E戦闘ヘリコプターへアップデートは可能です、そしてAH-64D戦闘ヘリコプターは一個ヘリコプター隊所要でしかありませんので、仮に航空打撃力を維持するのであれば何れはAH-64E戦闘ヘリコプターを新規調達せざるを得ません、しかし当初の様な62機の調達は、その行動範囲を考えれば如何とも言えないものです。

 グレイイーグル無人機のような機体とAH-64D戦闘ヘリコプターを、方面隊毎に分けて装備し、必要な場合には統合任務部隊へ編入する、若しくはS-97レイダー複合ヘリコプターのような航空機を既存のOH-1観測ヘリコプターの後継機に、充てた場合は予算が難しい事になりそうですので、OH-1観測ヘリコプターの純粋な後継機に分ける等が考えられます。

 いずれにせよ、戦闘ヘリコプターの時代は終わった、という理念こそが、実は、戦車の時代は終わった、という理念と同じ様に実は的外れで時代遅れとなりつつあります。もちろん、将来には歩兵携行可能なミサイルで数十km先を狙うものや、戦車が大型の対戦車ミサイルを迎撃するレールガン等を搭載する可能性もありますが、それはまだ先の話でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【総火演2021特集-第一回】富士総合火力演習-陸上自衛隊最大の公開実弾演習が本日実施

2021-05-23 20:13:21 | 防衛・安全保障
■総火演2021実況配信を考察
 富士総合火力演習が本日執り行われました、コロナ対策により実況配信が在ったのみですが総火演2021実況映像を再現しつつ考察をしてみましょう。

 富士総合火力演習、二年連続のライブ配信となりましたコロナ禍下の総火演です。富士総合火力演習は毎年八月に一般公開される我が国最大の公開実弾演習、昨年と今年は夏季に東京五輪開催と自衛隊の支援などのの日程が組まれている為、五月の実施となりました。

 今回から、富士総合火力演習ライブ中継中に北大路機関部内用に作成しました概況実況の文章をもとに、しかし過去に北大路機関が撮影しました不意総合火力演習などの写真とともにその様子を紹介しましょう。なにしろ緊急事態宣言発令中、ステイホームで紹介です。

 COVID-19感染拡大により今年度も一般公開は無し、しかし見学の隊員も昨年は絵に描いたような社会的距離とともに2m以上離隔を置いて部内要員の見学は今年度は"密です"に回帰しまして、少しづつですが日常の回復を印象させるのは幸いというところでしょうか。

 即応機動連隊と機動師団による反撃の要領、今年度の総火演は即応機動連隊に続いて機動師団の展示という内容でした。前段演習では各種装備の展示、後段演習ではシナリオによる想定という部分は例年通り。悪天候が気になるところですが、富士の天気は気まぐれだ。

 今年度は9mm拳銃の射撃が展示されまして、これは過去なかったようにおもえるのですが、薬莢拾いが大変そうにみえたのはご愛敬というところか。20式5.56mm小銃、こちらは今回初登場になるように思ったのですが、まだ展示できる水準まで部隊単位で訓練中なのか。

 東富士演習場の気温は14.5度、しかし全体に霞がかかっていまして富士山は見えません、例年ですとああ今年もF-2は展開できないか、と嘆息する状況です。さて60mm迫撃砲が参加しましたが、これは水陸機動団に配備されるとともに偵察戦闘大隊へも配備されると。

 60mm迫撃砲の偵察戦闘大隊への配備が会場にて発表されまして、全国の師団旅団行事でもまもなく見えるようになる装備となった。射程はそれほど大きくはないのですが60mm迫撃砲は軽装甲機動車より展開していましたので、第一線運用能力を高めた点が興味深い。

 対戦車ミサイルの射撃展示では例年通り多数過ぎる装備が登場しまして、しかし今年度は無人航空機との連接が強調されていまして、中域用UAVとしてスキャンイーグルが、狭域用UAVというスカイレンジャーはこの名称で登場しました。豪州製とカナダ製のものです。

 対戦車火力については毎年思うのですが87式対戦車誘導弾の射程は2km、01式軽対戦車誘導弾の射程は1.5kmですので、そろそろ統合してはどうかとも思います、イスラエルのスパイクミサイルのように01式を射程延伸型として改良型を開発してもいいとも考える。

 また89式装甲戦闘車に搭載する79式対舟艇対戦車誘導弾が今年も頑張りましたが、こちらも全国の対戦車隊廃止に見舞われていますので、細々と維持するよりは、なにしろ89式装甲戦闘車は数が少なく、79式対舟艇対戦車誘導弾は一種専用装備となりつつあるとも。

 89式装甲戦闘車は、後継装備も開発はされているものの広範な装備を見込む話はありませんので、思い切って数十程度ならばイスラエル製のスパイクERミサイルを搭載するなど、配慮は必要にも思う。ただ、数限られる戦車を掩護するには装甲戦闘車も数は必要ですが。

 砲迫射撃には19式装輪自走榴弾砲が参加、今年度も射撃は実施しませんでしたが今年度後半から部隊配備が開始されると説明されました。52口径火砲、悪い装備ではない共考えるのですが、しかし今後この19式装輪自走榴弾砲は運用を考えると設計時と状況は違うのですからね。

 19式装輪自走榴弾砲、もともと師団特科等に配備される前庭でしたが、開発中に防衛大綱が書き換えられ、師団特科や旅団特科が廃止され方面特科へ集約されるのですし、思い切って99式自走榴弾砲に統合してはどうかとも。方面隊ならば充分活用できる装備です。

 19式装輪自走榴弾砲はMAN社製トラックが採用され三菱製重装輪回収車とのファミリー化が断念されていますが、これは三菱製車体では道路運送車両法の車両限界よりも駐鋤の部分で超過してしまうためといい、現時点の大きさで実際は目一杯の装備なのですよね。

 言い換えれば19式装輪自走榴弾砲はこれ以上の伸び白がありません、しかし世界の砲兵はアメリカの将来火砲が示すように58口径砲へ延伸して行きますので、要するに19式は現時点でこれ以上砲身を法律上のばせないこととなっているのですよね、すると考えるのは。

 99式自走榴弾砲の長砲身型へ集約したほうが、なにしろ58口径砲の射程は100kmに達するのですし、射程が求められる島嶼部防衛には必要と考えるのです。99式自走榴弾砲は確かに重量があり地域師団には取回しは大変ですが、方面隊単位ならば対応できると考える。

 改修については、そして車体はまだ余裕はありますので仮に砲身を58口径と換装するならば射程は100km、40kmの火砲を島嶼部防衛に充てるならば相当数が必要となりますが、100kmの射程ならば南西諸島には数カ所に配備するだけで、他島の守備部隊を支援可能に。

 沖縄本島と石垣島に奄美大島と馬毛島、離れた東大島に特科中隊をそれぞれ配置するだけで、全域を防衛できます、これが射程40kmとなれば特科団規模の火砲が必要となる。野砲はミサイルと異なり警告射撃が可能、グレーゾーン事態にはミサイルより適しているといえるでしょう。

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