北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都発幕間旅情】加納城(岐阜加納)ファントム後の岐阜に陸軍第51航空師団司令部跡の桜花

2021-03-31 20:02:58 | 旅行記
■ファントムの年度末に岐阜の城
 岐阜と云えば岐阜城が岐阜駅からも岐阜基地からも望見出来るのですが、歴史的にさらに長い歴史を歩んだ城郭があるという。

 年度末、そう本日は3月31日水曜日で2020年度の年度末、明日から2021年度が始ります。そして思い起こすのはCOVID-19コロナ禍に曝された今年度は自衛隊行事が総崩れで、撮影できるのはそれほど遠くない舞鶴基地の護衛艦か、岐阜基地のファントムでした。

 ファントム、そのファントムも2021年3月17日に遂に引退となってしまいまして、桜前線の早過ぎる北上が五分咲きでそのファントムの自衛隊卒業を祝うよう。ファントムが除籍されますと、こう岐阜観光というものにも好奇心の軸線を移してゆきたいところですね。

 桜薫る石垣の城址公園、三月中旬なのに櫻が咲き始めます、春の訪れと共に梅花の季節は素早く過ぎ去りまして四月を前にして木々は春爛漫を喜んでいるようです。ここは加納城、岐阜県岐阜市の中心部をやや南に在ります徳川家康造営という巨大城郭遺構の一つ。

 加納城、岐阜基地は岐阜県美濃地方に位置していますが、この岐阜基地へ東海道本線から高山線か名鉄線に乗り換えるのが東海道本線岐阜駅です。岐阜駅は地方中核市岐阜市の中心部にあり、その岐阜駅から徒歩20分程行きましたところに江戸時代此処を収めた城址が。

 岐阜県岐阜市加納丸の内、加納城は名鉄名古屋本線加納駅が最寄駅となっています、岐阜駅から微妙に遠いな、と思うのですが岐阜駅前に清水川という小川が流れていまして、江戸時代はここが加納城外堀であったという、つまり昔の城前に岐阜駅が在るということに。

 天下普請、加納城は巨大な城郭ですが慶長7年こと西暦1602年に徳川家康の天下普請により造営された城郭です。奥平信昌が最初の城主となりましたが、奥平信昌は武田勝頼を離反し長篠城に籠城、織田信長が武田氏を破る長篠の戦に繋がる分岐点を造った武将という。

 御三階櫓、現在は石垣が手入れされず残るのみで植樹された桜が石垣に圧力を加えている立ち入り禁止の多い城址公園ではありますが、なにしろ天下普請の城郭でしたので築城当時の城郭には御三階櫓としまして独立式層塔型三重四階の事実上の天守閣がありました。

 岐阜城天守閣を移築したという御三階櫓、今は更地となった二ノ丸に置かれたといいます。山城の岐阜城は威容は凄いものの岐阜駅から仰ぎ見る程に標高が高い為に登城に時間が掛かります、すると平時の行政中枢には平城である加納城が理想的だったのかもしれません。

 奥平氏、戸田氏、安藤氏、永井氏、と歴代加納藩主の居城となりました加納城ですが、この御三階櫓は享保13年こと西暦1728年に落雷が原因という大火が在り焼失してしまいました。考えれば安土桃山時代岐阜城天守閣の移築ですので、残念と云えばそれに尽きます。

 明治維新とともに加納城も廃城となり、櫓や城門と御殿等は悉く売却され荒廃を極めています。明治時代の1900年に岐阜県師範学校が置かれ、1939年には帝国陸軍第51航空師団司令部が置かれる事となりました。そして戦後は陸上自衛隊の駐屯地となってゆきました。

 岐阜駐屯地、現在の岐阜分屯地は航空自衛隊岐阜基地隣接地ですが、1954年の自衛隊発足とともに陸上自衛隊駐屯が開始され、第10師団隷下の第10対戦車隊と方面直轄の第313地区施設隊、第309基地通信隊などが施設や通信塔を設け1975年まで駐屯していたという。

 第51航空師団といいますと航空総軍直轄の師団ですが、旧軍師団司令部跡地で自衛隊駐屯地跡地、興味深い歴史を辿る城址は今や桜の名所となっています。城郭遺構は手入れされていない石垣と崩れやすい土塁という保存状況ではありますが、不思議な時を刻んでいる。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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日本造船業は防衛の根幹,LST&LSDを増強せよ【5】日本国内には必要な工業力が"まだ"ある

2021-03-30 20:00:56 | 防衛・安全保障
■舞鶴造船業廃止の衝撃
 舞鶴の造船業が撤退するという衝撃から始まりました特集はこの第五回を当面の最終回としましょう。

 三井造船こと三井E&Sは、防衛用に転用できるような民間船舶をそのまま特許登録し話題となりました。これはランプウェイを用いて車両を搭載揚陸する船舶に関する特許というもので、直接離島の沿岸部に、というわけではないのですが自動車運搬船を埠頭に横付けせず船首からの揚陸を想定し、これにより荷役可能な港湾が大きく広がるという発想です。

 ランプウェイを用いて車両を搭載揚陸する船舶、特許に際しての概略では露天甲板に車輛200両と船倉に車両200両及びコンテナの積載を想定しているもので、船首からの揚陸とともに低重心構造と吃水線の船型を絞ることで凌波性能を向上させ、外洋に面した港湾や荒天下でも運用可能という、実は自衛隊に売り込むのではないか、というものを発案した。

 海上自衛隊に輸送艦、業務輸送に当たる輸送艦を増強させる提案ですが、難しい課題は幾つか考えねばなりません。第一に人員不足に悩む海上自衛隊に運用する余力をどのように捻出するか、という部分が。第二に任務過多に悩む海上自衛隊が貴重な人的資源や予算的資源をさく合理性はあるのか、という事です。官庁では、この2点を避けては通れません。

 業務輸送。海上自衛隊について必要なのはこの能力でして、作戦輸送ではなく、むしろ輸送艦おおすみ型などが展開する輸送拠点へ全国から部隊を展開させる運用が業務輸送というものです。業務輸送の要諦は、戦闘を想定しないものですからその分だけ乗員を省力化することができますし、思い切った発想ですが運用しない場合は、無人とできるのですね。

 海上保安庁の巡視船などが、実際に停泊中には無人としている事例がありますし、海上自衛隊でも水船や油船に曳船などは無人にて停泊しています。もちろん限度がありまして、例えばドック型揚陸艦のような大型の艦艇を無人としてしまいますと出航までに点検要目が多すぎ非効率とななり得ます、が、大きさが2000t前後のものであれば、どうでしょう。

 輸送船ではないか、こう反論がきてしまうかもしれませんが、平時にあっては当直を置かず必要な運用に際し人員を集合させる方式を取れるのであれば、例えば予備自衛官制度を活用する選択肢も考えられます。要するに平時には1当直の短時間運用基盤を構築し、有事の際に2当直、3当直、とする方式ですね。これならば部隊の負担も抑えられます。

 海上自衛隊が運用する意義ですが、実のところその気になれば運用できる任務領域は、特に平時において考えられるものがあるのですね。なにしろ艦艇、国際法上の軍艦としての資格を有しています。それでも人員が足りない場合は、陸上自衛隊輸送部隊に船舶輸送隊を置き、予備海上自衛官の支援を受ける統合運用という選択肢も検討されるべきでしょう。

 輸送艦の作戦運用について。作戦輸送と業務輸送を類型化したうえでは矛盾すると思われるかもしれませんが輸送艦は領域警備任務についても相応に能力を発揮します。もちろん作戦輸送に用いる艦艇が電子装備などで適していることは事実ですが業務輸送に用いる艦艇であってもまったく対応できない、というようなものではなく、柔軟な選択肢はある。

 領域警備はショーザフラッグという、我此処に在、これを第三国の勢力に対して自国領域にて示すものです。このため電子妨害能力や対空警戒能力は無いよりはあったほうがよいにしても、機関砲を搭載した輸送艦であれば追い払うことは可能です。平時の任務ですので極論で、相手が本格的な水上戦闘を仕掛けた場合までは想定する必要もありません。

 南西諸島を念頭に警戒監視任務を展開する場合、輸送艦は居住空間に余裕がありますので長期間の遊弋が可能となりますし、また悪質な領海侵犯事案などについては輸送艦艇には機関砲とともに搭載艇を有していますので、例えば高速複合艇を搭載し、警備隊とともに発進させ警戒、意志を示し拿捕も辞さない強力な示威を試みることさえ、可能でしょう。

 警備能力の限界を超えて相手が示威行動を行った場合には増援を展開させることとなりますが、グレーゾーン事態に状況が悪化した場合には輸送艦は警備を拡大阻止に切り替え、水陸機動団や即応機動連隊の輸送に方針転換するという運用が考えられます。こういうかたちで、民間船舶建造技術の転用をいくつか考えてみた訳ですが、それも造船業健在ゆえ。

 舞鶴造船業廃止の衝撃、この話題から始まりました本論ですが、需要があれば応じるだけの造船能力は国内に在りまして、その技術面でも価格競争面でも、日本の造船業は非常に高い水準にあります。こうした造船業から、防衛用の特殊艦船に拘らずとも、安価に調達できる必要な装備品というものは案外あるものでして、これを支える必要、感じるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】マルバ装輪自走榴弾砲とエヴァ装輪自走榴弾砲,グリフィン&サーバル軽装甲車

2021-03-29 20:01:35 | インポート
■週報:世界の防衛,最新12論点
 防衛情報、今週は陸軍砲兵火力や各国装甲車等の話題を12論点紹介してゆきましょう。

 ロシア軍は2S42マルバ装輪自走榴弾砲の試験を開始した。ロシア軍では1987年に量産を開始した2A65ムスタB牽引式152mm榴弾砲や旧ソ連が1960年代に大量生産した2S1グヴォージカ自走榴弾砲の後継を必要としており、2S1は装軌式自走榴弾砲であるが、ロシア軍は機動性に優れた大型トラック方式の装輪152mm榴弾砲により置き換えたい構想だ。

 2S42マルバ装輪自走榴弾砲はロシア防衛企業ロステック社系列のブレベストニク中央研究所により開発されたもので、大型トラックや装輪装甲車の製造で実績あるブリヤンスク自動車社により、BAZ-6909大型トラック派生型であるBAZ-6010-027トラックに装軌式2S35コアリツィア自走榴弾砲搭載砲用の2A88派生型の152mm榴弾砲を搭載している。

 2S42マルバ装輪自走榴弾砲は射撃に際し駐鋤を展開し射撃準備を行い、新設計の装填補助装置により毎分8発射撃が可能だ。自走装填装置を持つ2S35自走榴弾砲は毎分16発から最大22発が射撃可能であり、相当抑えられたがロケット誘導砲弾による射程は70kmに達する。戦闘重量は21tで車軸は独立懸架、470hpエンジンにより80km/hの機動が可能だ。
■エヴァ最新作がついに公開
 エヴァ最新作がついに公開される事となりました、アニメーション映画ではなくスロバキアが開発した自走榴弾砲のエヴァです。

 スロバキアのコンストラクタディフェンス社は最新鋭のエヴァ装輪自走榴弾砲試験映像を公開しました。エヴァ装輪自走榴弾砲は52口径155mm榴弾砲をタトラ社製八輪型装甲トラックに搭載したもので、コンストラクタディフェンス社はチェコスロバキア時代のZTS公社時代にズザナ装輪自走榴弾砲を開発しており、この後継を目指す新型車両です。

 エヴァ装輪自走榴弾砲はズザナの45口径砲に対して52後継に方針を延長した事で、射撃準備には2分を要し、車体には12発を搭載、ERFB-BB射程延伸砲弾を利用した場合に最大射程41kmを発揮しており、自動装填装置により乗員は僅か3名となり1分間に5発、3分間に13初の連続射撃が可能という。緊急時には手動操作により毎分2発の射撃も可能だ。

 エヴァの車体部分はタトラT3C-928-90-EURO3トラックが採用されました。タトラT3C-928-90-EURO3トラックは300hpの空冷ディーゼルエンジンを搭載し最高速度は85km/h、変速機は手動で半自動変速へのオプションも可能といい、航続距離は路上操行で600kmに達する。C-17,A-400M輸送機への搭載を念頭にコンパクト化しているとのこと。
■軽装甲車に大口径機関砲
 スペインは自衛隊の軽装甲車にさえ搭載可能な30mm機関砲を開発しました。これで無インキなどに対抗するという。

 スペインのエスクリバーノメカニカルアンドエンジニアリング社は軽装甲車に搭載可能な30mm機関砲遠隔操作銃搭M-230LFを発表しました。これはガーディアンL-HITシステムの最新型で元々は5.56mm機銃や12.7mm重機関銃用の遠隔操作銃搭RWSとして供給されていたものですが、M-230LFはこれまでにない大口径の30mm砲型となっている。

 M-230LFの驚くべき点は260kgという軽量に収めていると共に、複合光学照準装置による昼夜を問わない照準能力と二軸型砲安定装置を採用し3km以遠の無人機等の小型目標を撃墜可能で、スペイン軍のVCRドラゴン装輪装甲車にも搭載可能です。この種の装備はアメリカ海兵隊がJLTV統合軽量戦術車輛に搭載し第一線の無人機狩りに充てる構想があります。
■ドイツ,MAN社製トラック
 ドイツ連邦軍は自衛隊も装輪自走榴弾砲車体部分に採用したMAN社製トラックを大量導入します。

 ドイツ連邦軍はRMMVラインメタルMANミリタリービーグル社との間で5億4300万ユーロの軍用トラック新規調達契約を締結しました。5億4300万ユーロの契約により1401台の新たなトラックが取得され、内訳は5tトラック150台と15tトラック1000台などを含むものとなっており、この契約には装甲強化パック等は含まれていないとのことでした。

 5億4300万ユーロの費用はドイツ連邦政府COVID-19緊急補正予算により計上されたものです。COVID-19緊急補正予算により軍用トラックを取得するのは日本が東日本大震災復興予算から陸上自衛隊車輛を調達した構図と似ていますが、連邦軍車両は津波のような物理被害を受けていません。これはRMMV社が経営悪化した事による補填といえましょう。
■ドイツのディンゴ2耐爆車輛
 ウニモグトラックの汎用車体を利用した安価なドイツ製装甲車の最新話題です。

 ドイツのクラウスマッファイヴェグマン社は改良型のディンゴ2耐爆車両の新しい広報動画を発表しました。ディンゴはドイツ連邦軍の汎用軽装甲輸送車としてウニモグ社製トラックの車体部分を基礎として、転覆限界の向上や耐地雷性能を付与し装甲化させたもので、原型は2008年までにドイツ連邦軍へ配備が開始されており、輸出も広く行われました。

 ディンゴ2がウニモグU5000の車体を応用し車体を拡張、汎用性を高めた点が特色とされており、人員8名を輸送可能である点に加え、3.5tまでの各種機材を搭載可能である事から、第一線での歩兵輸送任務の他、前線監視車輛や防空砲兵用車輛と装甲救急車などの用途が考えられます。またウニモグ社の整備サービスを受けられる点も利点といえましょう。
■カタール軍のNH-90
 NH-90,これはUH-1やUH-60等を置換えるヘリコプターですが、NBC防護能力の付与などかなり高性能で高価格のヘリコプターとなっています。

 欧州多国籍企業NHインダストリーズ社は2020年12月20日、カタール軍向けのNH-90ヘリコプター初号機が試験飛行を開始したと発表しました。組立は製造を担当するイタリアレオナルド社のベニステセラ工場とフランスのエアバスヘリコプターズ社マリニャンサイト工場で進められており2021年内にカタール軍へ納入される見通しとされているところ。

 NH-90ヘリコプターのカタール軍導入計画は陸軍多用途ヘリコプターとして16機が、海軍哨戒ヘリコプターとして12機が導入される計画で、カタール軍は将来のオプションとして陸軍用と海軍用を各6機増強し、ヘリコプター部隊をNH-90により統合する計画があります。NHインダストリーズ社は最初の納入について2025年までに完納の計画としています。
■フランス軍グリフィン納入順調
 フランス版軽装甲車と云うべきグリフィンが軽装甲機動車に影響を与えたVBLを順調に置換えています。

 フランスの防衛合弁企業EBMRは同社が量産を担当するグリフィン耐爆車両について、128号車を納入したと発表しました。グリフィンは2019年に92両が納入され、更に2020年には90両が製造される計画でしたが、2020年のフランスはCOVID-19の影響により防衛産業も工場一時閉鎖を余儀なくされたものの、構成部品は製造できたとしていました。

 グリフィン耐爆車両は車高の高い装甲トラック型の六輪式装輪装甲車ですが、耐地雷構造を重視しており、フランス軍では1970年代から改良を重ね使い続けられているVAB軽装甲車の後継に充てています。遅れている製造分は2021年の早い時期に完成させるという。EBMRはネクスター社とタレス社などが出資しグリフィンを製造する特定目的会社です。
■イギリスのボクサー重装甲車
 ボクサー装輪装甲車のイギリス軍導入が本格的に契約されました、もともとは1998年に決定しているはずの計画が延び延びになったもの。

 イギリス国防省は2020年11月、MIV機械化歩兵車輛プログラムとして導入が内定しているボクサー重装輪装甲車260両について、その8億6000万ポンドにのぼる製造契約をRBSL,ラインメタルBAEランドシステムズ社との間で契約しました。ボクサー重装輪装甲車はイギリスシュロップシャー州テルフォードのRBSL工場にて生産される事となります。

 ボクサー重装輪装甲車260両はライセンス生産ではなく合弁会社により製造するという新しい試みでありますが、同時にイギリス国内に1200名規模の新規雇用を生み出すとともに8億6000万ポンドにのぼる製造契約のうち60%はイギリス国内企業との間で交わされるとしており、従来のライセンス料ではなく相互互恵の防衛協力、その一例といえましょう。
■ポーランド製ブラックホーク
 フィリピン軍は民間用ブラックホークを軍用に転用するもようです。

 フィリピン空軍は新たにアメリカシコルスキー社製S-70Iブラックホークの導入を開始しました。2020年末に行われた納入式とともに6機が到着、フィリピン空軍では16機の導入を計画しており、導入費用は2億5200万ドル、2021年内に全てが納入される計画です。フィリピン空軍では特殊作戦や陸軍空中機動作戦の支援用に用いる計画とのことです。

 S-70Iブラックホーク多用途ヘリコプター、フィリピン空軍は旧式化したUH-1H多用途ヘリコプター等の後継機として当初、カナダ製ベル412EPI多用途ヘリコプター24機導入を検討していましたが、価格面で折り合いがつかず、結局ポーランドで組み立てられるUH-60ブラックホーク民間型を安価に取得する事としました。6機は主力ヘリコプターとなります。
■スカイネックス防空システム
 ドイツ軍はかつて大量配備し全廃したゲパルト自走高射機関砲の後継装備を模索しています。

 ドイツのラインメタル社は無人機飽和攻撃を完全に鎮圧するエリコンスカイネックス防空システムを発表しました。これはスイスのX-TAR3Dレーダーシステムにエリコン35mmリボルガーガンや自衛隊ではL-90として知られるGDF009TREO機関砲、及びレーザー砲等を統合運用するもので、単体防空システムではなく、地域防空コンセプトの提案です。

 エリコンスカイネックス防空システムはレーダーにより広範囲の小型無人機や徘徊式弾薬を飛行群単位で捕捉追尾し、複数個所に配備された機関砲より調整散弾を同時射撃し制圧するもので、将来的には蜂群を意味する無人機によるスウォーム攻撃さえも短時間に多数を射撃する高射機関砲により空への面制圧を目指すものです。無論、航空機にも有効です。
■フランスのサーバル軽装甲車
 フランス軍はここ十年間で軽装甲車体系を大きく刷新させようとしています。

 フランス陸軍は2020年12月23日、DGA社との間でサーバル軽装甲車364両の調達契約を成立させました。サーバルは装甲トラック型の四輪駆動軽装甲車両でVAB軽装甲車というフランス軍に1970年代より4000両以上が採用された傑作四輪駆動軽装甲車の後継車両として位置付けられています。サーバルのうち108両は2021年内に納入される見込み。

 サーバル軽装甲車は重量15t、兵員輸送よりは通信中継車や装甲輸送車などの汎用車両として想定されており、これはVAB軽装甲車の内、兵員輸送任務には別個に開発されたグリフィン軽装甲車が充てられる為となっています。フランス陸軍は2030年までにサーバル軽装甲車を978両取得する計画で、VAB軽装甲車は多様な複数車種により置き換えられます。
■インドネシア初の国産軍用車
 軍用装備は国威発揚の為に出来る限り国産で揃えたいというのは気持ちとしては判りますね。

 インドネシア陸軍は1月13日、インドネシア国産のマウン高機動車の受領を開始しました。これはインドネシアのPTピンダット社が自国向けに国産開発した車輛で、装甲を有さないソフトスキン車ですが四輪駆動の不整地踏破能力を有し、歩兵の輸送や偵察用に用いる新型車両で、インドネシアの防衛装備品国産率向上の一環として開発されたものです。

 マウン高機動車は引き渡し式に際して40両が納入され、最終的に500両が配備される計画です。納入式典にはスビアント国防相も出席しました。乗員は4名と荷物室を有しており、エンジンは149hpのトヨタハイラックス2494ccを採用、基本的に固定武装はありませんが、インドネシア軍では警戒任務用に7.62mmのSS2-V4軽機関銃搭載を予定しています。

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そうりゅう,高知沖衝突事故の検証【4】潜水艦増強下に相反する潜水母艦削減と人件費の圧縮

2021-03-28 20:09:19 | 防衛・安全保障
■平成型日本企業病と自衛隊
 そうりゅう高知沖衝突事故の検証、非正規雇用や無理な過剰勤務を強いる休養体制の削減と評価制度の実相との乖離、些細なミスの背景にあるのではないかと。

 そうりゅう、そして建造中に感電事故が起きているのですが、この後、AIP潜水艦の期待を背負うと共に技術試験や戦術研究を重ねてゆきます。この過程で自殺が数件おきており、この内一件が原因に上官の暴行が挙げられています。もちろんこれは昇進してはならない人材が昇進した事に起因するのですがしかし、これは特殊例として収めるだけで良いのか。

 要因の一つに行き過ぎた安全管理が、とは考えられないでしょうか。潜水艦そうりゅう事故に限っては、そうりゅう感電事故以降、これは一般論として一回事故が起きますと再発防止措置が徹底され、かえって息苦しくなるのですよね。事故の要素は数多ありますが、限られた人員と教育の知見で得られる注意力と判断力は無尽蔵ではない、人間ですからね。

 行き過ぎた安全管理。再発防止は重要でも些細な問題でも積み重なれば大きなものとなります、しかし小さな問題が発生した、すると再発防止措置を教条主義的に継ぎ足す事は注意点の件数を増大させ、かえって別の危険要素が顕在化し、事故に繋がる懸念を忘れているように思います。注意は重要です、しかし人間が乗っている事を忘れてはなりません。

 防衛大綱改訂に伴い潜水艦戦力は増強中ですが、この負担というものをどの程度予算を策定する際に配慮されているのか、この当たりの不安と云いますか懸念というものはないでもありません。即ち潜水艦隊は16隻から22隻への増強が進むと共に乗員の増加分以上に本来増強されるべき人員、教育訓練要員や事務要員と補給要員が充分増員されていません。

 これは海上自衛隊全体の人員不足であり、潜水艦隊以外にも護衛艦隊も地方隊も人員不足ですので、潜水艦隊だけ優遇は出来ない、という背景はあるのでしょうが、特に潜水艦職域は他の職域の様な人事交流がありません、護衛艦から掃海艇に乗り地方総監部で地上勤務を経て今度は掃海母艦へ、というような流れが無いのですね。ここに人員不足が重なる。

 潜水艦隊は特殊、とはいわれるところですが、すると70名定員の潜水艦22隻と司令部の所帯で行き来する他ないのですね。すると幹部は昇進すると潜水艦職域の中で昇進しますので後が閊えてしまうという状況を回避せねばなりませんし、潜水艦は教育が専門的ですので人員不足だからと護衛艦や掃海艇から引き抜くわけにいかず、部隊は昇進して欲しい。

 しかし海上自衛隊全体で海曹枠が限られており、優秀で昇進しなければ数年で満期除隊となってしまう為、優秀を義務付けられる息苦しさが在ります。もちろん優秀は必要ではあるのですが、その定義に平日の課業外の時間を含めて数年間一分たりとも遅刻しないというものを筆頭に、少し定義が精鋭部隊というものの一般的な概念から外れているよう思う。

 人員不足はもう一つ、原因はと云えば、自衛隊が幹部自衛官以外競争を勝ち抜いて海曹になるまで終身雇用ではなく、これは不適切な下士官を省くのではなく全員が優秀な人材を集めても海曹枠が決まっている為、優秀でも勤務偏差値で昇進できない人員は出てきます。いわば人材使い捨てにしている最中で、同じ組織が人材不足を嘆いている状況があります。

 優秀であれ、これは必要な事ではあるのですが、人員をとられまいと数値的な優秀の定義に固執せざるをえない現状の人事制度にこそ問題は無いでしょうか。民間が優秀な人材を囲い込む中で、自衛隊は人員枠を設定し、幹部自衛官を除き、非正規雇用から正規雇用への道を閉ざしている。この当たりが平成日本型企業病に自衛隊も罹患したといえましょう。

 更に。人員不足は予算不足の裏返しです。しかしその原因が人材使い捨てと云うべき中期的に海曹昇進枠に入れなかった人員を使い捨てる制度では、やりがい詐取に耐えられる適正者を探している状況です。こうした中で潜水艦を増強しているのですから、皺寄せは人件費だけに寄せるのではありません。潜水艦母艦機能を持つ艦が順次廃艦となっています。

 潜水艦母艦機能を持つ艦というのは潜水艦救難母艦の事でして、近年では潜水艦救難艦は建造されていますが潜水艦救難母艦は建造されず入れ替えに除籍されています。もともと潜水艦の母艦として潜水艦救難艦には潜水艦一隻分の乗員休息施設が整備されていました。これが潜水艦の性能向上を理由に順次省かれています。これは負担となっているのでは。

 潜水艦の母艦であった潜水艦救難艦から潜水艦の休養施設が順次廃止されています根拠として、潜水艦の航続距離が増大した為、というもっともらしい説明がありますが、窓も無く個室は全乗員で艦長一人だけ、という海上自衛隊の潜水艦は、航続距離が大きい分一ヶ月間程度の航海は普通に実施します。そして潜水艦は護衛艦のように簡単に接岸できない。

 そうりゅう、今回の事故で高知港内に入ったものの接岸しないように、潜水艦は通常のタグボートで普通の桟橋に接岸する事は出来ません、つまり潜水艦救難艦で休息がとれないと休息がほとんど取れない事となる。繰り返しますが、そうりゅう型は前型おやしお型よりも居住空間が圧迫されているのです、我慢を強いてもそこは人間、無限の精神力は無い。

 母艦削減は明らかに潜水艦増強の現状と逆行している、潜水艦16隻の時代に潜水母艦機能をもつ潜水艦救難艦が2隻いたのに、新型潜水艦救難艦から母艦機能が省かれ22隻の時代に母艦機能を持つのは1隻、これは計算がおかしい、と気づかない方が不思議というものです。再発防止を考えるならば、入港できる潜水艦桟橋を持つ基地と桟橋を増やすべきだ。

 せめて一部潜水艦を3当直から航海期間を縮小した上で、欧州のディーゼル潜水艦のような2当直として艦内容積を高めるとか、自動化を進めて英仏の原子力潜水艦の様なプライバシーの保てる寝台とするとか、こうした配慮が必要です。それが無理ならば、母艦機能をもつ潜水艦救難艦を3隻体制とすることが、当面の現実的再発防止措置となるよう思います。こうした結論を以て第四回で本特集の一つの区切りとしましょう。

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スエズ運河閉塞!正栄汽船所有エヴァーギブン号座礁事故長期化懸念と自衛隊派遣の必要性

2021-03-27 20:01:26 | 国際・政治
■ホルムズ海峡危機以上の影響
 スエズ運河は世界主要海上交通の8%が通行する国際的に重要な運河です。ここが商船の座礁により閉塞されることとなりました、戦争ではありませんが重要影響事態といえる。

 エヴァーギブン号、日本の正栄汽船が所有し台湾のエヴァーグリーン社が運行しドイツのベルンハルトシュッテ社が運行受託を受け子会社のBSS社が操船していた巨大貨物船が3月23日、スエズ運河で座礁しました。船舶は当時、風速20mの砂嵐に見舞われておりスエズ運河の単線航路帯にて視界不良と操船不能、そのまま運河を塞ぐ形で座礁しました。

 ニミッツ級原子力空母は333mですが、このエヴァーギブン号は399.94mという、ほぼ400mの巨大コンテナ船であり、今治造船が誇るImabari20000シリーズの一隻、総トン数22万0940tの巨大コンテナ船です。座礁はスエズ運河最狭部の幅200m水路で発生し、船首バルバスバウ部分が喰い込むよう塞ぎ、運河を重機で削り曳船で引き離そうとしている。

 スエズ運河閉塞、この状況をみますと自衛隊も多用途支援艦派遣を検討するべきではないか考えてしまいます。スエズ運河は欧州とアジアを結ぶ世界最大の重要水路であり、パナマ運河よりも海上交通量は多く、マラッカ海峡よりも迂回経路がありません。また、日本はこの海域の海上交通に大きく依存しており、これまさに重要影響事態といえるでしょう。

 間もなく離岸、航路復旧に数週間、土砂を五輪プール八杯分浚渫すれば復旧、今回の事故では情報が入り乱れていまして、間もなく離岸は希望を持たせる報道ですが報道はこの他、復旧に数週間と報じたのはAFP,五輪プール八杯分と報道したのはCNNです。今夜にも離岸、この論拠は現地が大潮である為で、逆に今夜離岸しなければ潮位が下がる、という。

 日本も何か国家として打つ手はないのか、スエズ運河はエジプト政府が管理しており、現在はオランダの協力企業と共に離岸を試みている、という事であり、特段エジプト政府から支援要請も無い訳なのですが、スエズ運河を通じての海上物流に多くを依存する日本には無関係ではありませんし、なにより過去の政府方針と合致しないと思うのです。それは。

 ホルムズ海峡、今回のスエズ閉塞に際して自衛隊を派遣すべき、と考えるのは、安倍政権時代にホルムズ海峡有事を重要影響事態の例として挙げていた点です、これは欧米と対立するイランがペルシャ湾の入り口であるホルムズ海峡を機雷封鎖する可能性が指摘されており、現実問題、コクカカレイジャス号など日本タンカーも襲撃の被害に遭っていました。

 掃海艇派遣、当時日本では安全保障関連法整備に関する国会答弁の際に政府は一例としてホルムズ海峡が機雷封鎖される事例を提示、石油の日本輸出入にペルシャ湾とアラビア海を結ぶホルムズ海峡の重要性から掃海艇等を派遣する可能性を提示していました。すると、スエズ運河はペルシャ湾とは離れていますが、欧州と日本を結ぶそれ以上の要衝といえる。

 多用途支援艦派遣の検討が必要です。スエズ運河閉塞、日本に何が出来るのか、という論点で考えますと、先ず一にも二にも座礁した船舶の離岸が第一であり、その為には外洋航行可能な曳船の派遣が貢献の一つとして考えられ、具体的には、ひうち型多用途支援艦の派遣が考えられます。満載排水量1400t、大きくはありませんが外洋航行能力はあります。

 ひうち型多用途支援艦、海上自衛隊の地方隊に配備されている直轄艦で、もともとは訓練支援に標的曳航等を行う支援艦ですが、同時に航行不能となった艦艇の曳航も任務としており、5000hpのエンジンを搭載、能力としては一隻で護衛艦かが曳航も可能とされています、自衛隊最大の曳船である曳船58号型の機関出力が2600hpですので出力は二倍近い。

 ベルンハルトシュルテシップマネジメント社が離岸作業を実施しており、複数の曳船がエヴァーギブン号の周囲を囲んで作業を行っている状況です、故にこうした離岸作業は専門家に任せた方が良い、という反論はあるでしょう、実際、日本から派遣するにしても航洋曳船の数は限られ、ひうち型の速力では現地まで三週間ほど時間を要し、遠い事は確かだ。

 現実問題として、ひうち型一隻では航続距離の問題もある為、ましゅう型のような補給艦か掃海母艦うらが型を支援に充てる必要はあり、海外派遣の規模としては大きなものとなります、ただ、ホルムズ海峡において有事の際には純然たる戦闘部隊である掃海艇を派遣するとしていて、それ以上に重要なスエズ運河の現状を傍観するのは整合性がありません。

 スエズ運河自衛隊派遣、準備したとしても現状ひうち型は5隻で内外洋航行は後期型の2隻しか対応していませんので、派遣規模は1隻か2隻、しかもスエズ運河は遠く仮にいま派遣を政府が検討したとして自衛隊に派遣命令を出したとして現地到着は四月下旬から五月上旬、離岸している可能性が高いのですが、国としての姿勢を示す必要は大きいのです。

 コンテナ船であるのだからコンテナを降ろして軽量化するという選択肢もある、これは正栄汽船が実際に提案した方法です、かなりの数ですが現実として起重機などを移動できればこちらの方が、多用途支援艦派遣よりは早いかもしれません。数十輌の戦車回収車等で同時に牽引する、エジプト軍は多数の戦車を保有しており、やるならばこちらがまだ早い。

 ただ、日本は中東地域の石油に依存しており、欧州からのコンテナ物流にも依存している、という事実があります、そしてホルムズ海峡危機には自衛隊を派遣すると公言しているのですから、今回の状況で何もしないという現状は国家として一貫しない姿勢です。多用途支援艦派遣の用意がある、外務省を通じエジプト政府に提案する必要は、あるでしょう。


北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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令和二年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2021.03.27-2021.03.28)

2021-03-26 20:19:44 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 東京五輪聖火リレー出発を記念してブルーインパルスの写真とともに今週末の行事予定などを視てみましょう。

 年度末となりましたが今週末も自衛隊関連行事は行われません、そしてCOVID-19の感染拡大に伴う静かな今年度は来週から新年度が始まります。新年度、しかし今年度は自衛隊行事がほぼ行われない、行われたとしましても招待客のみ、もしくは完全非公開の部内行事のみとなっていまして、自衛隊広報、という視点からはまさに大変な一年間であった。

 COVID-19感染拡大、第四波の到来と懸念されるとおり、首都圏での感染拡大は勿論、京阪神地区でも特に阪神地区の再拡大は看過できない規模、さらには東北地方の最大都市である仙台市において人口比感染拡大が懸念すべき状況となっており、数週間以内に国内新規感染者数は看過できない水準に拡大する懸念、死者数に響く懸念も払拭できません。

 変異株は、感染力の拡大により日本が過去一年間、比較的低い水準に感染拡大を抑えてきた感染対策ではもはや不十分という水準になっており、更にはPCR検査に察知されにくい変異株、変異株の種類は増大しており、明らかに致死率に悪い影響を及ぼしている変異株など、なかなか終息宣言は勿論、当面の収束宣言さえ目処が立たない状況があります。

 大阪では感染者数が遂に300名を再突破しており、25日付感染状況は東京都で前週比1.08倍、大阪府で前週比1.57倍、愛知県で前週比1.46倍となっていますので、感染拡大状況は緊急事態宣言解除から一ヶ月を経ずして大阪府や愛知県は懸念すべき水準に達している状況です。すると、のんびりと師団祭に数千が集い、航空祭に十数万名というものは厳しい。

 自衛隊行事は広報により国民の理解を深めるとともに重要な募集広報と直結した重要な任務の一環であり、広報には相応に予算が組まれています。広報官の方曰く、まったく企画の立てようが無く手探りであった、とは昨年中頃のお話でして、とある部隊の広報の方も、お出しできるものが無くこちらとしてもなんとも、という状況ではあったようです。

 広報は平時の実戦である、こう意気込まれる広報幹部の方もいましたが、しかし、COVID-19下においてもなんとか広報を維持しようと努力はあったようでして、具体的には部隊広報動画の充実や、募集対象者に限定した事前応募性部隊見学、行事予行の見学や艦艇広報などが執り行われていました。平時の実戦、これ最早、ゲリラ戦にちかい印象もありますが。

 一方で、COVID-19感染拡大下では、例えばイージス艦を艦艇広報にあてたものの事前応募制として寄港都道府県在住者の募集対象年齢に呼びかけたものの、定員はイージス艦一隻一日で40名という例年であれば非常に狭き門であるようおもえたものの、実際の応募者は定数割れという状況で、急遽年齢対象を広げるなど、やはり一筋縄ではなかった、と。

 自衛隊行事再開、やはり目処立たず、というのが現状という。緊急事態宣言は解除され行事実施の政府自粛要請も解除されている状況ですが、行事により感染拡大を引き起こす可能性はなんとしても回避したい、というものが部隊側の当然の認識であり、師団祭や方面隊行事ともなれば参加部隊は都道府県を跨ぎ移動するため、リスクは拭えません。

 新年度も厳しい、とはこうした点でして、仮にワクチン接種が大規模に行われた場合には年度末の2022年空挺降下訓練始め、秋の方面隊行事や自衛隊記念日行事にも再開を期待したいところですが、ワクチン不足は先日EU欧州連合が輸出規制強化を決定するなど一般接種開始の目処も無く、更に欧州での副作用疑いへの調査が並行している状況という。

 我慢はもう少し続く。ただ、都市封鎖が行われている訳ではありませんので散策などは自由ですし、緊急事態宣言解除と云う事は業務や教育に飲食遊興における感染対策の主役は国民一人一人に国から任された、という構図です。新年度、どう転じるか如何とも見通せない歯がゆさはあるのですが、行事の幕間として、北大路機関もなにか興味深い話題をお伝えできれば、と思います。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【京都発幕間旅情】砕氷艦ふじ,宇宙よりも遠い場所-聖地巡礼とBS211再放送今夜最終回放映

2021-03-25 20:02:25 | 映画
■名古屋港展示の砕氷艦ふじ
 南極目向う少女たちを描いたアニメーション"宇宙よりも遠い場所"BS211再放送は今夜2230時と続いて2430時に最終話が放映されます。

 ふじ名古屋港、名古屋港へは伊勢湾展示訓練や練習艦隊近海練習航海部隊名古屋寄港撮影を筆頭に何度も撮影していますが、今回はなかなか撮影機会が無かった海上自衛隊砕氷艦乗艦です。砕氷艦しらせ名古屋港一般公開は撮影しましたが、ふじ、今回が初めてです。

 南極観測アニメ、この放映に併せてという撮影展開といえるかもしれません。名古屋港にはこの他にポートタワーや水族館がありますが、タワーは艦艇撮影に幾度も昇りましたが、水族館は今まで一度も行っていませんので今度行ってみたい、大阪の海遊館も行きたい。

 南極を目指す女子高生四人の友情を描いたTVアニメ“宇宙よりも遠い場所”、砕氷艦除籍後の旧しらせ、が登場します。舞台は新昭和基地という架空の基地が完成し旧昭和基地が民間委託されたのちに除籍された旧砕氷艦を民間が取得し民間南極観測を行うとの設定だ。

 本作は平凡な日常の中で自分をかえたいと願う女子高生玉木マリさんを水瀬いのりさんが、南極で観測隊員の母親が消息不明となって以来その地に特別な思いのある小淵沢報瀬さんを花澤香菜さんが演じています、二人の高校は群馬県館林市、群馬県に新アニメ聖地が。

 女子高生、諸事情で高校を中退し高卒認定試験を通ったフリーターの三宅日向さんを井口裕香さんが、女子高生アイドルとして北海道から上京し南極企画を打診され上記トリオと知り合い四人一組ならば南極へという白石結月さんを早見沙織さんが、CVで演じています。

 砕氷艦しらせ、も二代目となりましたので砕氷艦ふじ、は三代前の艦艇ではありますが、居住環境などを見ますと蝋人形により再現されている様子もありますので興味深いものがあります、しらせ艦内の居住区も一般公開されますので比べてみますとやはり時代が古い。

 海上自衛隊の中で最も競争率が高い勤務先とは、最新鋭潜水艦そうりゅう型にて高い危険と潜水艦手当を秤に掛け海の忍者か、巨大護衛艦かが艦上にてシーレーン防衛か、先端SM-3を搭載するイージス艦こんごう艦上にて郷里を核ミサイル脅威から防衛するのか、と。

 昭和基地勤務、実は海上自衛隊で最も人気のある勤務地は昭和基地勤務という。定員も横須賀基地や舞鶴基地は勿論、大村航空基地や小松島航空基地よりも少なく、函館基地や沖縄基地と比べても少ないのですが、大所帯の海上自衛隊、南極勤務希望者は一定割合いる。

 砕氷艦は南極観測支援ということで、成る程海象は南極海の波浪と動揺は物凄く、世界屈指の荒波で知られる北太平洋が比較にならない程ともいいます。毎日が台風、という南緯50度と60度を超えれば氷海となり揺れは収まるのですが砕氷航海も苦難の連続の始まり。

 南極海の厳しさは、砕氷艦ふじ、も過去に氷海に孤立し、一時は練習艦かとり飛行甲板に救難ヘリコプターを搭載し乗員と観測隊員のみ救出し、ふじ放棄、という苦渋の決断を迫られた事もありました、昭和基地接岸不能の際には数十浬先からの物資空輸も想定された。

 氷海では推進力を第一に45mm高張鋼の船体強度を活かし連続砕氷を行いますが、稀に踏破できない氷海がある、その際にバラストを左右に動揺させ砕氷、一旦後退し最大速力で再度氷海へ突入、駄目ならば爆薬を設置し氷塊破砕、人類の限界というべき海象でしょう。

 ふじ艦長は防衛大学校卒の幹部が当たったことが無いという珍しい歴史があり、海軍兵学校、海上保安学校、早稲田大学、金沢大学の出身者が当たったという。ふじ艦名は日露戦争の殊勲艦旧海軍戦艦富士を踏襲し、艦長と乗員は1984年の除籍まで任務を完遂しました。そんな歴史を湛えた砕氷艦が今も名古屋で公開されているのですね。

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【京都発幕間旅情】砕氷艦ふじ,宇宙よりも遠い場所-南極に向かった1960年代自衛艦の艦内

2021-03-24 20:01:25 | 映画
■宇宙よりも遠い場所聖地巡礼?
 宇宙よりも遠い場所BS-211再放送最終回放映は明日ですが聖地巡礼に行くにも南極は遠いという方、南極へ向かった砕氷艦ならば名古屋で視られます、よ。

 砕氷艦ふじ、艦内が一般公開されていますが、中には1960年代当時の海上自衛隊艦艇居住空間がどういったものであるか、という部分が垣間見えて興味深いものです。1960年代といえば、最新鋭護衛艦にミサイル護衛艦あまつかぜ、たかつき型護衛艦が並ぶ時代です。

 はるな。海上自衛隊初のヘリコプター搭載護衛艦が竣工した当時はヘリコプター発着を船体動揺から守るべくスタビライザーが採用され、まるでホテルのよう、この表現は意外と昭和中期に多用されるものですが、戦艦大和の大和ホテルの様な表現で説明されたもの。

 ふじ居住空間を観てゆきますと艦橋構造物の配置などは、日常生活で海事産業従事者を除きますと見る船舶の機会と云うのは遊漁船くらいのもの、それ以外は一般公開される巡視船や護衛艦だけなのですが、なにか護衛艦はるな、のような懐かしい護衛艦を思い出す。

 食堂は一般公開されているのですが、椅子等は砕氷艦しらせ初代のものを転用したとのこと。艦艇に採用されている重い椅子、これは波浪時に安全性を考えて、こうしたものではなく思ったよりも軽量なものでして、南極海の揺れでもこの程度で何とかなるのか、と。

 通路などを歩み進めますと、なるほど防水隔壁等がありませんので、これは水上戦闘艦では無く砕氷艦なのだなあ、と不思議な感慨を抱いたりします。私の世代は砕氷艦しらせ現役に見慣れている世代ですので、それ程広くないこの艦内は迷わず散策ができそうですね。

 士官寝室は、折り畳み式のライティングビューローのステンレス版と云うべき机が二つと二段ベッドが並びます、この当たりは護衛艦みょうこう士官室を思い出すところ、訓練航海の際に使わせていただきまして、ううむ自衛艦の居住空間は進歩せねば、と思うところ。

 ふじ居住環境が良いのか現代イージス艦とあまり変わらないのはふと考えるものでして、イギリス45型駆逐艦等は既に士官は全員個室という時代、狭くとも個室を基本とした上で日常業務は士官室で行う、こうした設計思想に進む必要はそろそろあるのかもしれません。

 艦内には散髪室等もありまして、これは現在の砕氷艦とも重なるところ。砕氷艦は観測隊員の輸送を第一として設計されているのですが、いわば本艦は観測支援を行うものの海洋観測艦ではありません、この為、観測隊員の輸送艦、という設計にもなっているのですね。

 第一居住区と第二居住区、一般公開されているのは第二居住区ですが、ここは、凄い。150平方米の空間に105名が寝起きする三段寝台が並び、幹部と先任海曹以外は全員この第二居住区、前部には第一居住区として60名が圧し込まれている構図、ここは今良くなった。

 居住区の環境は、むらさめ型が12名部屋、たかなみ型が30名部屋で、個室以外の大部屋定員が少なすぎると人間関係の派閥などが悪影響を及ぼすとかで配慮されているようですが、まあこの105名部屋に比べれば、今の艦艇の居住環境はかなり改善したといえます。

 観測隊員居住区は、士官寝室よりも広い印象で二段寝台とライティングビューローに加えてベンチソファーもあります、居住空間としてはその気になればソファーベッドを二つ並べる事も出来そうなほどに良い環境ですので、完全にお客様扱い、これなんだかなあ、と。

 観測隊員居住区、しかしその奥を視てみますと数名が一部屋に入る居住区もありまして、まあ、第二居住区の大部屋と比して雲泥の差ですが、むらさめ型居住区の12名分を若干小さくした部屋を8名で使っている感覚でしょうか、一応差はあるのね、という印象でした。

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【京都発幕間旅情】砕氷艦ふじ,宇宙よりも遠い場所-南極観測支援の自衛隊砕氷艦保存展示中

2021-03-23 20:11:59 | 映画
■AGB-5001名古屋港に健在!
 TVアニメ“宇宙よりも遠い場所”BS211再放送記念ということで南極繋がりの砕氷艦を紹介しましょう。

 南極を目指す女子高生四人の友情と努力と協力を描いたTVアニメ“宇宙よりも遠い場所”、平凡な女子高生玉木マリ&南極に特別な思いのある小淵沢報瀬&フリーター三宅日向&女子高生アイドル白石結月その旅路が再放送にていよいよ木曜日に最終回が放映されます。

 砕氷艦ふじ、海上自衛隊の砕氷艦です。1965年に竣工し主として南極観測支援に当たりました。海上自衛隊の艦艇は除籍されますと運が良ければ標的艦、しかし基本的にスクラップ業者へ払い下げられます。もう少し国民の血税をつぎ込んだ象徴は大事にしてほしい。

 ふじ、は除籍艦艇の中でも例外的といえるかもしれません、ふじ、名古屋港にて保存展示され一般公開されています。名古屋港ガーデン埠頭、名古屋市営地下鉄名古屋港駅から徒歩三分と指呼の距離にあり、環状線である地下鉄名城線が金山駅から乗り入れています。

 南極観測船、と愛称がありますが列記とした海上自衛隊の自衛艦、美しい状態で維持されており新型砕氷艦しらせ二代目竣工にあわせ艦内を大きく改装しています、その艦内見学は舷門隣にチケット販売機があり、大人300円にて見学出来ます、ふじ乗艦は今回初めて。

 基準排水量5250t、満載排水量9120t、全長100m、全幅22.0m、吃水8.3m、現在では海上自衛隊の護衛艦ひゅうが、が全長195m、護衛艦かが、全長248mですのでひと昔の砕氷艦という印象ですが、ふじ竣工の1965年当時としては中々思い切った大きさといえました。

 海上自衛隊初の砕氷艦、ではありますが当時の日本には砕氷艦の設計経験がありません。海上保安庁砕氷船宗谷は南極観測支援任務に当っていましたが、あくまで宗谷は砕氷構造の貨物船が旧海軍特務艦としての運用実績を受けての南極観測支援への転用に過ぎません。

 アメリカ海軍砕氷艦グレーシャー、沿岸警備隊に移籍されアラスカ方面での航路啓開にも活躍したグレーシャーを当時の新船舶設計委員会が参考とし、ふじ建造に活用しました。グレーシャーは設計開始当時の1962年には最新艦、技術情報開示は好意的だったともいう。

 ヘリコプター搭載艦として初めて設計された艦でもあり、初のヘリコプター搭載護衛艦はるな竣工は1973年、はるな建造の実に八年前に竣工しています。艦載機も対潜ヘリコプターHSS-2の輸送型であるS-61輸送ヘリコプターを搭載、海上自衛隊の転換点となった艦だ。

 連続砕氷可能厚120cm、最大砕氷能力6mといい、6m以上の海氷は避けてゆく。機関はディーゼルエレクトリック方式で機関出力は12000馬力、推進器はスクリュープロペラ二軸方式で、これによる速力は17.2ノット、重油2180tを搭載し航続距離15000海里という。

 乗員は200名、そして観測隊員35名が乗艦できます。搭載能力500t、これは観測支援物資などを輸送するためのものです。そして艦載機は三機でS-61A-1輸送ヘリコプター2機とベル47G2A観測ヘリコプター1機、観測ヘリコプターは海氷状況の観測任務にあたるもの。

 ヘリコプター格納庫は広大で考えてみればHSS-2系統2機とベル47を搭載するのですから、はるな型護衛艦のHSS-2の3機に迫り、あさぎり型護衛艦や、むらさめ型護衛艦よりも大きなものです。そしてこの広大な格納庫はそのまま南極展示室として活用されている。

 艦内は観測隊員室や士官寝室と先任海曹寝室や居住区と庶務室や散髪室や機関室と艦橋等が一般公開されていまして、1960年代の海上自衛隊艦艇の居住環境等を垣間見る事が出来ます、蝋人形が多数当時の環境を再現していまして、その展示も中々興味深いものでした。

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【防衛情報】航空自衛隊F-35A戦闘機23号機試験とイタリア空母カブールF-35B搭載試験

2021-03-22 20:05:04 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 航空自衛隊F-35A戦闘機23号機試験飛行の様子を撮影できましたので、この情景と共にイタリア海軍空母カブールに関する最新情報をお伝えしましょう。

 海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦いずも型の護衛艦いずも、かが、についてF-35B戦闘機運用能力を付与させる方針です。現在F-35Aについては24号機までが製造され試験中ですが、護衛艦にF-35Bを搭載するには必要な改修と試験が必要です。これがどういったものか、同じ改修を実施するイタリア海軍の空母カブールの現況を参考にしてみましょう。

 イタリア空軍とアメリカ空軍は2021年2月16日から17日にかけイタリア空軍のF-35Aを運用する米伊共同訓練を実施、イタリア軍におけるF-35A実部隊での運用は順調に進められている模様だ。イタリアは空軍が15機のF-35B戦闘機と60機のF-35A、海軍が15機F-35B戦闘機を調達、海軍は2018年にF-35B初号機、2019年に2号機を受領しました。

 イタリア空軍は2020年2月22日に最初のF-35Bを受領しています。今回の共同訓練はイタリアのアメンドーラ空軍基地にて実施され、アメリカ空軍からは第31戦闘航空団のF-16C戦闘機とイギリスのミルデンホール空軍基地に展開する在英米軍のKC-135空中給油機が参加し、空対空戦闘等のACE機動訓練と共に、空中給油訓練も実施されました。

 イタリアは第32航空団の第555戦闘飛行隊に所属するF-35A戦闘機6機と第510戦闘飛行隊に所属するユーロファイタータイフーン戦闘機が参加しました。第32航空団はアメンドーラ基地に展開し、第31戦闘航空団はアビアノ基地に展開しています。イタリアではF-35Aの運用基盤に併せる事で導入が本格化するF-35Bの運用基盤を迅速構築しています。

 イタリア海軍の空母カブールは西大西洋上においてアメリカ海軍原子力空母ジョンCステニスとイージス艦スタウトの参加の元で米伊合同演習を実施しました。この試験にはアメリカ海軍第二艦隊が全面的に協力しており、2月10日から12日まで実施され、カブールとイージス艦の相互情報共有やF/A-18Eスーパーホーネットとの共同訓練も行われた。

 カブールとF/A-18Eスーパーホーネットとの訓練は要撃管制訓練であり、またP-8Aポセイドン海洋哨戒機も参加しています。訓練の後、カブールは空母ジョンCステニスがホストシップとなりノーフォーク海軍基地へ入港しました。空母カブールは全長244m、全幅39m、イタリア海軍はハリアー攻撃機を運用り本艦もスキージャンプ台を有しています。

 イタリア海軍の空母カブールはF-35B搭載認定試験に向けアメリカのバージニア州ノーフォーク海軍基地へ到着したとのこと。カブールはCVH-550,満載排水量27000tの全通飛行甲板型艦艇として建造され、現在はイタリア海軍旗艦となっています。イタリア空軍は導入するF-35B戦闘機をカブールにて艦上運用するする計画で今回はその一環というもの。

 カブールのノーフォーク海軍基地入港は2月13日、今回の入港ではJPO-F-35プログラムオフィスの飛行試験部隊により、西大西洋上において海上試験を行い、これにはメリーランド州パタクセントリバー海軍航空基地に所属するF-35統合試験飛行隊ITFが支援し実施され、この試験の為にアメリカ海兵隊員など200名の支援要員がカブールに乗艦します。

 F-35B戦闘機のカブール艦上運用は、カブール艦内の格納庫に10機、そして飛行甲板上の露天駐機用に6機の16機が搭載可能となっています。F-35B搭載に向けてのカブール改修は2018年12月から継続されており、今回の試験はF-35B発着に伴う高温のジェット吹付に対するその甲板強度試験、そして航空管制機材等の適合性も試験される事となります。

 イタリア海軍の空母カブールは3月3日、初のF-35B発着を実施したとのこと。これは西大西洋上で行われるカブールF-35B適合試験の一環であり、午後に実施された試験ではパタクセントリバー海軍航空基地のアメリカ海軍第23試験評価飛行隊所属ブラッドリーマン少佐が操縦するF-35Bを含め2機のF-35Bがカブール艦上での試験に当っているという。

 空母カブールへのF-35B運用試験について、イタリア海軍のジャンカルロチャッピーナ海軍大佐は、この発着を新しい一歩であるとした上で、しかしイタリア海軍航空にはさらに大きな意味があると強調している。イタリア海軍では空母ジュゼッペガリバルディにおいてハリアー攻撃機を運用しているが、戦闘機の運用は第二次大戦中を含め初の事例となる。

 海上自衛隊は護衛艦いずも型の飛行甲板改修作業等を本格化させます。イタリア海軍の事例を見ますと、アメリカ海軍のF-35Bを用いての洋上試験、そして航空管制能力などを改めて確認した上でのアメリカ海軍機協力を受けての初の発着試験、と進むようです。日米関係の強化の象徴的事例となる事は間違いありませんが、やはり時間はかかるようですね。

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