北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

検証:我が国の防衛と予算-令和2年度概算要求の概要【1】5兆3220億円要求と装備調達計画

2019-08-31 20:07:29 | 国際・政治
■令和時代も続く緊縮予算
 毎年、富士総合火力演習が終わり、その同じころに防衛予算概算要求が発表されますと夏の終わりを感じます。

 我が国の防衛と予算-令和2年度概算要求の概要、昨日8月30日に防衛省より発表されました。平成31年度予算は現在令和元年度予算となっていますが、概算要求に令和年間が明示されるのは今回が初めてとなります。来年度に向け要求された予算は5兆3222億円、人件費や糧食費を1.8%削減した上で物件費を12.6%増額した、厳しい構造となっています。

 多次元統合防衛力の構築に向け防衛力整備を着実する、統合機動防衛力に代わる防衛力の整備、これが令和2年度予算の概要です。その具体的施策として実施領域横断作戦に必要な能力の強化、防衛力の中心的な構成要素の強化、大規模災害等への対応、日米同盟強化及び基地対策等、安全保障協力の強化、効率化・合理化への取組、等が挙げられました。

 多次元防衛力は統合機動防衛力に代わり、従来の三次元を越えた宇宙空間や電子空間での防衛力優位を確保維持する視点から示されており、特に電子空間防衛は法執行機関始め多くの官庁も包括されるもので一見して分り難いものとなっていますが、今回は“我が国の防衛と予算-令和2年度概算要求の概要”公示翌日であり、その装備調達に重点化します。

 航空機の調達は以下の通り。CH-47JA輸送ヘリコプターが3機、P-1哨戒機を3機、SH-60K哨戒ヘリコプターは7機、F-35A戦闘機を3機、F-35B戦闘機が新たに6機、KC-46空中給油輸送機を4機、UH-60J救難ヘリコプターは8機、以上となっています。KC-46空中給油輸送機が一挙に4機取得し、また新たにF-35B戦闘機取得開始も特筆できましょう。

 F-35B戦闘機の導入により、当初よりF-35Bは九州新田原基地への配備が示されており、南西諸島へ近い南九州へ第五世代戦闘機の配備開始を意味します。しかし、F-35を各種9機という整備の裏で、陸上自衛隊のヘリコプター整備はCH-47JA輸送ヘリコプター3機のみとなっており、自然減が進む多用途ヘリコプター始め補填の見通しが全く立ちません。

 護衛艦2隻、潜水艦1隻、掃海艦1隻、艦艇については以上4隻が取得されます。護衛艦は共に来年進水式を迎える30FFMと同型の3900t型護衛艦で5番艦と6番艦で、計画通り毎年2隻の建造が続く。意外であったのは掃海艦で、あわじ型掃海艦4番艦です。前型である掃海艦やえやま型が3隻整備されていましたが、後継艦は4隻を整備するのですね。

 ミサイル及び火砲と車両や小火器の調達は以下の通り。03式中距離地対空誘導弾(改)1中隊、新小銃3283丁、新拳銃323丁、対人狙撃銃8丁、60mm迫撃砲6門、120mm迫撃砲6門、19式装輪自走榴弾砲7輌、10式戦車12両、16式機動戦闘車33輌、以上です。新小銃は89式小銃に代わるもので制式化間近とはいわれていましたが、一種意外ですね。

 16式機動戦闘車33輌に一応の調達継続を感心する一方、際立っているのは軽装甲機動車と96式装輪装甲車の調達終了です。即応機動連隊の充足と共に戦車に代わる普通科部隊の機会か強化の必要性から共に毎年40輌程度から50輌程度の取得継続は必要で新型開発に関するメーカーとの摩擦はありますが、現状は敢えて従来型であっても増備は必要でしょう。

 誘導弾関連についても、戦車は順調に除籍が進む中、対戦車装備である中距離多目的誘導弾は絶対に必要な装備ですが、調達は行われず、また81式短距離地対空誘導弾の後継となる11式短距離地対空誘導弾の調達も行われず、今後陸上自衛隊の野戦防空は整備されるイージスアショアへスタンダードSM-6の運用を見込んでゆくのか、という印象を受けました。

 防衛予算に関しては過去最大の5兆3220億円、という部分が強調される印象がありますが、防衛予算は小泉内閣時代からの財政再建と共に厳しい状況が二十年近く継続しています。この一年の稼働率や厳しい運用状況の現場へのしわ寄せを我慢してほしいとの状況が、習慣化してしまいました。その背景に小泉内閣時代のミサイル防衛という部分にその始りが。

 新しい任務が追加され、膨大な予算を必要とする新事業をその財政的裏付けのないままに部隊の細かな再編と部分縮小を繰り返しつつ二十年近くを続けているのですから、状況は深刻で、例えばヘリコプター数等にその深刻な状況は現示しています。例えば東日本大震災のような大災害が発生した場合には、我慢を強いられることになるでしょう。被災者が。

 5兆3220億円という規模は大きなものですが、任務の幾つかを再編するか、もう少し現実的な予算規模を考えるか、自衛隊でなければできない任務へ集約する必要があるようにも。こう感じたのは、令和2年度概算要求には部隊改編に関する項目が曖昧となっており、確たる部隊編成の転換を明示できなくなっている点です。次回以降、細部を分析しましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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令和元年度八月期九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2019.08.31-09.05)

2019-08-30 20:19:31 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 暑かったには熱かったですが夏らしい八月でしたね、季節と云いますか気候は早くも秋という最中に皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末の行事紹介です。

 与那国駐屯地創設記念行事が土曜日に行われます。駐屯地は2016年に創設されました。与那国沿岸監視隊と西部方面情報隊の通信情報隊情報収集小隊等が駐屯している国境の島の駐屯地祭です。与那国沿岸監視隊は隊本部と警備小隊及びレーダー班と監視班に後方支援隊から成る編成で、八重山諸島には他に宮古警備隊の駐屯する宮古島駐屯地がありますね。

 沿岸監視隊の駐屯地ということで近接戦闘展示等が行われるのでしょうか。沿岸監視隊は北部方面隊に多く編成されていますが、沿岸監視隊が表に出る展示というものは稀有で住民との協力関係強化を期した行事なのかもしれません。なお、八重山諸島では前述の宮古島駐屯地に加え石垣島駐屯地の新設計画が進み、防衛空白地帯問題へ取り組んでいます。

 艦艇広報について。根室かに祭り掃海艇いずしま一般公開が31日と9月1日に北海道根室市の根室港にて実施されます。なべつる祭2019水中処分船02号 YDT02一般公開が北海道奥尻町の奥尻港湾特設会場にて31日に執り行われる。また9月5日木曜日に苫小牧港掃海艇いずしま一般公開北海道苫小牧市の苫小牧西港本港地区北埠頭1号岸壁で行われます。

 北海道の奥の方と沖縄の奥の方,今週末は近所に自衛隊行事が一つもない、そんな週末には一つ趣向を変えて訓練展示撮影の練習をしてみてはどうでしょうか、練習はしたいがシリア内戦撮影はハードルが高いなあ、ドンバス内戦は停戦状態で撮れない、と思われるかもしれませんが、例えば鉄道写真の撮影で、行事写真、訓練展示を撮影する際に必要な“時機を読む”練習は出来たりするもの。

 坂井三郎、零式艦戦を駆って先の大戦に臨んだ撃墜王は、戦闘機に乗っていない状態での射撃の時機に関する演練で、汽車に乗っているときに遠景の電柱と電柱が、峰々の稜線が、重なる一瞬に人差し指を瞬時動かす、これを習慣としていた、大著大空のサムライに記しています。別に空中戦訓練を行う必要はないのですが、時機を読む事は写真撮影に大切だ。

 鉄道写真で列車同士が重なる瞬間や曲がる瞬間を真正面、向いた瞬間に撮影する、時機を読むとはこういうこと。戦車が重なる瞬間や観閲行進が一列に最も画角に収まる瞬間を逃さない事が時機を読む目的、そして実際にカメラで撮影した事で、画像データが残りますので、撮影の時機は合っていたのかの検証を後でじっくりとおこなう事が出来るのですね。

 さて撮影の話題を。単眼望遠鏡、実は必要なのかな、と思う今日この頃です。望遠レンズがあればカメラで視れば良いのでは、と思われるかもしれません。実は当方もそう思っていたのですが、お友達が愛用していまして。時々気になるものについては単眼望遠鏡で眺めています。よくよく考えると自衛隊行事の訓練展示でも指揮官が時折、単眼望遠鏡を使っていたりします。

 望遠レンズ付のカメラは、勿論広角ズームレンズを装着している場合にはレンズを付け替えなければならない、直ぐに気になった対象物を視る事が出来ないのだ、という難点はあるのですが、それ以前に望遠レンズを装着したカメラで位置や周辺状況などを確認していますと、昨今の話題として妙な誤解を受ける事があるのだ、という事を考えさせられます。

 単眼望遠鏡は具体的にはかなり小型でポケットに入ります、機種によっては変な設営ですがスティックのり程度の大きさですので、撮影機材を更に重くする、という事は回避できます。ただ、単眼望遠鏡で確認したところ、即座に撮影しなければならない貴重な瞬間であったりしますと、カメラと望遠レンズで確認した方が良いのかな、となる。困ったものだ。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

根室かに祭り掃海艇いずしま一般公開…https://www.mod.go.jp/msdf/
苫小牧港掃海艇いずしま一般公開…https://www.mod.go.jp/msdf/
なべつる祭2019水中処分船02号一般公開…https://www.mod.go.jp/msdf/
与那国駐屯地創設記念行事…https://www.mod.go.jp/gsdf/wae/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【G3X撮影速報】令和元年富士総合火力演習.教導団予行-火力戦闘車登場(2019-08-18)

2019-08-29 20:11:59 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■二次元統合防衛力の現示
 本年の富士総合火力演習は多次元統合防衛力の整備を強調するあまりVTRを多用した二次元統合防衛力の現示となっていました。

 状況は島嶼部へ侵攻した仮設敵に対する我が防御部隊への増援が展開完了、VTRで護衛艦が参加したり、哨戒機が飛行したり、対艦戦闘を展開したり、戦闘機が機動飛行を行ったり、録画を編集しただけでこのまますすむならばVTRだけで戦車射撃も終わってしまう。

 16式機動戦闘車の支援下に陣地変換する地対艦ミサイル標定小隊、長射程の地対艦ミサイルもこの部隊が居なければ発射も出来ません。富士総合火力演習、総火演は後段演習が特定の状況を想定し展開されます。従来総火演は毎年同じ状況を想定しているとされました。

 中距離多目的誘導弾の展開、従来は毎年同じ状況想定でしたが、これは一種毎年同じ内容を展示している故の定番と言える安心感を示すとともに批判的な要素として指摘されていましたが、此処数年間は毎年のように後段演習の設定が変化しており、新しい潮流ですね。

 F-2戦闘機による模擬対地攻撃を想定、なお、予行である事から今回は会場上空にF-2戦闘機の展開は無くVTRによる再現でした。今年は多次元統合防衛力を念頭に電子戦等を注力し展示しまして総火演は変わり続ける陸上防衛の過渡期をしめしているのかもしれません。

 多次元統合防衛力、これはサイバー空間や宇宙空間さえ含めた前防衛大綱の統合機動防衛力を更に進めた概念とされ、その名の通り内容は非常にわかりにくくなっています。統合機動防衛力は、従来の基盤的防衛力、全国に各位置的な部隊を配置するという解釈でした。

 基盤的防衛力、この解釈は元々1976年に平時には最低限の防衛力を整備し有事の際に増勢するという制服組の見解を背広組が書き換えたものなのですが、全国への張り付け部隊を半分程度機動運用部隊へ置き換える、というものでした。写真の水陸機動団もその一つ。

 AH-1S対戦車ヘリコプターの展開、まだAH-64D戦闘ヘリコプターの飛行停止措置は続く。統合機動防衛力実現には装甲車もヘリコプターも不足しているのですが、総火演では全国でも屈指の装備が充実した富士教導団が実施するため、そのあたりは問題になりません。

 UH-60JA多用途ヘリコプターがAAV-7の水陸機動団支援へ展開する、統合機動防衛力から多次元統合防衛力へ、多次元とは電子戦やサイバー空間を防衛任務の作戦領域へ包括するというものであり、昨年から通信学校や第一線の電子戦部隊参加が徐々に増大しています。

 ヘリコプターが展開し三次元、そして多次元。しかし統合機動防衛力が未整備の時点で些か拙速の印象も拭えませんが、島嶼部防衛などの作戦基盤の変容は、従来の様な富士教導団、つまり富士学校隷下普通科と機甲科に特科部隊だけでは成り立つものではありません。

 CH-47JA輸送ヘリコプターからの増援展開がはじまる。新シナリオ展開につきましては地対艦ミサイルや広域防空戦闘という、広範な島嶼部において相互の支援が難しい孤立地形を前に、どのように防衛力を展開するかという厳しい課題への一つの処方箋なのでしょう。

 CH-47とAAV-7,しかし同時にスクリーンをご覧くださいと幾度もアナウンスが。二次元統合防衛力となっていないか、総火演では近年に増してVTRでの展示が増えています、いや、概念図を展開するのは問題有りません、しかし、その頻度がかなり多くなっているようだ。

 AH-1S対戦車ヘリコプターの機関砲射撃。難しい多次元統合防衛力について巨大な方眼紙や砂盤で畑岡に説明の立体図を構築するわけには参りません故ね。しかしこれでは多次元統合防衛力ではなく二次元統合防衛力ではないですか。三次元で再現しなくてはならない。

 AAV-7は発煙弾を発射し陣地変換を図ります。発煙弾の発射は戦車射撃の迫力は本物なのですが、これからは電子空間での優位性獲得を目指す過渡期なのですから、なにかこう、中継映像で結ぶことは出来ないものかな、と。例えばAAV-7は水物なのですから沿岸で。

 これは広報展示演習としての側面も大きな総火演の意味合いを大きく広めます、例えば、だ。沼津の片浜海岸に実際に水陸機動団のAAV-7を揚陸させ、その様子を中継で畑岡地区に放映させてはどうでしょうか、AAV-7以外に高速複合艇LRRCから隊員が上陸の様子を。

 偵察部隊の新装備川崎KLXだ。上記中継ができるのでしたら片浜訓練場は防波堤から見学が出来ますので、ここを総火演第二会場とすればよい、これだけで見学者を千人単位で増やせます、海上自衛隊に余裕があるならば輸送艦とLCACによる揚陸展示も行えば、よい。

 スカイレンジャー70無人機の飛行展示が。この映像も中継できるのですが、電子空間での中継、多次元統合防衛力を思わせる展示ならば、艦砲射撃の様子が展示されていますが、ここも第三会場として同日に相模湾で、別に広島湾でも伊勢湾でも若狭湾でもよいのです。

 87式偵察警戒車が25mm機関砲により探りを入れます。さて、海上自衛隊の展示訓練として実際に見学者を含め護衛艦を数隻航行してもらい、会場へ中継できないか、観艦式を中継しているほどですので技術的に問題はないでしょう、操砲展示の様子を中継することで。

 偵察警戒車の威力偵察は続く。VTRによる艦砲射撃という展示に留まらず中継映像と出来ますし、なにしろ中継ならば遠隔地でも場所を選びません。第四会場として、航空自衛隊の戦闘機部隊基地、総火演では近接航空支援の展示が行われますので、これも中継できる。

 今年は無人機が大量に飛行していました、災害派遣用の無人機ですね。しかし見たい編隊は別にある、F-2やF-35など。百里基地や入間基地が妥当なのでしょうが、総火演と同日に航空祭を行う松島基地でもよい、戦闘機の離陸と機動飛行の様子を中継で結んでは、と。

 偵察警戒車の離脱、そして本番の日はこの瞬間と同じころに松島基地航空祭が行われていたのですね。機動飛行の様子を畑岡地区の会場で放映するとともに、航空祭会場でも総火演参加のために今F2戦闘機が離陸しました、と放送する事で基地でも盛り上がるでしょう。

 OH-6D観測ヘリコプターの飛来、漸くOH-1観測ヘリコプターが飛行再開となりましたが創価園復帰はもう少し先の話でしょうか。さて、総火演を畑岡だけにとどめず、全国数カ所で同時に行う、できれば沼津にはオーロラビジョンを設置し畑岡の様子をみてもらう。

 協力してくれる航空自衛隊基地の近くにもオーロラビジョンを置く、これで少々不規則ですが見学者を五万人六万人とできるかもしれません、電子の空間で全国を結ぶ、多次元統合防衛力ということでこうした視点を考えてみました。OH-6の観測飛行はそんな中も続く。

 OH-6D,第13飛行隊の所属機という事でした、防府の山口からの参加ですね。群馬の相馬原では今年の駐屯地祭にOH-6Dのラストフライトが実施され、実は全国でOH-6Dは殆ど残っていません、後継もOH-1も僅かで自衛隊から観測ヘリコプターが消えつつあります。

 OH-6Dの今後貴重となる飛行とともに実は会場には猛烈な雨雲が接近していまして、G3XとEOS-7Dを連結しての撮影は此れが限度、このG3Xはカメラバックに緊急格納し、爾後にはEOS-7Dのみの撮影となりました、若干は空白がありましたが無事状況は進みました。

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【京都発幕間旅情】岡崎城(愛知県岡崎市),龍城愛称の重厚城郭は東海道護る徳川家康出世の城

2019-08-28 20:02:32 | 旅行記
■岡崎城は三河国の天守閣
 岡崎城、愛知県三河地方、岡崎の二十七曲がりという東海道の防衛へ城郭を中心に街道宿場町を整備した、まさに城下町の中心にある城郭です。

 岡崎城、徳川家康出世の城として有名な城郭は、愛知県岡崎市に位置する旧三河国岡崎藩の藩庁が置かれた城址です。名鉄本線の東岡崎駅より歩みを進めると至る城郭です。東岡崎駅はJR東海道本線岡崎駅よりも市街中心部に近く、お城までは徒歩にて10分です。

 徳川家康出世の城、とは徳川家康が生まれた城郭であると共に、当時松平氏は今川家の勢力下に在りましたが、かの有名な桶狭間の戦い、その際に今川義元の御印を織田信長より幼少の頃の約款を盾に取戻し、この勲功を以て今川家から独立を回復した歴史があります。

 桶狭間の戦い、岡崎城から15km先で戦われました。1560年に今川義元尾張侵攻を圧倒的劣勢の織田信長が機動力と迂回戦術を以て撃破した際、今川陣営の徳川家康が打ち取られた義元の御印を取り返し、しかし今川本陣には帰営せず岡崎城を独り確保した歴史に因む。

 三河国仁木氏の守護代であった西郷稠頼が享徳年間に1452年に造営した龍頭山の砦が、この地の城郭史はじまりという。その後は岡崎松平家領地となり、1531年に徳川家康の祖父に当る松平清康がこの地を平定しました。ただ、松平清康以降お家騒動に揺れる事になる。

 龍燈山城と当初呼ばれた城郭は文字通り只の城郭、徳川家康が生まれた当時は土塁や堀こそありましたが石垣等近代城郭の定義は至らず、武家屋敷に家臣団が備蓄や武具と備える造りでした。しかし、前述の通り徳川家康には思い入れ或る城郭であり、優遇されてゆく。

 本多康重、徳川家康譜代の重臣で三河岡崎藩初代藩主の時代に複合連結式望楼型三重三階天守閣が造営されました。1617年築ですが、現存しません。江戸時代初期、幕府は城郭の拡張を造反の萌芽と警戒していましたが、岡崎城拡張は例外的に優遇されていたのですね。

 天守閣は復元天守閣、1959年に再建されました。1959年と云えば名古屋空襲で破壊された名古屋城天守閣が再建された年度でもあります。しかし、空襲に焼かれた名古屋城とは異なり岡崎城が破壊されたのは1873年の明治政府による廃城令、全ての建物が破却された。

 岡崎城の遺構は本丸と周辺の持仏堂曲輪、隠居曲輪、風呂谷等の曲輪と石垣、堀といった構造物で建物は復元されたもの。復元天守閣は支持不支持がありますが、破壊された事も歴史なのだから荒廃に任せろとの視点には反対で、個人的には再建天守閣は支持したい。

 明治政府の廃城令は、不平士族による選挙と軍事拠点化を防ぐために命じた、一種の明治維新と維新の動乱を背景とした軍事的措置であり、結果的に国民の財産である城郭が破壊されたのでした、一種の戦災でもあって、その後は再建する経済的余力が無かった訳です。

 復元天守閣の建設が集中したのは戦後、勿論1936年に昭和天皇行幸を記念し陸軍と寄金で再建された大阪城というような例外もありますが、日本が明治維新から軍事力一辺倒の時代を終えて、云わば近代国家から現代国家に昇華した時期に再建、歴史的な意味は大きい。

 岡崎城の復元は令和時代も続いています。平成の2007年に天守閣より離れた材木町で石垣遺構が発見され日本第四位の縄張りを有した事が判明、2010年には東隅櫓が再建、2015年に菅生川端石垣が市街地再開発に際し発見、発掘石材の石垣への積み直しも続いている。

 龍城神社として城郭破却の時代に創建された神社は再建天守閣を見上げつつ崇敬集め、城郭護る龍城堀には噴水が清冽な清水を迸らせ、郭は岡崎公園として桜と椛の木々に彩り。岡崎の二十七曲がりとして岡崎の街は此処を中心に造営された故の憩いの場を供しています。

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後継機は!?:F-2後継機F-22&F-35混成機案報道と後継機無き自衛隊機退役と定数割れ問題

2019-08-27 20:05:53 | 防衛・安全保障
■高額新型機続々採用の影で
 航空機というものは耐用年数が在り、世論は墜落事故に寛容でありません。これを越えて運用する場合は高い費用を要して延命するか飛行させない以外に選択肢がありません。

 F-2戦闘機後継機が今年度予算では棚上げされましたが、F-15戦闘機初期型の後継機としてF-35A戦闘機とF-35B戦闘機の取得が昨年発表、F-4戦闘機に続き老朽化が進む戦闘機の後継が定まりました。またUH-1J多用途ヘリコプター後継機にUH-2が開発、SH-60哨戒ヘリコプター補完にMQ-8無人ヘリコプターの取得、一見順調に近代化が進むよう見える。

 防衛予算概算要求の公表が行われる季節となりました。来年度予算には延期が続いてきましたF-2戦闘機後継機開発開始が遂に盛り込まれる、との一部報道もありますが、有力視される後継機がF-22戦闘機機体にF-35アビオニクスを盛り込むという非常に高価な試案とも。こうした中、後継機が棚上げされたまま深刻な状況にある航空機を列挙してみたい。

 OH-6D観測ヘリコプター、180機ありましたが間もなく全廃となります。火砲の着弾観測を行う機種ではありますが、安価且つ軽量であり師団飛行隊や旅団飛行隊の連絡機や情報収集機として重要な航空機であり、例えば大規模災害では最初に離陸し情報収集を行います。無人機でも出来そうですが自衛隊には百数十km先へ進出できる無人機はごく僅かだ。

 OH-6D後継機としてOH-1観測ヘリコプターが量産されていました、川崎重工製で当初は250機の量産計画がありましたが、コスト増大により31機で量産は終了、OH-6Dは耐用年数限界による自然減が続いています。OH-1は不時着事故の影響でエンジン改修が必要、まだ復帰の数は僅か、富士総合火力演習には山口県から残る僅かなOH-6Dが参加しました。

 AH-1S対戦車ヘリコプター、96機が導入され16機編成の対戦車ヘリコプター隊が全国の方面隊に配置されました、地皺の多い我が国では生存性と機動力の大きな航空対戦車打撃力は冷戦時代に死活的に必要な機種でした。しかし、後継機調達中断のまま自然減が続き、現防衛大綱では対戦車ヘリコプター部隊を中央等に集約する事で部隊数削減に踏切ります。

 AH-1S後継機としてAH-64D戦闘ヘリコプター66機が取得される計画でした、しかし北朝鮮弾道ミサイル防衛という新しい任務へ調達予算が圧迫され13機で調達終了、後継機無きAH-1Sの退役が続きます。13機では飛行隊さえ維持が難しい。航空打撃力は島嶼部防衛を筆頭に必要であり、中央に集約し沖縄や北海道に即応できるほど航続距離はありません。

 T-4練習機、航空教育集団を筆頭に212機が配備され、ジェット機への初歩を学ぶ基本操縦課程と戦闘機操縦基礎過程として絶対に必要な航空機です。また、第一線の航空団にも連絡機や多用途機として、更には戦闘機を離れた指揮官の技量維持に用いられ、この任務に戦闘機を用いた場合は桁違いの運用費の高さが防衛費を圧迫、その点でも重要な機体です。

 T-4練習機後継機で問題なのは指針が不明確である点です、運用開始は1988年で古い。T-4練習機を第五世代機要員養成用にグラスコックピット化させ再生産する選択肢、アメリカが調達するボーイングT-Xの自衛隊取得、M-346練習機等のライセンス生産が考えられます。問題なのは後継機が200機以上と破格に多く性能と費用を見極めねばなりません。

 RF-4戦術偵察機、こちらは来年に偵察航空隊そのものが廃止される予定です。政策として後継機は不要、と位置づけられたのですが元々はRF-15としてF-35導入により余剰となる初期型のF-15J戦闘機へ偵察ポッドを搭載し偵察機化する構想がありました。しかし、この種の技術が豊富な三菱電機を退け東芝の安価な案を採用、結果実用性無しと開発失敗へ。

 RF-4後継機はRQ-4無人偵察機が充てられる事でしょう。RQ-4はF-4を無人機に改造した、のではなく37時間の滞空時間を有し画像を即時電子送信可能である高高度偵察機です。ただ、現在戦術偵察機は大規模災害の情報収集に不可欠であり、RF-4は情報伝送能力に劣りますが速力は遥かに高く、そのままRQ-4に置換えられるものなのか、考えさせられます。

 YS-11E系統の電子情報収集機や1994年より運用開始となったU-125A救難機、冷静に考えてゆきますとそろそろ耐用年数を迎える航空機というものは此れだけではありません。そしてCH-47JA輸送ヘリコプターやSH-60K哨戒ヘリコプター等の機体も、上記の機体調達に優先度を与えて調達数を削減するならば、均衡が崩れるのは言うまでもありません。

 配備順調な航空機もあります、C-1輸送機後継機のC-2輸送機は漸く一個飛行隊を編成完結できました。同時期に開発されたP-1哨戒機も予定よりは量産計画は遅れているのですが、前型のP-3C哨戒機延命改修により必要数は維持できています。冒頭に記した通りのUH-1J多用途ヘリコプター後継にUH-2多用途ヘリコプターが完成した事も朗報と云えましょう。

 しかし全く楽観はできません、F-2後継機にF-22戦闘機の改良型を開発する、その費用は未知数です。更にE-2D早期警戒機の増勢、KC-46空中給油輸送機の増勢、V-22輸送機の取得、場合によってはRQ-4無人偵察機の増勢、新たに防衛力が強化される中で対戦車ヘリコプターに練習機、観測ヘリコプターや偵察機は確実に耐用年数を減らせているのです。

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ホルムズ海峡海上護衛戦の検討【4】機雷テロ!イラン正規軍関与不関与と難易度の多寡

2019-08-26 20:03:14 | 国際・政治
■現代機雷掃討戦の状況
 タンカー護衛か機雷処理か。タンカー護衛任務の有志連合がアメリカにより提唱されイギリスや豪州などが参加を表明していますが、先ずは安全保障関連法国会討議で想定された機雷戦の視点から。

 ホルムズ海峡機雷敷設、この懸念が最大の課題です。実行のリスクも低いが影響は大、自衛隊を派遣する場合、前提として脅威が国籍不明武装勢力による機雷敷設のみである場合には、掃海艇の派遣が現実的でしょう。掃海母艦と共に掃海艇を派遣し、各国掃海艇と共同、機雷掃討を展開します。もっとも、イラン沿岸部からの正規軍妨害が無い場合に限る。

 機雷掃討は機雷掃海と異なり、機雷探知装置により海底や海中の機雷を一つ一つ探知し、水中ロボットである機雷処理弾薬や機雷処分具を海中へ展開させ、一つ一つを爆破処理する方式です。時間を要しますが、掃海器具による従来型の掃海は機雷の高性能化により掃海を免れる機雷が生じ、一つ一つ文字通り虱潰しに掃海を行う方式が現在では確実です。

 機雷敷設を行う側からみた場合、実は攻撃側に有利な条件があるのです。ホルムズ海峡は33kmの幅がありますが、タンカーなどが航行可能である海域は中央部3kmほど、機雷であれば小型船でも敷設が可能ですが、処理となりますとペルシャ湾とアラビア海を結ぶ海峡は潮流が速く、機雷処分具の航行が制限されるほか、イラン沿岸に近く、掃海は難しい。

 安全保障法制定において、ホルムズ海峡の機雷掃海は実際に考えられた具体的事例の一つです。そして多国間機雷戦訓練において想定されている機雷掃海の一つともされ、上記の通りもう一つの重要航路であるスエズ運河機雷テロ事件、国籍不明勢力によるスエズ運河封鎖事件とならび、アジアと欧州と中東を結ぶシーレーンへの重大脅威とされてきました。

 ホルムズ海峡機雷封鎖は、潮流とともにイラン沿岸部に近く、機雷封鎖がイランにより行われた場合、機雷掃海を妨害するために地対艦ミサイルや火砲による妨害が想定されることも懸念すべき点で、場合によっては掃海艇の派遣にとどまらず、掃海艇の護衛へ、例えばイージス艦による艦隊防空や艦砲を用いた妨害対処という任務も想定せねばなりません。

 ホルムズ海峡でのタンカー襲撃事件、イラン孤立化を企図する第三国勢力の関与の可能性があた時点では、機雷敷設はテロ的手段として行われる可能性が高かったのですが、問題はコクカ-カレイジャス襲撃事件以降のタンカー攻撃は、例えばイラン産原油を国連制裁に反して第三国に転売しようとしたためにイランが出動するという新展開となっています。

 イギリスタンカー拿捕事件は、イギリスタンカーがイラン漁船に当て逃げを行った為にヘリコプターを派遣し拿捕した、と主張しており、これは船舶位置情報AIS記録によれば、イラン革命防衛隊による拿捕を受けるまで速力を維持し航路も維持している為、漁船への当て逃げが事実であるのかが疑わしいのですが、爾後イランが正面出でるようなりました。

 例えば機雷敷設が行われた場合、イランは機雷敷設を正当な自衛権行使として正当化し、第三国による機雷掃海を拒否する可能性も否定できず、問題は複雑化します。具体的に言うならば、掃海艇にはCIWS等の防空火器は勿論のこと、対空レーダーも電波妨害装置さえも搭載していません。掃海が実力で妨害された際への備えがほぼ、無いという実情が。

 掃海艇は特に機雷掃海任務の際には全乗員が甲板上に作業を行う、機雷触雷の際に艦内は危険である為なのですが、これは砲弾やミサイルに対して乗員が甲板上に露天状態で有る事を意味する。冒頭に掃海艇が最適と記述した上で、その前提として国籍不明勢力による機雷敷設任務の場合、と但し書きした背景には掃海艇のこうした状況が在るのですね。

 掃海艇を派遣し、この掃海艇による機雷処分を開始した時点で、例えば高速艇などによる妨害がなされた場合、掃海艇には機関砲、新型の掃海艇えのしま型からは管制式20mm機関砲が搭載されており、その脅威排除は可能です。しかし、地対艦ミサイルなどによる妨害は対処不能、この場合は自衛隊や米海軍の運用する掃海ヘリコプター等が有用でしょう。

 掃海輸送ヘリコプターMCH-101は掃海艇による掃海に先だって航路掃海を行う装備で、航空機であれば触雷した場合でも墜落に至ることはありません、掃海艇を機雷から守るためにもおおまかな掃海を航空機で行うことは有用なのですが、その取得費用は掃海艇よりも高い。自衛隊とアメリカ軍は前者は機雷戦重視、後者は機動力重視から導入しました。

 MH-53やMCH-101であれば、ホルムズ海峡が機雷封鎖され且つ掃海艇に対する妨害攻撃が行われるという最悪の場合であっても、対艦ミサイルはヘリコプターを照準出来ませんので、陸上からの妨害が一段落するまで掃海任務継続可能です。もっとも、これは最悪の状況、対艦ミサイル脅威が現実となった場合は一定期間、タンカーは航行不能となります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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【日曜特集】平成28年第1空挺団降下訓練始【02】真冬の落下傘降下開始(2016-01-10)

2019-08-25 20:08:21 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■習志野に舞い降りる空挺団
 幕之内ではなく松之内の空挺団降下訓練始めは青空の一下にいよいよ落下傘降下の時機となりました。

 CH-47JA輸送ヘリコプターより高高度自由降下を開始する。空挺隊員は厳し空挺教育課程を修了し空挺徽章を手にしますが、空挺作戦は基本的に奇襲であり強襲作戦です。この為に更に空挺隊員より自由降下課程という高高度降下を行う専門要員の教育課程がある。

 自由降下開始、自由降下傘はパラグライダー方式の落下傘ですが、重量20kgと所謂パラグライダーよりも重く、各種装備を携行し降下する事が可能です。その到達距離は高高度自由降下を行った場合、更に30km奥地へ降下する事が可能で隠密且つ迅速な輸送手段です。

 自由降下の目的は隠密裏の内陸展開であり、これは大規模な空挺作戦に先立つ夜間浸透を行い、降下予定地を偵察する主任務で行われます。強襲作戦である空挺作戦は降下予定地を航空偵察するには、降下予定地が暴露する懸念があり、隠密裏に行わねばなりません。

 空挺降下予定地は奇襲の拠点であると共に航空機からの補給を受ける策源地でもある、その場所に敵が僅かでも展開しているならば、降下中という最も脆弱な状況で敵に暴露したまま損耗を被る危険があり、その為に万全の情報収集を行うのが、自由降下を行う部隊だ。

 習志野訓練場を舞台とする降下訓練始めでは、実感が掴みにくいのですが、空挺作戦が行われるのは敵主要補給路や策源地等の戦略目標、若しくは敵の脅威下にありつつ増援の展開まで時間を要する状況下での緊急展開任務です。共通点は味方の増援を受けにくいこと。

 UH-1J多用途ヘリコプターが習志野訓練場へ展開する、UH-1は1961年に運用開始したHU-1B以来自衛隊での運用を経て信頼を掴み、UH-1HにUH-1Jと改良型が導入されると共に現在、富士重工製造で双発型のUH-2を後継機として評価試験が実施されています。

 HU-1Bはアメリカのベル社製機体を富士重工がライセンス生産し、富士重工はその後一貫してUH-1系統の航空機ライセンス生産を行うと共に民間型の生産も担っています。この状況で降下を行う要員は、大規模空挺作戦に先行しての降下誘導小隊の降下開始でしょう。

 降下誘導小隊が展開を開始しました、空挺部隊展開の誘導準備が開始されます。降下誘導小隊の任務は大規模な空挺強襲に先立ち、輸送機へ信号送信を行い降下地点の誘導を行う事に在り、空挺隊員の中でも特に選抜した要員にて構成されています。信号には鏡を使う。

 空挺作戦、航空機という軍事上考え得る最速の手段で展開する一方、一旦降下完了してしまいますと、徒歩機動が主力となってしまいます。近年は輸送機能力向上により車両輸送も難易度は低くなりましたが、留意事項ではあり、その分の発動は万全の準備を要します。

 C-1輸送機の展開、空挺作戦の本番だ。C-1輸送機は川崎重工製高性能輸送機で、1970年に初飛行となりました。沖縄返還前の1970年、開発が具体化した1960年代は専守防衛の教条的遵守要求が強く、航続距離を抑える必要はありましたが、その分高速度を重視した。

 降下開始。空挺団は今も昔も降下前の行くぞを指し示す怒号の様な号令と共に降下を開始します、降下前の大声はアメリカ軍でも、あのロシア軍でも怒号で号令を掛けつつ、最後の安全点検を行うという。安全点検にやりすぎは無く、飛び出した後で戻りは出来ない。

 降下用意!環掛けッ!、C-1輸送機の機内には落下傘開傘紐と直結した環紐を通す導線が張られており、降下用意の号令と共に導線と環を一本化します。装具点検!、空挺隊員は前の空挺隊員装具の安全を四カ所に分け確実に点検します、これ故に空挺は仲間を信頼する。

 C-1機内の導線と落下傘は一体化しています、位置就け、この号令とともに、用意の号令を待ち、降下へ、降下その瞬間に自重で開傘紐は強く引かれる、こうする事で空挺隊員が輸送機を飛び出した瞬間に開傘紐は解き放たれ、空で自動的に丁度四秒後、落下傘は花開く。

 用意用意用意!、降下降下降下!、この号令とともに四秒一名の滞りなく一つの扉から空挺隊員は力いっぱいに大地へと飛び出します、瞬間の躊躇いも気の迷いも許されない、事故に繋がる為で、確実に降下できるように空挺隊員は常に初心を忘れず訓練と点検に向う。

 いち降下ッ!にい降下ッ!さん降下ッ!よん降下ッ!!、飛び出した瞬間に空挺隊員は舌を噛まぬよう、しかし着実にこの号令を習慣づけます、四秒で開く落下傘、この四秒を数える、そして開かなければ、事故、そのまま落下を避けるべく即座に胸の予備傘を用いる。

 習志野訓練場へ次々と降下する空挺隊員、空挺団では前身となる1956年の第101空挺大隊創設以来、不開傘という落下傘が開かない事で墜落する事故は三度しか起きていません。しかし言い換えれば三度起きているのであり、着地の瞬間まで、安全確保へ気は抜けない。

 五転接地着地、両足を踵併せ閉じて接地した瞬間に膝下脚部を撓わせて曲げつつ腰部と太腿から転がり回り背中で仰向けへ大地へ横たわると共に反動を利用し立ち上がる、要するに着地した瞬間に体を曲げて転がり衝撃を吸収する、慣れると三階から落ちても怪我無し。

 C-130輸送機からの空挺降下が開始される。降下用意!環掛けッ!、装具点検!、用意用意用意!、降下降下降下!。この号令は無線中継をそのまま会場のスピーカーを通じて響き渡っています。いち降下ッ!にい降下ッ!さん降下ッ!よん降下ッ!!、この大空に響く。

 C-130輸送機は完全武装の兵員92名を登場させる事が出来ます。しかし空挺隊員は巨大な落下傘と予備傘を身に着ける為、60名しか登場する事が出来ません。C-1輸送機も60名を輸送するのですが、空挺隊員を輸送する際には45名まで抑えて飛行します。装備は重い。

 KC-130空中給油輸送機が展開する、航空自衛隊にまだ2機しか装備されていない装備で、C-130H輸送機を改修し導入されました、KC-130空中給油輸送機の任務は救難用のUH-60J救難ヘリコプター支援で、これにより広い洋上での救難任務の達成率は高まった。

 用意用意用意!、降下降下降下!。会場へ響き渡るのは降下の号令と共にと軍歌“空の神兵”、旧陸軍のパレンバン空挺強襲作戦やメナド空挺作戦、そして絶望的な状況へ立ち向かったレイテ高砂空挺作戦と陸軍空挺部隊の意地を示した沖縄の義烈空挺作戦が戦史に残る。

 みよ落下傘空に舞い!みよ落下傘空を往く!、“空の神兵”に謳われた様子が再現されているのですが、習志野訓練場が狭い関係で同時に降下できる落下傘が限られています、一機一機が一列で進入していますが、出来れば編隊で降下できる広さのある訓練場が望ましい。

 報道席の奥へ降下する空挺部隊、報道席と云いますと素晴らしい撮影環境が用意されているように思えるのですが、其処で撮った方曰く、両線の向こうは政府関係者や空挺団関係者席となっていて、丘陵の陰になってしまい見えない、仮設敵にはこれ反射面陣地だ、と。

 降下する隊員とC-130輸送機、丸い形状の落下傘が変形しているようにみえるのは、拡大すると紐を引いている隊員が見えます、これは丸い形状の落下傘でもある程度操縦出来るよう設計されていまして、これにより訓練場外へ着地しないよう、操作しているのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【G3X撮影速報】令和元年富士総合火力演習,教導団予行-火力戦闘車登場(2019-08-18)

2019-08-24 20:02:50 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■19式装輪自走榴弾砲登場!
 教導団予行にお誘いいただきまして日曜に富士総合火力演習を撮影して参りました。明日本番に行かれる方はネタバレになりますので閲覧は明日正午までお待ち頂ければ幸い。

 AAV-7水陸両用車、陸上自衛隊ではAAV-7を水陸両用車と記載していますがAAVとは両用強襲車の略称、強そうですし両用強襲車の訳語を定着させてほしいと思う。佐世保相浦の水陸機動団隷下、戦闘上陸大隊の装備です。新しい陸上自衛隊看板装備の一つとなった。

 19式装輪自走榴弾砲、本年の新装備です。開発実験団装備実験隊の装備で評価試験中の新型です。まさか出て来るとは、いや早朝に総火演広報紙が落ちていて火力戦闘車参加が書かれていた。拾ったのは友人、信じられずに、それコミケ同人誌でないの、と冷やかした。

 前段演習と後段演習、富士総合火力演習は二段構成で実施されていまして前段演習は陸上自衛隊の各種装備、遠距離火力である特科火力と普通科の迫撃砲や対戦車火力、そしてヘリコプター火力を展示し最後に戦車火力、近年は機動戦闘車を含め戦車等火力を展示する。

 99式自走榴弾砲、52口径の長砲身が際立つ。自衛隊は75式自走榴弾砲で30口径、FH-70で39口径、そして52口径へ世界の趨勢を追てきましたが、世界は52口径よりも長砲身には進まず開発から20年を経た99式自走榴弾砲も発射速度と射程でまだ世界一の水準に。

 FH-70榴弾砲、39口径砲です、BB特殊装薬を用いると最大射程は39kmに達する、ただ砲身が痛み連続射撃にも適さず実質的な射程は30kmである。砲兵は射程よりも標定技術と即応及び命中精度へ技術は進む。参考までに52口径砲ならば京都駅から大阪駅まで届く。

 L-16迫撃砲、イギリスロイヤルオーディナンス社製、現在のBAEランドディフェンスシステムズ社製であり射程は5.6km、自衛隊は勿論アメリカ陸軍も含め世界中で採用されている迫撃砲、大胆に軽金属を多用し38kg、三分割する事で山間部でも人力携行可能です。

 120mm重迫撃砲はフランストムソン社製の重迫撃砲を豊和工業がライセンス生産したもので従来の105mm榴弾砲並という最大射程13kmを誇る、前型のM2重迫撃砲射程は4.5kmで大きな進化で、普通科連隊重迫撃砲中隊や火力支援中隊等に500門が配備される。

 火力戦闘車として開発された19式装輪自走榴弾砲は、道路運送車両法車両限界の車幅2.5m全長12mの枠内に収まり一般車両と同じ条件で走行可能です。実は車体部分を三菱重工製とする計画でしたが、そうすると12m以上となる為、ドイツMAN社製車体が採用された。

 CH-47輸送ヘリコプター、バートル社が開発しボーイング社で改良型の生産が続く1950年代からの傑作機、我が国は川崎重工が30年以上ライセンス生産を継続する大型輸送ヘリコプター、55名を輸送しますが詰め込めば国内では100名以上、イギリスは200名乗せた。

 120mmRT重迫撃砲を空輸展開する。吊下げ空輸は富士総合火力演習の定番ですが吊下げですと長距離飛行する事が出来ません、しかし今回はCH-47の機内に収容しての空中機動展開となりました。島嶼部防衛等ではこうして射程13kmの迫撃砲が展開するのでしょう。

 普通科部隊の各種装備。89式装甲戦闘車、68両が量産された装甲戦闘車で頑強な装甲と共に35mm機関砲の支援下で普通科隊員を第一線へ展開させます。基本的に乗車戦闘を行い、最後の制圧のみ下車戦闘を行う。本来北海道に4個連隊分程度、350両が量産される予定でしたが冷戦が終わり。

 装甲戦闘車の配備再開は急務と思う、戦闘ヘリコプターと装甲戦闘車、この二装備の不足が陸上自衛隊の第一線機動力を大きく制約している。89式装甲戦闘車は生産終了から15年を経て製造再開が難しいならば、MLRSやAAV-7と駆動系が同じM-2装甲戦闘車が良い。

 AAV-7砲塔、教導団予行での撮影です、雨天予報もあり、自慢の300mmF2.8ISは御留守番、あの一本は素晴らしい描写力を誇りますが兎に角大柄ですので雨天時には防滴が大変ですし、撮影位置によっては全長長く振り回しにくい。その分G3Xの最大望遠が際立つ。

 AAV-7については、基本設計が1972年であり、今更そんな古い装備を、と訝しむ声もありますが、現行機種はM-2装甲戦闘車と同じエンジンを採用し防御力も強化され別物といってよく、これはUH-1YやAH-1ZにF/A-18Eを今更そんな旧式を、というに等しい的外れ。

 軽装甲機動車、陸上自衛隊が全国的に配備を実現できた装甲車両です。一個小銃班を二両に分けて火点を分散させ正面を広く採る観点から開発されました。01式軽対戦車誘導弾始め重量が増大する普通科第一線火力の機動運用装備、また斥候用の装甲車として重宝する。

 96式装輪装甲車、40mm自動擲弾銃を装填中の様子だ。火力と装甲防御力が低く基本は下車戦闘を念頭とした装備ですが小松製作所の努力で一億円以下に安価に収められている。外国兵器の方が安いと逸話があるが2010年代、この手の車両は新車で200万ドルが相場だ。

 対人狙撃銃M-24の狙撃、辛うじて銃身が分ります。このPowershotG3Xはデジタルズームで35mm換算2400mmという超望遠が可能でし。それで1型センサーを採用していますので辛うじて判別できる写真に仕上がるのですが。しかし一眼レフと二台持ちは疲れるぞ。

 01式軽対戦車誘導弾の射撃を96式装輪装甲車から行う。赤外線画像誘導方式のミサイルはコールドランチ方式を採用しており射撃位置を選ばない、ただ、相手が陣地等赤外線を発しない目標の場合は照準さえ出来ない為、画像認識方式かレーザー照準誘導併用も必要だ。

 AH-1S対戦車ヘリコプターが20mm機関砲の射撃を行う、AH-64D戦闘ヘリコプターは昨年の九州での墜落事故後飛行再開が行われていない。AH-1Sは耐用年数限界でどんどん数が減り半数程度しか残っていない。AH-64E等の後継機を30機程度一括取得が必要と思う。

 AH-1S対戦車ヘリコプターを置き換えるAH-64E戦闘ヘリコプターの取得は急務と思う。AH-64Dの自衛隊仕様を含めロングボウレーダーは今後脅威が増大する無人機への空中警戒手段としても応用され、エンジン出力に余裕はあり対無人機用レーザー砲の研究も進む。

 87式自走高射機関砲の水平射撃、想定として低空から接近する航空機に対する射撃で毎秒17発の焼夷榴弾を射撃し敵機を弾幕で包み叩き落とす。高度な火器管制装置と併用しデジタル画像照準も可能でステルス機でも対処可能だが車内はコンピュータの排熱で凄く熱い。

 戦車火力の展示、近年は機動戦闘車の配備により戦車等火力の展示、とし全国に8個中隊が残る74式戦車は2017年度を最後に富士総合火力演習への参加は終了し、数の上で陸上自衛隊の主力となっている90式戦車や新鋭10式戦車、16式機動戦闘車が射撃を行う。

 富士総合火力演習2019、最初に感心したのは戦車教導隊中隊マークが限定的ではありましたが復活しているところです、流星輝く90戦車。ただこの写真は連写速度を誇るEOS-7Dではなく並列連結したコンデジG3Xの撮影、適当に撮ったらば発砲焔が写るのは不思議だ。

 16式機動戦闘車が射撃位置へ展開する。元々は87式偵察警戒車の後継と成っていましたが、本土戦車大隊の全廃により74式戦車の後継として偵察戦闘大隊の戦闘中隊へ配備されるという。攻撃力は高い、ただ、大口径機関砲にも耐えられない装甲防御は機動力で誤魔化す。

 射撃後発煙弾を展開し撤収する、本年の富士総合火力演習は発煙弾が多い印象でした。そして16失機動戦闘車の射撃輌力を展示する為に三段山への2.5km長距離射撃が初めて展示され、命中まで二秒以下、105mm砲は低圧砲ではなく音速五倍程度の高初速砲と分かった。

 10式戦車、機甲教導連隊の共通マークと共に展開です。行進間射撃はEOS-7D任せ、兎に角射撃するまで10秒でも20秒でも撮り続ける。故にRAW撮影では難しい、JPEGと違い一枚が重く百枚単位の連写の連続に画像処理が追い付かないのだ。RAWも綺麗だけどね。

 90式戦車は中隊マークを掲げての登場、偽装網で背景に溶け込む撮影台が見事だ。最前列付近で撮影支障きたす安全索の虎ロープ、必要性は分かるのですが、この偽装網のように状況と云いますか野戦部隊の勇壮な雰囲気と状況を壊さない偽装網としてくれると嬉しい。

 地域配備師団などに新編される偵察戦闘大隊ですが、機動戦闘車の戦闘中隊と偵察中隊から編成されるという。しかし機動力と共に防御力を有する戦車の優位性は大きく、個人的に偵察戦闘大隊は機動戦闘車小隊を含む偵察中隊と戦車中隊という編成が望ましい様にも。

 ネットワーク電子戦システム、電波収集及び妨害を担う電子戦装置と情報の処理分析及び電子戦装置に対する指揮統制装置、各種システムとの連接機能を有する電子戦統制装置からなる陸上自衛隊の新装備です。島嶼部等分散運用を念頭に性能の統合と小型化を行った。

 ネットワーク電子戦システムは昨年、通信が高似て評価試験中の装備が展示されていましたが、ネットワーク電子戦システム電子戦装置収集用空中線には第1電子隊第2中隊と記載、既に東千歳の第1電子隊へ配備されている事を意味します。実に一年で実戦配備へ。

 後段演習がいよいよ開始されました、射撃位置に展開する16式機動戦闘車、機動戦闘車の防御力は74式戦車等前世代戦車と比して低く、しかし射撃陣地を利用する事で防御力を高めるとともに優れた火器管制装置により遠距離での撃破という攻撃力を重視した設計です。

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令和元年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2019.08.24-08.25)

2019-08-23 20:12:23 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 灼熱の凄い状況は雨天に若干潤されますが豪雨は困るという今日この頃、今週末の自衛隊行事について。

 松島基地航空祭、25日の日曜日に挙行されます。航空自衛隊の練習機ぶたいである第4航空団の拠点であり、ブルーインパルスのホームベース、そして東日本大震災では松島湾からの津波により甚大な被害を受け、航空祭も一般公開へ回帰できたのはここ数年の話です。本年はT-4練習機緊急点検によりブルーインパルスは3機のみの飛行展示となるもよう。

 第4航空団の松島基地、0850時よりオープニングフライトで始まり0900時にはRF-4戦術偵察機による展示飛行、0915時より東日本大震災より復旧したF-2B戦闘機による機動飛行、0935時よりブルーインパルス午前中の飛行展示、1005時救難展示と1025時よりF-2B模擬対地攻撃、1110時より米空軍F-16機動飛行を経て1325時にF-2B機動飛行が。

 ブルーインパルス飛行展示は午前と午後の二回行われるのが松島基地の名物でして、1345時より午後のブルーインパルス、飛行展示が行われます。なお、松島基地では万一に備え巨大地震再来への備えも行われており、基地の主要部分合嵩上げ工事が完了し、大津波警報発令時には安全なJR線よりも内陸側まで、自衛隊による避難誘導が行われるとのこと。

 知念分屯基地開庁記念行事、沖縄県の南城市佐敷字佐敷にある那覇基地の分屯基地です、沖縄本島ですので旅客機で本数も多く比較的行きやすい。第5高射群のペトリオットミサイル部隊、第16高射隊と第18高射隊が展開しています。元々はアメリカ陸軍第30防空砲兵旅団のナイキ部隊が展開していましたが沖縄本土復帰後、航空自衛隊へ移管されました。

 日曜日には富士総合火力演習が行われます。本邦初公開となります19式装輪自走榴弾砲が登場、入場券が必要ですが物販コーナーでは入場券不要を強調していまして、実のところ後段演習終了後の装備品展示は入場券が不要ですので、惜しくも入場券が入手出来なかった方でも最新鋭の19式装輪自走榴弾砲だけでも見に行く価値はあるのかな、と思います。

 富士総合火力演習、19式装輪自走榴弾砲は観てみたいが御殿場は遠い、という皆様には朗報です、小山町にあるのですよ、ではなくて陸上自衛隊HPから富士総合火力演習のWeb中継が行われます。富士山頂からも新東名高速からも東富士演習場畑岡地区は一望できますが、登山道のわき見や運転中の観覧はわき見運転となりますのでWeb中継はお勧めです。

 カナダ海軍フリゲイトオタワ舞鶴寄港、本日カナダ海軍のハリファクス級フリゲイトのオタワが舞鶴を親善訪問しました。オタワは明日土曜日に一般公開が予定されており、日曜日も艦上公開はありませんが北吸桟橋からの見学が可能です。5400tの水上戦闘艦ですが水上戦闘と共に警備と漁業権保護も任務とするカナダ海軍の主力艦、この機会に是非見学を。インドネシア海軍練習帆船ビマスチも阪神基地に来ているとのこと。

 海上自衛隊艦隊広報は以下の通り。掃海艇いずしま七里長浜港一般公開が24日と25日に青森県鰺ヶ沢町にて行われます。ミサイル艇はやぶさ両津港一般公開が24日と25日に新潟県佐渡市同港の中央埠頭にて、新潟港からのジェットフォイルよりも高速です。護衛艦ふゆづき下関一般公開が24日と25日に山口県下関市あるかぽーと岸壁で行われます。

 さて地獄の話題、ではなく豪雨の話題を。雨天時の自衛隊行事、雨具は忘れないように携行したいものですが、何よりも重要なのは昨今、靴をどのように防滴するか、という。傘をさして歩いていますと靴には雨滴が浸み込む、これは良くある話なのですが、よくよく見ていますと傘では靴の上面を防滴出来ていない、という事はままある話なのですよね。故に降った雨滴が浸み込んでくるという。

 靴用防滴カバー、トレッキング用のものが登山用品店などで売られています。つま先とかかとの部分をゴムで固定して、というものなのですが、買ってみるまでどうせ擦過傷で簡単に駄目になるのだろう、と思っていたところが案外頑丈で、しかも登山用品という余分な重量は持たないようにしなければ体力に関わるという要求仕様もあり軽くて小型です。

 完全防水の靴を準備したいところですが、それはそれで濡れます。ならばいっそ逆手を取ってサンダルという選択肢も自衛隊行事の撮影という様な状況ですと、護衛艦見学などが滑って危険ですので、とお断りされるように一寸安定性と安全性に問題があります。そこで登山用品の靴用防滴カバーという選択肢、なかなかに良い選択なのかもしれません。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・掃海艇いずしま七里長浜港一般公開…https://www.mod.go.jp/msdf/
・松島基地航空祭…https://www.mod.go.jp/asdf/matsushima/index.html
・ミサイル艇はやぶさ両津港一般公開…https://www.mod.go.jp/msdf/
・カナダ海軍フリゲイトオタワ舞鶴寄港…https://www.mod.go.jp/msdf/
・インドネシア海軍練習帆船ビマスチ阪神寄港…https://www.mod.go.jp/msdf/
・護衛艦ふゆづき下関一般公開…https://www.mod.go.jp/msdf/
・知念分屯基地開庁記念行事…https://www.mod.go.jp/asdf/chinen/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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日韓GSOMIA破棄:日韓関係更に悪化,韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定破棄を正式決定

2019-08-22 20:00:05 | 国際・政治
■日米両政府の声は届かず
 日韓関係は韓国による二国間合意の破棄連続と軍事挑発とも取れる非礼を背景に悪化の一途をたどっていますが、更に懸念が。

 日韓軍事情報包括保護協定GSOMIAが韓国側の要望により破棄される事となりました。これにより日韓の新しい防衛協力の試みは2016年から2019年までという短期間で終了する事となりました。北朝鮮弾道ミサイル実験などの情報は2016年以降韓国側からの情報通知を受けていましたが、今後は在韓米軍司令部から横田基地日米調整所経由で得る事になる。

 アメリカ政府と日本政府は日韓軍事情報包括保護協定GSOMIAの継続を希望していました。これは得られる情報の価値というよりも、日本と韓国はアメリカにとり北東アジア地域における数少ない同盟国であり、特に北東アジア地域は北朝鮮の核戦力増強と中国の海洋進出、ロシアと西太平洋地域の安定という点で協調協力を強化せねばならない関係です。

 韓国政府は日本政府とアメリカ政府との要望を受け、GSOMIAの破棄ではなくGSOMIA履行停止を検討していたとの報道もありましたが、韓国国内世論の高まりを受けGSOMIA破棄という結論に至った、報道を見る限りではこうした構図です。三権分立の構造が韓国と日本を含む世界では若干異なる様で、一歩進んだ関係悪化は何処まで進むのでしょうか。

 GSOMIA破棄、韓国政府は日韓関係の悪化を受け本日臨時の国家戦略会議を招集し破棄を決定しました。日韓間には、自衛隊哨戒機への射撃管制レーダー照射や韓国国際観艦式自衛艦参加拒否、戦時徴用工問題日本民間企業資産売却司法判断や慰安婦日韓合意破棄、半導体原材料輸出管理特別優遇停止、日韓航空協定違反国際線路線閉鎖等の問題があります。

 日韓防衛協力、その具体化は1998年に実施された日韓共同救難訓練まで遡るのですが、言い換えれば日本は憲法上の制約から同盟国アメリカ以外との二国間防衛協力に大きな制約があり、韓国側からも日本の憲法を越えてまでの防衛協力を要請する必然性は低く、韓国軍の平時指揮権は当時在韓米軍司令部に在り、防衛上は近くて遠い隣国という関係でした。

 しかし朝鮮半島有事の可能性が顕在化すると共に我が国では1993年頃、周辺事態への自衛隊対処という部分から邦人救出や難民流入と損傷艦艇や航空機の飛来に浮流機雷といった現実的影響が認識され、この検討は橋本内閣時代の日米新ガイドライン、周辺事態法整備により韓国との防衛協力が必要となり協力が模索、日韓共同救難訓練に漕ぎ付いた歴史が。

 GSOMIA破棄は防衛上の影響は無い、と分析する事は出来るでしょう、しかし政治的影響は大きい。弾道ミサイルに関する情報は在韓米軍司令部が有しており、前述の通り横田基地の航空自衛隊航空総隊司令部に日米調整所がありまして、ミサイル情報は共有する枠組みが存在します。北朝鮮と日本は地続きではなくミサイルと工作員以外脅威はありません。

 政治的影響としては、一旦破棄した軍事情報包括保護協定を再締結する端緒となる日韓関係の良好化が必要ですが自衛隊哨戒機への射撃管制レーダー照射や韓国国際観艦式自衛艦参加拒否、戦時徴用工問題日本民間企業資産売却司法判断や慰安婦日韓合意破棄、半導体原材料輸出管理特別優遇停止、日韓航空協定違反国際線路線閉鎖等、何れも打開策が無い。

 自衛隊哨戒機への射撃管制レーダー照射は、韓国海軍水上戦闘艦艇から海上自衛隊P-1哨戒機へのミサイル照準が行われた点で、韓国側は事実関係を否認し、我が国の画像情報始め多くの証拠提示を行った後には自衛隊機による低空飛行をCGにより発表し、このCGを証拠として批判、現在も韓国側は火器管制装置使用を認めず使用を正当化する矛盾が続く。

 韓国国際観艦式自衛艦参加拒否問題は、国際観艦式へ海上自衛隊護衛艦に自衛艦旗を下して参加を求めた事で、自衛艦旗を掲揚しない限り国際法上軍艦として視なされません。同じ要求を各国へ要求しましたが、各国は半旗や戦闘旗掲揚で韓国側を批判、韓国も軍旗を掲揚し関係が悪化すると共にこの影響で自衛隊観艦式へ韓国海軍は招待されていません。

 戦時徴用工問題日本民間企業資産売却司法判断や慰安婦日韓合意破棄については、日韓政府合意が行われた後ですので、日本の東京大空襲訴訟のように韓国政府が自国民へ賠償措置を行うように、日韓合意により漸く補償が完了した問題を更に日本側から再度補償を要求する判断は理解に苦しみ、韓国政府側が自国内で完結させない限り進展は無理でしょう。

 軍事情報包括保護協定、しかし実は日韓関係は冷戦時代においては細い、しかし確実な友好関係が維持されていました、それは共に陸軍士官学校出身という同期関係の繋がりです。日韓は政府間以外に懇話会や表敬訪問という形での防衛協力が陸士同期という強い絆が存在、一之会ハナフェという軍人OB団体との民間交流という定義での関係が存在していた。

 日韓の非公式の連携と友好関係、人と人との関係は有形無形を越えた大きな価値と意味合いを有します。しかし、自衛隊には既に陸士出身者は昭和の内に全て退官しており、韓国軍にも帝国陸軍士官学校や満州軍官学校といった戦前戦中の絆は存在しません、軍事情報包括保護協定はこの民間関係を二国間関係へ昇華させた点で大きな意味がありましたが。

 防衛大学校や幹部候補生学校、富士学校等への留学生受け入れは継続されており、韓国軍からの留学生も在籍しています。日韓の防衛協力はGSOMIA破棄という、ここで絶無となった訳ではなく継続されるのですが。正直日韓関係に良好な要素がありません。冷却期間の必要はありますが、冷却期間が政権交代までか、どれ程長くなるのかも想像できません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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