北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【くらま】日本DDH物語 《第二五回》はるな建造開始とイタリア海軍ヘリコプター巡洋艦

2017-09-30 20:06:41 | 先端軍事テクノロジー
■日本初のDDH建造開始
 ヘリコプター巡洋艦という新しい装備体系が各国で萌芽する中、我が国海上自衛隊でも積み重ねたHSS-2対潜ヘリコプターの洋上運用へ大きな一歩を歩み出します。

 1968年度計画として海上自衛隊は初のヘリコプター搭載護衛艦はるな建造を開始します。艦砲と大型の対潜ヘリコプター複数を同時運用する能力は当時世界中で模索されていたヘリコプター巡洋艦の概念延長線上にあったといえましょう。この、ヘリコプター巡洋艦という新しい艦種の時代はヘリコプターの多用途性を背景に徐々に形成されてゆきました。

 イタリア海軍は国内法により空母艦載機となる固定翼機を空軍が所管し、事実上の航空母艦建造を禁止する艦隊法がありましたが、ヘリコプター巡洋艦という視点からは先駆者で、1964年にアンドレアドリア級ヘリコプター巡洋艦2隻を就役させています。アンドレアドリア級は基準排水量5000tと海上自衛隊が1973年に建造する護衛艦はるな、とほぼ同じ。

 アンドレアドリア級はイタリア海軍区分を護衛巡洋艦とし、アグスタベル212対潜ヘリコプター4機を艦載機とし、船体後部を格納庫と飛行甲板に充てており、船体前部には艦隊防空ミサイルとしてアメリカ製テリアMk10連装発射装置を搭載、イタリア海軍自慢の76mm単装砲8門という多数を搭載し、NATOの地中海船団護衛の主力として完成させています。

 アグスタベル212対潜ヘリコプターはアメリカ陸軍の多用途ヘリコプターHU-1,陸上自衛隊が現在改良型UH-1Jを運用していますが、この原型機の双発型ベル212をアグスタ社がライセンス生産したもので、対潜ヘリコプターとしては小型ですが、Mk44短魚雷2本と吊下ソナーを搭載し、小型フリゲイトにも搭載可能な対潜ヘリコプターとして完成しました。

 ヴィットリオヴェネト、イタリア海軍は1969年に基準排水量7500tという大型のヘリコプター巡洋艦を建造しました。アグスタ212を9機搭載し、船体内に格納庫を有し、飛行甲板へはエレベータにより昇降する大型艦で、テリア連装発射機を搭載していました。二番艦イタリア/トリエステも建造予定がりましたが、残念ながら財政難により建造は中止です。

 戦艦の艦名を冠するイタリア海軍のアンドレアドリア、カイオジュリオ、ヴィットリオヴェネト、日本と同じ元枢軸国の海軍はこうした大型艦を建造し、第二次大戦開戦当時には空母を有さなかったオーストラリア海軍の空母運用、こうした趨勢と船団護衛任務の重要性は、多少なりとも海上自衛隊の航空母艦への視点に多少なり影響を及ぼした事でしょう。

 ヘリコプター巡洋艦という意味では、既に第一次防衛力整備計画において護衛空母導入構想、11000t型対潜空母研究等が積み重ねられていました。この他、第一次防衛力整備計画では6000t型警備艦、としてヘリコプター巡洋艦の研究も進められており、艦砲等の武装と共に6機の対潜ヘリコプターを集中運用する水上戦闘艦を構想していたと伝えられます。

 6000t型警備艦構想は、しかし第一次防衛力整備計画当時には時期尚早というかたちで見送られ、同時期に構想された多種多様な航空母艦に関する諸研究と共に検討事項に留まります。それでは6000t型警備艦が見送られた中で、海上自衛隊が改めてヘリコプター巡洋艦というべき対潜ヘリコプター運用用の水上戦闘艦を構想し具現化したのは何故でしょうか。

 ヘリコプターを搭載する護衛艦を必要とした最大の背景は脅威の変化です。第一次防衛力整備計画は1950年代の脅威を想定していましたが、いよいよ第三次防衛力整備計画を画定する時機には、1970年代の脅威を想定する必要があり、海上自衛隊が重視したシーレーン防衛への脅威が通常動力潜水艦から原子力潜水艦へと、大きく脅威度を増した為でした。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十九年度九月期十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2017.09.30/10.01)

2017-09-29 20:10:08 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 衆議院解散と総選挙に与野党が沸く中、皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末行事紹介です。

 西部方面隊創設62周年記念行事、第4師団、第8師団、第15旅団を以て九州沖縄地方の防衛警備及び災害派遣を担う陸上自衛隊の方面隊です。10式戦車が第4戦車大隊と第8戦車大隊に配備、即応機動連隊新編準備と共に水陸機動団創設準備、AAV-7水陸両用車や12式地対艦誘導弾システムに16式機動戦闘車といった最新の優秀装備が式典を盛り上げます。

 熊本市の健軍駐屯地に置かれる西部方面総監部では、10月1日の0900時に開門、1000時から1045時まで祈念式典を実施、観閲行進は市内自衛隊通りに移動、1115時から1145時まで執り行われます。西部方面隊創設記念行事観閲行進は、10式戦車からMLRSまで一通りが参加する日本最大の市街パレード、精強な九州沖縄の守りを間近に見られるでしょう。

 第13旅団隷下の第13特科隊及び第13戦車中隊と第13高射特科中隊が駐屯するほか、四国第14旅団隷下の第14戦車中隊が駐屯しています。第14戦車中隊は第2混成団戦車隊の歴史を受け継ぐ精鋭部隊ですが、年度末に第15普通科連隊の即応機動連隊改編に合せ廃止、即応機動連隊機動戦闘車中隊へ改編されます。14戦車マークが観られるのは此れが最後だ。

 秋田分屯基地秋田空港空の日2017航空祭、航空自衛隊秋田救難隊と三沢気象隊秋田分遣班が展開する航空自衛隊の分屯基地です。秋田空港空の日2017に併せての展開となっていまして、UH-60J救難ヘリコプターとU-125救難機が展開、午前と午後の二回に分けて飛行展示を行い、航空機作業展示や気象業務展示、消防車放水や航空機地上展示が行われます。

 福島駐屯地創設64周年記念行事、第6師団隷下の第44普通科連隊及び方面施設部隊第2施設団隷下部隊である第11施設群が駐屯する駐屯地で、福島第一原子力発電所と福島第二原子力発電所が警備隊区にあります。観閲行進と訓練展示などが予定されています。なお、本年、福島駐屯地限定玉子せんべい発売開始、駐屯地銘菓が福島駐屯地にも登場しました。

 自衛隊行事を見る際に最新鋭の16式機動戦闘車に目が行きがちですが、しっかり撮影するべきは74式戦車です、残り少ない。16式機動戦闘車の大量配備で戦車大隊廃止は乗り切れる予定だったのが、来年度予算概算要求で配備計画は半減して、補正予算でも組まない限り16MCVは来年新編の機動連隊所要さえ充足できず、戦車大隊MCV配備はもっと先になる。

 師団は16式機動戦闘車15両と120mmRT重迫撃砲36門に軽装甲機動車3個中隊、あとは徒歩歩兵の普通科16個中隊で、当面頑張る事となる訳ですね。師団特科は新編の中部方面特科連隊に集約して“軍砲兵”に集約されるのだけれども、陸上戦闘を訓練展示模擬戦として視ていますと、野砲は方面直轄、戦車無し、それで大丈夫なのかと考えさせられる。

 旧軍も15cm榴弾砲は軍砲兵扱いだった戦車大隊は廃止、有事の際には富士教導団を解散して臨時戦車大隊を配属させ、北海道の戦車部隊到着を待つ事になります。自衛隊行事は広報として自衛隊の防衛力を税金が適正に使用され主権者としての判断が出来るよう示す事に狙いがあるのですが、それだけに戦車火砲の大幅削減は、大丈夫かと考えさせられます。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・10月1日:秋田分屯基地秋田空港空の日2017航空祭…http://www.mod.go.jp/asdf/akita/sp/
・10月1日:福島駐屯地創設64周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/6d/unit_hp/fukushima_hp/
・10月1日:日本原駐屯地創設52周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/13b/nihonbara/toppage.htm
・10月1日:西部方面隊創設62周年記念健軍駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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衆議院本日解散:安倍総理大臣政権維持期す,民進党前原党首事実上解党と小池新党希望の党

2017-09-28 22:09:06 | 国際・政治
■防衛安保議論重点化を希望
 衆議院総選挙、我が国の未来を左右する政権選択となる総選挙がいよいよ始まりました。

 衆議院が憲法7条に基づき本日解散しました。衆議院総選挙、政権選択総選挙の始りです。政府連立与党自民党公明党は過半数維持を掲げ、一方最大野党である民進党は国民と共に進む、としつつ前代未聞の政党としての公認候補を一人も擁立せず、東京都知事率いる新興政党希望の党へ事実上合流する宣言を前原党首が発表する異例の展開となりました。

 総選挙は総理大臣指名選挙を衆議院議員が実施するもので、実質的に政権選択の選挙です。言い換えれば来年2018年の自衛隊観艦式において、観閲艦に座乗の観閲官を何処の政党が首班として就任させるか、という事を左右する重大選挙であり、我々国民一人ひとりが占拠を通じて代議士を選出するというもの、国民有権者一人一人責任は重大といえましょう。

 安倍総理大臣は政権維持を掲げ、消費税率10%増税後の社会保障強化への財源化という施策を提示し選挙に臨んでいます。民進党は最大野党で、2016年に民主党に維新の党が合流する形で成立しましたが、政権与党を務めた民主党の閣僚や首相経験者が在籍しています。しかし、党内諸問題が山積し、今回、新興政党希望の党へ合流し解党する事となりました。

 安全保障問題を考える場合、自民党と新興政党希望の党、それに共産党という対立構造が成立する事となりますが、懸案は北朝鮮水爆実験と水爆恫喝に中国の南西諸島軍事圧力という極めて憂慮すべき状況下で、希望の党と民進党合流に際し、選挙直前の合流に対し、安全保障面での政策討議が充分政権公約マニフェストへ反映されるのか、という問題です。

 希望の党の小池党首、元自民党員で東京都知事を務める党首ですが、民進党からの無条件の党員受入は行わず、個々人を精査し党公認を与えるかを画定するとしています。ここで問題となるのは、安全保障上の保守層が支持する施策を提示する希望の党、これは当初党首就任と見られた若狭代議士や合流する日本のこころ中山党首の姿勢がどう反映されるか。

 民進党は支持組織として日本労働組合総連合会所謂連合、全日本自治団体労働組合所謂自治労、日本教職員組合所謂日教組等、多くの声を集めていますが、安全保障上の政策をどのように合流する希望の党政権公約へと反映できるかが懸念事項の一つです。申し訳ないですが希望の党が示す防衛政策と外交戦略の指針が、事実上解党の民進党以上に見えない。

 現行憲法の平和主義を現状の手段としての平和主義であり目的としての平和主義と出来ていない状況を如何に考えるか、ミサイル防衛に際し北朝鮮の水爆恫喝に対しての政権公約としての指針、統合機動防衛力整備を進める最中での基盤的防衛力の位置づけと賛否如何、中国南西諸島圧力に対しての現状の防衛計画大綱への視点、この当たり明確としてほしい。

 来年度予算概算要求が現在各省庁から発表され、年内を目指し財務省での折衝が行われています。総選挙は10月22日ですので、自民公明連立与党以外の野党が政権政党を目指すのであれば概算要求をどのように扱うのか、というものも充分政権公約に盛り込まなければ、どのような理念を掲げたとしても政権運営能力には疑問符が付くとも言えるでしょう。

 防衛安全保障問題は、これまで確実に憲法論争に直結する為、政権選挙の際には避けられてきました視点です。しかし、現在の厳しい防衛情勢を俯瞰したならば、この問題への不関与という選択肢は政権を目指す政党にはあり得ません。だからこそ、時間は潤沢とは言えませんが、だからこそ闊達な議論を行い、政権公約へ反映させてほしいと切望します。

北大路機関:はるな くらま
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【京都幕間旅情】御香宮神社,神功皇后祀る社殿は伏見城遺構と算額として数学問題を奉納

2017-09-27 23:00:36 | 写真
■御香宮神社奉納された科学の礎
 日本は科学国家として数学先進国であったことが明治維新後の産業振興に寄与しましたが、実は数学が古くから娯楽として楽しまれていました。

 御香宮神社、京都散策はいろいろと考えさせられる名所旧跡が数多いものの、豊臣秀吉の伏見城跡地に程近く、明治天皇桃山御陵が見下ろす御香宮神社は、その中でも特に考えさせられます、何故ならば、境内に数学問題が記された絵馬が奉納されているのですから。

 神功皇后を祀る御香宮神社は、“ごこうのみやじんじゃ”また“こうぐうじんじゃ”とよみ、貞観年間、時の清和天皇は、この地の湧水を口にすれば病が治るとの御利益と神威を受け、御香宮との名を与えた事で、創建は平安遷都から半世紀、858年頃まで遡る事が出来ます。

 五間社流造の本殿と伏見城大手門を移築したという表門は長い歴史を思い起こさせるものですが、境内には江戸時代に破却された伏見城の石垣が流用されています。伏見城の名をよく見るのはその筈、実は一時御香宮神社は伏見城内へ遷座されていた時代もありました。

 豊臣秀吉により御香宮神社が遷座されましたが、江戸時代に徳川家康により現在の位置に戻されていまして、少し考えますと社殿本殿は移築できますが御香宮神社の湧水は移築する訳にもいかず、徒歩十数分と少々離れた場所に移ったのは不思議な印象をもつところ。

 貞観年間、この時代の日本は兎も角災厄の年間というべき時代でした。先立つ天長年間の827年に類聚京都地震が平安京へ大被害を及ぼし、改元したものの、災厄の年々は此処から始まり、まず貞観5年の863年に越中越後地震が日本海側有数の穀倉地帯を壊滅させた。

 貞観富士山噴火、富士山の雄姿以来最大の噴火は868年に発生し、膨大な溶岩流は富士山麓を熱の海で満たし全ての生命を焼き払うと共に北上し琵琶湖並の湖沼を寸断、富士五湖を形成、更にもう一方は南下し太平洋まで押し出し、この噴火は古富士噴火とも呼ばれる。

 宝永富士噴火とは比較にならない貞観富士山噴火の急報は朝廷へも届けられ、867年には陸奥国大地震と播磨国地震が発生し、災害への関心が古文書に散見され始められていた翌869年にマグニチュード9という貞観地震が発生、火山灰が不作を生み地震が民心を震わせた。

 御香宮神社はこの頃、創建され、九州福岡は筑紫国香椎宮より勧請したとの記録もあり、御香宮の名と共にご利益あるこの地へ同じく香を冠する香椎宮からの勧請し、神社を拓いたともいえるでしょう。尚、御香宮由来である御香水は絶えることなくわき続けています。

 算額、御香宮神社を代表する奉納は世界中でも日本以外視明けない独特の奉納品です、算額と云います通り、実は数学の問題が絵馬に書かれ奉納されているもの、現存する最古のものは17世紀のものですが、消耗品の様に定期的に新しい算額と架け替えられ歴史は古い。

 あの榛名神社にも算額は奉納されていまして、二次関数や微分積分と余弦定理等内容はかなり高度なものとなり、云わば町人や農民の娯楽として算術が地位を担い、優れた算術回答者は身分に関係なく取り立てる統治構造が長く続いていたようです、全国民理系愛好家、と。

 算術の絵馬が奉納され、複製品が今なお境内に奉じられる御香宮神社ですが、難しい内容ながら解答はちゃんと示されています、無論、数学問題集のような額縁の裏に回答があるのではなく、なんと回答編は八坂神社に奉納されていて、歩きながら考えるのでしょう。

 1868年の鳥羽伏見の戦いではここが新政府軍の指揮所となり最前線となりましたが、戦火に見舞われず、戦災から逃れました。境内にはお上の菊御紋や室町豊臣の五七桐紋と徳川の葵御紋が記された本殿が、和解の象徴のように鎮座し、平成の御世を見守っています。

北大路機関:はるな くらま
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10.22総選挙:安倍総理大臣,日本海米朝対立と水爆脅威下で臨時国会冒頭衆議院解散方針

2017-09-26 22:44:09 | 国際・政治
■総選挙は米朝対立と水爆脅威下
 米朝対立は極めて危険な状況で推移しています。こうした中、我が国では衆院総選挙が行われることとなりました。

 安倍総理大臣は25日の会見で、今週28日に召集される臨時国会冒頭において衆議院を解散する方針を表明しました。これにより衆議院総選挙が来月の10月10日に公示され、22日に投票日を行う見通しとなりました。10月22日の衆議院総選挙は、同時に憲法で議院内閣制を執る我が国において内閣首班の総理大臣を指名するという、国政選挙でもあります。

 北朝鮮水爆実験の発表と米朝対立の深刻化、グアム方面へのミサイル発射恫喝、これに対する国連経済制裁、反発し太平洋上での大気圏内水爆実験強行の恫喝、アメリカ軍の日本海での演習強化、日々刻々と緊張は高まっており、この中で行う衆議院総選挙は、日本への水爆攻撃という危惧さえある中で、これを克服する政府を国民が選挙で選ぶわけですね。

 国民の信任なくして大改革や毅然とした外交を進めることはできない、として安倍総理大臣は経済制度改革や安全保障問題での盤石な体制を維持する事を期して衆議院を解散する方針と発言しました。これは同時に、首相知人が絡み、政府と私立学園との間で不透明な関係の有無が指摘される森友加計学園問題を念頭と置いたものとも言えるかもしれません。

 森友加計学園問題について、一方は学部新設への政治圧力の疑惑、もう一つは国有地売却時の交渉における不透明さが指摘され、これ以上関連資料は無いとする政府与党と、何か有る筈との野党の平行線が長期化しています。外交安全保障問題が朝鮮半島で緊迫化する中、森友加計学園問題について国民審判を仰ぐ、との意味合いも含まれているのでしょう。

 しかし、安倍総理は解散において、消費税増税の使い道に関する子育て支援や人づくり改革への転換を公約に掲げるとしました。若干不自然で、実際は、野党第1党の民進党が動揺している現状、今回の衆議院解散には民進党では離党者が相次ぎ、共産党などとの野党連携に向けた動きの停滞という状況も加味している可能性も、指摘できるかもしれません。

 北朝鮮水爆実験、衆議院総選挙では戦後最も日本本土が核攻撃の脅威にさらされている現状に際し、何か明確な手段を各政党には提示してほしい、安全保障問題防衛問題に留意し記事を作成する当方としては考えます。核抑止力整備、ミサイル防衛抜本強化、ミサイル防衛維持、核シェルター建設、疎開、手段は多々ありますがこれを政党毎に問うて欲しい。

 統合機動防衛力整備に伴う全国の基盤的防衛力整備の中抜きと新部隊増強に伴う人員増を欠いた事での定員割れの深刻化、ここまで任務が増大され続けた場合は現在の人員規模と予算規模では防衛力破たん回避は不可能ともいえます、防衛予算と人員の抜本増強か、アメリカとの同盟強化に基づく駐留強化か、災害派遣等の一部任務縮小か、これも論点です。

 安全保障関連法整備への反対は野党一致の論点ですが、北朝鮮水爆恫喝、南西諸島中国公船領海侵犯常態化、緊急発進回数1100回突破、北方脅威再興、在外邦人救出任務、現行法に反対ならば、新安全保障法制の草案を野党協議で対案として提示すべきですし、現状が憲法違反と主張するならば国民を護れるよう憲法改正をも論点とするべきとも考えます。

 実は防衛安全保障問題では、東西冷戦時代における1950年の朝鮮戦争勃発に並ぶ危機的状況にあり、盤石な政権維持を掲げる安倍総理の視点はもう少し安全保障問題を総選挙の主題に掲げても良いのではないかとも考えさせられます。この状況で敢えて国民に信を問うのですから、防衛安全保障問題においてもう少し闊達な議論と検証を与野党に期待したい。

北大路機関:はるな くらま
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F-35/AX-6初飛行!,三菱FACO最終組立二号機進空と年度末三沢臨時F-35飛行隊新編準備

2017-09-25 23:06:30 | 先端軍事テクノロジー
■F-35/AX-6本日1000時進空
 航空自衛隊の第五世代戦闘機部隊編制への新しい一歩がまた前へと進みました。

 F-35/AX-6,本日1000時、名古屋空港の三菱重工小牧FACOから初飛行を果たしました。F-35/AX-6は日本最終組立2号機にあたり、アメリカでの生産分を含め航空自衛隊は既にF-35戦闘機4機を受領し、更に24機を発注、現段階では42機の取得が内定しています。AX-1はアメリカ生産機で昨年11月より納入され、AX-4までがアメリカで生産、AX-5以降は小牧です。

 AX-5は小牧での試験飛行を終え、最終試験をアメリカのルーク基地にて実施する予定で、これは日本国内にF-35飛行要員が練成中である為に最終試験を実施する体制が未整備である故の措置ですが、AX-6は試験飛行後、アメリカで養成された要員を元に最終試験を実施し、そのままF-35最初の自衛隊飛行隊である実戦部隊の拠点、三沢基地へと移駐します。

 F-35についてはアメリカ海兵隊の垂直離着陸型F-35Bが岩国航空基地へ配備を開始しており、佐世保基地へ前方展開している強襲揚陸艦ボノムリシャールの後継にF-35B運用能力を有する強襲揚陸艦ワスプが配備され、アメリカ海軍は全通飛行甲板を有する40000t級強襲揚陸艦よりF-35B艦上運用が可能となり、ステルス機の抑止力は大きく向上しましょう。

 AX-6と共にアメリカ生産分を含め、今年度末までに6機のF-35A戦闘機を三沢基地へ展開させ、臨時F-35飛行隊が編成、航空自衛隊における第五世代戦闘機運用が漸く軌道に乗る事となるでしょう。F-35/AX-6初飛行には随伴機に岐阜基地飛行開発実験団よりF-15Jが支援に当りました。自衛隊ではF-15J初期生産後継機にもF-35A採用が有力視されている。

 X-2実験機、本日は名古屋空港よりF-35/AX-6が初飛行を果たしましたが、防衛装備庁が進める次世代戦闘機技術実証機であるX-2実験機もF-2戦闘機と共に飛行試験を実施、F-35/AX-6は岐阜基地をローパスした為、岐阜基地上空は最新鋭機二機種が航過し、大変な活況であったといえましょう。この写真は少々距離がありますが犬山市内で撮影しました。

 F-4EJ改戦闘機、原型機が初飛行したのは1959年という非常に古い戦闘機ですが航空自衛隊のF-35A戦闘機はこのF-4EJ改の後継機として採用されました。現在も第301飛行隊と第302飛行隊が茨城県百里基地に配備、首都防空の重責を担っています。この内来年度には百里基地第302飛行隊が三沢基地へ移駐、F-4EJ改からF-35Aへ機種転換するとのこと。

 F-4EJ改からF-35Aへ機種転換、一挙に二世代分を飛び越えて機種転換する事となり、航空自衛隊の制空戦闘能力は一挙に飛躍します。また、自衛隊統合ネットワークと連接する事で大量の空対空ミサイルを搭載可能なF-15J戦闘機とF-35A戦闘機が空中ネットワークにより連携する事で、数的劣勢であっても航空優勢を一方的に確保する事へも昇華し得る。

 第五世代戦闘機、F-35A戦闘機はステルス性能によりレーダーに極めて映りにくく、更に情報伝送や情報共有能力が高く、航空戦闘での圧倒的情報優位獲得を絶対的航空優勢確保へ繋げるという新世代の戦闘機で、特にF-35Aは空対空ミサイルや精密誘導爆弾等の兵装を機内に収容し、レーダーに捕捉される事無く長距離打撃戦闘を展開する事さえ可能です。

 X-2実験機はさらに将来の第六世代戦闘機として現在のF-2戦闘機後継となる将来戦闘機への構成要素を技術実証機として試験するべく製造された機体で、第六世代戦闘機実現への技術開発と技術体系化は簡単な道程ではありませんが、多種多様な構成要素を個々の小研究に分散させ着実に進めており、航空防衛世代交代への準備は目に見える形で進んでいます。

北大路機関:はるな くらま
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イージスアショア導入へ疑問(7):北朝鮮太平洋水爆実験示唆,日本は水爆へ如何に対応するか

2017-09-24 20:07:00 | 先端軍事テクノロジー
■THAADかイージスシステム
 イージスアショア導入へ疑問、来年度概算要求に事項要求として明示されたミサイル防衛への特集は今回の第7回が最終回です。

 北朝鮮が太平洋上での水爆実験を示唆しました。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は核実験とミサイル実験を契機とした国連による新たな経済制裁に激しく反発、史上最高の超強硬な対応措置断行を慎重に考慮する、と発言しています。この内容についてニューヨークの国連にて記者会見に応じた北朝鮮李容浩外相は太平洋上での水爆実験を示唆した訳です。

 水爆実験を太平洋上で行う、北朝鮮の弾道ミサイル技術と核弾頭搭載能力及び大気圏再突入技術、これらを実行し機能する核兵器と運搬手段という能力を誇示するには、一度は実験を行わなければなりません。実は2009年5月27日付記事として“北朝鮮核ミサイルの脅威 その存在はどのように証明されるか”という視点からこの問題を指摘していました。

 弾道ミサイルに核弾頭を搭載し太平洋上で核爆発を伴う実験を行わない限りその能力を誇示する事は不可能である、如何に小型化された核弾頭やミサイル部品を展示し誇示しようとも、実際に起爆させる能力を示さなければ机上の威力しか持たない、と指摘し、しかし太平洋上の核実験は北朝鮮本土への核攻撃を含む強烈な反撃を招きかねず不可能だ、と。

 太平洋上にて水爆実験が強行されたならば、確実に放射性降下物は日本に降下します、核爆発が大気圏内で発生したならば、線量の多寡はあれ日本に降下しない事は有り得ません。核爆発の加害半径は通常弾頭弾道弾とは比較にならず、仮に前回北朝鮮が地下実験を行った150kt規模の威力であれば10km以内に致命的熱線被害が発生し爆風も外縁に広がる。

 日本上空を水爆弾頭を搭載した弾道ミサイルが飛翔する事となります。半径1000km単位で電子機器に永久焼損被害が及ぶ高高度核爆発による核電磁パルス脅威を含め、次元が違い、日本世論は水爆攻撃を現実的脅威と受け止めたうえで、水爆脅威に対し国運を賭けて核抑止力整備を検討するか、水爆脅威を敢えて恐れずシェルターを建設するか、となる。

 ミサイル防衛の整備如何を問わず、日本が国家として目指すべきものは全ての核兵器の廃絶であり、その第一歩としての核拡散防止レジームの維持、この為に我が国は北朝鮮の核兵器保有を絶対に許す事は出来ず、国交樹立や経済制裁解除の為には北朝鮮核廃絶が絶対に必要となります。しかし、それ以前に北朝鮮の核兵器は様々な意味で、危険なのです。

 北朝鮮の核兵器が危険、と強調できるのは何処に飛ぶか分らない危険性です。北朝鮮のミサイル技術は一定以上の水準に極めて急速に向上している為、照準を定めれば射程圏内をかなり正確に攻撃できるでしょう、しかし、それだけで核兵器が兵器体系として完成しないのは前回示した通り核兵器早期警戒網を持たず、核兵器と運搬手段のみしか有しません。

 例えば、現状北朝鮮国内で核爆発が発生した場合、中国が忍耐の限度超え北朝鮮を攻撃する場合や、ロシアが沿海州のみならず首都モスクワへ及ぶ北朝鮮核戦力を看過できなくなった状況、北朝鮮自身による地下核実験の失敗、北朝鮮指導部はどこから攻撃されたかを把握できません。すると、仕方なくアメリカへ反撃と称し攻撃を行う可能性があるのです。

 それだけでなくとも、北朝鮮の防空レーダー網は機能していませんので、国籍不明機の警戒が疎かとなっています。北朝鮮がアメリカなどの情報収集機へ公海上で緊急発進を行う事が数年に一度、我が国でも報道されますが、日本では毎年1000回以上と文字通り日常的に実施される緊急発進が日本で報道されるほどに北朝鮮の防空体制は機能していません。

 ロシア軍が通常兵器であるカリブル巡航ミサイルによりロシアへ脅威となる施設を、中国が自慢のH-6爆撃機から運用する長剣07巡航ミサイルにより核関連施設を秘密裏に攻撃した場合でも、なにしろレーダーが機能しないのだから感知できず、アメリカによるトマホークミサイル攻撃と誤解し、アメリカ本土に対し報復と称して核攻撃を行いかねません。

 このように、貧乏国が核兵器を保有するには、せめて核爆発装置と運搬手段だけではなく、もう一段貧乏になったとしても宇宙空間の早期警戒網を保持しなければならないのですが、これを行わない北朝鮮は、どこになにを理由として撃つのかがわからないという意味で、脅威なのです。即ち、冷戦時代の早期警戒網整備以前に危惧された偶発的核戦争の危機だ。

 核兵器がなければ北朝鮮は国家の維持ができないとの指摘、核兵器を放棄したならばイラクのような運命が待っていることへの恐怖感、ロシアのプーチン大統領は安倍総理との日ロ首脳会談にて北朝鮮核放棄の難しさをこう表現しました。やはり日米は核武装放棄ののちの生存戦略を日本やアメリカは中国とロシア、韓国とともに提示しなければなりません。

 冷戦時代に北朝鮮が何故核兵器を保有せず国家を維持できたのかが、一つの視点です。北朝鮮生存戦略ですが、ロシア軍か中国軍の進駐、在韓米軍に対応する形での同盟関係のみが選択肢になるのではないかと考えます。冷戦時代にはソ連の軍事援助と軍事顧問が多数北朝鮮との関係を維持していましたが、冷戦崩壊とソ連崩壊がこの関係を破綻させました。

 冷戦時代に北朝鮮が核兵器を保有せずとも、ソ連の核抑止力を信頼することで事実上、北朝鮮の体制は維持できたわけです。もちろん、ロシア軍や中国軍が北朝鮮国内へ核戦力を配備する必要はありません。駐留し、核の傘に守るという意思表示が、この代替案となるでしょう。これは同時に北朝鮮が独自に韓国へ軍事侵攻を行う事への牽制ともなります。

 アメリカは朝鮮半島より手を引くべき、北朝鮮の論調は最近このように変化しています。これは、アメリカによる北朝鮮への体制への不安が、アメリカが一方的に北朝鮮を攻撃することへの恐怖ではなく、この表現は米韓軍事同盟そのものに向けられ、在韓米軍撤退要求にも受け取れ、北朝鮮の体制存続へアメリカの脅威という定義が不明確となっています。

 北朝鮮が韓国を武力併合する際にアメリカが北朝鮮の体制を崩壊させるまで反撃を加えることを拒否する、と主張しているようにも受け止められます。北朝鮮は国家事業として核開発を進めていますが、それ以前に最大の国是は朝鮮半島南北統一です。韓国を見捨てろとの勧告、これはとてもアメリカが、もちろん日本にとっても受け入れられないでしょう。

 ミサイル防衛、北朝鮮からの弾道ミサイルによる日本本土核攻撃の脅威は、この通り条件を見る限り、非常に長く続きます。今回まで、イージスアショア導入を事項要求とした来年度概算要求に対し、THAADの方が有用で且つ迅速に導入できるのではないか、ミサイルの飛翔中間段階を迎撃するイージスシステムを用いるならばイージス艦を量産すべきではないかとしました。しかし、選択肢は多々あれ、ミサイル防衛を強化するという視点ではどちらでも、迅速に行う事が求められます。

北大路機関:はるな くらま
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【くらま】日本DDH物語 《第二五回》HSS-2対潜ヘリコプターと世界のヘリコプター巡洋艦

2017-09-23 20:00:08 | 先端軍事テクノロジー
■護衛艦はるな建造前夜
 ヘリコプターは戦後の世界海軍航空体系へ大きな変革をもたらしました。対潜戦闘に重点を置きシーレーン維持を最重要視する海上自衛隊は草創期からその有用性を認識しています。

 HSS-2対潜ヘリコプターは大型タービンヘリコプターであり、高度な対潜機材を搭載すると共に実に1000kmもの長大な航続距離を有しています。しかしソナーを吊下してのホバーリングは大量の燃料を消費するため、1000kmの航続距離を有していても、広い洋上での対潜哨戒を行うには陸上の航空基地からの運用は常に燃料残量を考慮せねばなりません。

 ヘリコプターを艦上運用する、という戦術研究は当然高まってゆきます。HSS-2は対潜ヘリコプターとしてはかなり大型の機種で、その分、一機で索敵から標定を経て攻撃まで自己完結された対潜システムを担える分、艦上運用にはかなり難易度が高くなります。大型の艦艇と飛行甲板が必要で実際、アメリカ海軍では対潜空母等に搭載し運用していました。

 1960年代を迎え、海上自衛隊において幾度かの航空母艦建造に関する研究が進められる最中、世界の海軍趨勢に目を転じますとオーストラリア海軍やオランダ海軍等、今日は航空母艦を運用していない諸国が航空母艦を運用しており、その世代交代の時期を迎えつつあったことで、従来型代替の航空母艦新世代の到来が展望されている時代でもありました。

 オーストラリア海軍は空母メルボルンを運用、これはイギリス海軍が第二次世界大戦中に建造し、戦後工事を中断していた空母マジェスティクを1955年に取得したもので、シーヴェノム戦闘機8機とガネット対潜哨戒委17機にシカモア多用途ヘリコプター2機を艦載機として運用しました。基本的に大戦艦の古い設計ですが1963年に近代化改修を受けます。

 空母メルボルンの1963年近代化改修は電子装置の近代化改修に重点が置かれ、フィリップスLWO対空レーダーが追加搭載され、戦闘指揮所CICの電子計算能力も大幅に自動化、更にアメリカより4600万ドルを投じ、A-4スカイホーク攻撃機10機とS-2Eトラッカー対潜哨戒機14機を調達、イギリスよりウェセックスヘリを導入し、艦載機を一挙に更新する。

 海軍総旗艦としてオーストラリア海軍の最重要艦艇となった空母メルボルンですが、特筆すべきはA-4攻撃機とS-2哨戒機は空母艦載機用として特別区分を敢えて調達したもので、整備補給系統と教育訓練体系の複雑化以上に航空母艦の維持が優先された訳です。空母メルボルンは日本に寄港しており、神戸港へもヴェトナム戦争中に幾度か入港しています。

 ヘリコプター巡洋艦という艦種は、戦時中の航空巡洋艦の延長線上にある区分として早くから認識されており、イギリスではタイガー級ヘリコプター巡洋艦として第二次大戦中の巡洋艦の後部艦砲を撤去、ヘリコプター格納庫と飛行甲板を追加する事で4機の運用を可能とする改修を実施されており、巡洋艦タイガー、巡洋艦ブレークがこれにあたります。

 ペルー海軍も中古のイギリス巡洋艦をオランダより取得しヘリコプター巡洋艦アギーレへ改修しました。日本海軍の航空巡洋艦では軽巡洋艦利根型や軽巡洋艦大淀型がこれに当り、また、戦時改修後の最上型重巡洋艦等も、仮に日本が太平洋戦争を早期講和を以て壊滅を回避する選択肢が採られたのならば同様の近代化改修などが行われていたかもしれません。

 しかし、新造時からの純粋なヘリコプター巡洋艦はイタリア海軍のアンドレアドリア級ヘリコプター巡洋艦2隻が鏑矢となりました。大戦艦の改修型は艦砲を主体とした基本設計の延長線上にヘリコプターを搭載したもので、やはり付け焼刃的な発想は否めません。新造ヘリコプター巡洋艦の第一陣イタリアに続き、フランスがジャンヌダルクを建造します。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十九年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2017.09.23/09.24)

2017-09-22 20:12:28 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 太平洋上での水爆実験強行を狂った指導者に率いられた北朝鮮が示唆した最中ではありますが皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末行事の紹介です。

 東北方面隊創設57周年記念仙台駐屯地祭、東北地方の防衛警備及び災害派遣に当たる東北方面隊創設記念行事です。冷戦期には青函地区という戦略上要衝を管区に持つため重装備を維持してきました。方面隊隷下の第6師団や第9師団始め方面隊直轄部隊が一堂に会する行事で、74式戦車からMLRS多連装ロケットシステムまで一通りの装備が参加します。

 仙台駐屯地にて開催されます、霞目駐屯地では実施されませんのでご注意下さい。東北方面隊創設50周年記念までは霞目駐屯地飛行場地区の広大な会場にて実施されていましたが、半年後の東日本大震災を受け、慰霊祭としての役割も担うようになり統合任務部隊司令部の置かれた仙台駐屯地で実施、近年は訓練展示が復活しましたが、仙台駐屯地のままです。

 久留米駐屯地創設65周年記念行事、第4師団隷下の第4特科連隊と第4高射特科大隊及び西部方面混成団隷下の第118教育大隊が駐屯しています。第4特科連隊は第4師団の火力戦闘部隊ですが、来る2018年3月の西部方面特科連隊創設に併せ第4特科連隊は第8特科連隊と共に廃止改編が予定されており、本年の久留米駐屯地祭が最後の参加となります。

 FH-70榴弾砲80門を最盛期は装備していましたが、現在は3個大隊30門の特科連隊となり、西部方面特科連隊創設後は各師団と水陸機動団へ担当特科大隊を派遣する方式となります。一方、現在は佐世保の相浦駐屯地にある西部方面混成団が相浦駐屯地の水陸機動団本部創設と共に久留米移駐が予定されており、来年度は大きく様変わりしているでしょう。

 飯塚駐屯地創設51周年記念行事、第2高射特科団本部及び第3高射特科群が駐屯しており、加えて隷下に竹松駐屯地の第7高射特科群が置かれています。ホークⅢ型地対空誘導弾を装備し、陸上自衛隊の戦域防空任務に当たる部隊です。加えて小郡駐屯地第5施設群隷下の第2施設群も駐屯しており、ミサイルと工兵部隊の駐屯地で筑豊本線新飯塚駅の近く。

 八戸航空基地祭、海上自衛隊の八戸航空基地開庁記念行事です。第2航空群の第2航空隊第21飛行隊と第22飛行隊がP-3C哨戒機を運用し北日本及び北太平洋の哨戒任務に当たる他、機動施設隊が展開しています。P-3C哨戒機は近年最新鋭P-1哨戒機の配備開始と共に運用されていますが、哨戒能力と対潜能力で今なお世界最高峰の能力を持つ哨戒機です。

 第2航空群第2航空隊と共に2008年までは第4航空隊が隷下に置かれていましたが、部隊改編により第2航空隊に2個飛行隊を集約する方式により代替されています。近傍の八戸駐屯地には那覇駐屯地へ移駐予定といわれる第4地対艦ミサイル連隊や廃止予定の第5高射特科群が駐屯しており、装備品展示に並ぶであろうこれら装備も必見といえるでしょう。

 山田分屯基地創設60周年記念行事、岩手県下閉伊郡山田町にある第37警戒隊のレーダーサイトです。航空自衛隊では最古参のJ/FPS-2レーダーを運用しており、太平洋側からの脅威に備えています。JR山田線沿線豊間根駅が最寄りなのですが、山田線は宮古駅と釜石駅の間で東日本大震災被災による運休が今なお続いており、鉄道での移動は現在困難です。

 さて撮影の話題。総火演の広報動画にある通り、統合機動防衛力整備として重装備は全部北海道に集約し、有事の際には九州まで3000km、本州まで1500kmを踏破して増援に駆けつけるとのこと。自衛隊創設以来最大の改編と云われますが、これにより来年再来年は大きく変容します。こうした意味でも秋の自衛隊行事季節には何処其処へ行こうか、と文字通り迷う次第です。

 自衛隊関連行事も来年や再来年で大きく変容する事となりますので、今年でなければ見る事が出来ない装備が多くなります。ミサイル防衛に予算をとられて肝心の駆けつける為の装備の高速輸送船が調達できないまま、本土師団と旅団の名ばかり師団化は着々進みます。現在は師団の規模は小さくとも戦車大隊と特科連隊に高射特科部隊で一通りは揃っている。

 今の防衛大綱にある通り、本土師団特科の全廃、その次に戦車大隊の廃止という流れで進展しています。特に中部方面隊の特科隊と特科連隊は来年度廃止予定なので最後の駐屯地祭ですね。毎週遠方の自衛隊行事へ週末の旅に旅行するのは体力的にも予算的にも厳しいものがありますが、現在見なければ見れなくなるとなれば、やはり迷うほかはありません。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・9月24日:八戸航空基地祭2017…http://www.mod.go.jp/msdf/hatinohe/
・9月24日:山田分屯基地創設60周年記念行事…http://www.mod.go.jp/asdf/nacw/gp_sq/p37/p37.html
・9月24日:東北方面隊創設57周年記念仙台駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/neahq/
・9月23日:久留米駐屯地創設65周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/4d/kurume/main/
・9月24日:飯塚駐屯地創設51周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/iizuka/IIZUKAHP/index.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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イージスアショア導入へ疑問(6):日本核武装否定,核兵器体系費用とロシア核戦力との対峙

2017-09-21 20:03:30 | 先端軍事テクノロジー
■死活的に必要なミサイル防衛
 THAADのOJT方式による調達が短期で実現し、ミサイル終末段階の迎撃能力が高い、という点から優先度が高い、とこれまでにイージスアショア導入へ疑問を説明してきました。

 ミサイル防衛について、イージスアショアかTHAAD,どちらかは結局必要になると考えています。そして日本核武装という選択肢、北朝鮮核恫喝に対して核武装により対処するという選択肢はありません。その理由は単純な反核感情ではなく、核兵器システムの費用です。核兵器システムは膨大な早期警戒網と管制システムで初めて意味を持つものとなる。

 ミサイル防衛は、恫喝に対し盾を用意する事で理性を維持させる事に繋がります。そして遠い将来には、中国からの核戦力による恫喝に対しても日本が核武装に走ることなく対応する事に繋がるでしょう。核開発以前には策源地攻撃という選択肢、F-2戦闘機でミサイル基地を叩く選択肢がありましたが、現時点では一発撃ち漏らした際の被害が大きすぎます。

 核武装論はそれではなぜ対案になりえないのかについて。即ち、仮に日本が戦術核兵器を保有したとしても、宇宙空間から全地球規模でのミサイル警戒を行う早期警戒衛星群を維持し、仮に日本国土で核爆発が発生した場合に、どの国がミサイルサイロや潜水艦から核攻撃を行ったのか明確に把握し、反撃しなければなりません。一例として日本の核に早期警戒衛星群が無ければ何処から撃たれたか判然としません。

 北朝鮮ばかり注視していて仮の話ですが、ロシアが予防的自衛権行使を行い、日本が早期警戒システムを有しない場合、どうなるか。間違って北朝鮮へ核攻撃を行うことがあってはならないのです。核早期警戒網は潜水艦発射弾道弾を運用するロシアや中国の戦略ミサイル原潜へ人工衛星と攻撃型原潜による追尾体制構築も当然必要となり、更に話は大きく。

 運搬手段としてもミサイルも長射程化が必須です。核早期警戒網の整備を核戦力整備と同時に日本が仮にたどり着いたとして、日本はロシアの核戦力と対峙することとなる訳ですので、ロシアへの核抑止能力が不可欠となります、それは北朝鮮の核攻撃は許せないがロシアの核攻撃で国土が蒸発することは許す、という論理構造はあってはならないためです。

 しかし、ロシア軍はバレンツ海の戦略ミサイル原潜基地を含めウラル山脈以西に多数の戦略核兵器を有しており、これに日本が対抗するならば、ひゅうが型護衛艦と同じ大きさの潜水艦、オハイオ級戦略ミサイル原潜が最低でも5隻程度、その原潜を防衛するための攻撃型原潜も同数以上必要となるでしょう。核兵器は核爆発装置開発は始まりに過ぎません。

 宇宙空間からの警戒監視網と多数の大陸間弾道弾規模のミサイルシステム、全地球規模の警戒情報伝送システムの維持管理、これを最初の核攻撃から生存させる潜水艦か広大な地下ミサイルサイロ群、核弾頭の一ヶ月単位で必要とされる信頼性維持と即応性維持を両立する維持管理、システム保安体制、これだけで最低毎年自衛隊一個分の維持費が必要です。冷戦時代から、アメリカとロシアは必至になってこの能力整備に多大な税金を投じ長期的に能力を構築してきました、一朝一夕にできるものではありません。

 もちろん、日本国民の総意があるならば、予想される経済制裁に耐え、飢えと貧困に耐え、その上で核戦力維持へ毎年数兆円を投じる覚悟が国民全体で共有できるならば、選択肢として省くことはありません。しかし、そこまで考えず、核兵器という核爆発装置さえあれば、あとは核爆弾をF-35戦闘機やF-2戦闘機に搭載すれば解決、と安易に考えられていないでしょうか。

 核兵器システムの維持費と国際的孤立、安易に核開発に着手したならば、例えばイギリスEUブレクジットのように、考えていた以上に国民生活へ影響が大きかった、という事になりかねません。しかし、核恫喝は恐怖、広島と長崎を核攻撃された日本には国民世論として理性を維持できなくなる懸念もある。この際に理性を繋ぐ事がミサイル防衛の役割です。

北大路機関:はるな くらま
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