北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

韓国朴槿恵大統領辞意表明!混迷度増す韓国政局問題と日韓関係等北東アジア情勢へ影響必至

2016-11-30 20:52:42 | 国際・政治
■北東アジア地域への不安定要素
 わが国の隣国、韓国の朴槿恵大統領が辞意を表明しました、韓国民主化後初の大統領辞職、特別検察官任命や新大統領選出等、混乱は必至で、北東アジア地域における新しい不安定要素の現出と顕在化です。

 朴槿恵大統領辞意表明、昨日韓国の朴槿恵大統領が突如辞意を表明しました。これは知人で実業家の占い師の崔順実氏へ外交機密漏えいの疑いがあると共に、側近の秘書官と共謀し崔順実氏の財団に対し大統領府が韓国国内の財団に対し多額の出資を要求する等、不透明で違法な関係の疑いが指摘、韓国国内で辞職を求める声が大きく支持を完全に辞職しました。

 日本政府は朴槿恵大統領との間で様々な日韓関係良好化の努力を重ねてきましたが、主任当時に日韓関係の良好化を掲げつつ早々に日本に敵対的な政策を展開し、この中で漸く信頼関係構築を進められたものの、朴槿恵大統領は韓国民主化以降初めて任期満了を前に辞任する事となり、また、民主化以降初めて一度も日本を訪問せず辞職することとなります。

 日韓は過去に不幸な歴史がありましたが、日韓併合は百年以上前、現在は重要な隣国です。朴槿恵大統領辞意表明では当面問題となりうる問題に、日中韓首脳会談、日韓包括軍事情報協定GSOMIA、物品役務相互提供協定ACSA、在韓米軍THAAD配備問題、従軍慰安婦政府間最終合意、というものがどのように展開するのかが重要な問題となるでしょう。

 日中韓首脳会談は、今年度に日本で開催される予定となっていましたが、朴槿恵大統領の外交機密漏えいの時期から韓国政府は火消しに忙殺され、結果的にどの時期に日中韓首脳会談を開催するのかについての明確な日程調整が出来ず今に足ります。日中の二か国間は現在、南西諸島問題で摩擦があり、信頼醸成へ重要な機会を失った事は非常に憂慮します。

 日韓包括軍事情報協定GSOMIA、先日締結したばかりの日本と韓国の防衛情報協力体制ですが、韓国国内では日韓友好反対の勢力が根強く、朴槿恵大統領の主導により進めたこのGSOMIAについても撤回すべきとの主張が、野党等からも示されています。仮に次期政権が反故とする状況に進めば、北朝鮮核開発に対する日米韓の協調へも影響するでしょう。

 物品役務相互提供協定ACSA、日韓の防衛協力は例えばACSAのようなより深化した協力体制へ進む、その第一歩となり得るのがGSOMIAです。ACSAは先日日豪での締結への合意が為され、我が国ではインド政府やフランス政府とのACSA締結も模索しています。隣国との関係強化を忌避する必要は無く、こうした意味でACSA等への経路途絶は避けたい。

 在韓米軍THAAD配備問題、中国からの軍事圧力と政治圧力により先送りとしていたアメリカの新型弾道ミサイル迎撃ミサイルについて、朴槿恵大統領が漸く今年に入り受け入れを決定し、具体的な受け入れ基地と配備計画が進められていますが、こちらも不透明となりました、THAADのレーダー情報は自衛隊も共有し、この有無は迎撃精度に関わります。

 従軍慰安婦政府間最終合意、日韓関係を阻害する韓国世論の大きな要素は、1965年の日韓基本条約を韓国政府が国民に開示しなかった為、賠償請求権を全て1965年の条約での支払いを完了している事に反発し、安倍総理と朴槿恵大統領との間で漸く、基金創設等、日韓基本条約の補完で合意されたばかりですが不充分との声もあり、反故にされかねません。

 朴槿恵大統領の辞意表明は辞任時期を不明確とした為、韓国国会での弾劾裁判の時間稼ぎではないかとの指摘や、大統領事件に当たる特別検察官国会任命の遅滞を期した行動ではないかとの批判もあり、韓国国内の混迷はさらに続きそうです。他方この混乱は北朝鮮に利するもの、日本に隣接する朝鮮半島全体の安定へも懸念が及ぶ事となるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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新潟県・青森県でH5型高病原性鳥インフルエンザの国内家禽類感染確認、自衛隊災害派遣

2016-11-29 23:18:04 | 防災・災害派遣
■政府関係省庁自治体全力対処
 非常事態です、海外ではカストロ前国家評議会議長死去に朴槿恵大統領辞意表明と大きな出来事がありましたが、我が国ではH5型高病原性鳥インフルエンザの発生です。

 高病原性鳥インフルエンザの日本国内での発生です、放置すれば変化し新型インフルエンザとして大規模流行のリスクが高まると共に、際限なく家禽類への感染を繰り返し、我が国家禽産業への致命的な打撃を与える危惧がある為、政府主導による全力対処が実施されています。発生地は新潟県と青森県、新潟県での対処へは陸上自衛隊が派遣されています。

 家禽産業へ、昨日新潟と青森県で鶏や家鴨等が相次いで死に、県などが検査したところ高病原性鳥インフルエンザが検出されました。しかし、今月半ばから国内の野鳥に高病原性鳥インフルエンザ感染が確認されており、検査の結果、現在韓国国内で流行している高病原性鳥インフルエンザと同型のものであり、渡り鳥に感染し侵入の可能性が高いとのこと。

 新潟県では本日0437時、新潟県知事より陸上自衛隊第12旅団に対し災害派遣要請があり、新潟県岩船郡関川村の農場での高病原性鳥インフルエンザ発生に対し、迅速な殺処分の支援要請が出されました。これを受け、第12旅団司令部と新発田駐屯地の第30普通科連隊が災害派遣で出動、現在人員340名と車両35両、更に連絡要員14名と車両6両が派遣されました。

 青森県での高病原性鳥インフルエンザ感染確認はH5型高病原性鳥インフルエンザの感染が昨日28日に簡易検査で発見され感染が疑われる家鴨1万6500羽の処分が決定するとともに、感染が確認された農場から半径10km以内の養鶏場に対し、家禽類の移動を禁止する非常措置を採り、併せて周辺地域での消毒所を設置、感染拡大の阻止に尽力しています。

 事態の発生、新潟県では28日に入り鶏が死んでいるとの通報があり、簡易検査により28日、H5型高病原性鳥インフルエンザが確認されました、死亡した鶏全てからH5型高病原性鳥インフルエンザが確認され、これを受け新潟県はこの養鶏場で飼育されている鶏31万羽全ての処分を決定、処分する鶏の数が非常に多く、陸上自衛隊に対して災害派遣要請を出したかたち。

 政府は、自治体及び関係省庁と緊密に連携し情報収集に努めるとともに即応態勢を確保し、準備に万全を期すとともに、今後の状況の推移に応じ、適切に対応せよ、との命令を出します。新潟県も半径10km以内の59カ所の養鶏場などを対象に鶏や卵の移動や出荷を禁止する措置を採ると共に、国道7号線や国道113号線沿いに複数の消毒施設を設置しました。

 自衛隊の高病原性鳥インフルエンザ対処の派遣部隊は人員規模で南スーダンPKO部隊と同規模の派遣が実施されています。特に留意すべきは、今回発生した高病原性鳥インフルエンザは渡り鳥により感染が拡大している点で、シベリアからの経路と朝鮮半島からの経路があります、この為現在発生しているのは新潟県と青森県のみですが拡大の可能性もある。

 肝要の人間への感染ですが、現在のところ出荷された鶏肉等からの経口感染や接触感染は世界では確認されていません、ただ、家禽類から人に感染する事例は報告されており、更にこれが人と人との間で感染するよう変化した場合世界的な流行禍へ繋がる懸念があり、他の地域への感染拡大を警戒すると共に現在確認されている状況の鎮静化へ官民一体となった協力体制が敷かれています。

北大路機関:はるな くらま
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榛名防衛備忘録:日本独自の国際貢献,多用途機U-4の医官衛生班国際緊急人道支援任務派遣案

2016-11-28 23:38:17 | 国際・政治
■国際FAST-Force案
 日本の国際貢献において、国連PKOが2002年以降、国連憲章七章措置として軍事任務の要素が大きくなったいま、日本は国連とは異なる防衛力の国際貢献任務の模索を行うべきではないでしょうか。

 この視点から航空自衛隊はU-4多用途機を4機装備し、指揮官連絡任務や軽輸送に運用しています、この活用の施策を考えたい。日本は東日本大震災を始め巨大災害に幾度も襲われ、今後は南海トラフ連動地震という巨大災害の脅威にさらされています。最大想定犠牲者は32万という文字通り空前の被害であり、これは広島原爆投下による被害と東京大空襲の犠牲者を合わせた規模となります。

 U-4でなくとも必要な能力を有する機種を待機させるという方法でも可能ですが、当然、この規模の災害へ余裕を以て対応できる医療や防災の能力は日本には不充分な規模となり、このまさに有事というべき事態には、海外からの支援に頼るほかありません。すると、同時に平時から我が国は積極的に海外の災害現場へ人道支援部隊を即応派遣し、相互互助の国際基盤を構築すべきでしょう。

 航空自衛隊はU-4多用途機を装備しています、このU-4ですが、海外への緊急人道支援任務として医官衛生班緊急人道支援任務派遣に運用する事は出来ないでしょうか。U-4はガルフストリームⅣビジネスジェットで19名の人員を輸送可能ですが、特筆すべきは航続距離は7820kmと非常に大きい点で、例えばアフリカ方面への飛行であっても一回の給油地を経由する事で飛行可能、人員輸送任務での航続距離はC-130H輸送機は勿論、最新鋭のC-2輸送機よりも大きくなっています。

 この装備を海外での災害へ、FAST-Forceの国際版として派遣する事は出来ないか、というものです。具体的には、常時医療部隊を数名規模でU-4が配備される入間基地へローテーション配置しておき、邦人の安否確認を必要とする規模の災害が発生すれば、即座に派遣する、災害版のスクランブル発進のような体制を採る、ということです。言い換えれば、海外での大災害の現場に被災地域の当事国に続き、自衛隊機が現地へ展開する、という体制を目指すもので、C-130よりも規模は小さいが少ない人員だけに即座に対応できる。

 自衛隊の海外派遣任務と云いますと主流は部隊規模での人道支援任務等ですが、実際のところ、医官1名と看護官数名に通訳の隊員と外務省職員、必要ならば警護と連絡に連絡幹部と特殊作戦群要員等を増加配備し数名から十数名で対応できる分野も少なからずあり、医療品は大規模な外科手術を独自に行う能力となりますと、C-130輸送機等で空輸する機動衛生ユニット等重装備が必要となりますが、携行医療装備で対処出来る医療も意外と広い。

 小規模な緊急人道任務派遣は、医官の外科医療や内科診療等での経験を積むことに大きく寄与しますし、大規模災害などの人道危機に際しては数名の医官と看護官の派遣であっても大きなポテンシャルを発揮できるでしょう。その上で、U-4であれば地球の裏側であっても十数時間で展開可能ですし、大型機ほど地上支援設備を必要としません、併せて近傍の厚木航空基地などに人員輸送も可能であるP-3C哨戒機やP-1哨戒機にも同様の体制を採らせ、ローテーション待機する事も可能でしょう。

 医官は、ローテーションで対応するものですが、医官であれば航空自衛隊にこだわる必要は無く、統合任務として陸海空の持ち回りで対応出来ます。これは医官の規模には必ずしも余裕がある訳ではない為、常時待機する、という負担は長期的に待機するならば無視できないものとなるでしょう、このため、ローテーション待機するという方式が理想的で、併せてこれら部隊は勿論、国内での災害へも隊区部隊の支援へ展開可能です。

 沿岸部の災害へは、岩国航空基地のUS-1やUS-2飛行艇を直接被災地域の沿岸部、港湾へ展開させ人道支援に充てるという事も、地理的に可能であれば検討すべきでしょう。また、人道危機に際して即座に派遣する体制の構築は対日感情や邦人保護等好影響も多いと考えます、打算的と非難されるかもしれませんが、対応できる装備があり、その能力があるならば、長期的に日本の国益にかなうもので、あとは費用の面で主権者が選んだ政府が判断すべきところです。

北大路機関:はるな くらま
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検証:イラク派遣と駆け付け警護【後篇】課題示す5.10サマーワ橋上オランダ軍襲撃事件発生

2016-11-27 20:44:47 | 国際・政治
■警護要請の可能性はあった
 自衛隊のイラク復興人道任務は部隊の努力により戦死者を出すことなく、この意味では予定派遣期間を満了し成功裏に撤収しました。しかし、これは努力の結果で、安定した治安状況であったとはとても言えません。

 イラク邦人人質事件、平和団体関係者3名が不用意に競合地域へ足を踏み入れ武装勢力に拘束、武装勢力が自衛隊の撤退を要求する事件が発生し、自衛隊はイラク国内の報道関係者を中心に当時の邦人保護法にあたる自衛隊法100条を適用し、クウェートへ96式装輪装甲車で護送する決定を下します、初の邦人保護任務及び在外邦人輸送任務を実施したところで一転しました。

 その後、自衛隊は警戒態勢を強化、しかし、戦闘防弾チョッキ2型を着用し、機銃を搭載した軽装甲機動車の支援下、自衛隊は給水任務や文化交流事業など復興人道支援任務を継続しました、イラク国民は日本への親近感が大きく、また、純粋な復興人道支援という好意を邪推なく受け入れたという心の対話の成果が、成し遂げた、というべきなのでしょう。

 5月10日現地時間2245時、事態は急変しました、オランダ軍がサマーワ市内にて襲撃されたのです。襲撃を受けたのはユーフラテス川橋上、メルセデスクロスカントリーヴィーグル、優秀な四輪駆動車ですが装甲はありません、遭遇戦に備え機銃を配置可能とするべく開け放たれた車体上部へ、忍び寄ったバイクから手榴弾が投擲され車内に落下、2発が爆発、戦死者が、でた。

 オランダ軍は即座にM-16小銃で反撃、宿営地から装甲車を派遣し12.7mm重機関銃による反撃を実施しました、手榴弾を投擲した武装勢力はバイクで逃走した為、重機関銃は威嚇発砲であったのでしょうが、翌日まで市街地は封鎖、イラク国内で唯一安定していたというサマーワは、日本政府の判断はさておき、オランダ軍の主観では戦闘地域となります。

 駆け付け警護任務、自衛隊はこの際に発動はしていません、戦闘とは言っても手榴弾2発が投擲され、その後の持続的な戦闘が展開された訳ではありませんでした、この際に攻撃を実施したテロリストは80km離れたナジャフからのサドル派民兵であったのか、単なる暴漢が手榴弾を投擲したのか、逃走し捕縛できなかった為、現時点でも判明していません。

 しかし、持続的な戦闘となった場合、オランダ軍は装甲車両としてフィンランド製XA-180装輪装甲車等を派遣していたようですが、数は不充分、現在でこそオランダ軍はこの種の任務に必要な、自衛隊も採用した、オーストラリア製ブッシュマスター耐爆車両等を、その後のアフガニスタン派遣任務用とも併せ配備しましたが、当時は装甲車が不足していた。

 サマーワ派遣の時点ではオランダ軍の軽装甲車は不足、対して自衛隊は50両もの軽装甲機動車や96式装輪装甲車を派遣していた訳ですから、緊急支援の要請、駆け付け警護ではなく、負傷者収容や戦闘に関係しない警戒支援任務、場合によっては、駆け付け警護を、要請していた可能性はありました、実際は起きなかった、といわれればそれまでですが、ね。

 自衛隊の警護任務に当たるオランダ軍が市内において戦闘に巻き尾まれ、この攻撃が手榴弾2発の投擲という小規模なものでは収まらなかった場合、オランダ軍が実施できる手段は限られています。勿論、近隣のイギリス軍へ支援を要請する事は出来たでしょうが、イギリス軍は同時期ナジャフに加えナシリヤ市内でも民兵が攻勢に転じ、余裕はありません。

 オランダ軍の任務が自衛隊の警護であった事から自明の通りオランダ軍管区に程近い場所に陸上自衛隊は駐屯していた訳ですので自然な流れとして要請が出ていたことは考えられます。当然第一線指揮官である派遣隊長は東京へ可否を確認するでしょうが、時間的な余裕からは確認を出しつつ事後承諾を想定した上で部隊を派遣する他なかったのではないか。

 自衛隊が駆けつけ警護の決断を第一線指揮官の判断、切迫し東京へ問い合わせられない状況は、サマーワにおいて、オランダ軍襲撃事件や、クウェートからのイラク展開時等で考えられた訳です、要請を受ければ拒否する事は簡単ですが、拒否した後に相手国と関係が良好化する事は考えられません、要請受けられぬ事を予め周知させる事も現実的ではない。

 このイラクでの事例ですが、指揮官が政治的判断を突き付けられる事は、イラクでの事例のほか、ルワンダPKOでのゴマ暴動の際、NGO組織AMDAの邦人医師団が難民に襲撃される事件が発生、当時ルワンダへは自衛隊PKO部隊を派遣中であった為、派遣部隊指揮官が超法規措置として部隊を派遣、戦闘前に解放されるも問題視される事案がありました。

 万一の際には責任を持つ、という発言で部隊を守る事は簡単ですが、現場に押し付けていることになります。軍事機構である以上は政治が責任を持つ以上、これを書面で残る命令の形としなければ、文民統制の責務を放棄していることとなります、そして法治国家である以上は超法規措置以外選択肢がない状態を放置する事は妥当ではありません、法整備は政治の派遣命令を出す以上の責任の一つ。

 自衛隊が組織として派遣される以上、受入国は日本国憲法や自衛隊法を熟知せぬ限り、軍事機構として受入れます、軍事機構には専管事項があり、救援要請や難民保護等を当然受け入れられるものとして提出する、実情は忘れてはなりません。自衛隊の能力では駆けつけ警護は可能かとの視点も必要ですが、法整備はこれに応える第一歩といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持【03】護衛艦たかつき型能力向上とミサイル戦時代の到来

2016-11-26 20:50:57 | 先端軍事テクノロジー
■将来戦対応がFRAMの主眼
 しらね型護衛艦、はるな型護衛艦、建造当時の想定以上の長期運用へFRAMか延命改修を受け運用継続した護衛艦は多々ありますが、海上自衛隊におけるFRAMの始まりをみてみましょう。

 たかつき型護衛艦、一番艦たかつき、は1967年に就役した護衛艦で、ヘリコプター搭載護衛艦ひえい、等を建造しました石川島播磨重工業東京第2工場にて建造されました、社名は代わりましたが、ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、いせ、いずも、かが、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦建造を一手に担います、世界的に見ても経験豊富な造船所です。

 海上自衛隊最大の任務は有事におけるシーレーン防衛で、対潜戦闘を創隊以来最重要視してきましたが、たかつき型護衛艦はその象徴というもので、対潜兵装は、無人ヘリコプターDASHを搭載しソナーがとらえた遠距離の潜水艦への短魚雷投射能力を持ち、更にアスロック対潜ロケットを装備し水平線近くまでの敵潜水艦攻撃能力も付与という三段構え。

 満載排水量4300t、たかつき型護衛艦は探知能力も高く、AN/SQS-23ソナーは当時最新のアメリカ製低周波ソナーで捜索と解析や攻撃へマルチモードソナー機能を保持するものといい、ジェーン年鑑によれば最大37km以遠の潜水艦を探知する能力を持ち、加えて海水変温層の下に隠れる潜水艦へは、曳航式のAN/SQS-35可変深度ソナーを装備していました。

 しかし、護衛艦の障害は長く、第二次防衛力整備計画の時代には艦対艦ミサイルが護衛艦の標準的な対水上装備となる見通しは無く、当時搭載されていました5インチ単装砲の長大な射程で充分と考えられていた訳です、実際、初期の対艦ミサイル、イスラエル製ガブリエル対艦ミサイル等は哨戒艇へ5インチ砲の火力を装備させるための代替手段でした。

 これがミサイル時代という変革を受け、護衛艦のシーレーン防衛実施海域へもその脅威が及ぶようになり、護衛艦にもミサイルを搭載するとともに、相手が発射するミサイルへの迎撃能力の必要性が高くなったためです。対艦ミサイルの脅威はソ連のカーラ級巡洋艦、クレスタ級巡洋艦等がありましたが、アメリカ海軍との戦闘用という認識であったもよう。

 クリヴァクⅡ型ミサイル駆逐艦の大量建造、海上自衛隊が汎用護衛艦への全般的な対艦ミサイル及びその防御手段を必要とした転換点はこの一例であったといわれています。元々ソ連ミサイル巡洋艦はアメリカ海軍空母機動部隊への対抗が主眼であった為、海上自衛隊との戦闘において虎の子巡洋艦隊を消耗する事は避けるという想定が一転したかたちです。

 ソ連巡洋艦のミサイル攻撃を想定する場合、海上自衛隊も虎の子であるミサイル護衛艦あまつかぜ、を投入する事で防空体制を暫定的に確保する構想でしたが、ミサイル駆逐艦の大量建造と共に、ソ連軍が重視した沿岸部でのミサイル艇の延長運用ではなく、外洋を航行する汎用駆逐艦への対艦ミサイル搭載となれば、護衛艦隊正面に展開する可能性が高い。

 対空レーダーは護衛艦からの運用では見通し線30kmとなり、たかつき型は従来、小型飛行目標であるミサイルへは艦砲防御線8kmの防御能力のみ、ここで、短SAM防御線を18kmとして確保し、内側にCIWS防御線2kmを構築、クリヴァクⅡ型ミサイル駆逐艦の駆逐隊に対し、護衛隊一個で対応できる防空能力を確保する事が望ましい、としてFRAM計画が立てられた訳です。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.11.26/11.27)

2016-11-25 20:37:44 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 初雪、寒い最中、首都圏十一月の初雪や突然の津波警報など一週間記憶する物事はおおけれど、一番身に染みるのは寒さ、温泉が恋しくなる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今週末の自衛隊関連行事、最大の行事は築城基地航空祭と百里基地航空祭の同日開催です、築城基地航空祭は第6飛行隊と三沢から移駐の第8飛行隊のF-2飛行隊姉妹が揃い、群青の海洋迷彩を誇るF-2戦闘機、編隊飛行に機動飛行や模擬対地対艦攻撃と、福岡の冬空を熱く盛り上げてくれる事でしょう。築城基地はJR九州日豊本線の築城駅から徒歩五分です。

 百里基地航空祭、百里基地開庁五〇周年航空祭と銘打った本年は、新田原基地へF-15を運用する第305飛行隊が移駐、F-4の第301飛行隊が交替に百里へ展開しました。第501飛行隊のRF-4とともにF-4飛行隊二個が揃い、世界最大規模のファントム基地となった百里基地、最寄りの石岡駅から15kmと交通難所ですがブルーインパルスも参加、期待高まる。

 春日基地開庁記念行事、西日本の防空を一手に担う西部航空方面隊司令部が置かれる福岡県の航空自衛隊基地、春日基地板付地区には春日ヘリコプター空輸隊が展開していまして飛行展示も当然行われますし、朝鮮半島の対岸に位置する福岡、ペトリオットミサイル機動展示も予定、築城航空祭前日の土曜日実施です。JR春日駅と西鉄春日原駅から徒歩すぐ。

 大村駐屯地四部隊合同行事、今週末最大の陸上自衛隊関連行事は長崎県のこの行事でしょう。大村駐屯地は第16普通科連隊と第4施設代替の駐屯地ですが、式典と模擬戦を午前中駐屯地で実施、市街パレードが同日午後から実施され、竹松駐屯地第7高射特科群、海上自衛隊大村航空基地第22航空群、航空自衛隊福江島分屯基地第15警戒隊も加わります。

 豊川駐屯地創設66周年記念行事、名鉄豊川線沿線で豊川稲荷に程近く海軍豊川工廠跡地に位置するこの駐屯地には、第10特科連隊、第10高射特科大隊、第49普通科連隊、第6施設群、等部隊が駐屯していまして訓練展示ではFH-70榴弾砲の中隊射撃が大迫力の轟音と軽装甲機動車の小隊機動が戦車と共に前進、自衛隊の実力を観る者へ叩きつける行事です。

 松戸駐屯地創設64周年記念行事、需品学校と第2高射特科群が駐屯している千葉県の駐屯地です、見栄えある先進装備03式中距離地対空誘導弾の展示に目移りするところですが、需品学校の展示は自衛隊行事ではここでしか見られないものが展示されまして現在配備が進む最新の戦闘防弾チョッキ3型も初公開されたのは松戸駐屯地、中々目が離せません。

 宇治駐屯地創設65周年記念行事、中部方面隊の兵站を担う関西補給処が置かれている駐屯地です。隷下に桂駐屯地桂支処と祝園分屯地祝園弾薬支処や三軒屋駐屯地三軒屋弾薬支処が置かれ、宇治駐屯地司令は陸将補が補職される要職です。行事は式典と装備品展示が主体となっていますが本年はAH-1S対戦車ヘリコプターによる機動飛行も行われるとのこと。

 ヘリコプター搭載護衛艦くらま、先週の舞鶴に続き今週の大湊での一般公開を終えて次の一般公開が行われるのは来週の高松での一般公開へ航行中です。日程から推測、今週末は横須賀散策してみますのも一興かもしれません。ヘリコプター搭載護衛艦くらま、ヘリコプター搭載護衛艦かが、就役に合わせ来春の除籍に向け事実上最後の航海となっています。

 さて、撮影機材の話題や駐屯地周辺散策や基地とグルメ話題、最近知ったのですがこのコラム、意外に読まれている事が判明、自衛隊行事の少ない時期にテキトーに記事を賑わせる為のお気軽コラムで始めましたが、これは気を引き締めて欠かなければならない。同好の志士は無論、防衛関係者からマスコミにOBと多くの方が読まれているとのこと。お弁当屋さん情報ありがとうございました。

 自衛隊関連行事、基地祭や駐屯地祭に航空祭と足を運び、そこで駐屯地祭ならば式典から観閲行進に訓練展示と装備品展示、航空祭ならば離陸から機動飛行に編隊飛行と着陸からブルーインパルスまで、海上自衛隊展示訓練ともなれば観閲式と展示訓練だけではなく、出港から入港まで寸秒を惜しんでカメラで撮影を継続します、CFカード容量もどんどん。

 2007年に発売されたもので、先日紹介したフォトビューア、EPSONのPhoto Fine Player P-7000は、HDD容量160GBという規模になっていまして、当方が使っていた40GBの物よりも容量がかなり大きくなっています、ただ、フォトビューアの大きな画面で昔は撮影した写真の画像を確認していたものですが、昨今はカメラ本体の画面も大型化しています。

 そこで容量を圧迫するのは自宅のPCのHDD容量でしょう。バックアップもとっておかなければならない、そこで固定式のフォトストレージというものの出番が出てきます。Canon デジタルフォトストレージ Connect Station CS100は容量が1TBありまして、CFカードやSDカードを差し込むか一部機種はワイヤレスで接続できます、1TBとは心強いですね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・11月27日:百里基地航空祭二〇一六…http://www.mod.go.jp/asdf/hyakuri/
・11月26日:松戸駐屯地創設64周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/station/ea/matsudo.html
・11月26日:豊川駐屯地創設66周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/butai/sta/toyokawa/
・11月26日:宇治駐屯地創設65周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/madep/uji/
・11月26日:春日基地開庁57周年記念行事…http://www.mod.go.jp/asdf/kasuga/
・11月27日:築城基地航空祭二〇一六…http://www.mod.go.jp/asdf/tsuiki/
・11月27日:大村駐屯地四部隊合同行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/4d/oomura/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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国際防衛協力:日韓包括軍事情報協定GSOMIA締結と日豪物品役務相互協定ACSA合意

2016-11-24 22:06:41 | 国際・政治
■日本と韓国・豪州の防衛協力
 日本と韓国や日本とオーストラリア防衛協力、日韓包括軍事情報協定GSOMIAと日豪物品役務相互提供協定ACSAが大きく前進しました。

 日韓包括軍事情報協定GSOMIAについて、北朝鮮によるミサイル開発や核関連活動の脅威増大を受け、長嶺安政駐韓大使と韓国の韓民求国防相がソウルで署名され、漸く締結されました。もともとGSOMIAは日韓が隣国でありながら軍事情報では完全に隔絶されている不自然な部分が解消されたかたちです、これまでは日米安全保障条約と米韓相互防衛条約に基づき、日韓共通の軍事同盟国がアメリカであった事から、一旦軍事情報をアメリカ経由で融通しあう、というものでした。

 GSOMIAは日韓の信頼醸成を進めると共に北朝鮮情勢は核開発の進展とともに弾道ミサイル脅威が顕在化しており、特に弾道ミサイルへ搭載可能な核兵器の小型化が進む現在、我が国へ明確な核攻撃の脅威が現実化しています。北朝鮮の核兵器は、我が国周辺での核不拡散条約秩序からかい離した国際法上許されない核保有国の出現と共に、通常戦力の近代化を放棄し実戦に投入する戦力としての核開発を進めている北朝鮮の核兵器は、文字通り開戦第一撃で運用されかねない脅威に他なりません。この脅威へ核戦力の装備化を除く対抗策には弾道ミサイル防衛体制の確立を置いてほかになく、この為の情報共有は即座の迎撃を行うための不可欠な要素の一つ。

 日豪防衛協力も前進する事となります、日豪外務防衛閣僚協議を来月開催し、安全保障関連法に基づく日豪間の弾薬を含む物品相互融通に関する二国間協定、物品役務相互提供協定ACSAが締結される見通しがつきました。ACSAとは日本とオーストラリアが防衛協力を展開する際に、一時的にお互いが不足する物資を提供しあうというもので、日豪包括協力協定締結以来、豪州と自衛隊の防衛協力体制は年々深められてきましたが、続いて物品役務相互提供協定の締結へ閣議決定したかたちです、これにより弾薬は勿論さまざまな消耗品の部品単位での相互支援が可能となります。

 日本と韓国、日本とオーストラリアの防衛協力が、一気に進んだ印象を与える今回の二つの防衛協力ですが、もちろん一朝一夕に進んだものではありません。これはオバマ政権が進めたアメリカ中心の放射状の環太平洋地域防衛協力を超えた、自由主義と民主主義国の防衛力をクラウド化し防衛協力へ繋げるという施策の成果の一つともいえるでしょう。多国間防衛協力の試みは日印間でも進展しており、アジア太平洋地域の安定と平和維持への協調はこれからも進んでゆく事だけは間違いありません。

 こうした安全保障上の取り組みを進める背景には北東アジア地域での不安定要素が、東南アジア地域と西アジア地域、個々に存在した不安定要素が繋がりつつある点と無関係ではありません。具体的には北東アジア地域には南西諸島への圧力、台湾海峡での不確定要素が存在してきました。東南アジア地域では南沙諸島問題と西沙諸島問題があります。そして西アジア地域には中印国境やベンガル湾地域とインド洋での安全保障均衡の変容という現実があり、これらを地域的に包括して取り組む必要が高まった、ということ。

 日本の安全保障政策は従来、アメリカを一辺倒としたものとなっていましたが、日米安全保障条約締結から60年以上を経て、防衛協力はアメリカ一辺倒からアメリカを基軸としたもの、即ちアメリカの価値観を共有しアメリカとの防衛協力を進める諸国との間の関係強化を図る段階に入った、という事を示します。また、先日三沢基地に置きまして航空自衛隊とイギリス空軍の初の戦闘機部隊共同訓練が実施され、防衛協力は日英間での装備開発分野での協力など、多角化を示しています。

 現実問題、朝鮮半島での核開発と共にアジア地域では様々な問題が同時進行しています。ヴェトナムが中国からの軍事行動に対し対決姿勢を確かなものとしつつあります、自国島嶼部を幾度も中国軍に攻撃され不法占拠、海軍歩兵守備隊に戦死者が出ているヴェトナムはもともと中国の更なる自国領域占拠へ警戒を続けてきましたが、今年夏にはロシア製超音速対艦ミサイルを展開、さらに続いて今回、ヴェトナムは離島の航空設備を強化する方針です。ヴェトナム空軍はSu-27戦闘機などを運用しており、高まる軍事圧力へ対抗しています。

 現在アメリカの次期政権による、南シナ海での関与度合いが不透明な状況となりつつある中、先手を打った抑止措置ともいえるでしょう。一方、フィリピンは独自防衛政策へ転換しつつあります。ドゥテルテ大統領の自主独立国防戦略が発動しました、米比軍事演習を縮小し災害派遣やテロ対策へ移行するとのこと。ただ、フィリピン軍近代化計画は停滞しています、イタリアからのフリゲイト導入計画は空中分解し戦闘機導入計画は高等練習機へ修正しようやく端緒についた段階、哨戒機導入計画は日本の援助での練習機での訓練が漸く徳島で始まる段階です。

 フィリピンは雨リアからの麻薬取締を契機とする外交圧力へ反発していますが、中国の南沙諸島フィリピン領の不法占拠へも抗議の姿勢を崩していません。具体的には中国からの軍事圧力増大へフィリピン政府の対応は明確ではありません、ただ、日本との防衛協力の模索は継続している証左であり、日比はステイクホルダーでもある訳です。日韓の防衛協力と日豪の防衛協力はこのように進みましたが、日印と日比間でも進められており、新しい国際協力の枠組が構築されつつあるといえます。

北大路機関:はるな くらま
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トランプ新大統領の外交国防戦略【02】 三五〇隻海軍構想、大型艦量産は財政難下の困難な提案

2016-11-23 21:32:44 | 北大路機関特別企画
■アメリカ海軍を何処に向けるか
 トランプ新大統領の外交国防戦略、第二回目は前回に続いて三五〇隻海軍構想、その実現性や方向性を視てみましょう。

 海軍現況は、航空母艦10隻、戦略ミサイル原潜/巡航ミサイル原潜18隻、攻撃型原潜56隻、巡洋艦22隻、駆逐艦63隻、フリゲイト(LCS)8隻、の177隻です。強襲揚陸艦9隻、ドック型揚陸艦/輸送揚陸艦22隻、機雷戦艦艇11隻、これで219隻となる。戦闘支援艦/補給艦32隻を加えて251隻です。三五〇隻海軍構想の具現化には99隻の増強が必要だ。

 第二次世界大戦中にアメリカは、戦艦10隻、正規空母30隻、護衛空母100隻、巡洋艦50隻、駆逐艦350隻、護衛駆逐艦1000隻、を揃えたアメリカの造船能力を考えれば99隻等年内に揃えられそうな印象はありますが、電波や音響でステルス性を有しデータリンクさせ、各種ミサイルと管制装置を有する現代の水上戦闘艦の建造費は安い物ではありません。

 ズムウォルト級ミサイル駆逐艦はアメリカ海軍の駆逐艦として初めて満載排水量が10000tの大台を超え14000tという空前の規模となりましたが、建造費も一隻30億ドルと、1990年代に建造されたニミッツ級原子力空母の建造費50億ドルへ迫るものとなっています、元々30隻程度を建造する計画でしたが、費用高騰を受け縮小され、単価へ響いたかたち。

 沿海域戦闘艦、アメリカ海軍が現在進める新しい建造計画は満載排水量3000t前後で高度なステルス性を有し高速巡航能力を持つ軽量水上戦闘艦フリーダム級とインディペンデンス級を大量建造する計画でした、しかし、軽武装過ぎ、南シナ海では中国海軍艦艇の恫喝を受ける状況となっており、技術的問題も多く建造は32隻で打ち止めとなりました。

 現在アメリカ海軍の将来艦建造計画は沿海域戦闘艦への対艦ミサイル搭載など限られたものであり、新しい艦船、即ち現在の艦艇を置き換えるような新世代の水上戦闘艦を新しく設計するには、どうしても時間を要します、何故ならば公約は任期中に実現する必要があるためで、この為のコンセプト画定を行おうにも、外洋作戦を重視するのか、専守防衛の沿岸用とするのかで全く設計が違ってきます。

 アメリカの変容を前にした各国ですが、一方で、国際政治学でいうところの覇権国としての地位を維持しているのはアメリカです。東西冷戦の二極論からアメリカを中心とした単極体制へ転換していったわけですが、ここに新しい変容の可能性が生じる一方で、アメリカが覇権国であるという現状を変更する事に、アメリカ自身がどう現状を認識するのか。

 パクスアメリカーナへどのような認識を持っているかが、第一の未知数であり、何を実行するのかが分からない、という部分を不確定要素、言い換えれば未知数の可能性、として政権に就くこととなった新大統領の真意は、アメリカが引くのであれば、引いた地域に自国を進出させよう、と考える諸国には、アメリカの国際政治や地政学観を見極めたい。

 世界の警察官の地位を放棄し、在外米軍の撤退示唆する、しかし、三五〇隻海軍構想として海軍力の再建を図る、この方向性が地域的な後退に留まるのか、地域的な後退がドル基軸体制をはじめとしたアメリカの世界への影響力を支えた様々な枠組みの交代に繋がる事を見越しているものなのか、未知数な部分が多く、世界各国は新政権がどこまで矛盾に気付かないのかを見極めようとしています。

北大路機関:はるな くらま
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巨大災害,次の有事への備え 10:南海トラフ地震、大規模災害と鉄道救援輸送基盤の維持

2016-11-22 21:55:12 | 防災・災害派遣
■福島沖マグニチュード7.4地震
 今朝夜明け前のマグニチュード7.4、太平洋沿岸の津波警報、改めて災害の蓋然性を突き付けられました。南海トラフ地震、大規模災害と鉄道救援輸送基盤、という視点から。今回から少し鉄道と災害輸送について考える事としましょう。

 災害復旧と国の関与について、今後想定される南海トラフ地震では鉄道関連設備が大きな損害を被ることが予想されます。この復旧について予め法整備を行い、現在は全ての鉄道が官営ではなく民有ですが、その上で鉄道優遇政策と批判される覚悟を以て、復旧関連の資材や財政支援、人的動員や復旧要員の輸送体制というものを考えなければなりません。

 鉄道ですが、災害時においても極めて重要な運送手段です。東日本大震災では仙台製油施設の損傷を受け、京浜地区製油施設より、常磐線や東北本線被災地域を避け、日本海縦貫線を経由し燃料輸送を実施、これにより東北地域の燃料不足は漸く解消されました。一方、台風9号台風10号の北海道鉄道被害は本土への物流へ影響が生じた事も記憶に新しい。

 現在、北海道の鉄道網は台風被害により大被害を受けており、漸く旭川と新得町を迂回する事で札幌から帯広まで行く事が出来るようになりました、しかし、これでは東京から横浜へ八王子経由で行くようなもの、京都から名古屋へ金沢と高山経由で行くようなもの、指定公共機関である鉄道を国がどのように考えるか、重要な視点を突き付けられました。

 北海道の鉄道の現状ですが、防衛上も大きな問題を抱える事となりました、北海道へ協同転地演習を実施する場合、JR北海道の台風9号台風10号災害による橋梁流失被害などの復旧に時間を要するため、本州から北海道道東地区が不通、鉄道輸送を度外視しなければ釧路や矢臼別演習場へ部隊を派遣する事が出来ない、という厳しい実情を示しています。

 1944年に陸軍省は決戦輸送体制を確立するべく民有鉄道の官主導統合を実施していますが、これほど強権的なものは法制度の転換と現行憲法の財産権の視点から今日的に難しいものの、大規模災害という有事の際には鉄道の民間資産に対し、政府が指定協力企業として協力を求める措置等、法整備を行い、公共交通の掲げる公共性を強化すべきでしょう。

 大規模災害対応輸送調整機構、というようなものを創設し、災害時迂回運転を相互乗り入れに関する企業間協力等を含め実施するべき、でしょう。具体的施策として最初に考えられるものは、全ての鉄道線を利用した輸送体制を災害時に実施すべくJR各社や民鉄各社と第三セクター各社に特定目的鉄道間の災害時における緊急相互乗り入れ体制の確立です。

 第三セクター各社への相互乗り入れ体制を確立するという事は、整備新幹線計画に伴う九州新幹線開通や北陸新幹線金沢開業と北海道新幹線整備に伴う在来線のJR各社からの営業切り離しにより、近年特にその必要性が高まっており、新幹線は旅客輸送に特化し貨物輸送を想定していない分、輸送力として第三セクターへの在来線移行は災害時に厳しい。

 大規模災害対応輸送調整、として簡単に記しましたが、勿論これは簡単ではありません。線路があればそのままポイントを維持し乗り入れるだけ、と問われれば、詳細は後述しますが簡単に記した場合でも、信号機や列車制御から運転要員や信号要員の大量輸送への確保に、重量車両の通行には保線基盤に問題があり、政治が求める以上は負担も求められる。

 第三セクターへの移管という施策も、第三セクターへ移管しなければ整備新幹線計画を遂行できない経済性の問題がありますし、第三セクター経営分離は、併せて従来の在来線の廃線か移管かの厳しい経済的選択を選んだ結果でもありますので、安易に政治が災害に備えるという視点から要求する事は簡単ではない事も確かで、この部分の検証は必要です。

北大路機関:はるな くらま
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福島県沖マグニチュード7.3/震度5弱の地震 福島県沿岸に津波警報【北大路機関防災情報】

2016-11-22 07:32:44 | 北大路機関 広報
震度5弱の地震
福島県沿岸に津波警報

本日0559時、福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生しました
本州太平洋岸に広く津波警報と津波注意報が発令されています
沿岸部から高台へ避難してください

情報は第二北大路機関にて随時更新します…http://harunakurama.blog10.fc2.com/
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