北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ソマリア沖アデン湾海賊対処任務 第15次派遣海賊対処部隊あけぼの、はまぎり派遣へ

2013-03-31 22:47:47 | 防衛・安全保障

◆第6護衛隊派遣、すずなみ、きりさめ、と交代

 防衛省によれば4月上旬に、ソマリア沖海賊対処任務第15次派遣部隊として新たに護衛艦二隻を派遣するとのこと。

Img_6932 今回新たに派遣されるのは、第6護衛隊隷下で佐世保基地の護衛艦あけぼの、大湊基地の護衛艦はまぎり、の二隻で、第6護衛隊司令岩澤努1佐以下司令部30名、護衛艦あけぼの艦長本山勝善2佐以下乗員170名、護衛艦はまぎり艦長佐藤哲朗2佐以下乗員180名の380名と海上保安官8名が派遣されます。

Img_3837f はまぎり、は4月7日に大湊基地を出港、あけぼの、は4月9日に佐世保基地を出港します。今回の海賊対処任務派遣は第15次となり、アデン湾において現在任務に当たっている第3護衛隊の護衛艦すずなみ、護衛艦きりさめ、と交代することとなっています。

Gimg_4419 現在ソマリア近海では、護衛艦部隊と共に派遣海賊対処航空隊のP-3C哨戒機も任務に当たっており、P-3C二機、各国の洋上哨戒機派遣規模は自衛隊を含めても数機ですので、その役割は大きく、各国海軍へ上空からの航空哨戒による不審船舶情報を伝送、洋上における海賊行為の根絶へ大きな抑止力となっています。

Aimg_2372_1 海賊対処任務へ海上保安庁巡視船ではなく海上自衛隊護衛艦が派遣される背景には、海上保安庁巡視船には各国海軍との情報連携を行うデータリンク能力がなく、いわばデータ通信を洋上でリアルタイムで行うことが出来ないためであり、加えて海上保安庁巡視船はアフリカ沖という本土からの支援を絶って行動する想定が設計に盛り込まれていないためです。

Cimg_8266 他方、我がくにでは、海賊対処任務への各国海軍との連携へ海上自衛隊を派遣し、船団護衛任務を展開すると共に航空哨戒を実施、そしてこれに合わせ国土交通省海上保安庁と外務省が協力し、アフリカ大陸のソマリア周辺国における海洋法執行機関の養成を行っています。

Eimg_8695_1 これは海上保安庁にあたる組織をアデン湾周辺国に創設することで海賊根絶の枠組みを制度として定着させようとするもので、沿岸国海洋法執行機関が軍艦の国際法上はいりにくい沿岸部での哨戒を行うと共に、これらの取り組みと各国海軍の努力とにより、海賊行為は一頃ほど目立たたなくなりました。

Aimg_6738 ただ、海賊行為による身代金収入や奪取船舶の物資横流しがソマリアの経済に大きな影響を今なお与え、一方これら資金が新しい国際関係の不安定要素となる集団への提供などの指摘もあり、重要なシーレーンであるという一点以上の安全保障上の意義を有しているという事は言うまでもありません。この点で、当面は海賊対処任務の継続が必要となるのでしょう。

北大路機関:はるな

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政府、普天間返還計画明示、嘉手納以南米軍施設の2020年代初頭返還で日米調整へ

2013-03-30 22:54:27 | 国際・政治

◆那覇空港最寄米軍施設へバス二時間という時代へ

 安倍総理が30日に羽田空港にて行った記者会見において嘉手納以南米軍基地返還の具体的日時を計画に明記する方向で日米調整に入っていることが明かされました。

Img_0867 これにより嘉手納基地以南の米軍基地全面返還、この2000年代の日米合意を民主党政権時代に空中分解させ、一時は危ぶまれていた返還計画が再稼働したこととなり、この方針に基づき菅官房長官は4月3日に沖縄訪問を予定、県側へ返還計画の日米合意に向けた経過を報告する予定です。

Bimg_0796 嘉手納基地以南全面返還、凄いことです。沖縄の地理に明るくない方にはこの意味するところが理解しにくいやもしれませんが、これは、沖縄の玄関である那覇空港から最寄りの米軍基地に向かい出発した場合、最短で沖縄都市モノレールと沖縄バスを利用した場合でも二時間を要する、という事に他なりません。

Nimg_0940 嘉手納基地へ向けて那覇市内からバスに乗りますと知念経由でも北谷経由でも米軍の延々と続く白い倉庫群が返還されることとなり、普天間前の意外なほど続く施設も戻ってきます。即ち、沖縄に到着すると延々と米軍基地が広がる、という印象はかなり払拭されることとなり、米軍基地は実感、実感としてですが大きく減るという事になるでしょう。

Img_0155a 政府は普天間基地の名護市辺野古への移設を2020年代初頭までに完了させ、宜野湾市への返還を行う方向で、日米調整に入り、牧港補給地区キャンプキンザーなど嘉手納基地以南の普天間以外の米軍施設についても具体的な返還時期を10年後から15年後と具体的に明示し、調整へ向かうとのこと。

Img_0770 普天間基地の辺野古移設については移設とどうじに関する要望を防衛省が沖縄県に提出、これにより一年程度で結論が出る事となりますが、普天間基地とともに周辺の付帯施設が返還、併せて那覇市内から海岸沿いに嘉手納に向かう際に続く広大な施設、キャンプキンザーが返還されることで、沖縄=米軍基地だらけ、という印象が払拭されることを意味します。

Aimg_7590 こうした一方で、空軍と海兵隊、沖縄と日本南部の防衛を根本的に担う極東最大の米空軍拠点としての嘉手納基地、そして台湾有事への緊急展開能力を維持することで台湾有事そのものを封じこめる海兵隊の航空部隊を維持しつつ、返還の道筋を通した、という事は日本外交の再興を意味するものと言えるやもしれません。

Cimg_27000 実際問題沖縄の防衛だけであれば自衛隊で対応出来る部分は大きいといえます、勢力が増長する中国空軍の脅威に対しても、自衛隊独自で対応する場合、若干戦闘機を増勢する必要、冷戦時代なみに350機程度に増勢する必要や、護衛艦定数を60隻にまで戻す必要はあっても、防衛費のGDP比率を考えれば何とかすることはできる。

Dimg_0192 ただ、台湾有事、日本のシーレーンを左右させる重要な要素である台湾周辺の安全確保について、日本の抑止力のみで台湾海峡の武力紛争を予防するだけの能力を発揮できるか、と問われれば、憲法上の問題がありますが、これをさしおいても冷戦時代並の負担では不十分で、先の大戦期ほどではないもののこれに準じる負担の覚悟が必要となってしまいます。

Iimg_1930 より厳しい表現では、東南アジアにある日本の友好国でアメリカとも友好関係を結んでいる国々へ、海洋自由と武力紛争抑止という国際公序を破壊させる勢力の圧力がかかった場合でも、これら国々の主権と安定を守ることは日本には現時点で不可能、アメリカにしかできません、こういう意味からこれを支えるアメリカの拠点としての機能は、日本の安定にも重要な意味合いを有している、ということ。

Img_0697f 返還計画ですが、一方で、アメリカ側は、日本の民主党政権時代に生じた計画実行への疑念から、沖縄からグアム移転の準備を予算に一部のみ盛り込むにとどめ、具体的な期限を盛り込む事へ消極的との見方が伝えられますが、名護市辺野古の新航空施設建設が具体的な進展をみる目処が付けば、こちらについても前進の兆しを見ることが出来るでしょう。

Gimg_9992 北部訓練場など、面積の面ではかなりおおきな米軍施設が残りますが、少なくとも那覇都市圏の拡張を大きく阻害していた開発できない地域、海とを隔てる地域が返還されますので、米軍基地依存や補助金依存に観光依存という沖縄県の経済は、大きく転換する機会となる事だけは間違いありません。

Img_1345 これにより広大な米軍施設用地が沖縄側へ返還され、キャンプキンザー跡地については工業団地の誘致などを、普天間基地跡地については複合リゾート施設などの造成を沖縄県側は計画しているとされますが、これらについても実行の目途が付くこととなりそうです。

Img_1530 もちろん、港湾設備が不十分である沖縄の工業団地誘致や、昨今の経済状況下でのリゾート開発には展望に不透明なものがあり、嘉手納基地にほど近い読谷補助飛行場跡地開発の頓挫等を見た場合、どうしても見通しに不安は抱かざるを得ませんが、那覇空港を降りて最初の米軍基地である嘉手納基地まで2時間を要する、今までに考えられない時代は近づいているのやもしれません。

北大路機関:はるな

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尖閣諸島防衛への一視点⑭ 利権ではない離島警備、不可解な与那国島自衛隊誘致

2013-03-29 22:35:41 | 防衛・安全保障

◆沿岸監視隊100名の駐屯地に26ヘクタール

 防衛省の小野寺大臣は与那国町が要請する自衛隊駐屯に関し、用地借用の費用の面で折り合いがつかず、駐屯地設置への見直しもあり得る事を26日の記者会見にて表明しました。

Mimg_5956 与那国島は日本列島の最西端、台湾に近く、仮に台湾有事となれば最も影響を受ける可能性がある離島で、この与那国町は予てより自衛隊の駐屯を求めてきました。このため、防衛省でも2015年度末までに100名の隊員から成る沿岸監視隊を与那国島へ配置、警戒強化を行う方針を固めてきたわけです。

Gimg_9401_1 南西諸島も守りは、第15旅団や沖縄基地、南西方面航空混成団と沖縄本島に集中しており、これまでは宮古島にレーダーサイトとして宮古島分屯基地が置かれているのみでした。このため、先島諸島へ自衛隊の配置は長く課題となっていましたが、主としてその中心にある石垣島や既に分屯基地が置かれる宮古島への配置が念頭に置かれ、与那国島は求めがあったからこそ検討の筆頭に登ったといえるでしょう。

Eimg_1160 しかし、借地料を巡り与那国町と防衛省の調整がうまくいきません。防衛省によれば、与那国町より26ヘクタールの用地借用に際し、当初年間500万円の借地料を検討し、併せて敷地造成費用と施設設計費用に移転補償費を加え10億円の予算を計上しているのですが、与那国町は年間1200万円の借地料に加えて10億円の迷惑料を要求しており、このため妥結点が見いだせない状況となりました。

Img_0092 迷惑料10億円というのは、誘致した側が求めるのに少々理解が難しいところで、10億円はUH-1一機分となり、これを毎年計上するとなってしまっては、とてもではないですが予算が持ちません、その10億円でUH-1を毎年一機購入して那覇駐屯地へ配備するか、掃海艇を数隻取得し勝連の沖縄基地に掃海隊を配置、一隻を与那国沖に遊弋させた方が効果的でしょう。

Gimg_3747 ただその一方で、防衛省が借用する26ヘクタールの用地は100名規模の沿岸監視隊用地としては少々広すぎるのではないか、と考えます。第3師団司令部が置かれる千僧駐屯地が16ヘクタール、第10師団司令部の置かれる守山駐屯地が18ヘクタールですので、26ヘクタールとは1000名規模の部隊が駐屯する敷地に匹敵する規模なのです。

Img_0739 この26ヘクタールですが、広くなった背景にはどういったものがあるのでしょうか、小口の借地が自治体により認められなかった可能性、または、防衛省が広めの駐屯地として広い用地を求めた可能性、考えられるのはこの二つ、ほかには本来別の工場やホテルの誘致計画があり、この代替として用地を一括して提示した、というところでしょうが、現時点ではどういった背景かはわかりません。

Img_5855 防衛省では、航空自衛隊の移動警戒隊、レーダーサイトが機能不随になった際供えての車載式レーダーサイトを展開させる用地を含めて26ヘクタールを借用する構想のようですが、現時点の100名の駐屯を見込む駐屯地でも、26ヘクタールでは警衛に10名程度、一割が常時警備に必要になってしまいます。

Bimg_1372 ここで疑問なのは、将来的に与那国島の駐屯部隊を増勢する計画がどの程度あるか、ということです。26ヘクタールですが、情勢悪化により移動監視隊を展開させるよりは常設の防空監視所を置いた方が理想的ですし、基地防空隊や、高射隊を配置する構想、陸上自衛隊は沿岸監視隊を将来、与那国警備隊へ格上げする意図あるのか、ということ。

Dimg_6524 実際問題として、与那国島は過疎に悩む自治体であり、与那国町としては自衛隊駐留を経済の起爆剤としての効果を期待しており、自衛隊からの迷惑料10億円を以て離島医療や学校教育の給食代無料化など様々な施策の財源としたい要望を提示しています。ただ、防衛省側が過度な負担を行うことはできません。

Iimg_2691 当然の話ですが、100名規模の駐屯地に対して10億円の迷惑料を負担する前例等行ってしまえば、全国の自治体の中で財政に悩む自治体が同等、もしくはそれ以上の迷惑料、もしくは理解料などを要求してくる口実ともなり、そもそも理解がある地域だからこそ駐屯するという大義名分も失われてしまうでしょう。

Bimg_3104 他方で、離島侵攻への備えを行う一方で、離島振興の重要性も理解しなければなりません。限界集落のような状態となっては離島は人が住むことこそ一つの防衛ともなるわけですから、この点は重要でしょう。ただし、離島振興は政府の責務であっても、防衛省の任務ではない、という事を認識する必要がありますが。

Eimg_0568 離島防衛はりけんではありません、防衛政策です。離島振興を目的とした口実のために自衛隊の駐屯地をもめる、というのでしたら、防衛省はお帰り下さいと自治体の方に丁重にお願いするほかはないでしょう、ただ、自衛隊が駐留することによる経済波及効果が地元に恩恵をもたらす、という事でしたらば、これを回避する理由はありません。

Dimg_0299 少々下世話な話ではありますが、自衛隊の駐屯は給食業務への納品を始め、一定の経済波及効果があり、特に家族と共に駐屯する場合、官舎からの地元商店街への需要拡大なども考えられますし、補給の船舶の接岸に伴う港湾使用料や空港の着陸料など、波及効果について、実のところ少なくないというのが実情です。

Cimg_6402 与那国町としては、実利をあからさまに求めるのではなく、長期的な視野に基づいて、駐屯部隊規模の将来可能性についても含め、考えてほしいところですが、現時点の法外ともいえる金額の要求が続くのであれば、沖縄本島の部隊の緊急展開能力強化、艦艇の増勢等の手段を採り、予算に見合った範囲内で防衛得揖斐を強化するべきだ、と考えるものです。

北大路機関:はるな

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平成二十四年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.03.30・31)

2013-03-28 22:41:53 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 年度末、平成二十四年度も今週末まで、桜前線北上する今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか。

Icimg_8490 今週末の自衛隊関連行事ですが、駐屯地祭や基地祭に航空祭などは行われず、僅かに呉基地の日曜日一般公開、舞鶴基地の週末一般公開が行われるのみ、佐世保基地週末一般公開は中止で、練習艦隊の一般公開も出ていませんでした。年度末ですので、行事は行われないのですが舞鶴基地か呉基地近くの方は足を運ばれてみては、とも。

Icimg_8489_2 呉基地日曜日艦艇一般公開では、今回は訓練支援艦てんりゅう、が一般公開されます。このほか、呉基地には就役したばかりの最新鋭、敷設艦むろと、がアレイからすこじま近くに、練習艦隊出航の時点で入港していましたので、年度末という事もあり今週末も見れるやもしれません。

Icimg_8691 舞鶴基地週末一般公開、今週末は土曜日と日曜日に実施され、護衛艦の広報担当艦上甲板一般公開は行われませんが、北吸桟橋から並ぶ停泊中の護衛艦を見ることが出来ます。新年度に向け塗装を行っていますので、護衛艦がもっとも綺麗な状態で見ることが出来る、こんなところも年度末ならでは。

Icimg_8735 舞鶴市が行っている舞鶴遊覧船は舞鶴基地を海から眺められる一方で、現在冬季運休中ですが、市役所裏にある乗船案内では、4月1日から運行を再開するとのこと、土曜日曜と祝祭日に運行される遊覧船が4月1日月曜日に運行というのも妙ですが、先週土曜日にはそのように掲示されていました。

Icimg_0090 佐世保基地週末一般公開は前述の通り中止です。ただ、調べてみますと週末一般公開は大湊基地でも行われていますので、新年度からは週末一般公開、隔週の公開ですが、こちらもお伝えしてゆきたいところ、私事ですが一度大湊基地にも行ってみたいですね、上空から見たことはあるのですが。

Icimg_7714 練習艦隊近海練習航海部隊は現在沖縄へ入港中です。ただ、沖縄地本HPや勝連の沖縄基地HPを見た限りでは一般公開の予定は出されていませんでした。見渡したところ年度末は舞鶴基地と呉基地のみ、それでは新年度も北大路っ間広報自衛隊関連行事紹介をよろしくお願いいたします。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

  • 海上自衛隊基地の一部公開のみ

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望⑱ コストとリスク、輸出論の疑問

2013-03-27 23:55:05 | 国際・政治

◆兵器見本市出展コスト・量産体制拡張リスク

 日本の防衛装備品ですが、輸出して量産数を増やせば安価になる、という意見は様々な方の間であるようですが、輸出に要するコスト負担を誰が担うのかという視点が抜け落ちています。

Iimg_4567 日本の防衛装備品は、例えば一部航空機や誘導弾、車両や火砲に水上戦闘艦や潜水艦、レーダーから暗視装置など、国際競争力に対応できるものは少なからずあると考えています、しかし、海外において装備品が採用され、輸出を行い量産を行うならば、この過程で生じるコストと量産のためのコストを誰が負担するのか、この議論が抜け落ちているのではないでしょうか。

Iimg_6790 輸出に関するコスト、これは海外の装備見本市へ出展する費用です。日本国内では広報行事として様々な式典などが一般に公開されていますが、これは主として自衛隊への理解、予算支出や隊員志願者への広報が目的のものです。対して、海外の識者や軍当事者へ装備を展示する機会は、総合火力演習くらいしか行われていません。

Iimg_2376 装備見本市、世界では各国の新装備や輸出用装備などを一か所に集め、商談を募る装備見本市が行われます。実は防衛装備品とは、国内で先方より商談を持ちかけてくるをの座して待つ商法では、相当特殊な装備でも売れるものではありません、やはり、海外の装備見本市に出展する必要が出てくるでしょう。

Iimg_4236 ただし、海外装備見本市において出展するためには、少なくとも装備を海外まで持ってゆく必要がありますし、装備品を実際に運用する展示には運用経験者を揃えて同行しなければなりません。これには少なくない費用が必要となります。商社の支援も考えられますが、防衛装備品はまず、海外に持ち出すことが難しく、加えて防衛装備品ですので企業の私物ではないという事も忘れてはならないもの。

Iimg_1616 自衛隊の支援を受ければ簡単だろう、と思われる方もいるかもしれませんが、自衛隊員を私企業の営利活動のために派遣する場合は、当然その費用を国費で負担することの正当性が問われますし、販路が確実か否かが不明確な分野に、防衛産業が支出することは、これも難しいのではないでしょうか。

Iimg_4102_1 これだけではなく、水上戦闘艦や潜水艦などは、海外見本市へ模型だけを出展するわけにもいかず、どうしても艦艇派遣を要することとなります。しかし、海上自衛隊の艦艇は稼働率の多くが海賊対処や哨戒任務などの実任務にあたっており、特に新鋭艦を簡単に外せるものではありません。

Iimg_4331 そしてこちらも当然の話ですが、艦艇は私企業の私物ではありません、もちろん、建造中の艦艇は企業のものなのですが、公試を経て防衛省に納入された時点で防衛省の装備品となるのですから、輸出用の展示に一隻海外へ派遣してくれ、という要請は、主体が私企業である限り不可能、国が主体とらなければ不可能です。

Gimg_1601 大量発注への対応、これが防衛産業における輸出コストで忘れられているもう一つの重要なものです。国内需要のみを考えた国産機は、その工場規模から年産数が大きくはありません。工場には規模があり、全体の生産数には上限があります、輸出により量産効果を高めるという視点の方には、この上限を超える発注がある場合にはどうすればよいのでしょうか。

Iimg_4945 もちろん、発注に合わせて工場を拡張する、これが最も考えられる対処法ではあります。しかし、一度に多数を受注しても翌年継続しなければどうなるのか、即ち一回行われる発注と同程度の継続した発注がなければ工場稼働率に影響しますし、工場拡張のコスト負担を回収できなくなる可能性があります。

Iimg_3271 航空機では、例えばスウェーデンのJAS-39戦闘機などは生産ライン維持のためにスウェーデン空軍が最新型のJAS-39グリペンNG生産ライン維持のために、空軍が60機の追加発注を行い、基本は海外へ売却を目指しつつ、達成できなければ開発生産国である自国が引き取る、という苦肉の手法で生産ライン維持を図りました。

Iimg_0818 特にミサイルなどの消耗品は、短期間に多数の発注が考えられます。この発注は数千発単位で、我が国では少数多年度調達が基本となっているため一見現実味がありませんが、一括調達を行う国では戦時備蓄を含め一括調達するため、どうしても数千発という日本では考えにくい数になってしまう。

Iimg_0166 そして一括契約となるので、為替変動や物価上昇率を慎重に見極めねばなりませんし、量産を開始した後でも引渡し前に政治情勢などによっては、もしくは性能面や仕様面などで、調達が中止となることもあり得ます。自衛隊が引き取り素直に数千発の戦時備蓄が出来た、と喜びたいところですが、予算面でいきなり負担できるものではありません。

Iimg_0657 量産ラインの維持にも費用を要しますし、いわゆるドタキャン、というような量産開始後の契約破綻は、どうしても国際契約では少なからず起こっており、要因に財政破たんによる調達不可能、大災害による復興予算捻出で契約無期限凍結、こういったものもありますので、安易に賠償金を要求、という構図も出来ない。

Himg_7055 大量の発注に対応するための生産ライン拡張コスト、発注後の情勢変化による納入不可能、これらリスクがありますので、安易に輸出すれば大丈夫、というはなしは成り立たないばかりではなく、私企業なので自己責任で、と政府が責任を回避するにも結局は国産装備品の質や費用に反映するものですので、誰かが、結局は国民の負担を介して担わなければならず、この視点を忘れないようにしたいところ。

Img_0833 そして輸出した装備品の場合は、定期整備などの面で関与し続ける必要があり、事業部設置や整備支援業務を行う場合、某欧州共通戦闘機の中東輸出に際して実際に生じたことですが、サービスマンがテロの標的となり犠牲になったこともあり、このリスクも考慮すべきものの一つ。

Img_8143 リスクは色々とあり、海外へ輸出することで、防衛機密となっている秘指定情報が海外の諜報機関に曝される危険は当然高くなりますし、輸出された装備品が第三国を通じて思わぬ国に譲渡される可能性もあります。アメリカなどは装備品輸出に際し、輸出対象国の防諜水準などを法改正などを条件として実施する場合がありますが、流石に防衛産業が私企業の立場から他国へ法改正の圧力をかけることはできません。

Img_4683 特に第三国への転売は、見極めが難しく、冷戦時代にはアメリカ製のヘリコプターで韓国軍や自衛隊でも使用されている機種が西ドイツのダミー会社を介して北朝鮮に200機もの数が渡り、北朝鮮では韓国軍塗装として攪乱作戦用に運用された事例があり、こうしたリスクを回避するためにはどうすべきかも必要となるでしょう。

Fimg_8012 こうしたリスクは私企業の手に余るものであり、国が主体とならなければできるものではありません。一方で費用が生じるものであることから、輸出としたことで却って日本国内の装備品調達費用が大きくなること、生産基盤が逆に維持できなくなってしまうことも当然考えられるわけです。

Bimg_1372 唯一の例外といえるものは、米軍装備品と自衛隊装備品を共同生産することくらいでしょうか、例えば弾道ミサイル防衛用装備品などは大量の需要が継続しますし、これならば、第三国移転で日本の敵対国への譲渡や生産に伴うリスクはある程度現実的な面で回避できるといえるかもしれません。

Img_2129 そしてF-35なども、後発参加国である日本が実際に今言われている条件を合意させたことが驚きなのですが、日本国内で生産するのですから、もちろん流動的なものはありますが、日本が調達するよりははるかに大きな数量が生産されることだけは間違いなく、調達費用圧縮という視点からは意義は大きいだろうと考えます。

Img_1377a このほか、アメリカで生産終了となったアメリカ製航空機のライセンス生産が日本で継続していた際に、日本から軍用を含め輸出された事例がありますので、アメリカが採用し自衛隊も運用している装備については輸出という手段が防衛装備品の調達費を低減する可能性は残っています。しかし、これ以外の条件では、どうしても生じるリスクや必要なコストをだれが負担するのか、結論を出さねば話を進めることはできません。

北大路機関:はるな

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新田原基地航空祭2011詳報⑪ 実任務と訓練を担う新田原基地格納庫内の各種展示

2013-03-26 23:02:14 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆ミサイル・爆弾等、格納庫内の展示装備品

 新田原基地へ飛行展示の合間の時間を利用し入りました当方、飛行展示再開までに撮影できるものを撮影です。

Nimg_9353 格納庫に展示されているF-4EJ改ファントム、武骨な格納庫内の独特の流線型、突き出した機関砲と前方を睨む主翼下の兵装群、奥にはF-15Jイーグルが並び、これぞ戦闘機の格納庫、という雰囲気を目一杯醸し出しています、前回はエプロン地区に並ぶ展示航空機を紹介しましたが、今回は格納庫の内部を散策してみましょう。

Nimg_9181 F-15前に置かれたAIM-9,赤外線誘導方式の空対空ミサイルで原型は127mmロケット弾へ誘導装置を搭載したもので、目標航空機がエンジンから発する熱の赤外線に向かい誘導されます。射程は18kmで設計はアメリカ、航空自衛隊では国産のAAM-3やAAM-5とともに装備を続けています。

Nimg_9174 AIM-7F/M空対空ミサイル、アメリカが設計し世界で広く採用されているレーダー誘導方式のミサイルで、AIM-9は短射程型ですが、こちらは中射程型の70km、戦闘機がパルスドップラーレーダにより照準し、この反射を追尾し命中します。70kmという距離は視程外戦闘と呼ばれるように彼我が肉眼で見えない距離で展開され、過去20年間ではかなり高い命中精度を誇っていますが、命中まで戦闘機が照準を続ける必要があり、現在はミサイル本体にレーダーを搭載する国産のAAM-4配備が進められているところ。

Nimg_9169 戦闘機の油圧駆動展示も行われていました。脚部やフラップなどは油圧で駆動するため、戦闘機を支柱で地上に支えて展示し、実際に離着陸時や飛行時に行う油圧の駆動を地上で展示する、というもの。写真では見栄えがあまりですが、実物を目の前にしますと駆動の様子は飛行時に絶対間近によれないだけに興味深いもの。

Nimg_8962_1 ちらりと、格納庫の外を見ます、気になるのは飛行展示の再開、C-1輸送機により実施される空挺部隊の空挺降下展示、基地内で見るのですから、基地内らしいアングルで撮りたいだけに、移動の時間も考え、それまでの時間で格納庫内の展示を撮影完了しなければなりません。

Nimg_9198 Mk82,500ポンド爆弾。世界的に標準的な通常爆弾で、本体重量が227kgを基本とし、87kgのトリナール高性能火薬を内蔵、航空阻止や近接航空支援に対艦攻撃に活躍します。誘導装置を後付するだけで、赤外線誘導方式のGCS-1やGPS誘導方式JDAMのような精密誘導爆弾とすることもできる。

Nimg_9207 JM-117,750ポンド爆弾、自衛たいでは340kg普通爆弾と呼ばれている。如何にも爆弾的な爆弾で米軍などではMk82に取って代られていますが、GCS-1を搭載し赤外線誘導爆弾として使用されます。GCS-1は制式名称91式爆弾用誘導装置、世界ではレーザー誘導爆弾のようにレーザー照射の反射へ誘導するものが基本でしたが、自衛隊では対艦攻撃を行うため、洋上では赤外線放出目標は艦船くらいしかなく、その分誘導不用な撃ち放し式として運用可能、750ポンド爆弾は命中すれば大型艦船でもほぼ確実に撃沈可能だ。

Nimg_9356 ASM-1空対艦ミサイル、正式名称は80式空対艦誘導弾、射程40kmの亜音速対艦誘導弾で、発射後は慣性誘導により超低空を目標に向かい、命中直前の終末段階では搭載するレーダーにより目標を捕捉し、命中、上部構造物を破壊し、電装品などを機能不随へ追い込みます。多くの場合、命中すれば火災により機能不随となり場合によっては沈没しますが、止めが必要な場合はGCS-1を用いるもよう。

Nimg_9194 航空自衛隊は1977年にF-1支援戦闘機を完成させ、1980年にASM-1を完成、現在は個の後継装備である射程170kmのASM-2を生産中です。F-1支援戦闘機は全機除籍されましたが、この任務はF-4EJ改とF-2が引き継いでいます。170kmといえば、京都駅から岡山駅や浜松駅に金沢駅までの距離で、編隊で一斉に投射されれば、最高度の防空能力を有する艦隊であっても簡単に防ぎきれるものではありません。現在、ステルス性と超音速巡航が可能なASM-3が開発中です。

Nimg_9214 訓練用のCBLS-200、小型の25ポンド爆弾4発を搭載し、投射訓練を行います。訓練では500ポンド爆弾や750ポンド爆弾を用いることが望ましいのですが、実爆訓練は演習場制約もあり、このため小型で、落下時の弾道特性を考慮した爆弾を4発搭載しています。対地訓練のほか、対水上訓練も行う。

Nimg_9344 70mmロケット弾を運用するJLAU-3/Aロケットランチャー、19発のロケット弾を内臓しており、広範囲を一挙に制圧します。発射後安定翼により弾体を高速回転させることで弾道を安定、最大射程は8000mあり、防空火器の届かない高度から火器管制装置による弾道計算を行い投射することも出来る。

Nimg_9225 機関砲標的装置AGTS,戦闘機に搭載されている機関砲の航空目標に対する実弾射撃訓練に用いるもので、そのまま機関砲の実弾を訓練機に発射すれば撃墜してしまうため、吹き流しのようなものを航空機から曳航し、訓練に用います。空対空ミサイル訓練用の標的は更に安全を考え、数kmのワイヤーで曳航するとのこと。

Nimg_9187 水上標的JAQ-1,新型装備とのことです。一見新型ミサイルや魚雷のように見えますが、航空機から投射し、海上に着水するとともにアンカーとヨットの帆とよく似た形状の標的部分を展開させ、対水上射撃訓練に用います。見た目がミサイルのようなので、漁船などに発見されることを考え、危険物ではない、と書かれていました。

Nimg_9218 滑走路方向から鋭い金属音が急速にその音程を変えて響いてゆきます、おやおや、C-1輸送機が空挺隊員を乗せ離陸してゆきました、もちろん一足先に帰ったのではなく空挺降下展示に向けての離陸です。空挺降下展示の撮影位置へ展開するため、まだ若干の時間は残りますが、少々急がねばならないようになってきた。

Nimg_9290 航空自衛隊の制服などの展示、陸海空自衛隊の制服はそれぞれ特色があります。このほか、この格納庫では東日本大震災関連の写真展示や、第一空挺団の展示、海上自衛隊の紹介コーナーなども展開していました、そしてその向こう側には小銃なども。

Nimg_9281 64式7.62mm小銃、戦後初の国産小銃で、陸上自衛隊では89式小銃に取って代られつつありますが、航空自衛隊では主力です。第二次大戦中に99式軽機関銃が威力を発揮したことを踏まえ、軽便性と遠距離制圧能力を重視し設計された小銃で、軽量化を重視し華奢であることは指摘されていますが、連射時の集弾性能が高いことで知られています。

Nimg_9285 1971年製造のものでした。航空自衛隊では航空基地や防空監視所にミサイル部隊等への敵部隊浸透へ小銃で対処せねばなりません。これを考えますと、近接戦闘に取り回しが有利で軽量な5.56mm小銃、例えばHK-416のようなものに置き換えることも、そろそろ考えるべきやもしれません。

Nimg_9282 MINIMI分隊機銃、5.56mm弾を用いる軽機関銃で、航空自衛隊へ警備用に導入された軽装甲機動車の搭載用です。航空自衛隊への軽装甲機動車配備は北朝鮮にもっとも近い戦闘機部隊、九州の築城基地より開始され、現在は防空監視所などへも配備が進んでいます。こうしたところで、格納庫での撮影を完了しました。

北大路機関:はるな

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舞鶴地方隊舞鶴展示訓練2011詳報⑦ 哨戒ヘリコプター飛行展示とミサイル艇機動展示

2013-03-25 23:16:44 | 海上自衛隊 催事

◆空から海から、日本海を守る

 観閲式と祝賀飛行、これに続いて展示訓練が開始されます。舞鶴展示訓練なのですから、ここも注目です。

Mimg_6759 潜水艦うんりゅう、浮上した様子、本型はAIP潜水艦で潜ったまま発電を行い動力を得ることが出来るため、これまでの通常動力潜水艦よりも水中航行能力が大幅に向上しました。後部の操舵装置が斜めになって二枚見えるのが日本の従来潜水艦との外見上の特徴、オーストラリアが昨今、輸出を希望していることで有名になりました。海上自衛隊の潜水艦は広大な太平洋での任務遂行上、大型で航続距離が大きくなっています。オーストラリアのコリンズ級も同じですが、大型で騒音が大きくなり過ぎ、日本製潜水艦に注目したのでしょう。

Mimg_7076 SH-60K哨戒ヘリコプターが飛行展示を開始しました。米海軍のSH-60Bと非常によく似たSH-60Jの改良型ですが、日本のSH-60系統は写真のような吊下げ式のソナー、ディッピングソナーを搭載する対潜哨戒を重視したヘリコプターとして開発されました、見えるのはトランデューサ、マイクロフォン部分です。哨戒ヘリコプターはソノブイの情報を元に複数機が磁気探知装置MADを梯団飛行で使用し、潜水艦航行による磁気異状を捕捉、別の機体がソナーを降ろし、徐々に追いつめる方式がとられるようです。

Mimg_7072 海上自衛隊の艦上航空機運用は今から40年前、1973年の護衛艦はるな就役から始まり、米海軍が空母搭載用対潜ヘリコプターであったHSS-2を3機搭載していました、空母1隻で6機のHSS-2が定数となっていましたので、しらね、ひえい、の第51護衛隊に、はるな、くらま、の第52護衛隊、ヘリコプター搭載護衛艦2隻を集中運用する当時の護衛艦隊の運用は、空母の対潜ヘリコプターが有する哨戒能力に匹敵していたといって過言ではありません。

Mimg_7070 ソナーを海面下に降ろしています。奥の方ではSH-60が機上救難員を降ろしています、SH-60は対潜哨戒のほか、護衛艦の対艦ミサイル誘導、救難任務等多用途に使われます。海上自衛隊は、ソノブイを投下し、大まかな敵潜水艦の位置を把握すると共に、ソナーを搭載し最も潜水艦が潜伏していると思われる海域を正確に捕捉し、魚雷により攻撃することが出来ました。ところが、米海軍のHSS-2に続いて導入されたSH-2とSH-60Bはこうした任務を想定していません。

Mimg_6770 SH-60と護衛艦はやゆき、写真は2011年のものですので、まだまだ護衛艦はまゆき、現役です。この半年後に、はまゆき、自衛艦旗を返納し除籍され、一昨日舞鶴基地に行きますと保管艦として桟橋にいました。さて、海上自衛隊のHSS-2とSH-60は上記の通り、潜水艦を発見し撃破する独立した武器システムなのですが、米海軍のSH-2と続くSH-60BはLAMPS,軽空中多用途システムといわれ、水上戦闘艦のセンサーの一部をヘリが運んで移動している、という概念の装備で、独立した運用に限界があり、とくにソナーを搭載していませんでした。

Mimg_7066 対してSH-60Jは、ソナーで潜水艦を直接追いつめることが出来ます。もちろん、護衛艦と一体運用することが基本で、HSS-2も対潜情報を護衛艦と共有しますし、そのために護衛艦のマスト頂点には円盤状のヘリコプターデータリンク装置アンテナが搭載されています、ただ、自前のソナーを搭載している自衛隊のSH-60Jに対し、SH-60Bはソノブイの運用と更に母艦など水上戦闘艦のソナー情報に基づき目標の潜航が考えられる海面に魚雷を投下する、かなり限られていた、ということ。

Mimg_6782 高性能を盛り込んだ海上自衛隊のSH-60、対して水上戦闘艦の移動センサーであった米海軍のSH-60,実は高性能に一本化した自衛隊の艦載ヘリコプター体系ですが、元々はその前に運用していた無人ヘリコプターDASHの発展型がLAMPSであり、日本のSH-60とは出自を別としていました。ただ、日本も70年代の第四次防衛力整備計画検討時にはHSS-2に対し、新しく建造する汎用護衛艦にはOH-6を原型としたSH-6というべき研究がありました。

Mimg_7064 基準排水量2000tくらいの護衛艦に小型ヘリを搭載する、というものなのですが、これが石油危機により計画がとん挫、改めて再検討された際に、中途半端なものよりは高性能で一本化しよう、ということで、汎用護衛艦にもヘリコプター搭載護衛艦と同じヘリコプターを搭載する方針が定められ、建造されたのが護衛艦はつゆき型です。基準排水量は2950tで、実のところ、高性能の大型哨戒ヘリコプターで一本化したことから、護衛艦隊の護衛艦の航空機運用が一本化した、といえるやもしれません。

Mimg_7099 ミサイル艇の機動航行展示が開始されました、舞鶴警備隊に現在2隻のミサイル艇はやぶさ型が装備されています。以前は、護衛艦あぶくま型、写真の護衛艦ちくま、等小型護衛艦が地方隊に装備されていたのですが、現在は平時の訓練を護衛艦隊が一括運用することとなり、全て自衛艦隊隷下の護衛艦隊へ移管されています、つまり、必要な時に必要な分だけ地方総監へ護衛艦が回される、というかたち。結果、地方総監の地位がかなり下がってしまい、海幕長人事に自衛艦隊司令官出身者が多くなってしまった、という指摘もあります。

Mimg_7115 一方で、ミサイル艇だけは、地方総監が常時保有している手駒として残されたようです。ただ、海上自衛隊のミサイル艇運用構想を紐解けば、魚雷艇からミサイル艇への転換を構想していた際に、ミサイル艇こそ中央で一括運用し、一定の水準に或る高練度部隊を常時地方隊にローテーションで配置する、という構想はあったもよう。こう考えますと、護衛艦にしてもミサイル艇にしても高練度部隊は、護衛艦隊から地方隊に回す、任務群を常設し、地方総監の位置づけを強化の方向で考えるべきでは、ないかと。

Mimg_6784 護衛艦とミサイル艇の連携、ミサイル艇の武器は強力な対艦ミサイルで、命中すれば巡洋艦でも撃破できるのですが、センサーが護衛艦に搭載されるような大型のものが搭載できないため、目標がどこにいるのか、位置データを陸上や航空か洋上や海中から伝送してもらわなければ能力が最大限発揮できませんし、攻撃された場合、自艇防空能力が護衛艦のような強力な対空レーダや防空火器を搭載できないため、運用が限定的とならざるを得ません。

Mimg_7119 ただ、一撃離脱の威力が大きいので、例えば陸上の地対空ミサイル部隊が沿岸部でミサイル艇へ防空の傘を供し、護衛艦に搭載するような高出力の沿岸レーダ装置を陸上に配置すれば、かなり有用に運用できます。それならば陸上の地対艦ミサイル連隊も運用しているミサイルは基本同型なので一本化すれば、と思われるかもしれませんが、対領空侵犯措置に要撃機が必要で地対空ミサイルに一本化できないのと同じように、水上戦闘艦であるミサイル艇であれば、一撃で沈める前に、警告を発し、戦闘を回避することが可能です。

Mimg_7127 海上保安庁の巡視船つるぎ型、最高速力40ノット以上といわれるのですが、最高速度で航行するミサイル艇はやぶさ型を悠々と訓練で追い抜くため、護衛艦の乗員の方からは50ノットはでるのではないか、とのこと。管制式20mm機関砲による遠距離での警備能力と、防弾板の装備、北朝鮮の工作船侵入事案を契機として建造されました。ただ、高性能を目指したため建造費が大きくなってしまい、結果、十分な数を揃えられない、というかなり大きな壁に直面することに。

Mimg_6795 高速で航行する様子を流し撮りにしてみました、奥にはもう一隻見えます。ミサイル艇は、80年代に建造が計画され、とりあえず、横須賀、佐世保、舞鶴、呉、大湊の垣内砲隊へ2個艇隊6隻づつを配備することが計画されましたが、冷戦が終わり、護衛艦隊の護衛艦が量産により余剰が生まれましたので、そのぶん地方隊にも護衛艦隊用の大型護衛艦を回すこととなり、それならばミサイル艇で一撃離脱という方法を採らずとも、堂々と護衛艦で脅威を排除しよう、ということになりました。

Mimg_7139 ただ、日本海での北朝鮮工作船浸透事案における海上警備行動を踏まえ、護衛艦では対処が難しい武装工作船対処へはミサイル艇のような小回りが利く艦艇が必要、となり、速度を計画よりもさらに向上させた新ミサイル艇として、はやぶさ型が建造されました。しかし、海上自衛隊全体で6隻と少数に留まったのですが。他方、工作船対処が重要視される以前に元々はやぶさ型は双胴型船形を志向していたとのことで、この方式は後部甲板を大型のものと出来ますので、速度は下がりますが、ヘリの発着能力等、運用の幅は広がったでしょう。

Mimg_7144 大きく旋回し、小回りを誇示するミサイル艇、この天敵は航空機です。日本の周辺国には多数のミサイル艇を運用する国が多いのですが、実はこの天敵は小型対艦ミサイルヘルファイアを運用するSH-60K哨戒ヘリコプターだったりします。一方、はやぶさ型は毎分80発を発射し、射程16kmの3インチ単装砲を搭載、FCS-2により管制しており、データリンクシステムを搭載しているので航空攻撃情報を航空自衛隊のレーダーサイトや早期警戒機から受信すれば、そう簡単には無力化されません。

Mimg_6799 ミサイル艇、舞鶴、沖縄、余市、父島、このあたりにもっと数を配備してもいいのでは、と思うのですが、対潜戦闘は全くできませんし、単体では能力に限界があります、もっと護衛艦があれば、それに越したことはないのですが、ミサイル艇を見るたびにこうしたことを考えます。ただ、前述の通り、ミサイル艇の天敵はミサイルを運用するヘリですので、ヘリ搭載小型艦、というものも、検討されるべきやも。もっとも、同様の構想は海上自衛隊にもあるにはある、過去にもあったようです。

北大路機関:はるな

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US-2救難飛行艇 警備救難用としてインドへの輸出で調整へ新明和工業現地事務所設置

2013-03-24 23:26:20 | 国際・政治

◆決定すれば初の防衛用機海外輸出

 産経新聞の報道によれば海上自衛隊の救難飛行艇US-2について、インドへの輸出が事実上決定する方向で調整されているとのこと。

Simg_2152 インド洋を防衛警備するインド海軍は、広大なインド洋を前に迅速に展開し、救難及び警備任務を行うことが可能な飛行艇として、かなり以前から我が国の救難飛行艇US-2に着目していました。US-2は競合機の四分の一の離水距離にて運用可能で、競合機の倍の波浪を前とした場合でも運用が可能な国産機です。日本は第二次大戦中からこの種の飛行艇を継続的に開発してきており、戦後はソナーを搭載し機動運用する対潜飛行艇PS-1が開発、これをもとに救難飛行艇US-1が開発されました。

Simg_1322 最新型のUS-2は操縦系統にフライバイワイヤを導入し、機内を与圧するなどの改良を加えて完成しています。我が国では救難飛行艇は陸上のヘリコプターの行動圏外で生起した航空遭難や離島での急患輸送に無くてはならない活躍を続けてきました。救難飛行艇はヘリコプターによる航空救難の倍以上の行動半径を有し、速度も非常に大きいと同時に飛行艇そのものの取得費用も大きく、これまで幾つかの島嶼国がUS-1の時代から導入を模索してきましたが、取得費用と維持費の大きさにより、実現はしていません。

Simg_4447 今回のインド輸出は、産経新聞報道によれば救難任務と海賊対処任務を主眼として政府が輸出手続きに入ったという内容で、これによりUS-2を製造する新明和工業がインドへ現地事務所を設置したとのことです。防衛用航空機輸出はこれまで、武器輸出三原則への定食という観点から実現はしておらず、音階が初の事例となります。実は昨年名古屋で実施された国際航空宇宙展の頃にもほぼ輸出が内定した、と報じられており、一方確定はしていない、との報道がなされていましたが、今回の報道はこれが決定した、というもの。

Simg_4743 初の防衛用航空機輸出となりましたが、問題はあります。一つは新明和工業の工場が有する生産能力で、今後大口の注文などがあった場合には工場規模を拡大しなければならなくなる可能性があり、他方で拡大したとしても継続的に往生を稼働させる安定発注を受けられるとは限りません。もう一つは、アフターサービスで、飛行艇は特殊な航空機であり、運用支援や定期整備などを民間の新明和工業だけで可能なのか、ということ。しかし、輸出が続けば単価が下がり、防衛省も安価に調達が出来る事を意味します。これらの問題は、防衛用航空機の輸出には国家の関与と支援、防衛産業との連携が試される最初の一歩となるでしょう。

北大路機関:はるな

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舞鶴基地一般公開 ヘリコプター護衛艦しらね、イージス艦あたご、除籍艦はまゆき、みねゆき

2013-03-23 22:18:09 | 海上自衛隊 催事

◆PowerShotG-12撮影速報 

 早春の舞鶴基地へ行ってまいりました、一頃と比べ舞鶴を訪れる頻度は低くなっています。

Dimg_8691 威容を誇るヘリコプター搭載護衛艦しらね、満載排水量7200tの大型艦は対潜中枢艦として必要な能力を固めた重要な一隻。今回の舞鶴行きは、護衛艦みねゆき除籍後の海上保安庁巡視船転用という報道がどの程度現実的なのかを、とりあえず舞鶴で直に艦そのものをみてみよう、ということで計画していたものです。

Dimg_8682 イージス艦あたご、満載排水量10000tのミサイル護衛艦で、ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが型就役までは海上自衛隊最大の護衛艦で、満載排水量が10000tに達した戦後最初の日本の水上戦闘艦だったりします。城郭を思わせる艦橋構造物の迫力も中々のもの。

Dimg_8694 元護衛艦はまゆき、扱いは保管艦で、2012年3月に除籍された護衛艦はつゆき型の一隻です。一年間に渡り乗員が手を入れていない護衛艦の姿で、塗装は色褪せてしまっています。こういう艦をモスボール保管し、優位の際には日本に相当数の予備艦がある、と誇示することの方が本型を巡視船へ転用するよりも抑止力になると思うのですが。

Dimg_8722 掃海艇すがしま、のとじま。旧式化した舞鶴地方隊第44掃海隊へ比較的新しい掃海艇すがしま型が配備されました。ペルシャ湾掃海任務において従来の国産掃海器具が新型機雷へ十分対応できなかったことからフランス製掃海器具を搭載し就役した掃海艇、二隻が揃っていました。

Dimg_87430 元護衛艦みねゆき、巡視船へ転用されるのが最有力、と報じられていた護衛艦の除籍後の姿です。民間不当である前島埠頭、近くに舞鶴警備隊本部がありますが、ここに係留されていました。巡視船転用を考えているとのことでしたので、海上保安学校付近に係留されていると思ったのですが、除籍艦の定位置に係留されています。この扱いで、どの程度巡視船転用が考えられているか、みえてくるでしょう。

Dimg_8740 みねゆき、艦砲の砲身はもちろん、電装品も基本的に取り外され、そもそも復帰工事をしようにも係留されているのが桟橋ではない沖留であるため、容易ではありません、無論曳船で移動は簡単にできるのですが。除籍護衛艦の巡視船転用は自民党が野党時代に提唱していたのですが、運用方法から装備体系まで異なる護衛艦の巡視船転用は一筋縄でゃい家内という事を端的に示している姿と言えるでしょう。

北大路機関:はるな

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第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報④ 野戦特科・高射特科・施設科

2013-03-22 23:42:06 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆師団火力と防空を担い前進を支える

 普通科部隊の観閲行進に続いて野戦特科部隊の観閲行進が開始されました。

Fimg_5600 第四特科連隊長永田伸二1佐が連隊旗と共に観閲行進へ臨みます。西部方面隊は現在日本で最も有事に近い部隊で、冷戦時代の北部方面隊と並ぶ状況にあるといって過言ではありません、そこで第四特科連隊も全国の師団特科連隊の一部が特科隊へ改編される中、五個大隊基幹の連隊編成を採っています。

Fimg_5609 連隊幕僚が連隊長に続きます。第四特科連隊は、久留米に駐屯、特科連隊本部と本部管理中隊、対砲レーダ装置や音響標定装置と特科指揮統制装置を運用する情報中隊、そして普通科連隊の直掩大隊である第一大隊と第二大隊に第三大隊と第四大隊、師団全般火力支援の第五大隊から編制されている。

Fimg_5614 観閲行進へは、第一大隊を編成する三個中隊が参加しました。第一大隊に本部中隊と第一中隊、第二中隊、第三中隊。第二大隊に本部中隊と第四中隊、第五中隊、第六中隊。第三大隊に本部中隊と第七中隊、第八中隊、第九中隊。第四大隊に本部中隊と第十中隊、第十一中隊、第十二中隊。そして第五大隊に本部中隊と第十三中隊、第十四中隊、第十五中隊、第十六中隊が置かれています。

Fimg_5631 直掩火力大隊は、普通科連隊の攻撃前進での火力支援や攻撃準備射撃、対砲兵戦により敵砲兵の殲滅を行い、各中隊は五個戦砲隊を基幹、連隊は榴弾砲約八十門を運用しています。そして、運用するのはFH-70榴弾砲、牽引式榴弾砲としては今なお世界最高性能を持つ火砲の一つ。

Fimg_5637 FH-70榴弾砲は、1970年代に第二次大戦中の火砲を置き換える目的で国際共同開発された火砲です。ただ、半自動装填装置や自走能力に連続射撃を支える液圧駐退装置と長砲身を有し、その分製造費用が増大してしまいました。自走榴弾砲とあまり違わない費用を要したため、各国は第二次大戦中の砲を長砲身化改修し、併せて自走榴弾砲との混成運用へ向かった。

Fimg_5643 半自動装填装置、というと特科隊員の方は怪訝な顔をしますが、昔使っていたM-1榴弾砲は、一発一発砲弾を装填架に乗せるだけのFH-70と違い、重い砲弾を装填桿により砲身の内部へ送り込まねばなりませんでした。これがかなりの人員を要し、連続射撃も簡単ではありません。

Fimg_5666 FH-70は射撃時の反動で装填架上の砲弾を後退した砲身が装填することで緊急時に一分間で六発の射撃が可能です。米軍のM-198榴弾砲、スウェーデン製FH-77と比較し、M-198よりも射撃能力に優れ、FH-77よりも小回りが利くため、採用され、日本製鋼で479門がライセンス生産、これはNATOが採用したFH-70総数を凌駕しています。

Fimg_5671 第四高射特科大隊長青木英敏2佐以下の観閲行進参加部隊が式典会場を進みます。大隊は特科連隊と同じく久留米駐屯地に駐屯、大隊本部、本部管理中隊、第一中隊、第二中隊を基幹とした編成で、師団野戦防空と師団全般防空にあたる大隊、もともとは特科連隊第六大隊となっていました。

Fimg_5698 93式近距離地対空誘導弾、射程5kmで第一線の師団部隊の防空にあたります。5kmといいますと対空ミサイルとしては心細い印象をもたれるかもしれませんが、京都駅前に展開した場合、北は京阪出町柳駅、東は東海道本線山科駅、西は阪急桂駅、南は近鉄丹波橋駅までを防空可能で、中隊には八両が装備されており、第一線部隊を航空攻撃から防護、心強い味方といえるでしょう。

Fimg_5703 発射装置に搭載されているのは肩担ぎ式の91式携帯地対空誘導弾で、車両が師団対空情報処理システムに連動、高射特科大隊にはP-14,P-9といった対空レーダ装置と低空レーダ装置が配備され、100km以上と言われる捜索能力を活かし目標を索敵、空襲警報を対空情報装置により発令し、その目標情報に向け、93式近距離地対空誘導弾はIFF装置により敵味方を識別、TVカメラ装置や熱画像装置、レーザーにより照準し迅速に排除します。

Fimg_5707 第二中隊の81式短距離地対空誘導弾、師団策源地などの防空に当たります。レーダーを搭載する射撃統制車両、四連装発射装置二両からシステムが構成されており、射程10kmから12kmといわれ、これは京都駅に展開した場合、北は叡山電鉄終点鞍馬駅、東は東海道本線南草津駅、西は山陰線亀岡駅、南は京阪線宇治駅や阪急線大山崎駅まで到達します。

Fimg_5713 81式短距離地対空誘導弾は師団高射特科大隊の中隊に四セットが配備されており、第四高射特科大隊に装備されているのは短SAM-Cとよばれる後期型の装備となっています。射撃統制装置は開発当時、索敵距離が50kmと聞いていたのですが、最近聞いた話としてそこまで大きくはない、とのこと。

Fimg_5719 このミサイルシステムは複数目標を同時対処することが可能で、前述の師団対空情報システムとの連携により、師団へ脅威を及ぼす航空目標の接近に対しては迅速に対処することが可能で、戦闘爆撃機や中型無人機にヘリコプターの接近に際し、3000m以下の高度に降下した場合、即座に排除できる。

Fimg_5728 この81式は、複合照準装置を発射装置に搭載しているのがC型です。そして現在、この後継装備として11式短距離地対空誘導弾が開発されています。ただ、近年は長射程ロケット弾や高高度からの精密誘導爆弾の脅威が増大しており、イスラエルのアイアンドームミサイルシステムはこの対処が可能です。陸上自衛隊においてはこれらに対処する防空システムが求められるようになるやもしれません。

Fimg_5734 第4施設大隊の観閲行進参加部隊が、大隊長大久保克久2佐以下、式典会場に臨み、師団長へ敬礼します。第四施設大隊は本部管理中隊と四個中隊を基幹とする編成、師団施設大隊は地雷原や地形に人工物などにより構成される障害除去や架橋など、師団の攻撃前進を支える戦闘工兵部隊です。

Fimg_5741 ただ、陸上自衛隊の師団施設部隊は、装甲ドーザや施設作業車を、北部方面隊の一部部隊を除き方面隊の施設部隊に集中してしまっているため、師団の最前線において敵の抵抗の下でバリケートや地雷原を処理する装甲車両等を欠いています、これでは現代戦は戦えません。

Fimg_5755 グレーダー。陸上自衛隊へは最前線で使用するために、例えば四輪装甲車体へバケットローダとバケットローダを搭載し車幅が2.49mのイギリス製HMEE工兵装甲車や、排土板と地雷処理装置を搭載した96式装輪装甲車などが必要と考えます。なによりも障害除去と言っても地雷原や障害物には敵の防御部隊側せて配置されているのですから。

Fimg_5761 道路障害作業車、こちらが退却する際に障害物を構成して敵の前進を阻害する道路障害を構築する車両で、六種類の危機を搭載可能なアタッチメントを車体後部に持っています。簡単なクレーンとしてや、施設作業を行うことも可能で、防弾車体ではありませんが使いやすい装備です。

Fimg_5763 81式自走架橋柱、河川に迅速に橋梁を構築し、74式戦車以下師団の全装備を渡河させる装備です。自衛隊は架橋装備についてはかなりの充実で、これは河川が多い我が国の地形を相当考慮した上でのことです。もともと師団施設には75式ドーザ装置や92式地雷原処理車があったわけですが、増備して戻せば師団施設の装備体系は完ぺきに近づきます。HMEEや工兵用96式などは欲しいところですが、毎回そんなことを思いつつ、観閲行進は続く。

北大路機関:はるな

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