北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成23年度防衛予算 概算要求の俯瞰① 本日発表された来年度予算概算要求

2010-08-31 23:32:25 | 北大路機関特別企画

◆概算要求+要望額は4兆7123億円

 本日は速報というかたちで掲載。防衛予算概算要求が示されました。概算要求額と要望額の合計は4兆7123億円、前年度比298億円の0.6%増です 。

Img_5165  防衛費は2002年度の4兆9392億円から減少傾向にあり今年度は4兆6826億円だったのですが、今回は微増を要求しています。実際の予算として求められる総額は今後の動向により左右されるのですが、ね。一般物件費について維持費などは修理費が微減となった以外はほぼ前年度の規模を維持、在日米軍駐留経費負担、研究開発費は微減しましたが、全体では9423億円と前年度比198億円の増額となっています。物件費は、艦艇建造費が半分以下の777億円と前年度より986億円激減しているのですが、一方で航空機購入費は前年度比1765億円増の2474億円。

Img_7001  防衛関係費ですが、技術研究本部の予算が前年度比655億円の減額、実に38.4%のマイナスで、かなり厳しいです。理系や技術開発に無頓着な政治、という事を痛感するとともに、情報本部の予算も57億円減少、割合にして9.7%減額と情報の重要性を軽視して現実の分析を避け空想に走る政治ならではの予算配分、というべきでしょうか。予算配分では陸海空でみてゆきますと陸上自衛隊が1兆7907億円で2.7%増、海上自衛隊が1兆1110億円で5.6%増、航空自衛隊が10732億円で1.3%減、となっています。

Img_8941  人員ですが、陸上自衛隊では現役人員が151702名で61名増と即応予備自衛官8419名の60名減の実質1名増員、即応予備自衛官から現役自衛官へのシフトが進められており、海上自衛隊は45518名で増減0です。航空自衛隊は47211名で88名の増員。統幕は364名で5名の増員、情報本部も4名増の1911名で全体としては247933名の187名増となる見込みです。なお、定員に関しては、訓練期間が比較的長い即応予備自衛官は含まれているのですが、予備自衛官と予備自衛官補はこの数字には含まれていません。

Img_0196  装備品調達について列挙します。陸上自衛隊はUH-60JA×3(94億円)、CH-47JA×1(61億円)、AH-64D×1(54億円)、TH-480B×28(67億円)。海上自衛隊はP-1×3(551億円)、SH-60K×4(233億円)、T-5×5(12億円)、P-3C延命×1(6億円)、SH-60J延命×2(13億円)。航空自衛隊ではF-15J近代化改修×8(114億円)、F-15J自己防衛能力向上×2(48億円)、F-2空対空戦闘能力向上×3・改修×36(104億円)、F-2空対地JDAM機能付与×12(21億円)、C-2×2(384億円)、UH-X×3(169億円)。

Img_9961  航空機関連ではF-Xについて機種未定での調達費用計上が実現しなかったという点、調達中止により生産設備を調達したものが無駄になったとして損害補てんを求める訴訟となっていたAH-64D戦闘ヘリコプターの調達再開、練習ヘリコプターTH-480Bが一気に28機調達される事で現有の練習ヘリコプターを不足する観測ヘリコプターに充てられる可能性が出てきた事が注目でしょう。海上自衛隊では、SH-60Jの減耗にSH-60Kの新造が追いつかなくなったため延命措置が採られ、もうひとつ、航空自衛隊は新救難ヘリコプターとしてUH-Xの調達を開始する計画のようです。

Img_1657  艦船について、海上自衛隊が調達する艦船ですが、潜水艦×1(557億円)、掃海艇×1(163億円)、はつゆき型延命×1(7億円)、あさぎり型延命×4(88億円)、とわだ型延命×1(12億円)、エアクッション艇延命(1億円)。護衛艦の建造がありませんが、19DDが秋に進水式を迎えるという事なのですけれども現状の建造数では、はつゆき型を置き換えられない、という事で護衛艦の延命を行うようです。それなら、何故はるな、引退させたのかな、と。はるな、を練習艦に転用して、練習艦隊の、あさぎり型、はつゆき型を護衛艦に戻せば、護衛艦数を補えただろうに、と考えてしまいます。

Img_4334  誘導弾関係について。陸上自衛隊では03式中距離地対空誘導弾×1中隊(217億円)、短SAM改Ⅱ×1式(26億円)、96式多目的誘導弾システム×4セット(49億円)、中距離多目的誘導弾×12セット(49億円)。航空自衛隊では地対空誘導弾(93億円)、基地防空用SAM×教育用1(15億円)。いよいよ81式短SAMの改良型である改Ⅱの調達が開始されるようです、短SAM-Cよりも能力が向上しているとのことで、巡航ミサイル対処等を期待したいです。航空自衛隊の基地防空用SAMは、新型を教育用で取得するのか、ということも注目です。

Img_6247  火器・車両について。9mm拳銃×137(0.3億円)、89式小銃×10033(30億円)、対人狙撃銃×91(1億円)、5.56mm機関銃MINIMI×265(5億円)、12.7mm重機関銃×118(7億円)、81mm迫撃砲L16×5(1億円)、120mm迫撃砲RT×4(2億円)、99式自走155mm榴弾砲×8(76億円)、10式戦車×16(161億円)、軽装甲機動車×107(32億円)、96式装輪装甲車×11(13億円)、87式偵察警戒車×1(3億円)、NBC偵察車×11(71億円)、車両・通信機材・施設機材(753億円)。航空自衛隊用では軽装甲機動車×9(3億円)。そしてミサイル防衛関連ではペトリオットシステム改修と定期修理現用予備機材取得に211億円が要求されています。

Img_7345  概算要求は、合計で前年度を上回る規模のものとなっているのですけれども、総合的に見て現用装備の除籍を置き換える所要数も充足できない、という状況に変わりはありません。一方で、周辺情勢の緊迫化は進んでおり、この規模で対応できるのか、延命にしても近代化にしても限度はあり、限度を超えて実施すれば費用対効果には見合わない事は言うまでもありません。次回は、今回掲載しなかった施策面について、また、概算要求の要点をもう少し別の角度から分析しようと思います。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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陸上自衛隊一部部隊の海兵隊化を考える 決して軽装備では無い米海兵隊

2010-08-30 23:41:49 | 防衛・安全保障

◆陸上自衛隊14万5000/合衆国海兵隊18万

 陸上自衛隊の一部部隊を海兵隊化する、という案が少し前から一部で検討されているとか、提案されているとか、耳にします。

Img_1047  陸上自衛隊の一部を海兵隊にして、という一部の話なのですけれども、まさかとは思うのですが緊急展開部隊である海兵隊の編成であれば軽装備なので維持費や装備調達費を低く抑えられる、と誤解されているのではないか、という危惧が一つ。もうひとつは、展開能力が高まるのでその分少ない人員で防衛が出来て人件費が削減できる、ということを夢見ているのではないか、という事です。人員規模は米海兵隊の方が陸上自衛隊よりも大きい、冷戦時代の陸上自衛隊と同じ18万程度が点となっているのですが、本日はこの海兵隊について見てみましょう。

Img_5285  海兵隊は意外に重装備で、冷戦時代の西ドイツ機甲師団や米軍機械化歩兵師団と比べれば軽量な装備なのですが、陸上自衛隊やNATOでもフランス陸軍の師団なんかと比較すれば圧倒的に重装備です。そして緊急展開能力、というのは、言い換えれば必要な状況に世界中から迅速に展開できるという事で現状の兵員密度にて対処できているのですから、絶対数には下限があり、編成だけ海兵隊化すれば陸上自衛隊の総数を大きく縮減できる、という訳ではないのですよね。機動力が同上がっても集中できる数には定員が上限となるのですから。

Img_1437  装備について、陸上自衛隊といえば、冷戦時代は北部方面隊を除けば徒歩歩兵としての普通科部隊が中心で、そこに牽引砲主体の特科連隊と、戦車大隊を配置、という編成で、90年代から高機動車の配備が進み、2000年代から軽装甲機動車の配備が始まった事で自動車化が達成、装甲車は慢性的に不足していて73式装甲車と96式装輪装甲車が併せて400両くらい、機関砲とミサイルを搭載した89式装甲戦闘車は70両も無い状況。ヘリコプターはそこそこ充実していて多用途ヘリが150機くらい、対戦車ヘリコプターがざっと90機、輸送ヘリコプターは50機、そこに200機近い観測ヘリコプター、という編成で定員は16万、実質減益が14万5000、冷戦時代の定員は18万、という規模でした。

Img_1714  海兵隊は、といえば、まあ、自走榴弾砲こそ持っていないのだけれどもM-1A1戦車を湾岸戦争時代に導入決定して、たしか400両以上持っていて、規模としては陸上自衛隊の半分ちょっとだけれども、第三世代戦車がある。どうしても、近代的な戦闘を考えれば戦車は不可欠で、しかも相手が戦車を持っている場合なんかを考えれば欠かせられない装備、という位置づけで、第三世代戦車の数だけでみれば90式よりも海兵隊は多くの戦車を持っているという事になります。現在の防衛大綱における戦車定数は600ですので、海兵隊の400とくらべれば、現状維持は必須でしょう。

Img_6820  装甲車は陸上自衛隊よりもかなり多いです、海兵部隊の装甲化は普通科部隊よりも進んでいるのですが数字を出してみましょう。機関砲を搭載した装輪装甲車のLAV-25が700両以上、海兵25名が乗車できる水陸両用のAAV-7両用強襲車が1300両以上あるので、陸上自衛隊よりも遥かに進んでいる訳で、海兵隊=軽装備、という構図は成り立たない訳です。陸上自衛隊には軽装甲機動車がありますが、海兵隊はイラク戦争を契機に防弾ハンヴィーに加えてMRAP耐爆車両を大量導入していますので、この部分で拮抗します。

Img_72661  加えて海兵隊は現在、AAV-7の後継にEFVという凄い水陸両用戦闘車を開発中で、これは2700馬力のエンジンを搭載してウォータージェットにて水上を46km/hで進み、砲安定装置付の30㍉機関砲を搭載、陸上での航続距離500km以上という怪物のような装備を開発中で、予算的に厳しいようだけれども500両以上調達する計画とのこと。装甲化では陸上自衛隊を圧倒していて、まあ、96式装輪装甲車をあと800両、89式装甲戦闘車を更に450両(EFVの定員を考えれば900?)くらい加えてようやく海兵隊の装甲化水準、という事になる。ううむ、海兵隊は日本の水準で見ると重装備だね。

Img_2375  野砲だと、陸上自衛隊は牽引式のFH-70が470門くらいあって、99式自走榴弾砲と75式自走榴弾砲が140門くらい、それに方面特科用に203㍉自走榴弾砲がまだ50門は残っていたはず、海兵隊はM777かM198の牽引式155㍉榴弾砲が併せて400門だったか、この部分で陸上自衛隊特科の方が強力なんだけれども、海兵隊は近接航空支援を重視していて海兵航空団がF/A-18CやAV-8を運用しているので、総合的には何とも言えない。陸上自衛隊の海兵隊化、といっても陸上自衛隊がF-2飛行隊を運用して近接航空支援に充てる、なんてのは考えられないのだし、ね。

Img_6465  中長距離火力だと、100両近いMLRSと、100基ちかい88式地対艦誘導弾の発射器を運用している陸上自衛隊に対して、海兵隊にはこうした装備が無いので、陸上自衛隊が圧倒しているのだけれども、しかし、海兵隊は前述の通り近接航空支援でこれに対応している。まあ、陸上自衛隊の場合は着上陸阻止が重点で、こういう装備を導入しているので、海兵隊のような編成に陸上自衛隊を置き換える、にしても着上陸阻止の必要性は不変ですから、この種の装備は必要性が変わらないのだろう、とは言えるのですけれどもね。

Img_5504  野戦防空については、81式地対空短距離誘導弾、93式近距離地対空誘導弾を低空レーダ装置、対空レーダ装置を基幹とする師団対空戦闘システムで有効に活用して、方面隊が改良ホーク地対空ミサイルと03式中距離地対空誘導弾を運用する陸上自衛隊に対して、海兵隊はホークミサイルとスティンガーをハンヴィーに搭載したアヴェンジャー、そしてスティンガーを中心にして野戦防空システムとリンクする防空網を構築している。能力的には、密度が濃い陸上自衛隊の方が上だけれども、しかしこれは航空優勢確保についての不安から陸上自衛隊は重視しているのであって、航空自衛隊の作戦機が抜本的に増強されるとか無い限り、海兵隊のような軽量装備(?)を目指して野戦防空能力の見直し、という事はありえないでしょうね。

Img_3850 施設科部隊の能力では、日本は方面施設団や施設隊、そして師団施設大隊や旅団施設中隊なんかの規模で、海兵隊よりも上で、特に海兵隊は戦闘工兵を重視していて、建設工兵としての能力が少ない。しかし、これは海軍施設隊の支援を受けられるという前提なのだから、陸上自衛隊がまねをして、ということも出来ないでしょう。海軍施設隊、いわゆるシービーズは飛行場建設から港湾整備までやってしまう部隊、海上自衛隊の機動施設隊は大規模工事すら想定外な訳でして、災害派遣を考えればこの提案は無理です。

Img_8454 ヘリコプターの規模になると、海兵隊は物凄く、CH-47JAに匹敵するCH-53だけでざっと陸上自衛隊の三倍にあたる150機、これを将来的により輸送能力を高めたCH-53Kの227機を置き換えよう、という計画が進んでいるのだから凄い。中型のCH-46ヘリコプターも360機のMV-22ティルトローター機で代替する計画で、こちらは速度は固定翼機並、輸送能力も陸上自衛隊のEC-225並、UH-60JAの1.5倍でUH-1Hの2倍。ううむ、移動速度を差し引いても陸上自衛隊のCH-47JAに換算してざっと400機くらいの能力ですね。

Img_6747 戦闘ヘリコプターとしてAH-1Wが海兵隊には約200機、この機体は陸上自衛隊のAH-1Sを双発化させた機体で、機数だけで二倍の開きが。下手に海兵隊に戦車の脅威が迫るとやはり海兵航空団が近接航空支援に大挙して飛来するので、たんに二倍、ともいえないのですけれども。このAH-1Wの9割程度はそのままエンジンと電子機器を向上させたAH-1Zに改修されて、なんでもAH-64AとAH-64Dの中間くらいの性能があり、ロングボウレーダーを搭載すればAH-64Dに匹敵する性能になるのだとか。

Img_5799 多用途ヘリコプターとしてはUH-1Nを海兵隊は運用していて、これをAH-1Zと同部品を用いて近代化したUH-1Yの120機に置き換える計画。陸上自衛隊のUH-1J/Hの方が合計で150機以上あるので、優位なんだけれども、これは単に海兵隊が主力輸送にCH-46を充てているから、という理由です。陸上自衛隊のOH-6やOH-1にあたる観測ヘリコプターは運用していないんどあけれども、これは近接航空支援に重点を置いているので航空機と前線航空統制艦からの支援で、観測ヘリコプターの情報を中継する必要が無いからなのでしょうね。

Img_8049 海兵隊並の空中機動能力を陸上自衛隊が持とうとすれば、CH-47JA×200機(現状の四倍)、UH-1J/UH-60JA×400機(現状の二倍以上)、AH-1S/AH-64D×200機(現状の二倍)、というところでしょうか。まあ、ヘリコプターであれば、揚陸艦が無くとも南西諸島の場合給油地点を幾つか設置して飛行すればそのまま島嶼部防衛に充てられるのだけれども、陸上自衛隊の海兵隊化、となると抜本的な空中機動能力の強化、という事になるのでしょうかね。海兵隊に範を採る編成としても、戦車数は余り削減できませんし、揚陸艦で集中と分散を迅速にできる米海兵隊で400両以上のM-1A1を保有しているのですから、輸送艦数が限られている陸上自衛隊は、現状数が下限の前後というべきでしょう。

Img_5399 特科火力も削減しようにも海兵航空団に当たる部隊は陸上自衛隊にないのですから、その分全般支援火力としての特科の重要性は大きいですし、専守防衛政策を採っており開戦即ち本土決戦、という状況下では、長距離特科火力も欠かせません、航空優勢確保には米空軍や海軍空母航空団ほど自信を持てない航空自衛隊の規模を考えれば高射特科の現状維持は必須、災害が多い日本の国土には施設科部隊の数も必要です。少なくとも、陸上自衛隊の海兵隊化ということは、かなりの予算を必要とする事だけは確かなのですよね、一部と言ってもどのくらいの規模を考えて議論があるのかについて、ちょっと情報が無いので何とも言えないのですが、海兵隊化、というのは安易な議論で導き出せる結論では無いと思う次第です。

HARUNA

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富士総合火力演習2010、北澤防衛大臣指揮下で本日実施!

2010-08-29 21:37:40 | 防衛・安全保障

◆九州から北海道までの部隊が支援に参加

 富士総合火力演習、晴天に恵まれ当方行けませんでしたが伝わる話では会場は盛況、部隊は精強だったとのことで何よりです。

Img_3170  本日は北澤大臣も指揮(見学)を執ったとのことで、友人知人から送ってもらった写真を見て驚きました。白馬のマークの90式戦車、これは北海道第7師団の第72戦車連隊に所属する戦車ではないですか!、昨年は第71戦車連隊の車両が参加していましたので、なるほど今年は72戦車ですか。北海道からはるばるの参加、という訳です。

Img_5676  今年度の富士総合火力演習は、注目の10式戦車が展示、参加は先の話ですが展示されるとのことで、このほかAH-64D戦闘ヘリコプターが初めて公開射撃を実施する、ということですし、本土に一両も配備されていない96式自走迫撃砲が参加して、そういう意味で注目の行事、といえました。

Img_7403_1  富士総合火力演習にはどのくらいの部隊が支援部隊として参加しているのでしょうか、そこで少し気になって調べてみました。富士学校、教育支援飛行隊、高射教導隊、中央即応集団、第5対舟艇対戦車隊、第8普通科連隊、第7普通科連隊、第11普通科連隊、第3特科隊、第12特科隊、第302観測中隊。

Img_0680  第72戦車連隊、第1戦車大隊、第1施設団、北部方面航空隊、第5飛行隊、第4対戦車ヘリコプター隊、東部方面航空隊、第12ヘリコプター隊、第1ヘリコプター団、航空学校霞ケ浦分校。そして東部方面隊直轄部隊を始め、後方支援に協力しているとのことです。意外に大規模、という印象でしょうか。

Img_2904 部隊の駐屯地と参加について、少しみてゆきましょう。首都圏を睨む戦略予備部隊であるとともに陸自普通科特科機甲科研究教育体系の総本山である富士学校の富士教導団に加えて富士総合火力演習には教育支援飛行隊、こちらは航空学校の部隊で滝ヶ原駐屯地に駐屯して富士学校の教育を支援するヘリコプター部隊です。

Img_9825  高射教導隊も87式自走高射機関砲を中心に参加させているのだと思います。中央即応集団こちらは推測なのですけれども会場周辺の警備などで参加しているのでしょうか、バス乗り場から歩いていきますと中央即応連隊の高機動車や73式小型トラックをかなり見かけるのですよね。

Img_3949  習志野駐屯地の第1空挺団、こちらは空挺降下の実祖を目的として参加しているようです。そして北海道の第5旅団からは帯広駐屯地の第5対舟艇対戦車隊が参加しており、96式多目的誘導弾の射撃展示を行ったのでしょう。同装備は富士教導団にも装備されていますが、展開訓練、という要素を含んでいるのかもしれません。

Img_0383  全国からも米子駐屯地より第8普通科連隊、福知山駐屯地より第7普通科連隊、東千歳駐屯地より第11普通科連隊が支援部隊として参加しています。米子と福知山については、こちらも想像なのですが出てくる車両は富士教導団の車両が中心なので、迫撃砲や対戦車ミサイルの射撃を展示する目的で参加しているのかもしれません。

Img_1339 特科部隊として姫路駐屯地より第3特科隊、宇都宮駐屯地より第12特科隊、湯布院駐屯地より第302観測中隊が参加しています。特科隊はFH-70榴弾砲の増援でしょうか、特科教導隊と協同して展示を行っているのだと思います、そして第302観測中隊は無人観測ヘリコプターを運用している部隊です。

Img_0298   機甲科部隊として北恵庭駐屯地から第72戦車連隊、駒門駐屯地より第1戦車大隊から90式戦車と74式戦車が参加。そして演習場の整備と会場の設置という一般公開行事である富士総合火力演習に欠かせない支援には高田駐屯地より第1施設団部隊が展開しているとのことです。

Img_9673  航空部隊として丘珠駐屯地の北部方面航空隊、帯広駐屯地より第5飛行隊、木更津駐屯地より第4対戦車ヘリコプター隊、立川駐屯地より東部方面航空隊、相馬原駐屯地の第12ヘリコプター隊、木更津駐屯地の第1ヘリコプター団、霞ヶ浦駐屯地より航空学校霞ケ浦分校のヘリコプターが参加しているとのことでした。

Img_98132  航空機に関しては、ヘリコプターが現在戦に占める位置づけの大きさを考えた場合、富士学校は航空科教育を行っていませんので全国からの支援、というものが必要になる一方で、遠隔地の部隊としては東富士演習場に展開して濃密な訓練を実施する、という事で意味があるわけです。

Img_8056  富士総合火力演習へは、北は北海道から南は九州まで、部隊が支援に参加しています。ううむ、ここまで大規模に参加するのであれば、いっそのこと富士学校だけではなく、施設学校や高射学校も本格的に参加してホークミサイルの陣地展開や対地ではなく対空戦闘の模擬展示、障害除去だけではなく野戦築城や架橋も展示出来れば、と思うのですが。

Img_9576_1  毎年同じ演習が最新装備で見られる、というのが富士総合火力演習ですが、何分前段演習と後段演習の流れにもう一工夫あっても、という声はある事ですし、ね。煩雑でしょうけれども、毎年ごとに年度演習目標、というものを提示して陸上自衛隊の能力を展示してくれれば、と考える次第です。

HARUNA

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衆議院総選挙から明日で一年 自民党から民主党への政権交代

2010-08-28 23:03:29 | 国際・政治

◆政権野党誕生から一年

 明日は富士総合火力演習、飛行が危ぶまれていたF-2や射撃が危ぶまれていた90式戦車も参加するようです。

Img_4674_2  しかし、思い出すのは昨年の富士総合火力演習が、同日、衆議院総選挙だった、という事でしょうか。所要あって総合火力演習終了後はそのまま東京へ、そしてホテルで自民党の惨敗が報じられるのを聞いていました。正直どうなるのか、不安でしたが、しかし、あの衆院選から一年たっていないのですよね、本日の時点では。そもそも鳩山内閣が誕生したのは9月16日、実質一年で首相が3名変わる、という事にもなりかけているわけで、そして日本という国は物凄く変わりましたね。

Img_4753  最高の同盟関係と呼ばれNATOはどうなんよ、と言われていたほど良好だった日米同盟は普天間問題やインド洋給油支援を筆頭にガタガタの状態。防衛予算は無理な削減と任務増大を繰り返して環太平洋合同演習といった重要な訓練にも派遣できないほどの無理強いを続け、下手な融和外交は全て花開き、南西諸島近海での中国海軍の動向活性化と領土紛争拡大の様相を呈しており、普天間問題でタガが外れかけた事で台湾海峡と朝鮮半島の緊張は増大、見事に融和外交が危険な結果をもたらす事を証明してしまい、外交安全保障面では何も日本にとり成果はありませんでした。

Img_8965_2  そもそも自民党が有利な時期の総選挙を逃して不利な時期にまで追い込まれて衆議院を解散したのは経済危機に際して政権交代を行うような政治的空白を作らない、という形で、当時の麻生総理は選挙よりも国民生活を優先した結果、政権を追われる事となりました。新しい民主党は、なにも景気対策を行わずに経済危機を放置すれば経済は急降下するという事を当たり前なのですが証明してしまいました。

Img_1649  そして防衛費よりも高額な子供手当を始めとした支持者取り込みの為のバラマキ政策を実現するために消費税増税や貯蓄税の検討を行うなどしまして、増税と景気回復は両立できるのか、というどこも成し遂げられなかった事に挑戦しようとしています。気がつけば厚生労働省の予算概算要求は28兆円に達する勢いで、高福祉を行おうとしていまして、一方で景気対策を行わずに税収は低下する方向なのですから、国債発行か増税か、とにかく行える手立てを自分から狭めています。政治主導を掲げつつも主導できる能力が無かったために判断に時間が掛かり、現在の異常な円高に際しても介入の可能性をちらつかせることでその時点で介入しない事を表明、状況を悪化させることになり国内製造業は海外退避の決断を迫られている状況です。

Img_9120  何もしない方がいいのでは、というくらいに裏目に出る新政権なのですけれども、しかし何もせずに支持率が得られるのか、と思いきやそうはいかないのが7月の参院選でして、菅直人首相がそのまま国会を経ずして御祝儀相場で高い支持率がある事を自らの支持と勘違いしつつ選挙を行った結果、当然の結果となりました。さて、株価急落と急激な円高に対して必要な時が来れば適切な措置をとる、と首相や財務大臣は発言しているのですが、しかし、適切な時期というのは過ぎつつあります。

Img_4743  穿った見方をすればこれは迫っている民主党総裁選の方が日本経済よりも優先順位にあるのでは、つまり国民の生活よりも党内闘争の方が優先なのでは、と思えてきます。いや、普通に適切は時期は先だ、と考えているのではないか、と言えるかもしれませんが、それはそれで問題でしょう。しかし、決断できない総理、というか与党、いわば政権野党という状況に陥っていますが、この状況下で大規模災害や直接武力侵攻というような有事があった際には、適切に対応することが出来るのでしょうか、非常に不安に思えてきたりします。あの衆院選から僅か一年で、ここまで弾けてしまったのですが、果たしてこの後数年で、日本はどうなるのでしょうか。

HARUNA

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C-2輸送機を原型としてより大型の戦略輸送機を開発できないか

2010-08-27 23:46:56 | インポート

◆C-2の川崎重工が全力を挙げれば可能性も

 自衛隊のパキスタン緊急人道支援部隊海上輸送隊が輸送艦しもきた、とともに横須賀基地を出航したとのことです。

Img_7331  輸送艦しもきた艦上には、防塩皮膜を施されたCH-47輸送ヘリコプターが二機並んでいましたので、三機派遣されるとのことですから、残る一機はロシアの大型輸送機にて派遣されるのでしょう。底で思ったのは、今後、自衛隊のこうした活動が行われる場合、国産のC-2輸送機でもCH-47は輸送できない、という状況が続くのをどうにか出来ないか、ということです。

Img_9678  非現実的ではあるのですが、C-2の技術の延長上に、実証機のようなかたちでもいいのでCH-47JA輸送ヘリコプターや、技術的な目安として戦車のような大型車両も搭載が可能な四発の大型輸送機を量産の為の生産ライン整備という事を度外視して数機程度製造できないだろうか、という話です。

Img_3292  現在、UH-1多用途ヘリコプターを搭載したC-130H輸送機がパキスタンに向かっており、カタールのアルジャジーラテレビでもパキスタンに展開した自衛隊の映像が出ていました。このC-130を搭載能力や巡航速度といった面ではるかに凌駕する輸送能力を持っているのがC-2輸送機です。

Img_0608  かつて、トルコにおいて大地震があり自衛隊が緊急人道支援任務で仮設住宅などを輸送した際には、輸送艦おおすみ、を中心に掃海母艦、補給艦の3隻で艦隊が編成され、迅速に展開しましたが、ハイチ地震PKOのような緊急展開を必要とする際には、日本の輸送機に搭載できない装甲車両などはロシアの輸送機をチャーターして対応していました。

Img_6387  ロシアの輸送機の輸送能力はアントノフAn-124など非常に大きなものがあるのですけれども、例えばルワンダPKOに際して82式指揮通信車を輸送する際には通関手続きの問題で一日モスクワに足止めされるなど、外因要素で遅延の原因となる事を露呈しました。日本に大型輸送機があれば、経路を設定する際にこうした状況を避ける事も出来たでしょう。

Img_1586  この点、C-2輸送機の部隊配備が進めば最大搭載量37t、そして26t搭載時に6500kmを飛行できる、という能力を要求水準として開発していますので、装甲車等の装備や航空機材の輸送が可能となっており、緊急人道支援任務や国際平和維持活動と言った自衛隊の海外での任務を支える有力な装備となります。

Img_5905  10式戦車や90式戦車、99式自走榴弾砲といった特に重量の大きい車両を除けば車両の大半C-2は輸送することが可能なわけです。しかし、航空機、となると、特に今回のようなCH-47輸送ヘリコプターのような装備になりますと、米空軍でも戦略輸送機C-5は別としてもC-17では厳しいものがあるくらいで、もちろんC-2はCH-47の輸送は最初から想定していません。

Img_1023  しかし、日本はCH-47について、大型で高性能である分、取得費用や運用コストが大きいので日本のように多数を運用している国が少ないのですけれども、少ないからこそ需要がある訳で、この大型の機体を輸送できる輸送機が日本にあれば、かなり運用の柔軟性が上がるでしょう。

Img_6693  輸送能力を向上させた、日本初の戦略輸送機。強度試験などの面でもちろん、そう簡単にはいかないのですがC-2の胴体部分を延長を前提に大型化して、主翼部分も大型化、現在の双発を四発に拡大する、という方式でエンジンは現行通りアメリカ製を採用し、搭載能力は80~90t、C-17以上C-5未満の輸送能力を目指します。巡航速度が大きく、国際航空航路で運用可能なC-2の性能を継ぐことが出来れば、輸送機としての能力はより大きくなります。

Img_7274  実現すれば、陸上自衛隊の主要装備御大半が航空自衛隊の輸送機により輸送することが可能となるとともに、場合によっては米空軍のC-5B輸送機の後継機に、こちらはアメリカが求めるような多数を国内で生産することは難しいので、ライセンス生産を行ってもらう事となるのでしょうが、提示することが出来るかもしれません。

Img_9651  C-5Bについては老朽化が進んでいますし、C-17は来年で初飛行から20年、特に海兵隊用ヘリコプターの空輸などで戦略輸送機の需要はある訳ですから、開発して、場合によってはアメリカに提示し、アメリカでの生産を打診した場合、可能性はあります。アメリカでの量産が実現した場合は小牧のC-130Hの後継機に逆輸入、という事も考えられるかもしれません。技術的予算的に厳しいかもしれませんが、景気刺激策にもなりますし可能性は模索してみては、とも。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十二年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報5

2010-08-26 20:25:11 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

日中は暑いというか熱いですが、夕方のそよかぜは秋を思わせる今日この頃です。夏も終わりと言いますか、今年も乗り切れたのか、と。

Img_7060  この夏は護衛艦の寄港や体験航海が多かったのですが、明日も護衛艦ひゅうが、が宮崎県日向市の細島港に入港します。満載排水量19000㌧、海上自衛隊最大の護衛艦である本艦は、伊勢湾展示訓練終了後に、そのまま九州へ、というかたちで、29日まで毎日一般公開を予定しています。

Img_2577  富士総合火力演習は、いま、予行が行われていて、夜間には夜間演習が一般非公開で行われています。本番は29日、入場券の抽選倍率は年々高まっているとのことで様々な意味で注目を集めている行事です。あの最新鋭車両が展示され、あの機体が初の公開実弾射撃、本土に全く装備されていないあの車両が登場するとのこと。

Img_0375  出雲駐屯地サマーフェスタ2010が27日に行われます(13旅団HPによれば27日曜日、とのことなので29日に開催される可能性が高いです)。一見、夏祭りのような響きですが、一般開放、音楽演奏、訓練展示、装備品展示、戦車高機動車体験試乗が行われるとのことで駐屯地祭のようですね。出雲駐屯地は第13偵察隊が駐屯、日本海側の駐屯地ということで、近年、充足率や装備の向上などが行われている部隊です。

Img_7175  掃海艇ゆげしま、が北海道奥尻港で一般公開されます。ゆげしま(MSC-679)は、うわじま型掃海艇の一隻で満載排水量570㌧、機雷掃海を行う観点から磁気機雷に反応しないよう船体は木造で大陸棚程度の水深に敷設された機雷にまで対応できる中深度機雷掃海・掃討能力をもっています。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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富士総合火力演習の90式戦車 国産装備先端技術の結晶が撃ち出す120mm砲弾

2010-08-25 22:48:28 | 防衛・安全保障

◆発砲焔は今年度も観覧者の度肝を抜くでしょう!

 陸上自衛隊の普通科・機甲科・特科職種に関して現代戦の火力行使の実情を教育展示するとともに、最大の公開実弾演習である富士総合火力演習は今週末、一般公開を迎えます。

Img_8394  陸上自衛隊の装備はどのようなものか、また陸上自衛隊の任務遂行能力の高さについて、一般に公開する事で主権者たる国民に示し、対外的な圧力に対して日本の防衛力が万全であることを示す目的があります。また諸外国の駐在武官を招き、同盟国や友好国に対しては日本の防衛力が諸国の信頼にこたえる事が出来ることを明示し、日本の領域や主権、国民の生命財産に対してよからぬ考えを抱く国に対しては、非友好的な行為をわが領域で為すならばそのときはあの標的と同じ運命だ!、ということを誇示する目的もあります。そうした中で、日本の技術の結晶、90式戦車の実弾射撃が持つ意義は非常に大きいです。専守防衛として、言い換えれば開戦即本土決戦という政策を維持する日本では、日本の地形に合わせた国産装備の水準が抑止力を左右します。そこで120㍉滑腔砲、1500馬力エンジン、複合装甲を備えた典型的な第三世代戦車に主砲弾自動装填装置、目標自動追尾装置を加え、50㌧という重量にまとめた90式戦車が陸上での抑止力について決定打となります。しかし、この90式戦車がトラブルを起こしてしまいました。

Img_4493  90式戦車の砲身飛び散る=大規模演習に向けた射撃訓練中-陸自 20日午前11時5分ごろ、静岡県御殿場市の陸上自衛隊東富士演習場畑岡射場で、90式戦車4両が今月末に行われる陸自の「富士総合火力演習」(総火演)に向けて実弾射撃訓練中、1両の砲身の先端が破損するとともに、砲身と砲弾の破片が周囲に飛び散った。 破片の一部は戦車の約200メートル後方に設置された観客席を破損した上で、一部が付近の民有地に落ちたが、けが人はおらず、ほかの設備や戦車などに被害はなかったという。 訓練を実施した陸自富士学校(静岡県小山町)などによると、戦車4両は前進しながら、砲身を90度左に向けて射撃訓練を実施。砲身が破損した戦車は最後部にいた。砲身は先端から約50センチが破損していたという。(2010/08/20-23:47)http://www.jiji.com/jc/zc?k=201008/2010082000938以上です。このように、主砲の砲身が破裂するという事故が発生して、これで原因が究明されなければ富士総合火力演習そのものの実施に関わる、という事になりました。なんとなれ、主砲弾は音速の五倍という速度で相手の戦車の装甲を突き破るものなのですし、その破片が観客席に到達、というのは本番であれば悪夢です。しかし、90式戦車の参加は無しで実施する、90式戦車は発砲のみ行わず参加、と情報源の怪しい情報が飛び交いましたが、本日、動きがありました。

Img_6751土詰まった状態で砲弾発射」が原因 戦車事故・・・[2010/08/25 18:15]  御殿場市の東富士演習場で戦車の砲身の中で砲弾が爆発し、破片が民有地まで飛び散った事故について国は25日、地元に対し砲身内に土が詰まった状態で砲弾を発射したことが事故の原因と説明しました。 今月20日、東富士演習場で富士総合火力演習に向けての射撃演習をしていた90式戦車の砲身のなかで砲弾が爆発し、その破片が200メートル離れた仮設の観客スタンドや、民有地にまで飛び散る事故がありました。 25日の安全対策委員会の拡大会議は、地元の求めに応じて国が今週末の富士総合火力演習を前に開きました。この中で国は、訓練走行中の戦車が道路わきの土手を削り、砲身内に土が詰まった状態で砲弾を発射したことや、砲身に草が付着していることに指揮官が気付いたものの、砲撃中止の無線連絡が伝わらなかったことが事故の原因と説明しました。 また、今月28日と29日の総合火力演習での90式戦車の砲撃について、地元は一般の観客も訪れることから事前に立会い安全を確認したうえで実施を了承する考えを示しました。http://.digisbs.com/tv/news/movie_s/20100825000000000069.htm。 ◆

Img_4160  90式戦車は参加し、実弾射撃を行うようです。つまり、東富士演習場を射撃位置へ向かう際に砲身が擦ってしまって、土が詰まった、ということです。想像を絶する圧力で戦車砲弾を打ち出すのですから、行き場を薄なった圧力が先端部分を破裂させてしまった、ということのようです。90式戦車の主砲は44口径砲(120mm×44=砲身長)でして、現在、一部戦車に搭載されており砲身を大きくすることで発射薬の燃焼効率を向上させ初速と威力を向上させる55口径砲が、実は長過ぎて取り回しが苦労する、という、つまり旋回させる際に擦ってしまうという話があるのですが、こういう事もあるのか、という一コマでした。何となれ、射撃が出来るようでよかったです。諸外国の武官を招くのですから、陸上自衛隊の抑止力にも関わる問題です。ここで射撃できなければ、影響は大きいでしょう。また、見学者も空包が用意されていない90式戦車の力強い姿を楽しみにしている方は多く、実弾射撃が行われる見通しというのは嬉しい一報でしょう。撮影のコツはとにかくシャッターを押し続ける事です。30~40枚の連続撮影を続ける事、そして横一列に並んだどの戦車が射撃するのかは、なかなか聞き取れませんので、あまり望遠ズームに頼るのではなく、広角のレンズを併用する事がコツです。今年は遂にあの機体が初の公開実弾射撃を行いますし、今年は北海道から本土には一両もないあの車両が持ち込まれます。入場券をお持ちの方はお楽しみに!

HARUNA

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ソマリア沖海賊対処 護衛艦せとぎり、護衛艦まきなみ、アデン湾へ出航!

2010-08-24 23:23:25 | 国際・政治

◆日本での報道が少ないアデン湾海上護衛戦

 第六次派遣海賊対処行動水上部隊として護衛艦せとぎり、護衛艦まきなみ、により部隊が編成され、せとぎり、が大湊基地を出航したとのことです。

Img_7926  第一次派遣海賊対処水上部隊として護衛艦さざなみ、護衛艦さみだれ、が派遣された際には大きく報道されたのですが、第二次派遣海賊対処行動水上部隊として護衛艦はるさめ、護衛艦あまぎり、が派遣された時は大きく報道がトーンダウンし、第三次派遣部隊として、護衛艦たかなみ、護衛艦はまぎり、が派遣、第四次派遣部隊として護衛艦おおなみ、護衛艦さわぎり、が派遣された際にはほぼ報道が無くなってしまい、現在は第五次派遣部隊として、護衛艦むらさめ、護衛艦ゆうぎり、が任務に当たっている最中ですが、派遣されている事さえも国民の耳目に触れなくなっているように思います。

Img_1096 こうした中で派遣部隊についての報道がありました、東奥日報より記事の引用です。2010年8月24日(火)    -- 海自大湊 ソマリア沖へ3隻目派遣 ・・・ ソマリア沖・アデン湾での第6次派遣海賊対処行動部隊として、むつ市の海上自衛隊大湊基地の護衛艦「せとぎり」(3550トン)が23日、隊員ら約200人(海上保安官4人含む)を乗せて大湊港から出航した。佐世保基地の護衛艦「まきなみ」と海上で合流し、現地へ向かうhttp://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2010/20100824160142.asp

Img_6353  海賊対処任務について、もう少し報道があってもいいのではないか、と考えるのですがどうでしょうか。そういいますのも、我々日本国民は選挙民としての主権者の地位にある訳ですから、防衛費の在り方についても意思を示さなければなりません。しかし、経済活動や公共福祉という形で秩序と安定というものを維持させる最低水準の安全以上に防衛に費用を投じることは忌避しがちです。一方で、装備体系や任務範囲を示す防衛大綱改訂が近づいている訳ですので、欧州や中東と日本を結ぶ、現在の日本における輸出入の根源の一つに位置する地域の護衛を行っている、ということは知る必要があるのです。

Img_6305  護衛艦定数はどうするべきか、すなわちそれは定員や予算の面に及ぶのですが、考える必要があります。護衛艦せとぎり、護衛艦まきなみ、はアデン湾に到着後、現在任務に当たっている護衛艦むらさめ、護衛艦ゆうぎり、から任務を引き継ぎます。この間まで、海上自衛隊は交代の護衛艦として、せとぎり、まきなみ、を向かわせているのですから、実質的に四隻の護衛艦が海賊対処任務ということで日本を離れている訳です。護衛艦定数を47隻で充分、という事として除籍艦に対し代替艦を建造しない、という現状ですから一時的とはいえ四隻が海賊対処任務という事で離れてしまう事は訓練体系や周辺海域の警戒監視に少なくない影響が及びます。

Img_9116  派遣されている護衛艦むらさめ、護衛艦ゆうぎり、ですが、しかし日本に帰国してすぐに別の任務に就く事が出来る訳でもありません。三か月以上、強烈な太陽光に曝され、補給以外の整備は艦上で可能な範囲内とされており、なおかつ常に動き続けている訳なのですから帰国したのちには造船所のドックに一旦入渠して、消耗箇所や減耗部分を修理しなくてはなりません。護衛艦は25年以上運用される訳なのですから、保守整備が完全に出来なければ艦の寿命にも響いてしまいます。この為、稼働艦というものは決して多くはないのです。

Img_6298  海上自衛隊の任務の増大を考えれば、もう少し人員や装備の規模は増勢されていてしかるべきです。相当無理を重ねていまして、訓練や広報が削られています。このままでは事故や志願者数に響く可能性もあるのですが、緊縮財政、という難題が待ち構えています。こうした中で、子供手当を筆頭に事業評価の怪しいバラマキ政策が行われ、昨今の報道では降霊術イタコの研究に予算がつけられたり、政府主導で不可能技術を実現するための研究所を新設してタイムマシンの開発も含めた先端研究に予算が投じられる構想も出されており、予算の配分が目茶苦茶な状態です。

Img_2236  繰り返すようですが、アデン湾は日本から遠く離れているものの地中海を経由して欧州と日本を結ぶ海上航路の重要な国際海峡ですし、アデン湾に続く紅海の東側には産油国サウジアラビアがあります。石油や物資、部品などは日本に届くのが当たり前なのですが、この当たり前という日常を脅かしているのがソマリア沖海賊事案です。この日常を護るべく海上自衛隊は各国海軍と協同して任務に当たっているのですけれども、その海上自衛隊は予算を縮減され、任務増大に対して対処が困難となってきています。予算が削られるのは防衛費縮減に政治が動いているからです。

Img_1600 このように政治が動いているのは防衛費を縮減するという政権公約を掲げて当選した民主党政権がこれを民意だと受け止めているからです。民意として支持されている背景には日常が維持され、国民にとり日常が脅かされているようには認識されていないからです。しかし、これは事実誤認であり、加えてソマリア沖海賊事案は完全に終息する見通しが無い、一時的に終息したとしても各国海軍部隊が撤収すれば再度活性化する可能性があるため、いつまでこの状況を続けなければならないのか、不明確であるわけです。こうした状況で無理を重ね、万一どこかで事故のような綻びが生じれば、結局責任を問われるのは今努力を重ねている側です。こうした事を避けるためにも、海賊対処任務についてもう少し報道、そして議論があってもいいのでは、と思う次第です。

HARUNA

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玄武2010演習発動! 北部方面隊隷下師団・旅団より1万5000名が参加

2010-08-23 23:37:45 | 防衛・安全保障

◆北方からの脅威再興に備える大規模演習

 北部方面隊が大規模演習を行うという記事は北海道新聞の引用で紹介しましたが、産経新聞に北部方面隊演習の開始を報じる記事が掲載されていました。

Img_2946 「最大限の能力を発揮」 陸自北部方面隊の総合戦闘力演習がスタート・・・ 陸上自衛隊で最大の方面隊である北部方面隊(北海道)の総合戦闘力演習が23日、北海道千歳市の北海道大演習場などで始まった。午前10時半からは、東千歳駐屯地の第2滑走路で訓練開始式が行われ、千葉徳次郎・北部方面総監は「相好戦闘能力をいかに最大限発揮するかが重要」と演習の意義を強調した。

Img_2906 この演習は、北部方面隊が平成18年度から5カ年計画で行っているもので、今年度が最終年の総仕上げとなる。演習名は「玄武2010」と命名され、陣地などを構築する「防衛作戦準備」と、防勢によって敵を阻止した体制から攻勢作戦に転移する「攻勢作戦」の2つの場面で実施する。北部方面隊の第2師団、第7師団、第11旅団など約1万5千人の隊員、約120両の戦車、約40門の野戦砲、約50機の航空機が参加。

Img_2784  北海道大演習場のほか、別海町の矢臼別演習場、上富良野町の上富良野演習場などで繰り広げられる。 演習に先立って行われた訓練開始式には、北海道大演習場に約4千人、矢臼別厰(しょう)舎(しゃ)ヘリポートに約2千人の隊員が出席。千葉総監の「やるべきことをやる、という一言に尽きる」との激励に、真剣な表情で聞き入っていた。

Img_2899 演習は9月5日まで「防衛作戦準備」、同11日から14日まで「攻勢作戦」が実施される。引用は以上です。師団や旅団の訓練検閲を統合した方面隊規模の訓練、という位置づけですね。2010.8.2311:53http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100823/plc1008231157007-n1.htm

Img_2963 大規模演習、というと最初に行われたのは1955年の“北部方面隊秋季演習”にまでさかのぼる事が出来ます。創立間もない陸上自衛隊にあって、最初の大規模演習となったこの演習では、島松演習場・千歳演習場において第2管区隊・第5管区隊の対抗形式で行われ、人員20000名、車両2500両が参加しました。

Img_2940  続いて1956年にはこの演習の延長上として第7混成団と第1空挺団の参加を以て対空挺演習が実施、保安隊時代から自衛隊時代に移行するとともに構築が急がれた北方重視姿勢の完成を見る事となりました。今回の玄武2010演習も、冷戦時代の4個師団体制を基幹としていた北部方面隊から、現在の2個師団2個旅団体制に改編された北部方面隊の能力を北方からの脅威に対して提示する、という事が大きな目的となるのでしょうね。

Img_2917_1 ロシアが実施したボストーク2010演習を筆頭に、近年、極東ロシア軍の能力強化が顕著です。朝鮮半島や北方領土問題、中ロ関係を睨みロシア軍は冷戦時代の規模を彷彿とさせる水陸両用部隊の再建を実施しており、航空戦力や陸上戦力の再建も冷戦後としては異例の規模で進められており、この時期に日本側としても姿勢を見せておくことは重要です。

Img_2940_1  姿勢を見せつけた演習、というと1983年の“北斗演習”があります。北部方面隊が創設30周年に併せて初めて実施した1982年の“北部方面隊火力戦闘演習”、その翌年に行われた“北斗演習”では、北部方面隊とともに米陸軍緊急展開部隊である第9軍団が日米合同で北海道地域における防衛演習を実施しています。

Img_2928  北斗演習はソ連の脅威に対しての日本の姿勢を明確に示した演習、というもので当時としては空前の規模の日米合同演習でした。第一段階として日米間の連携を図るヤマサクラ3演習が1982年に行われています。ヤマサクラは日米指揮所演習で陸士出身(陸士60期)の渡辺敬太郎総監が米陸軍第9軍団長ワインアンド中将とともに統裁官を務め実施されたもので、続いて渡辺総監は陸幕長、ワインアンド中将は在日米軍司令官に昇進した上で実施されたのが北斗演習でした。

Img_2873_1  北斗演習の期間は10日間で、北部方面隊からは第11師団を訓練担当部隊として第10普通科連隊を基幹に1500名が、第9軍団からは第2-2歩兵大隊を基幹に950名が参加、人員の規模だけで見た場合は数千名が参加する北方機動演習の方が大きいですが、北部方面隊火力戦闘演習、ヤマサクラ3、北斗演習、という演習が連動されて実施されたという点を考えれば意味合いは大きく、何よりも日米の一体化という事をソ連に誇示出来ましたので、1979年のソ連軍アフガニスタン侵攻以来、新冷戦という局面を迎えていた冷戦構造に際して、少なくとも極東地域では楔を打ち込む事が出来たのだろう、と言えます。

Img_2946_1  北部方面隊は重装備重視という装備体系を採っており、北方からの大規模着上陸を含めた脅威に抑止力を発揮していますが、一方で西方からの脅威に対しても戦略予備部隊という位置づけで高い能力を保持する、という事は大きな意味があります。冷戦終結から二十年以上が経ちましたが、極東地域は朝鮮半島と台湾海峡という問題があり、緊張は比較的高いまま推移しました。ここに北方脅威の再燃と中国の軍拡、北朝鮮の核武装という状況が重なっている訳ですので、日本としても姿勢を見せる必要は大きい訳です。

HARUNA

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パキスタン大水害へ自衛隊国際緊急援助隊派遣命令8月20日発令!

2010-08-22 22:53:38 | 防衛・安全保障

◆北澤防衛大臣が全自衛隊に命令

 パキスタンの水害は、イタリアの国土に匹敵する面積が沈み、主要産業である綿花栽培は畑ごと全滅、橋梁は広範囲に損傷を受け、被害無しと思われた地域が役場ごと跡形なしであったり、想像を絶する被害が出ています。

Img_9223  インダス川流域に国民の75%以上が生活するパキスタンでの水害です。しかし、ザルダリー大統領が水害発生時に外遊に出ていたなどパキスタン政府による救助活動は停滞状況にあり、現在アメリカ海兵隊が27機のヘリコプターを派遣して救助活動に当たっています。こうした中でアメリカの要請で自衛隊へのヘリコプターの派遣が要請され、日本が踏み切った訳ですが、これはアメリカで大きく報じられています。

Img_7346  パキスタン政府より8月9日、日本政府に対して国際緊急援助隊の派遣要請が出され、事前調査隊等の報告の結果、自衛隊の派遣が妥当であると結論が出され、陸上自衛隊からヘリコプター部隊が、そのヘリコプター部隊の派遣支援に航空自衛隊と海上自衛隊が協力する事となりました。

Img_1061  8月20日、防衛大臣により国際緊急援助隊の編成命令が発令されました。まず、派遣規模はUH-1多用途ヘリコプター3機、CH-47輸送ヘリコプター3機を装備する200名規模の国際緊急航空援助隊を編成、国際緊急航空援助隊はパキスタンにおける物資及び人員輸送にあたり、魔キスタン政府との統合運用調整所を設置し、20名を派遣する、というものです。

Img_3194  人員、航空機及び航空機整備用機材を輸送するために、海上自衛隊からは輸送艦1隻から成るパキスタン国際緊急援助海上輸送隊を編成。航空自衛隊からは第一パキスタン国際緊急援助空輸隊としてC-130H輸送機8機を準備し、6機を輸送任務に、2機を予備機として充てるべく派遣するとのことです。

Img_0278  第一次派遣部隊は西部方面隊が主力となる編成で、報道によれば本日、最初の輸送機部隊のC-130輸送機が航空自衛隊小牧基地を発進、明日までに熊本において陸上自衛隊のヘリコプターを搭載するとのことです。UH-1についてはC-130H輸送機が空輸、おおすみ型輸送艦がCH-47輸送ヘリコプターを輸送する、という方向で間違いなさそうです。

Img_7229  アメリカは今回の災害への対処を重要視しています。パキスタンの水害ですが、この水害被害により生じた無政府状態に乗じてアフガニスタンとパキスタン国境付近の山岳地域に展開していたアルカイーダ系組織が勢力を拡大しつつあるようで、この地域が完全な無政府状態、テロの拠点となる破綻国家と同様の状況に陥ることを防ぐためにも人道支援が必要という位置づけで派遣しているのです。

Img_7010  今回は被災地がカイバルパクトゥンクワ州という内陸部の高山地帯で、本来は中国側から救援を行うのが望ましいのですが、中国側からは責任ある行動を採りたい、としつつも声明以外の救援は全く行われていないようで、海兵隊のヘリコプターが重要な輸送手段となっています。ここに6機の陸上自衛隊ヘリコプターが加わるという意義は大きいでしょう。高山部での任務には苦労が伴うでしょうが、被災者1600万、自衛隊の能力に世界が注目しています。

Img_7421  ところで少々話題は逸れますが、菅直人総理が、三自衛隊の幕僚長と懇談するに当たり、予習したところ防衛大臣は自衛官だと思っていたのに違ったという事、自衛隊の最高指揮官は総理大臣で自分だという事を知ったようです。前の観艦式で副総理として出席した時に傍らの北澤大臣を自衛官と思っていたのですね。こうした指揮官では不安ではありますが、法律は法律です。

HARUNA

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