ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『刑事ドラマ名作講義』

2024-06-09 16:16:05 | コレクション

先週『帰ってきた あぶない刑事』を観に行ったショッピングモールの本屋さんで「月刊 映画秘宝」の最新号をパラパラと立ち読みしてたら、今年4月に発売されたばかりの新書『刑事ドラマ名作講義』(星海社 刊/太田省一 著) を紹介した小さな記事が眼に飛び込んで来ました。その本屋さんで探したけど見つからず、即インターネットでポチッ。

映画を観に行かなければ知らずに終わったやも知れず、なんだか運命に導かれたような気がしつつ、持ち前のアンテナが働いて見事キャッチしたような気もしたり。

いずれにせよ、何かを「とても好き」であり続けると、こういうことも起きるんですよね。



『七人の刑事』『太陽にほえろ!』から、『古畑任三郎』『踊る大捜査線』『相棒』『MIU404』まで。テレビの歴史に燦然と輝く、名作「刑事ドラマ」19選を徹底解説!

テレビの黎明期以来、「刑事ドラマ」はつねにテレビドラマの中心にあり続けてきた。『七人の刑事』など、いまの刑事ドラマの原点となった作品が登場する1960年代から、『太陽にほえろ!』を筆頭に多彩なタイプが生まれた1970年代、『あぶない刑事』のようにコミカルな要素がヒット作の条件となった1980年代、警察組織をリアルに描いた『踊る大捜査線』など重要な変革が生まれた1990年代、そして刑事ドラマの歴史を総合するような『相棒』が始まった2000年以降まで。

日本の刑事ドラマ繁栄の理由を、歴史と作品の両面から深掘りする堂々の432ページ! (以上、ショッピングサイトに掲載された紹介文より)

で、『ダイヤル110番』(’57) を起点とする刑事ドラマ約70年のヒストリーを俯瞰しつつ、著者が深堀りする対象に選んだ作品が、以下の19本。

1 /七人の刑事
2 /特別機動捜査隊
3 /太陽にほえろ!
4 /非情のライセンス
5 /俺たちの勲章
6 /Gメン’75
7 /特捜最前線
8 /西部警察
9 /噂の刑事トミーとマツ
10 /あぶない刑事
11 /はぐれ刑事純情派
12 /古畑任三郎
13 /沙粧妙子―最後の事件―
14 /踊る大捜査線
15 /ケイゾク
16 /相棒
17 /警視庁・捜査一課長
18 /BORDER
19 /MIU404

異議なし!のラインナップではあるけど、ちょっと驚いたのが17番目の作品。これを特別視してるのは私だけだろうと思ってた、あの『警視庁・捜査一課長』が入ってる!

対象を連ドラのみに絞り、主人公が警察組織に属さない『ザ・ガードマン』や『キイハンター』等は除いても何百作とあるであろう刑事ドラマの、言わば頂点として選ばれた19本に、あのマニアックな番組が!w

その時点でもう、著者=太田省一さんはホンモノだ!と確信しました。いつぞや爆笑問題さんのラジオ番組にゲスト出演してた自称「刑事ドラマ研究家」さんとは全然レベルが違う!

実際、さわりだけ読んでも取材量と考察力がハンパじゃない。本のタイトルだけ見たときは「講義って、なんか上から目線やな」「わしに勝てるんか?」なんて思ったりしたけど、失礼致しました。

私がこのブログに“レビュー”と称して書いてるのは単なる感想文で、必要最小限の情報は調べて載せるけど、基本的には「好きか嫌いか」「おっぱいが出るか出ないか」で評価を下す、ただの独り言。

“講義”に必要なのは圧倒的な情報量と的確な分析力、そして個人的な好みを排した客観的な目線と、理路整然とした言語(文章)力。全てにおいて私は足元にも及びません!

ただ、刑事ドラマのことをもっと詳しく知りたい!と思ってる人にはバイブルになり得るけど、それ以外の人にはもしかすると、偏愛に満ちた私のブログの方が面白いかも知れない。いっさい無許可で載せてる画像も満載だし!(名作講義は残念ながら写真が一点も使われてません)

このブログを「おっぱい」目当てで訪問してるに違いない皆さんにとっては、ほぼ価値のない本と言えましょう。ほんとド変態の巣窟ですね!

それはさておき、まだ『あぶない刑事インタビューズ』が三分の一ぐらいしか読めてないもんで、本格的な受講は後日となります。せめて、著者による各作品のキャッチフレーズをここに抜粋することで、その視点の客観性や考察の的確さが伝われば幸いです。

☆テレビの社会的使命を担った刑事ドラマの理想形『太陽にほえろ!』。

☆青春ドラマの時代に生まれたバディもの刑事ドラマの原点『俺たちの勲章』。

☆無国籍な空間で繰り広げられる個性派たちのハードボイルド群像劇『Gメン‘75』。

☆時代に左右されない面白さ。脚本の力で魅せる刑事ドラマ『特捜最前線』。

☆まるで西部劇のような銃撃戦! 映画のスケールを目指した娯楽大作『西部警察』。

☆いまでもバディものを代表する名作。トレンディドラマ的「軽さ」の凄み『あぶない刑事』。

☆人情派刑事と事情を抱える犯人。変わらない庶民の哀歓に共感する『はぐれ刑事純情派』。

☆警察という組織の細部にこだわり、刑事ドラマの文法を書き換えた『踊る大捜査線』。

☆「変人刑事」ゆえに真相にたどり着く、杉下右京が決して失わなかった青臭さ『相棒』。

☆刑事ドラマの花形部署が舞台。2時間ドラマの世界観がルーツ『警視庁・捜査一課長』。

☆女性スタッフたちが手掛けたバディものの成熟したかたち『MIU404』。

……参りました。ウチはやっぱり「おっぱい」で勝負するしかありません。もっと真面目に刑事ドラマを語って欲しいとおっしゃる方は、この本がありますから迷わず私の飛行機から飛び降りて下さい。

☆☆☆☆☆☆☆

ところでこの機会に、我が家にある“刑事ドラマ研究本”のコレクションをざっと紹介させて頂きます。



映画『さらば あぶない刑事』公開に合わせて2016年に発行された、洋泉社MOOK(映画秘宝EX)『にっぽんの刑事スーパーファイル』。

『刑事ドラマ名作講義』に比べると“広く浅く”な内容だけど、そのぶん読み易いし、関係者インタビューやスチール写真も掲載された充実の内容で、入門書としては最適かも知れません。

『大都会』シリーズや『大追跡』、『大激闘/マッドポリス’80』『警視ーK』など“日テレ火曜21時枠のアクションドラマ”にけっこう頁を割いてるところが如何にも「映画秘宝」らしい!



同じ枠で放映された『探偵物語』や『プロハンター』も含む一連の作品を深掘りした2015年発行の『NTV火曜9時/アクションドラマの世界』は、山本俊輔&佐藤洋笑の共著による約500ページの単行本。



日テレ火曜21時枠ドラマの中でも『大追跡』のみにスポットを当てた、おかだ わか編·著によるワイズ出版の単行本『沖雅也と“大追跡”』は、『太陽にほえろ!』や『俺たちは天使だ!』など他の出演作も通して“沖雅也”という稀代のアクションスターを語り尽くす究極のファンブック。2008年に発行されました。



日テレの公式本や岡田晋吉プロデューサーの著書(回顧録)はたくさん出てるのに、客観的な視点による研究本が(同人誌は別として)意外と見当たらないのが『太陽にほえろ!』。

唯一、それに近い内容と言えなくもないのが、1993年に発行されたスターツ出版の単行本『毎週金曜夜8時 君は太陽にほえろ!を見たか? 〜熱き刑事達、今ここに甦る〜』。

生粋のマニアから見れば“広くて浅い“ファンブックって感じだけど、岡田プロデューサーの著書すらマカロニやジーパンの話題に偏りがちな中、ちゃんと全メンバーに光を当てた構成に私は感動しました。

特に、出演者インタビューに選ばれたのがボン=宮内淳さんとドック=神田正輝さんっていうセンスが素晴らしすぎる!(ありがちなゴリさんや殿下、ロッキーあたりは真面目すぎて面白くない。←私感です)



2008年と’09年に発行された、洋崎文移 編·著による『“七人の刑事”と幻の刑事ドラマ』と『“特別機動捜査隊”/物語の検証』は、研究本というよりは資料本。特にドラマ本編がほとんど現存しない『七人の刑事』の資料収集に人生を懸けたような、著者の執念には圧倒されます。



2003年から’09年まで全8刊が発行された辰巳出版のムック『刑事(でか)マガジン』の記念すべき創刊号。巻頭特集は結果的に痛すぎる記憶となった復活版『西部警察』。

前回の記事に書いた通り東映の息がかかったムックゆえ、当時まだ現役だった『はぐれ刑事純情派』やスタートして間もない『相棒』、そして過去作も『Gメン’75』を中心に東映系の作品が特集されがちだけど、初期は東宝の『太陽にほえろ!』や大映の『噂の刑事トミーとマツ』等へのリスペクトもちゃんと感じられました。

後期は『相棒』シリーズの提灯ムックに成り下がった印象だけど、刑事ドラマのみに特化した数少ない本ですから感謝の気持ちしかありません。



刑事物に限らずだけど、毎回1つの番組を大々的にフィーチャーする隔月刊『テレビジョンドラマ』は‘80年代に生まれた雑誌で、まだ読者が文通コーナーで(サークルの会員募集やビデオテープの取引目的で)個人情報を堂々と晒してました。

公式本が発売されてない『ジャングル』や『ゴリラ/警視庁捜査第8班』『刑事貴族』等の特集号はとても貴重かと思います。



1985年(昭和61年!)1月号=太陽にほえろ!特集第1弾では“本編フィルムのコマ焼き”という、当時としては画期的な試みが敢行されてます。最後に「大好きな番組だからこれまでに無い特集を組みたかった」とのコメントが記されており、編集部の熱い心意気とTVドラマ愛が伝わって来ます。

この雑誌が廃刊されて以降、やがてテレビ雑誌の表紙はどれもこれも横並びでジャニーズタレント一色になっちゃいました。心意気はあっても圧力に屈するしかない、コンプライアンス時代の到来です。



ミリオン出版が『太陽にほえろ!』生誕40周年のタイミングで刊行したコンビニ本『男泣き!刑事ドラマ天国』。

『刑事ドラマ名作講義』がNHKのドキュメンタリー番組だとすれば、こちらは民放のバラエティー番組みたいにラフな感じ。マニア以外の人でも楽しめる点において、今回紹介した中で一番オススメしやすい本かも?

特筆すべきは『デカワンコ』&『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』という“超”のつく異色作が、歴史的名作群と肩を並べて紹介されてること。2012年当時(旧ブログ)にも書いたけど、編集部に多部未華子さんのファンがおられるに違いありませんw



そしてトリは再び洋泉社「映画秘宝」、その第4弾ムックとして1996年に発行された『男泣きTVランド』。

刑事ドラマというジャンルの縛りは無いけど、我々世代を夢中にさせた’70年代“テレビ映画”への愛を同世代のライター陣が各々(悪口も含めて)思い入れタップリに綴ってます。

表紙が松田優作さん、裏表紙が萩原健一さんである事からも分かるように、おのずと刑事物や探偵物が中心になるワケです。




「暴力・犯罪・差別・友情・挫折・反体制……あの頃、ブラウン管は男たちの血と汗と涙で濡れていた!」

……とのキャッチフレーズに、時代の変化に抗おうともがくライター陣の心情が滲み出てます。『刑事ドラマ名作講義』とはまったく対照的に、私感と曖昧な記憶だけで書いてる感じ(たとえば好き嫌いとか、おっぱいが出る出ないへのこだわりとか)が私のブログに大変よく似てますw

原点はここにあるんですよね。だからトリに持ってきました。


 

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『相棒 -劇場版-』

2024-06-08 17:17:13 | 日本映画

劇場版の大ヒットがその人気を決定づけた刑事ドラマと言えば『あぶない刑事』と『踊る大捜査線』、そしてこの『相棒』も代表格の1つでしょう。

(どうでもいいけど連ドラを映画化するとフジテレビは“◯◯THE MOVIE”、テレビ朝日は“◯◯劇場版”、TBSは“映画◯◯”と表記する慣わしがあるみたい)

私は『相棒』という番組を「日本の警察ドラマを全て“刑事がただ突っ立って謎解きするだけの紙芝居”にしてしまったA級戦犯」としてずっと揶揄して来ましたけど、実は2008年に公開された劇場版第1作『相棒 -劇場版-/絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』は映画館で観てたりします。

当時はまだ両親が元気で休日はフリーだったし、隣町にシネコンがあったし(現在は閉鎖)、愛読してた年1回発行のムック「刑事マガジン」で猛プッシュされてた影響もあり、どこがそんなに面白いのか確かめたくなったんですよね。

今思えば「刑事マガジン」は東映の息がかかったムック(元はと言えばテレ朝&東映制作による特撮ヒーロー番組を特集した本のバリエーション)だから、同じテレ朝&東映の勝負作をプッシュするのは当たり前なんだけど。



観たら面白かったですw (脚本は『つばさ』『スペシャリスト』等の戸田山雅司さん)

そりゃ当時すでにTVシリーズがシーズン6まで数えてた人気作の、満を持しての映画化だからつまんない筈がないし、その確信が無ければいくらヒマでも観に行ったりはしません。

でも正直、あんなにヒットするとは思いませんでした。PR面で圧倒的に有利なテレビ局映画とはいえ、『あぶない刑事』や『踊る大捜査線』に比べると地味ですから。

明らかに客層が違うんですよね。つまり「大人の鑑賞に耐えうる作品」であり、それがちゃんと商売に繋がることを証明してくれた点が『相棒』の偉大さかも知れません。



警視庁内で“陸の孤島”と呼ばれる2人だけの特命係=杉下右京(水谷 豊)& 亀山 薫(寺脇康文)をはじめ、川原和久、六角精児、高樹沙耶、鈴木砂羽、木村佳乃、津川雅彦、そして岸部一徳ら当時のレギュラー&セミレギュラーキャスト陣が勢揃い。



東京ビッグシティマラソン大会が爆弾テロに狙われるストーリーってことで、有森裕子選手もゲスト出演。



そして内閣総理大臣を『はぐれ刑事』の平幹二朗さんが演じ……



もう16年も前の映画だからネタをバラすけど、爆弾テロの黒幕を演じたメインゲストが『特捜最前線』の西田敏行さん。それまで水谷豊さんとの共演はありそうで無かったかも?



映画が製作される数年前に起きた、紛争国に出向いた若い日本人ジャーナリストをゲリラ集団が拉致し、国に身代金を要求してきた事件をモチーフにした内容で、あのとき「自己責任だろ!」と被害者やその家族をさんざんバッシングした社会、そしてそれを放置した政府に対する復讐が西田さん(拉致されて殺されたジャーナリストの父親)の犯行動機でした。

練りに練ったミステリーの面白さだけじゃなく、そうした時事ネタを巧みに取り入れ、さりげなく作者の主張を滲ませる作劇にも『相棒』を「大人の鑑賞に耐えうる作品」たらしめた秘訣がありそうです。

ただし! ラスト近いシーンにおける長ったらしい“手紙の朗読”にはシラケました。それまで泣いてたのに「まだあるんかいっ!?」「しつこいぞ!」って思いました。

あれが私の言う「製作委員会システムの落とし穴」なんですよね、きっと。映画やドラマの本質をまるで解ってない素人(スポンサー企業の偉いさん)が「ここにもうひと押し“泣けるシーン”を入れろ」とでも注文したんでしょう。最後の最後に、つくづく残念です。



セクシーショットは西田さんの娘(つまり殺されたジャーナリストの妹)役で出演された、ゲストヒロインの本仮屋ユイカさん。劇中では初々しく見えたけど、すでに3年前にNHKの朝ドラ『ファイト』で主役を張っておられます。


 

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『踊る大捜査線 THE MOVIE』

2024-06-05 20:55:32 | 日本映画

'70年代を代表する刑事ドラマが『太陽にほえろ!』なら、'80年代は『あぶない刑事』、そして'90年代は『踊る大捜査線』ってことになるでしょう。

『太陽にほえろ!』が築き上げたスタンダードからハミ出た『あぶない刑事』と、打ち砕いた『踊る大捜査線』はどちらも刑事ドラマの流れを大きく変えた点で、なおかつ劇場版の大ヒットにより人気が決定づけられた点でも共通してます。

だからなのか、あるいは偶然なのか、『あぶない刑事』が映画で8年ぶりに復活した今年、なんと『踊る大捜査線』も12年ぶりに新作映画が公開されるんだとか。マジかっ!?

それ、観たいですか長嶋さん?

ん〜〜〜っ、どうでしょう!?

私自身が最初のTVシリーズに“どハマり”し、だけどその熱が映画化によってみるみる冷めていった点でも『あぶない刑事』と『踊る大捜査線』は共通してるんですよね。

『あぶない刑事』は近作の『さらば〜』と『帰ってきた〜』で原点回帰を果たし、我々オールドファンを魅了してくれたけど、『踊る大捜査線』は一体どうするつもりなのか?


「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」

主人公=青島俊作(織田裕二)の名台詞が光る’98年公開の劇場版第1作『踊る大捜査線 THE MOVIE/湾岸署史上最悪の3日間!』は、TVシリーズの斬新さと面白さをうまく2時間に凝縮させた点で素晴らしかったと思います。

私は当時「ただの焼き直しやん!」って批判した記憶があるけど、今にして思えば「TVドラマを映画化する」にあたっては手本にすべき作品かも知れません。

ところが、これが想定外の大ヒットを記録したせいで、『踊る大捜査線』シリーズは本来の斬新さと面白さを失っていく。

過去の記事でさんざん愚痴ったから細かくは書かないけど、要するに創り手たちの姿勢が「ヒットしなくていいから新しいことやるぞ!」から「何が何でもヒットさせるぞ!」へと、あからさまにシフトチェンジしちゃった。

2作目の劇場版を観てホントに私は「魂を売りやがった」と感じたし、それがまんまと「日本の実写映画 歴代No.1ヒット」の座を今だにキープする興行収入を上げたもんだから「可愛さ余って憎さ百倍」ってワケです。

特に、TVシリーズと劇場版1作目には無かった「仲間」っていうフレーズが2作目以降は乱発され、あの悪名高い「少年ジャンプ」や「日曜劇場」を彷彿させる“お涙頂戴システム”が私をさらに辟易させたという顛末。

本来の『踊る大捜査線』は、そういう“万人受け”狙いの王道をひっくり返したからこそ面白かったのに!

なまじ劇場版1作目が大ヒットし、2作目から製作費が格段に上がった=勝手な注文をつけてくるスポンサー(それこそ“会議室”にいる連中)の数が増えたことが諸悪の根源。いわゆる「製作委員会」システムの落とし穴。

会議室の言いなりに動くしかない“下々の民”の悲哀をコミカルに描き、大いに我々を共感させたはずの番組が大作映画になったとたん、自ら進んで会議室にシッポを振るようになったという“現実”の皮肉。そうするしかない実情は解るけれど。

そんな『踊る大捜査線』を今さら観たいと思いますか?

ん〜〜〜っ、どうなんでしょう!?


しかも新作(2部作になるらしい)の主人公は青島ではなく、本庁のエリートで四六時中眉間にシワを寄せながらホッペを舌で膨らませてた、あの室井慎次(柳葉敏郎)なんだとか。ん〜〜〜っ、どうでしょう!?

確かに室井さんは第2の主人公と言える存在だけど、それは対極に青島っていう熱血漢がいればこそ光るキャラクターなワケで、スピンオフでも客が入った全盛期ならともかく……


もし青島を出せない事情があるなら、いっそ恩田すみれ(深津絵里)を主役にした方がファンの興味を引くのでは? それなら私も「ん〜〜どうでしょう、観てみたいかも!?」って思うかも?


柏木雪乃(水野美紀)という第2ヒロインだっているし、TVスペシャルに登場した内田有紀さんやフレッシュな若手女優も加えて“女性の時代”に相応しい『踊る大捜査線』なら「ん〜〜っ、観に行くでしょう!」って言いますよ、きっと。

別にギバちゃんが嫌いなワケじゃないけど、四六時中眉間にシワを寄せながらホッペを舌で膨らませてる爺さんの映画を、いったい誰がわざわざ観に行くの?って思う。


最初の頃は大いに笑わせてもらった、通称“スリーアミーゴス”(北村総一朗、小野武彦、斉藤暁)のコント芝居もシリーズ末期にはウンザリしたもんです。


これでもかと“哀愁”を漂わせる和久さん=いかりや長介さんの芝居にはTVシリーズの頃から「あざとさ」を感じてたし、劇場版2作目に至っては単なる“名言生産マシーン”にしか見えなかった。(彼に名言を吐かせるためのお膳立てが何よりわざとらしい!)

こんなに悪口ばっか言っちゃうのはホントに最初のTVシリーズが大好きだったからこそで、前述の通り「可愛さ余って憎さ百倍」なんです。


犯人役の“意表を突いたキャスティング”も劇場版1作目の小泉今日子さんまでは楽しめたけど、2作目の岡村隆史さん以降はやっぱり「あざとさ」しか感じなかった。創り手の変わり身とその下心は、確実に伝わるんですよ。特に熱心なファンには!

今回の記事は「踊る大捜査線まで(あぶデカと同じく)完結を謳ったクセに復活しちゃう!」っていう事実を皆さんに伝えるだけのつもりだったのに、結局また恨みごとを書き連ねちゃいました。

繰り返しになるけど、それほどTVシリーズは革新的で面白かった。テレビにはテレビならではの良さがあるんです、ホントに。

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『帰ってきた あぶない刑事』

2024-06-01 23:33:11 | 日本映画

6月1日 土曜日、宣言通り『帰ってきた あぶない刑事』を観て来ました。午前中にかかりつけの心療内科と整骨院をハシゴし、そのまま愛車を飛ばして県庁所在市にあるショッピングモールのシネコンまで片道約1時間20分。

昼食を採る時間があるかどうかのタイトスケジュールにせざるを得なかったのは、途中で山道があるから日暮れ前に帰りたかったのと、日曜は日曜で外せない用事があるから。鑑賞料金が安い1日(映画の日)に行ったのは“たまたま”です。

ショッピングモールなんぞに出かけたのは昨年の『インディ・ジョーンズ/運命のダイヤル』鑑賞以来のことで、あの時もまったく同じことを書いたかも知れないけど……楽しそうに買い物したり遊んだりしてるファミリーやカップルたちの姿を見ると、年中同じ場所で同じルーティンを繰り返してる介護施設の老人たちの顔が頭をよぎって、泣けて来ちゃうんですよね。

当然、自らの意思で入居してきた人はおらず、認知症で「帰りたい」「どうすれば外に出られるの?」って毎日聞いてくる人が何人もいる。介護職員をやってると「大丈夫、明日帰れるように段取りしてあるから」なんて大嘘つくことにも慣れて、罪悪感が麻痺しちゃう。

あらためて、精一杯いたわってあげたくなりました。そんな気持ちを取り戻す為にも、自分自身がリフレッシュする日は絶対に必要だと思いました。

『帰ってきた あぶない刑事』と全然関係ないこと書いてますが、私の勤める施設に入居してる人たちの大半は90歳を越えており、それを思えば舘ひろし=73歳、柴田恭兵=72歳なんて、まだまだ若い!



普通なら「70代でこのカッコ良さは奇跡だ!」って書くところだけど、介護職員である私の感想はひと味違いますw まあ、自分よりひと回り以上も歳上の人たちがハードアクションをこなしてるのはやっぱり凄いけど、カッコ良さに関しては持って生まれた才能でしょう。だからスターになれるワケで。



さて、本題ですが……作品を観た感想は、5月19日の記事『M10 大下勇次モデル』に頂いた「驕りと怯え」さんのコメントと、ほとんど同じ。

手抜きするつもりは無いけど……いや、正直言って完全に手抜きだけどw、ネタバレを避けながら作品の魅力を的確に伝えて下さった「驕りと怯え」さんのコメントを、まずはコピペさせて頂きます。

☆☆☆☆☆☆☆

『帰ってきたあぶない刑事』観てきました。私の感想を一言でまとめますと「面白かった!また観たいよ」です。

上から目線の言い方になりますが、監督をはじめ制作スタッフを若返らせたことが──どうせなら脚本家もそうして欲しかったかもですが──功を奏し、“根っこに浪花節がある昭和の刑事ドラマ”が令和の時代に合わせて見事にブラッシュアップされてたと思います。もしかしたら一本の映画としての完成度は歴代劇場版で一番かもしれません。

正直言って私は今までのあぶデカ映画にノイズ──いい加減さや違和感や無駄──を多く感じてたのですが、嬉しいことに今回はそれがほとんどなかったです。

・全体的に話運びがスムーズで「あれ、ここもたついてません?」ってところが一箇所か二箇所くらいしかなかった。

・今回初めて登場するゲストキャラに余計な人がいなくて、従来のメンバーにそれぞれ見せ場があった。仲村トオルさんは格好良かったし、浅野温子さん──彼女を出さないわけにもいかないが誰も何も言えないんでしょうな──の狂態にもストーリー上の意味が一応はありました。

それにもちろん主演の館ひろしさん達は素晴らしかったです(初めて柴田恭兵さんのアップを見たときはビックリしましたが)。お二人の年齢を考えますと、あのスタイルの良さと色気、身のこなしは本当に驚異でしょう。

スクリーン映えする“画”もたくさんあり(横浜ってあんなに夜景がキレイな街だったンだ)、アクションシーンもそれぞれ不自然さがなくキッチリ盛り上げてくれ、何より嬉しかったのはBGMの選曲! ここでこの曲が来ますか〜って何度かウルっときました。

おそらくは子供の頃にTVシリーズを見て育ったのだろう若い作り手達のあぶデカへの愛情とリスペクトが伝わってくる素敵な映画でした。本当に観て良かったと思います。

☆☆☆☆☆☆☆

以上の素晴らしいコメントが、CATVの放映を待てばいいと思ってた私を「居ても立ってもいられなく」させたワケです。驕りと怯えさん、有難うございます。おっしゃる通りでした!

その時のレスにも書きましたが、かつて番組を観て育った人たちの方が、当時のスタッフよりも「ファンが本当に求めてるもの」をよく解ってるんですよね。特撮ヒーロー物がそうであるのと同じように。



BGMの選曲については、恐らくこのシーンや最初の銃撃戦あたりのことを仰ってるんでしょう。そこはもうハッキリ書いちゃいますが、前作『さらば あぶない刑事』では(主題歌&挿入歌を除いて)いっさい使われなかったTVシリーズのBGMが今回、再録音されて使われてる! そりゃ昔からのファンは痺れますよ!

で、これもネタバレになるけど、エンディングの主題歌が『冷たい太陽』じゃなく『翼を拡げて』だったのも良かった!(私はそっちの方が好きなんです)

だから『さらば〜』と『帰ってきた〜』が対になってる感じがして、もし続きをやるなら(ヒットしてるから多分やるでしょう)映画じゃなくTVシリーズにして欲しいって一瞬思ったけど、ビデオ撮りの『あぶない刑事』はあり得ないからやっぱ映画ですね。

いずれにせよ、今回のヒロイン=土屋太鳳さんは必ず再登場させて欲しい!



『帰ってきた〜』が『さらば〜』より良かった最大のポイントは、土屋太鳳さんにあると私は思います。『さらば〜』のヒロイン役=菜々緒さんに落ち度は無いけど、演じたキャラクターに魅力が無かった。

そこは今回の脚本を担当された大川俊道さんの功績と思われます。岡芳郎さんとの共作ではあるけど、やんちゃな女の子は大川さんの十八番ですから。

あと、町田課長(仲村トオル)の部下すなわち港署捜査課の刑事として、西野七瀬さんがキャスィングされたのも良かった!



そりゃもう、オリジナルのヒロインである浅野温子さんがあんな事になっちゃいましたからね。そういや木の実ナナさんもついにフェードアウト。言っちゃ悪いけど、お二人共もう出なくていいと思います。今回、温子さんが登場した瞬間に観客が“ドン引き”する空気を確かに感じました。

『さらば〜』のときに柴田恭兵さんが、主要キャラクターたちがまるで『サザエさん』のタラちゃんみたいに成長しないのも『あぶデカ』の面白さだと仰ってて“言い得て妙”だと思ったけど、さすがに温子さんはもう……



ほか、吉瀬美智子、岸谷五朗、杉本哲太、早乙女太一etcといったゲスト陣が登場し、レギュラーキャストは前出4人を除くとベンガルさん、長谷部香苗さんの2人だけになっちゃいました。


PS. またネタバレになるけど、恐らく『インディ・ジョーンズ/運命のダイヤル』と同じ技術により、'80年代の姿に若返った鷹山&大下も見所のひとつ。今回の復活に『インディ〜』が与えた影響は少なくないかも知れません。



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『さらば あぶない刑事』

2024-05-29 21:45:13 | 日本映画

今週末に『帰ってきた あぶない刑事』を観に行きます。5月19日の記事『M10 大下勇次モデル』に届いた「驕りと怯え」さんからのコメント=さっそく観に行かれての熱すぎる感想を読んで、居ても立っても居られなくなりました。

件の記事に「諸事情あって劇場へ出かけるのは難しい」と書いたのは、平日は仕事でヘトヘトだから当然ムリだし、土日は認知症の母が家にいて放っておくワケにいかないから。映画館がすぐ近くにあれば何とかなるけど、なにせ田舎暮らしなもんで映画1本観に行くだけでも半日がかり。

だけど、裏技がある。母には申し訳ないけど、介護施設でのショートステイを今週だけ延長してもらえば、土日は自由に動ける。当然2日分の料金が上乗せされるリスクも伴うけど、たまには私だってガス抜きがしたい!

そんなワケで、今回はプロローグ。旧ブログ(変態事務局に封印されました)にて2016年2月にアップした、前作『さらば あぶない刑事』の感想記事を(少しばかり修正と注釈を加えて)以下に再掲載します。





やっと観に行けました。公開から1ヵ月近く経っても上映中なのは、けっこうヒットしてる証拠ですよね。

最近のシネコンは客の入りが少ないとすぐ打ち切りますから、地味だけど良質……みたいな作品がクチコミでヒットすることは、まず有り得ない。宣伝面で有利なTV局映画の一人勝ちで、内容の良し悪しは関係ないワケです。破滅です。

この『さらば あぶない刑事』も典型的なTV局映画で、主要キャストの皆さんが過去に無い露出度でプロモーションに励んでおられたので、ヒットして当たり前と言えば当たり前。

だけど、今回はギャグを抑えてハードボイルドな作風に回帰してるって言うし、鷹山(舘ひろし)&大下(柴田恭兵)の定年退職直前の3日間を描いたストーリーってのも面白そうで、内容面にも期待が持てました。

やっぱり自分が若い頃に楽しんだドラマの(今度こそ)完結編だし、映画秘宝のムック「にっぽんの刑事スーパーファイル」発売にも背中を押されました。

思えば、私が愛した「刑事アクション」というジャンルの、日本においてこれが最後の作品になるワケです。いや、日本だけじゃなくて、ハリウッドでもポリスアクション物はかなり減ったように思います。

『さらば あぶない刑事』イコール「さらば 愛しき刑事アクション」。本当の意味での刑事ドラマは、これで完全に絶滅しました。

そういう意味でも感慨深いし、年齢を重ねた鷹山&大下は、実に味わい深くなってます。この映画、良かったですよ! 期待以上でした。観に行った甲斐がありました。



まだ公開中(2016年2月当時)ですからストーリーには触れないでおきますが、とにかく既に還暦を越えてる舘さん&恭兵さんの、昔と変わらない切れ味鋭いアクションを見ただけで、なんだか胸が熱くなるワケです。正直言って涙が出ました。



そして、敵役の吉川晃司さんがまた素晴らしかった。実にハードで凶悪で格好良くて、作品世界をピシッと引き締めてくれました。面白いアクション映画の絶対条件です。



鷹山の恋人を演じた菜々緒さんも良かった。いくつ歳が離れてるのか知らないけどw、あの若さで、あの舘ひろしの相手役がサマになるんだから相当なもんです。

課長になった透(仲村トオル)も歳を重ね、ボケ役にも深みが出て来たし、最大の問題児である薫(浅野温子)も、今回はシリアスな展開の中で程良い息抜きの役割を果たしてくれたように思います。



我々もあの怪演に慣らされちゃったし、今や大ベテラン女優となった温子さんが相変わらずの狂騒ぶりを見せてくれるのには、むしろホッとしたりもして。

「あぶデカらしくない」とも言えるシリアスな展開の中でただ1人、いつも通りの薫なんですよね。今さらシリアスに(というか普通の人間に)戻ろうとしてもムリだし。

ここまで全てを好意的に受け止め、素直に楽しめるようになったのは、私自身が歳を取ったせいもあるかも知れません。お馴染みのキャストが年齢を重ねた姿に共鳴しちゃうんですよね。

そして『あぶデカ』の長い歴史の裏側に、自分自身が歩んで来た年月の記憶があるワケです。



何しろ、同じキャストで丸30年ですよ! 『太陽にほえろ!』や『西部警察』がいくら復活したところで、メンバーを変えちゃったら全くの別物。何の感慨もありません。

同じキャストで(ブランクはあれど)丸30年っていうのは、ほとんど奇跡です。ちょっと他に例が無いんじゃないですか?

そんなワケで『さらば あぶない刑事』、私は存分に楽しめました。楽しんだし、刑事アクションというジャンルとの惜別に今、ちょっと感傷的な気分も味わってます。



☆2024年5月の追記。

そのあと小栗旬くんが頑張って『BORDER』と『CRISIS』で刑事アクションドラマの進化型を見せてくれたから、決して「絶滅」したワケじゃなさそうだけど、一世を風靡したと言えるのは『あぶない刑事』がやっぱり最後でしょう。

8年ぶりの復活に関しては「驚かなかった」とM10の記事に書きましたが、この『さらば〜』の記事を読み返すと感傷に浸ってる自分がちょっと恥ずかしいですねw

ちなみに『さらば〜』は鷹山&大下がニュージーランドで探偵事務所を開設して幕を下ろしました。つまり正確には、透が予告編で言ってる通り新作で帰ってくるのは“あぶない探偵”です。

コメント (2)
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