Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「喫茶おじさん」、ひつまぶし

2024年06月04日 | 


大手ゼネコンを早期退職して喫茶店を始めるが、あっという間に潰してしまった純一郎。多額の退職金を失った彼から妻も去っていき一人となり、人生の展望も失くすが、まっいいか…と喫茶店巡りを楽しむ。
この本に出て来る喫茶店の数々、名前は明記してありませんが、知っているお店が多いのが楽しい。
東銀座のデカ盛り卵サンドの店は「アメリカン」だし、キッシュの美味しい銀座の老舗カフェは「パウリスタ」。
東京駅の百貨店の中の、池波正太郎の小説に出て来るというビーフカツサンドの美味しい京都の老舗カフェは「イノダコーヒー」。
東京駅のホテルの、あんみつに白玉と花豆を付けられるカフェは「トラヤカフェ」。
渋谷の、ブルーボトルコーヒーの創始者がフアンだったという老舗カフェは「茶亭羽富」、という具合。


喫茶店巡りに純一郎のパッとしない人生を絡ませた小説ですが、退屈しないのは、出て来るコーヒーや食べ物が実に美味しそうに描かれていること。
そして、純一郎が「何も分かっていない」と妻や一人娘に非難され、確かに万事に鈍感そうではあるが、とても謙虚で明るい性格であるからでしょうか。
何もかも失くしてあそこまで窮地に追い詰められたら、私だったらとても「まっいいか」とはならないと思うのですが。
最後に、彼なりの起死回生があるにはありますし。
ただ、大学生の娘がボーイフレンドと旅行しそうになって、慌てふためいて京都まで飛んで行く様には少々驚きました。
今時そこまで慌てることでもないと思うのですが…



ついでに、先週食べた鰻ひつまぶし。
帰省した折に鰻を食べるのを楽しみにしています。
岐阜は関西風に直接焼くので、芳ばしくて好きなのです。
ひつまぶしの食べ方は➀そのまま食べる②薬味をまぶして食べる③出汁をかけて食べる、というものですが、私は出汁をかけるのはあまり好きではないので、③式で食べる量はほんの少しです。
これは二文字屋のひつまぶし。

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「フジ子・ヘミングー魂のピアニスト」「あきらめない」

2024年05月02日 | 


フジ子・ヘミング氏が亡くなられました。
日本が誇るピアニスト、謹んでお悔やみ申し上げます。
ナマの「ラ・カンパネラ」を聴かずに終わってしまったことが、ただ残念。
以前、この人の自伝的著書を読んで、肉親との壮絶な確執に驚きました。
これだけ親を恨んでいたらさぞ生き辛かったのではと勝手に思ったものですが、
この人はそれを良い方のエネルギーに持って行かれたのかしら?

「フジ子・ヘミングー魂のピアニスト」の感想





ついでに、朝ドラ「寅の翼」で今朝、暴力で検察に自白強要された主人公の父親が、法廷に引き出されるシーンがありました。
丁度、冤罪で逮捕された村木厚子氏の「あきらめない」を読んだところでした。

52歳で厚生労働省の局長に就任された村木氏、どんなやり手のエリートかと思っていましたが、著者の言葉によると子供の頃は泣き虫で人見知り、思春期になっても対人恐怖症だったのだそうです。
高地に生まれ育ち、高知大学を卒業したものの、4年生大学卒女子への一般企業からの求職はゼロ、公務員になるしかないと国家公務員を受験、官庁訪問に出遅れた著者を拾ってくれたのが労働省だったと。

同省の同僚だった御夫君と、残業時間月200時間、女性職員はお茶汲みが当然という職場でとにかくがむしゃらに二人の娘を育て、ホッとした頃に降ってわいた郵便不正事件。
突然の逮捕、164日間の拘留。

「検察はストーリーを無理やり作ってそれに合わせた供述調書を取る」という言葉が本書の中にありましたが、まさにそんな厳しい取り調べが日々行われる。
しかし「やってないものはやってない」と否認を続け、遂に無罪を勝ち取る。
結局、大阪地検特捜部の前田恒彦元主任検事がデータを改ざんしていたことが発覚して逮捕され、検察は控訴を断念したと。
正義の味方だと思っていた検事がそんなことをするとは…


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「しろがねの葉」

2024年04月18日 | 


世界遺産にも登録された石見銀山の名前は知っていましたが、戦国時代から江戸時代にかけて、世界を動かすほどの産出を誇った鉱山であったとは知りませんでした。
一時は世界の銀の産出量の三分の一を、この石見銀山が賄っていたといいます。
最盛期のそこを舞台とした、女性ウメの視点で語られる物語。


戦国末期、貧しさから夜逃げした両親とはぐれ、山の中で天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメ。はしっこい彼女は銀山の知識を授けられ、女だてらに坑道で働き出したが、男たちの欲望、差別、侮蔑の目が容赦なく向けられる。
一途に慕う喜兵衛からは相手にされず、堀子として働くことは許されず、ついには他の男から凌辱され、身籠ってしまう…


粉塵と瘴気の中で仕事をする掘子たちは成功すれば金を得るが、肺を病み、事故もあり、寿命は非常に短かったのだそうです。
それでも男たちは、暗い間歩(まぶ)の中で何故掘り続けたのか?
望む仕事もできず、愛する者を何度も見送り、それでも何故ウメは生きたのか?
「人は何故生きるのか」という大命題の本を、久しぶりに読んだ気がします。
島根県太田市の石見銀山とはまるで違いますが、尾花沢市の延沢銀山の近くの銀山温泉に行ったことがあります。
木造の建物が建ち並ぶ温泉街に大正時代の雰囲気は感じたものの、そこで働いた人々がどんな思いでどんな暮らしをしていたのかなんて、考えもしませんでした。


最終章、老齢のウメの独白。
「どれくらい経ったのだろう。
もうこの山には誰もいない。谷の家々が朽ち、草葉や木々に呑み込まれていく。無数に穿たれた穴が風に哭く。
それでも、待っている。
指先すら見えない昏い間歩の底から、男たちがわたしの名を呼ぶのを。慈しんだ男たちは皆、あの無慈悲で温かい胎闇にいる。そこにわたしも還るのだ。」
千早茜著、第168回直木賞受賞作。


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「ぼくたちがコロナを知らなかったころ」梨園に潜り込めた訳

2024年03月23日 | 


好きな作家であること、「コロナ」という題名に惹かれて読みました。
が、なんということはない、2016年から2019年にかけての作家の日常を描いた軽いエッセイでありました。
コロナについては一言もなく、確かにコロナを知らなかった頃ではある…騙されました。

収穫は、表紙にもなっている著者の愛猫、内蛤の外蜆である金ちゃんと銀ちゃんの描写が可愛かったこと、
そして著者の「国宝」を書いた時の舞台裏が知れたことでした。
歌舞伎界の大河小説と言われる「国宝」を書く際に、取材のために著者は黒子として全国200の舞台を廻ったということなのです。
梨園とまるで縁のない作家に、どうしてそんなことができるのだろうと思っていました。

この本によると、歌舞伎の世界を舞台に書こうと決めたものの、歌舞伎界などまるで未知の世界、何処から取材したらいいかもわからない。
そんな時、親しくしていた六本木のラウンジのママさんが紹介してくれたのが、四代目中村鴈治郎氏であったと。
そして鴈治郎氏は事情を聞くとすぐに、「だったら吉田君用の黒衣の衣装作ってやるよ、それ着ていれば目立たないから、いくらでも舞台裏見ればいいよ」と言い、数日後には本当に採寸して作ってくれた、のだそうです。
”すげえ、この人。すげえ、歌舞伎役者。
 品がないが、この時の正直な気持ちがこれである”と。
そういう訳で、あんな気迫に満ちた歌舞伎界の小説「国宝」ができたのねえ。




渋谷、宮下パーク「ダダイ」でのランチ。
右の中の写真「彩りベトナムまぜご飯コムアンフー」が美味しかった。
山椒を効かせた肉味噌と野菜たっぷりの混ぜご飯で、これらを全部混ぜて頂きました。
濃厚なマンゴージュースと。
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「汝、星のごとく」

2024年03月10日 | 


父親を不倫相手に奪われ、少しずつ心を壊していく母と暮らす高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され、暁海の通う高校に転校してきた櫂(かい)。
風光明媚な瀬戸内の島を舞台に、ともに孤独と欠落を抱えた二人は惹かれ合う。しかし、大人になり互いに自分の人生を進むうちに、二人の間には大きな溝ができていく。


毒親に人生をことごとく邪魔されながら放り出すこともできない、二人の若者が痛々しい。
傍から見れば、そんなどうしようもない母親、さっさと捨てればいいのにと思うのですが、当事者にはそうもできないのでしょう。
自分の人生を思うように生きるということが、こんなにも難しいことなのか。


終章近く、深刻な病を宣告された櫂の独白。
”あれから母親には連絡していないし向うからもない。嫌なこととは向き合いたくないという相変わらずなスタンスだ。親というよりでかい荷物でしかないが、そんなのでも親だから、しょうがねえなあと許す俺も相変わらずだ。
 生まれるとき、人にはそれぞれ与えられるものがある。それは輝く宝石であったり、足首に嵌められた鉛の球だったりする。なんであろうと投げ出せず、それはおそらく魂に組み込まれたものなのだろう。生まれて死ぬまで、誰もがあえぎながら己の魂を引きずる。”


2023年の本屋大賞作品、図書館に予約して1年程かかってようやく廻って来ました。
この著者の文章は平易で展開はドラマチック、一気に読める面白さがあります。
しかし本屋で買ったらちょっと口惜しかったかも。
前作の「流浪の月」と同様、これはすぐに映画化されるでしょうから、その配役を勝手に思い浮かべるという楽しみはありますが…

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二子玉川散策、「師匠はつらいよ」

2024年01月28日 | 

二子玉川の「九ツ井」の店内は、百年以上経つ民家を鎌倉材木座から移築して作られたのですって。
かき揚げ蕎麦を食べ、陽射しの中、多摩川の土手と冬枯れの公園「帰真園」を歩きました。
雪国の人には申し訳ないほどの、あたたかい陽射し。
「100本のスプーン」で苺パフェを。



昨夜読んで面白かった「師匠はつらいよ」
将棋界を席巻する天才・藤井聡太竜王の師匠である杉本昌隆の、偉大すぎる弟子を持った日々を自虐的に書いたエッセイを少々ご紹介します。
週刊文春連載を単行本化したものです。



私は将棋ができないので、具体的なエピソードの面白味が分からないのが辛い所ですが、それでも十分に面白い。
将棋界では原則、プロを目指す子供は棋士の養成機関「奨励会」に入会する。
この時師匠が必要となり、身近な棋士にお願いすることになるのだそうです。
総太少年が東海研修会に入った小学一年の頃から才能は輝いており、そこで幹事をしていた杉本氏は彼の才能を確信し、弟子に欲しくてたまらないが自分からは言い出せず。そうしたら総太少年が4年生の時、奨励会試験を受ける際に、お母さんと弟子入りの挨拶に来られたのだそうです。
ところが弟子入り直後の記念の対局で、杉本氏は敗戦。
これは後々まで話題になったらしいですが…



面白い自虐ネタが山ほどありましたが、その中の一つを。
2021年12月の杉本氏の誕生日、奇しくも藤井三冠が竜王獲得と四冠まで後一勝に迫っており、それが決定する日だったのだそうです。
で、師匠の誕生日に弟子が偉業達成、その時藤井竜王が記者会見でなんと言うか、師匠はそれを楽しみに対局を見守っていたのですって。
”それを告げられ、しばらく考え込む藤井竜王。さあ、最高の場面が来た!
「師匠の誕生日は全く知りませんでした」
…一落千丈の師匠とは私のこと、いや、知らなくても不思議ではないが、”全く”まで付け加えなくてもよいのではないかな…
しかし続けて彼は言う。
「師匠にはお世話になりっぱなしなのでプレゼントができたのかなと思います」
私も下がったり上がったり忙しいが、とにかく素晴らしい自慢の弟子である。”

今、藤井総太竜王は21歳、九段。
杉本昌隆氏は51歳、八段。
あまりにも偉大な弟子を持った師匠の日常が、ユーモラスに書かれています。


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「くもをさがす」異国での癌闘病記

2024年01月21日 | 

2021年、長期滞在先のバンクーバーで浸潤性乳管がんを宣告された作家の西加奈子。
コロナ・パンデミックの真っ最中、言葉も上手く通じない異国において癌を宣告された彼女がどう闘ったかという体験記。
書店員が選ぶノンフィクション大賞、オールタイムベスト2023大賞受賞。

”カナダ人は、自国の医療システムに誇りを持っている。特にブリティッシュ・コロンビア州では、MSPと呼ばれる健康保険に入っていれば、医療が全て無料で受けられ、それは私のような外国人や留学生にも適用される。皆の命は平等で、だから救急では、症状の深刻度だけを考慮される。保険のある無しで命に差が出る隣国とは違うと、たくさんの人が言う”
そうは言っても、予約したクリニックからかかる筈の電話がかかって来ない、電話をかけると怒鳴られまくる、救急で運ばれても8,9時間待たされるのが当たり前、そんな経験を繰り返して、日本だったらこんなことはあり得ない、帰国すればよかったと著者は最初思うのですが…

カナダの医療従事者や友人たち、彼らの言葉が関西弁で書かれているのが面白い。
実際は勿論、英語なのでしょうが、著者にはこう聞こえたのでしょう。
”もう一度クリニックに電話をした。同じ受付の女性が出た。
「昨日も言うたけど、私らもうFAX送ってんねんやん。あんたに言われて2回も送ったんやで?がんセンターの人も忙しいんやろから待ってって言うてるやん。それ以上私らにできることないし!」彼女は、イライラしていた。というより、明らかにキレていた。えっと、うち、がんっていわれたんやんな?そう思った。がんと宣告され、何も分からなくて不安な、英語がおぼつかない人間にこんなに怒るって、どういう状態だろう”

こんな対応に絶望的にもなるのですが、それを跳ね飛ばしてくれるのは、その後のカナダの医療従事者の底抜けの明るさ、力強さ。
彼女を取り巻く友人たちの暖かいヘルプ、力強い励まし。
しかし、両乳房摘出手術をして、その日に退院とは。
彼女が渡されたスケジュール表の手術開始予定時間は12時、退院予定時間は15時15分。
手術後は傷口からチューブ状のドレーンが飛び出していて、そこに溜まる傷口から出る浸出液や血液を処理する、それも自分でしなければならない。
腹腔鏡手術で子宮全摘したくらいでその痛みに悶絶して一晩眠れなかった私には、到底信じられません。
癌闘病記のタイトルが何故「くもをさがす」なのか、その謎はすぐに解かれます。

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「鹿の王」の読書会

2024年01月07日 | 

友人主催の読書会に、初めて参加しました。
高校時代に私は文藝部にいたので、読書会には多少慣れているかと思っていましたが、何しろ数十年ぶり。
「ジェイン・オースティンの読書会」「また、あなたとブッククラブで」「ガーンジー島の読書会の秘密」など映画にも結構取り上げられていて、海外でもやるんだ、いいなあと思いながら観ていたのでした。

「鹿の王」は文化人類学者である上橋菜穂子が書いた、壮大な冒険ファンタジー小説。
強大な帝国から故郷を守るため、死兵となった戦士団の頭ヴァンは捕らわれて岩塩鉱の奴隷となっていたが、ある日、犬たちによって謎の病気が発生して皆死に絶える。その隙にヴァンは幼い少女を拾って逃げ出すが、帝国の追手が何処までもついて来た…

2015年本屋大賞受賞。
単行本上下合わせて千百頁を超える大作ですが、文章は平易なのでとても読みやすい。
夢中で読みましたが、しかし、帝国、小国、山地の民、火馬の民など登場する国や民や人物が多すぎ、策略や陰謀、そこに恐ろしい伝染病が絡んで、頭の中がごちゃごちゃになる。
戦士団の頭ヴァンと、帝国側の天才医術師ホッサル、その二人にそれぞれサエとミラルという女が思いを寄せるのですが、彼女たちは分をわきまえ過ぎ、自分の運命に従うばかりで、私などは少々イライラするのです。
最後にはあっと思わせられるフェイントもあり、面白く読んだのですが、実はそこまで私は感動しなかった。なんというか、ああそうですかという感じで終わってしまったのです。希望の光が微かにあるとはいえ、ハッピーエンドとは言えない、しかも曖昧なラストも気に入らなかった。


グータロウ君

その辺を、他の人はどう読んだのかと興味がありました。
卓袱台を囲んで9人、ZOOM参加の4人、そしてウロチョロするニャンコ含めての読書会では、活発な意見交換が。
皆さんとっても熱心に読んでらして、主催者は膨大な登場人物の系統図、国の分布図迄作って下さり、自分が読み飛ばしてしまっていたことがあることも判明。
同じラストを読んで、こんなにも受け取り方の違いがあるのかと。
猫のグータロウ君、七之助君も可愛かった。
そして読書会の後の飲み会の、手作り料理の美味しいこと!
干し大根の胡麻味噌和え、手作り柚子味噌の田楽、レンコンの甘辛炒め煮、ニンジンのニンニクオイルサラダ、ピエンロー鍋。
ピエンロー鍋というのは私は初めてでしたが、干しシイタケとその戻し汁、鶏肉、豚バラ肉、たっぷりの白菜をよく煮込み、ゴマ油と塩で頂くというもの。
簡単で美味しく、早速我家でも作ってみます。
ご馳走様、そしてありがとうございました。

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ビックリの常識「6カ国転校生 ナージャの発見」

2023年11月27日 | 

ロシアのサンクトペテルブルクで生まれた著者は、親の仕事の関係で7歳の時に日本、そしてイギリス、フランス、アメリカ、カナダに転校。小学校から中学の間に、6カ国での学校生活を経験。それぞれの国での体験を基に、「当たり前」「ふつう」「常識」を問い直す、という本です。

この表紙の絵は、小学校の座席のレイアウトを表してるのだそうです。
真ん中の絵が日本、一人ずつキチンと座った生徒はみんな前中央の先生を見ている。
右上はイギリス、大きなテーブルが幾つかあって5~6人でそれを囲み、テーブルごとに話し合って答えを出す。
左下はフランス、みんなの机が円を作るように並び、先生は円の中をあちこちして個人に対応する。
右下はアメリカ、周りを半円のように机が並び、真ん中には絨毯が敷いてあり、ソファもある。
左上のロシアは日本に似ているようですが、二人組は実は男女で、デキのいい女子をやんちゃな男子と組み合わせて、女子に男子の面倒を見させたりするのだそうです。
このような座席の在り方は、先生の言うことを聞いて欲しいのか、発言して欲しいのか、みんなで意見をまとめて欲しいかなどと、教え方の方針を示しているのだと、著者は言う。

ランチの取り方(給食、お弁当、カフェテリア、自宅に帰って食べる等)、ノートの取り方、筆記用具、点のつけ方など、国によってこんなに違うのかと驚くばかり。
水泳の教え方も、スピード、カタチ、持続性、どれに重きを置くかが、国によって違うのだそうです。
数字の書き方が日本は厳しくて、例えば7に横棒をつける(欧州ではこれが主流という、1と区別するために)だけで、数学の答案がバツにされたというのは悲しい。

こんなにあちこちの国に転校して、言葉も分からなくて、風習も違って、学校を拒否してもおかしくないと思うのですが、著者は自分は引っ込み思案だといいながら逞しく成長していく。
”国によって先生の言うことも180度違うことを、何度も経験してきた、ずっと「正解」が変わり続ける環境の中で、「誰かの正解」は必ずしも「自分の正解」でないことに気づいた”と。

そんなナージャさん、日本の電通に入社して様々な広告を企画、世界の広告賞を総ナメにし、2015年の世界コピーライターランキング1位に輝いたのだそうです。
そんなランキングがあることにも驚きましたが…


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「無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記」、オオタニサンのこと

2023年11月20日 | 

最初、タイトルの意味が分からなかったのですが…
突然癌を宣告され、余命4ヶ月と言われた著者が、コロナ禍でもあり(2021年)、夫と二人だけで無人島に流されてしまったかのような生活を綴ったという日記だったのでした。
ベストセラー作家山本文緒氏、58歳でいきなり膵臓がんの末期と判明。
毎年人間ドックを受けられていたそうですが、それでもわからなかったのですね。
作家の矜恃というべきか、自分の苦しい状態を客観的に、端的に語っている。
余命4ヶ月(120日)なんて宣告されたけれど、それ以上生きてやる!という意味のようです。
東京オリンピックの開会式を見てそのショボさを嘆きながら、でも自分は冬季オリンピックは見られないだろうという一言が悲しい。
”とても眠くて、お医者さんや看護師さん、薬剤師さんが来て、その人たちが大きな声で私に話しかけてくれるのだけど、それに応えるのが精一杯で、その向こう側にある王子の声がよく聞こえない。明日書けましたら、また明日”
という記述を最後に、その10日ほど後に、作者はこの世を去っています。
「王子」というのが御主人であるということを知って、涙腺が崩壊しました。
どうか安らかにお眠りください。




あまりにも悲しい本なので、お口直しに。
オオタニサンと一緒のこの犬、最初見た時はビーグル犬かと思いましたが、コーイケルホンディエという珍しい犬種だったのね。
で、この子が着ている服は、オオタニサンがアンバサダーを務めるBOSS製で1万5950円なのですって!
ついでにオオタニサンが着ている、ありふれたように見えるグレーの二ットはやはりBOSSで、7万4800円!
御見それしました…

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