ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

最初で最後のキス

2018-05-31 23:04:42 | さ行

 

コレ、おすすめ!

 

「最初で最後のキス」77点★★★★

 

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北イタリアの地方都市ウーディネ。

16歳の個性的な少年ロレンツォ(リマウ・グリッロ・リッツベルガー)は

里親夫婦に引き取られて、この街にやってきた。

 

新しい高校にど派手なファッションで堂々と登校したロレンツォは

周囲から奇異な視線を向けられるが

隣の席になった少女ブルー(ヴァレンティーノ・ロマーニ)と意気投合。

 

ブルーもやはり学校ではみ出しモノだったのだ。

 

そんなブルーにロレンツォは「僕はゲイなんだ」と伝えるが、

ブルーは「へえ~。で?」という感じ。

 

そこに

ブルーに密かに思いを寄せるアントニオ(レオナルド・パッザッリ)が加わり

3人は一緒に過ごすようになる。

 

しかし、永遠に続けばいい――と思える瞬間は

常に終わりの予感を秘めていた――。

 

 

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甘くて、痛い。

本国イタリアでスマッシュヒットしたそうで

うん、これは大いなる拾いものでした。

 

学校のハミ出し者3人の男女の出会いと、ピカピカに光る青春の1ページ。

でも、それがいつか終わることは、予感としてある。

それが遠い未来ではないことも――。

 

 

男2×女1の黄金比で描かれる、青春の一コマは

イタリア版「ウォールフラワー」にして、痛みはもっとビビッド。

 

思春期ゆえのもろさと、必死に闘いながら

凛と処する、16歳たちが、まぶしくてたまりません。

 

それに

主人公ロレンツォをはじめ

ハミ出し者たちが、実に堂々としているのがいいんですよね。

 

なかでもロレンツォのピュアさ、強さに

揺さぶられました。

 

監督は08年にアメリカで起きた“ラリー・キング事件”に衝撃を受け

この作品を書いたそう。

(ネタバレにもなるので、興味ある方はググってみてください)

 

音楽が、レディ・ガガやMIKA(「キック・アス」の主題歌の人よ!)など、

ジャスト・オン・タイムなのも、響いたなア。

 

★6/2(土)から新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。

「最初で最後のキス」公式サイト

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レディ・バード

2018-05-30 23:35:37 | ら行

 

ワシ的クリーンヒット作「フランシス・ハ」

グレタ・ガーウィグ初監督作。

 

「レディ・バード」73点★★★★

 

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2002年、カリフォルニア州サクラメントに住む

17歳のクリスティン(シアーシャ・ローナン)は

自分を“レディ・バード”と名付け、周りにもそう呼ばせている。

 

中途半端な地方都市である地元を嫌う彼女は

「文化のあるニューヨークとかニューハンプシャーの大学に行きたい」といい

地元の大学を薦める母親(ローリー・メトカーフ)と大げんかになる。

 

母とことあるごとに衝突しつつも、

学校で好青年ダニー(ルーカス・ヘッジズ)と出会い

さらにクールなバンドの美少年(ティモシー・シャラメ)と出会い

アタシ流青春を謳歌しているかに見えたクリスティンだったが――?!

 

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大好き!なグレタ・ガーウィグの

痛みも黒歴史も入った、ユーモア溢れる自伝的青春譚。

 

演じるシアーシャがだんだん

グレタ・ガーウィグ本人に見えてくる!(ホント。笑)ほど

 

まさにグレタ自身の青春の光も黒も切り取った自伝、という感じ。

 

中途半端な地方都市の(まあワシの出身地・神奈川県も似たようなもん。笑)

中流ちょい下な家庭環境にうんざりし

近所の豪邸を見ては

「こんな家に住んでたら人生が変わってたのに」とか妄想する。

 

憧れの、なりたい自分に手が届かないもどかしさ。

モヤモヤする17歳の日々に、共感度満点。

 

それに本作の出色な点は

「娘と母親の、こじれ関係」を絶妙に描いてるところですね。

 

「あなたに、最高の状態になってほしいの」という母親の思いは

「いまのあなたは、まだ本気出してない(出せよコラ)」という

愛でもあるけど、エゴの裏返しでもある。

 

そんな母親の思いを見透かし、衝突を繰り返す主人公に

共感以外の何があろうか!(泣き笑い)

 

笑いもさすがにセンスいいし

(フットボールコーチが演劇部の指導をするシーンには馬鹿ウケ!)

 

「君の名前で~」のティモシー・シャラメも出てる。

 

ただ

すごくすごくよく出来てるけど、近々の作品で

「スウィート17モンスター」

故郷に対する思いなどにシアーシャの「ブルックリン」にもリンクする面があり、

スウィート~の破壊力、ブルックリンの脚本のひだに比べると、

やや全体的にパンチにかけるかな・・・・・・という気がしてしまうのが申し訳ない。

 

いや、でも、初監督作ですからね!

十分、素晴らしいっす。

 

★6/1(金)から全国で公開。

「レディ・バード」公式サイト

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デッドプール2

2018-05-28 23:53:46 | た行

 

俺ちゃん、健在。

 

「デッドプール2」69点★★★★

 

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末期がんの治療で、思いがけず不死身の肉体を手に入れた

ウェイド(ライアン・レイノルズ)。

 

特殊能力を活かし、デッドプールとして活動する彼は

非常識ながら、ヒーロー街道を爆走中だ。

 

そんな彼は最愛の恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)のために

未来から現れたケーブル(ジョシュ・ブローリン)が狙うある少年を

助けることにするが――?!

 

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「デットプール」(16年)の続編。

 

俺ちゃんな非常識ヒーロー、

相変わらずのヤバ笑いがノンストップ(苦笑)。

 

といっても、今回はちょいマジな「え!」からスタートし

(「ボーン」シリーズを思い出すわあ)

マスクを取ったデップ―もかなりのボリュームで登場。

 

おばかばかだけではないテイストもありつつ、

しかし、やっぱり俺ちゃん、暴走(笑)。

どちらかといえば品行方正&少年少女向けの「XーMEN」メンツとのタッグでも

その住む世界の違いで笑わせてくれます。

 

ヒーロー仲間を募集しといて

そりゃねーだろ、な展開にウケたし、

ラスト、エンドロールのあのネタが個人的には一番ツボった(笑)

 

まあ

どこまで笑うか、許せるか、観客が決めてくださいね~って感じかな。

 

あと

観ながらちょっと混乱してしまったけど

本作に登場する“未来からやってきた”敵(ターミネーター!笑)

ケーブル(ジョシュ・ブローリン)は

「アベンジャーズ/インフィニティ-・ウォー」のサノスとは別人物ね。

 

え、そんなのわかってるって?

こりゃまた失礼しました~~

 

★6/1(金)から全国で公開。

「デッドプール2」公式サイト

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いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち

2018-05-27 22:41:19 | あ行

 

これは1作目を観といたほうが、断然いいでしょ!と思ったら

上映、あります!(よかった)

 

「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」68点★★★☆

 

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2009年にギリシャで始まった欧州危機の余波により

いま、イタリアも深刻な不況に陥っていた。

 

そんななかで、割を食ったのは大学教授や研究者たちだ。

多くが大学を追われ、皿洗いやガソリンスタンドでのバイトで暮らしていた。

 

神経生物学者のピエトロ(エドアルド・レオ)もその一人。

 

大学をリストラされた彼は生き延びるために、

仲間の学者たちを巻き込んで新たな合法ドラッグを開発し、金儲けに成功する。

 

※しかし結局、逮捕されたピエトロに

警部(グレタ・スカラーノ)がある提案をする。

 

「その頭脳を使って、ドラッグ撲滅に協力してくれれば、犯罪記録を抹消する」

 

ピエトロは再び仲間を集め、

その頭脳を結集して、ミッションに挑むが――?!

 

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イタリア本国で大ヒットした社会派コメディ

「いつだってやめられる 7人の危ない教授たち」の続きです。

 

前作は日本では「イタリア映画祭2015」で上映され

こっちの公開が先になってしまったけど

けっこう完全な前作の続きなので、「んんん??」と思っていたら

公開されるということで、よかった!

 

「いつだってやめられる 7人の危ない教授たち」

(「Viva!イタリアvol.4」のプログラムとして、6/23からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開)

 

絶対に前作を併せて観るほうがおもしろいと思います。

 

あらすじの※印の前は前作のストーリーで

彼らが「そうせざる得なかった」社会状況とかは「1」にバッチリ詰まってるから。

 

ただ、本作ももちろん、おもしろい。

事情により、その頭脳を「ほかのことに使わざるを得ない」学者たち

それぞれの個性が際立っていて

 

押収したドラッグを解析する知識はもちろんのこと

敵の販売ルートを「マクロ経済学者」が予測し、

「文化人類学者」が敵の行動心理を読む。

 

さらに本作では

人体を知り尽くすことで戦闘に強い「理論解剖学者」など

新キャラも登場し

アクション場面も多い。

 

なにより「虐げられた民の怒り」は遠い日本でも共通。

そんな人々が知恵と勇気で、権力に逆襲をしかける様には

溜飲が下がるものがあります。

 

そして、本作「3」に続くんです!

楽しみに待ちたいと思いますー。

 

★5/26(土)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」公式サイト

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妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII

2018-05-27 22:10:27 | た行

 

もうすっかり

よっ、おなじみシリーズ!となった。

 

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」72点★★★★

 

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父(橋爪功)と母(吉行和子)、

その息子である夫(西村まさ彦)と暮らす主婦・史枝(夏川結衣)は

 

子どもたちと夫、そして義父母の食事作りから家のことまで

3世代のすべてを一手に引き受け、大忙し。

 

平田家の次男(妻夫木聡)と、その妻(蒼井優)に

「平田家を支えているのは、史枝さんだ」と尊敬を込めて言われるが

夫も子どもたちも、そんなことは空気のように当たり前だと思っている。

 

そんなある日。

平田家を揺るがす事件が発生し――?!

 

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山田洋次監督が描く

安定の家族ムービー、「家族はつらいよ」シリーズ。

 

もうね、

すっかりおなじみになった面々に、

再会するのがめちゃくちゃ楽しみになってきましたよ。

 

寅さんシリーズよりワシ世代(1970年代以降)にとっては、

こちらのほうが「つらいよ」シリーズとして、

リアルタイムに刻まれる予感。

 

今回も、どこの家庭にもありそうな、「ちいさな大事件」が勃発。

 

父(橋爪功)のふり見て育ってしまい

いまどき“家長”然とする夫(西村まさ彦)が

妻(夏川結衣)に家庭を回してもらってるのに、それを省みず、

横暴な言動をすることで、妻に三行半される、という展開。

 

 

うち、ここまで大家族じゃないし

自分にこんな夫がいるわけじゃないのに

なんでか

妻(夏川結衣)に共感してしまう(笑)。

 

自分基準じゃなく、

“ニッポン”基準な部分に同調してるんですかねえ。

 

いまどき、男女この逆パターンだってありそうだし。

 

ま、結局「相手のことをもう一度、考えよ、ね」という気持ちにさせるわけで

観たあと妻(または夫。パートナー)へのいつものメールに

「お疲れさま。いつもありがとう」と

一文を添えちゃったりするような。

 

「なに? なんかしたの?」と

下手に勘ぐられないように(笑)。

 

★5/25(金)から全国で公開。

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」公式サイト

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