ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

シンプル・シモン

2014-04-30 23:16:05 | さ行

視覚センスのよさは
さすが北欧。


「シンプル・シモン」59点★★★


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スウェーデンに住む
18歳の青年シモン(ビル・スカルスガルド)は
アスペルガー症候群。

触られることが嫌いで
自分のペースで生きるシモンを理解してくれるのは
兄のサム(マッティン・ヴァルストレム)だけだった。

だがサムが恋人にフラれ
自分のペースを守れなくなったシモンは

「サムに“完璧な恋人”がいればいいのだ!」と
勝手に兄の恋人探しをし始めるが――?!

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スウェーデン生まれのアンドレアス・エマーン監督、
25歳で撮った長編デビュー作。

なかなかイケメン監督で(笑)
さらに
シモン役のビル・スカルスガルドは
アレクサンダー・スカルスガルドの弟だったり

美術や小物、画面構成、
どれもさすがのセンスだったり

北欧の“いいとこ”がいっぱい入ってると思います。


それに
アスペルガーの特徴がよく観察され、
描かれているなあと思った。

自分なりのルールが絶対で
予定を急に変えられたりするのが苦手とか

人の気持ちを察したりするのがうまくないけど
数学や方程式に強いとか。

そうしたシモンのこだわりなどの特徴を
「困った」ものだけにしないという
いろんな工夫がされているのも上手で

例えば
丸い形を好むシモンの趣向に合わせて
丸くくり抜かれたトーストや料理を作ったり(可愛んだコレが。笑)

彼の特徴的な動作をじっくりと描くことで
「この“パターン”が彼には必要で、安心なんだ」と

見ているうちに、我々がだんだんシモンを理解できていく、
そんな作りにしてあるんですよね。

なかなかうまいんです。

ただ、
そうしたシモンの特徴をユーモアに絡める試みなんですが、
肝心のユーモアがさほど面白くない(苦笑)
そこは残念。というか、センスの違いかな。


★5/3(土)からユーロスペース渋谷ほか全国順次公開。

「シンプル・シモン」公式サイト

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とらわれて夏

2014-04-28 23:29:18 | た行

監督を信じていいんだ!っていう好例かもね。


「とらわれて夏」70点★★★★


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1987年の夏。
アメリカ東部ニューハンプシャー州の小さな町。

13歳のヘンリー(ガトリン・グリフィス)は
夫と離婚し、引きこもりがちな母アデル(ケイト・ウィンスレット)を支えながら
二人で暮らしている。

ある日、ヘンリーは母とスーパーに買い物に行き、
ケガをした男フランク(ジョシュ・ブローリン)から
助けを求められる。

ヘンリーと母はフランクを家にかくまうことになるが
しかしそのとき
フランクが脱獄犯だというニュースが流れ・・・?!

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傷を背負った母と、心優しい脱獄犯の、
ある夏の5日間を描く作品。

そう聞いて
「ひと夏ロマンスものかしらん」と、けっこうエロい展開を想像したのですが
これがですね、想像と違って爽やかで、いい。

「JUNO/ジュノ」「マイレージ、マイライフ」の
ジェイソン・ライトマン監督を
信じてよかったんですね(笑)


あくまでも、主人公は少年で彼の目線が主軸なので、
描写はそういうものではなく

男女の間にも夏の日の“熱”はあるけど、
風吹き抜ける涼感もある。


ジョシュ・ブローリンが
男手のない家でいろいろやってくれたり

父親代わりとして
少年の将来に後に残る教えをしてくれたりと

ありそうなパーツかもしれないけど、
その揃え方が気持ちよいので悪くない。


最初、ジョシュ・ブローリンがウィンスレットを縛るシーンも
「必然性ないじゃん?プレイ?」と思ったんだけど(いやですねえ大人って。苦笑)
いやいや、ちゃんと理由があるんですよ。

ナナメに構えず、素直に見ると
よいと思います。

なんといっても
緑豊かな映像が、爽やかなこの季節にピッタリっす。


★5/1(木)からTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。

「とらわれて夏」公式サイト
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神宮希林 わたしの神様

2014-04-25 23:22:18 | さ行

年齢をあれこれ言うのは失礼ですが
まだ71歳でいらっしゃるんですねえ。お若い。

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「神宮希林 わたしの神様」63点★★★☆


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2013年に20年に一度の遷宮を迎えた伊勢神宮に
女優・樹木希林さんがお参りをするドキュメンタリー。
東海テレビ放送の製作・配給です。

もともとお経を読むのが日課で
“神様”とどこか通じているような
不思議な希林さんが独特の旅を写したもの。

まず
希林さんの私邸の様子から、映画が始まるのが嬉しい。

センスのいい調度品の数々を拝見しつつ
クイックルワイパーで掃除を始めたり(笑)
最近はもう「自分の生活や身を“始末”していく感じ」と語る希林さんがおもしろい。

そして
2013年7月、伊勢神宮に初めて参る。

希林さんにくっついて
伊勢神宮参りをバーチャル体験する感じで

「ここは感謝をするところで、お願いはダメ」とか
へえ、と思うけど、

このあたりは
旅番組、といえばそう言えないこともない。

ただ、地元での触れ合いも
希林さんのキャラでないと、こうはならないのは確かだし

さらにするすると
内田裕也さんとの夫婦話が披露されたりして
またグイと惹き付けられたり。

「こうするのだ!」というレールなく、気負いもなく
ゆらゆらする体験も、これはこれで悪くないです。

ラストのあれには「お!」と思わずにいられないし。

伊勢神宮という取っ掛かりがなければ
こういう“樹木希林”を見るチャンスはなかっただろうけど、

次回は、希林さん自身にグイッと迫った
ドキュメンタリーがやっぱり見たいと思いました。

★4/26(土)からオーディトリウム渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「神宮希林 わたしの神様」公式サイト
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バチカンで逢いましょう

2014-04-23 21:49:22 | は行

「バグダッド・カフェ」のあの女優さんが
おばあちゃんになって登場。


「バチカンで逢いましょう」57点★★★


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カナダの平原。

夫を亡くしたマルガレーテ(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)は
これからの人生を考えていた。

長女一家と暮らし、みんなでローマ旅行をし、
ローマ法王に謁見することを楽しみにしていたのに、

なんと長女はマルガレーテをホームに入れると言いだし
ローマ旅行もうやむやにされてしまう。

憤慨したマルガレーテは置き手紙を残し
一人でローマに旅立つが――?!

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「バグダッド・カフェ」(87年)の
マリアンネ・ゼーゲブレヒト、久々の主演作。

でも印象はあまり変わってないというか、
チャーミングでふくよかで、丸々、ニコニコ。
おばあちゃんといっても、まだ68歳だしね。


お堅いカトリックおばあちゃんである彼女が
ローマ法王に会いにバチカンを目指し

なぜか
イタリア人男と騒ぎを起こしたり
傾いた店を料理で手伝うことになったりと
ドタバタが起こる。

クラブで踊りまくったり、
生き生きと楽しそうです。

なのですが、
この映画、笑いにも、映像にもかなり独特なものがある。

監督は「飛ぶ教室」(03年)のトミー・ヴィガント氏ですが

その演出リズムが
マリアンネのテンポにあっていないように感じる場面もあり、
ちょっと乗り切れなかった。

おばあちゃん話のほかにも
神経質で口うるさい自分の娘とダンナの倦怠期やら
ローマに暮らす孫娘の恋バナ、

さらにおばあちゃんの秘密、そして恋?!……と
要素が多すぎて、とっちらかった感も。

それでも
法王に“あること”をしちゃうシーンとか
なにげに爆笑しましたけど(笑)

★4/26(土)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「バチカンで逢いましょう」公式サイト
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アメイジング・スパイダーマン2

2014-04-21 22:56:09 | あ行

都会的で、青春映画。
これがポイント。


「アメイジング・スパイダーマン2」3D版 69点★★★☆


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スパイダーマンとしてニューヨークの街を飛び回り
犯罪者と戦っているピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)。

学校を卒業し、スパイダーマン稼業に精を出す彼だが
研究者となって企業で働き始めた恋人グウェン(エマ・ストーン)との間は
少々ぎくしゃくしていた。

ある日、ピーターは街で
電気技師マックス(ジェイミー・フォックス)を助ける。

孤独なマックスは
スパイダーマンの大ファンとなるが
マックスにある悲劇が起こり――?!

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アンドリュー・ガーフィールドがスパイダーマンに扮する
シリーズ第2弾。

同じマーベル仲間の
アベンジャーズとはまったく別方向に
キッパリと進んでいるのがエライなあというか。

もちろん摩天楼を飛び回るアクションシーンも、バトルも
しっかり最先端のアクション・エンターテインメントなんですが

忘れちゃいけないマーク・ウェブ監督は
「(500)日のサマー」の監督だもんね。


アンドリュー・ガーフィールドの
ひょろりとした体つきと柔軟さを活かしたアクションには軽やかさがあり
音楽も、映像もリズムよくポップに刻み
とても若々しい。

エレクトロとのバトルシーンの
闇にほとばしるネオンカラーも美しく

時計のぜんまいばねから始まり、時計で終わるまで
美術にも良い意味“TOY感”があります。

スナック菓子やシリアルのパッケージのようで
都会的で、青春映画。
これぞ正統派アメコミって感じしますねえ。

ピーターの幼なじみ役として
最近人気のデイン・デハーンも登場。

今回はけっこう大きなターニングポイントとなりそうなので
シリーズ見てる方は、お見逃しなく。


★4/25(金)全国で公開。

「アメイジング・スパイダーマン2」公式サイト
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