ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

新しい靴を買わなくちゃ

2012-09-30 18:36:54 | あ行

新しい靴を買わなくちゃ?
「どうぞ、ご勝手に」って
言いたくなるよねえ(笑)

「新しい靴を買わなくちゃ」57点★★★


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カメラマンのセン(向井理)は
パリでパスポートを踏んづけられ、破かれてしまう。

踏んづけたのは、パリ在住で
フリーペーパーの編集をしているアオイ(中山美穂)。

平謝りのアオイは、
パリに不慣れなセンのために
道案内をしてやる。

センは「お礼に」とアオイをディナーに誘う。

そしてセンは
酔っ払ったアオイを、家に送り届けることに……。

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なんだかなあ、なタイトルで
正直シラケていったのですが

まあそこまで悪くなかったです(どんだけ。そして何様。笑)

「ロンバケ」などで知られる
ヒット脚本家・北川悦吏子氏が監督だけど
プロデュースが岩井俊二氏で、彼のカラーが強い感じ。

光の加減とピアノ曲なんて、もうそのものでした。


で、中身はといいますと
パリで出会った男女の物語は
意外にもネチャネチャ皆無。

手すら触れ合わない程度の
サラサラ加減(笑)

このキャストで
あまりベトベトしたラブシーンとか見たくなかったんで、
それはよかったかも。

その分、始まりそうで始まらない恋で
散々じらしますが、
この終わりかたなら意外に悪くないかな。

なにより115分、見終わって
「え?私、雑誌を開いたまま夢見てた? 」的な。

そういう非現実感が狙いだろうし、
それはそれでよいのではと思いました。

こっちが照れくさくなるようなぎこちない会話も、
手持ちカメラの雰囲気も、
「向井理が目の前にいる?」な臨場感を出しているし、

中山美穂氏演じるアオイさんも
ドジで、かなりモジモジさんで
酔っ払いぶりも堂に入っていて

けっこう本人に近いキャラなのかなと。自然でした。


フワフワ漂って、パリを歩いて、
たまにはこういうのもいんじゃない?


★10/6(土)から全国で公開。

「新しい靴を買わなくちゃ」公式サイト
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BUNGO~ささやかな欲望~

2012-09-28 14:18:01 | は行

タイトルは
“文豪”って意味です。

「BUNGO~ささやかな欲望~」69点★★★☆


宮澤賢治、永井荷風、坂口安吾など、
文豪たちの6本の短編小説を、

山下淳弘監督ら6人の監督が
それぞれ30分ほどの作品にしたオムニバス映画。


「注文の多い料理店」
「乳房」
「人妻」の3本が「見つめられる淑女たち」編(計95分)として、

「鮨」
「握った手」
「幸福の彼方」の3本が「告白する紳士達」編(計108分)として

それぞれ上映されるそうです。


まあ正直、宮澤賢治以外の話は読んだことないんですが
(ダメだな~苦笑)
ゆえに勉強にもなったし

いずれも映像のトーンが美しく、
けっこう味がある。


「注文の~」は脚色がユニークすぎ、
「握った手」もピンとこなかったけど
あとはどれもよかったな。

オムニバスでこの確率なら合格点ではないでしょうか。


キャストが石原さとみや橋本愛、山田孝之に成海璃子などなど
豪華なのも見どころだし、

時代が昭和ということもあるのでしょう
使われる言葉の美しさや、
あけっぴろげでない、仄かなエロスがいいんですな。


特に「乳房」とリリー・フランキー×橋本愛の「鮨」が好きでした。
谷村美月の「人妻」もコミカルでいい。

「幸福の彼方」は鎌田敏夫氏の脚本がやっぱり見事。
それにモデル出身の波瑠という女優さんがよかった。
彼女は中村義洋監督の新作「みなさん、さようなら」(1月公開)にも出てる。
注目ですな。


★9/29(土)から角川シネマ有楽町ほか全国順次公開。

「BUNGO~ささやかな欲望~」公式サイト
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モンスター・ホテル

2012-09-26 23:29:43 | ま行

ここ最近の米アニメで
久々に、シンプルに楽しめた気がします。

「モンスター・ホテル」3D版 70点★★★★

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1895年。ルーマニア。

ドラキュラ(声・山寺宏一)は
亡き妻の忘れ形見である赤ん坊を、一人で育てているよきパパだ。

彼は、人間に目の敵にされる
モンスターたちのためにホテルを作り、
赤ん坊を絶対にホテルの外に出さないと心に決める。

そして月日は流れて、現代。

118歳(!)と、年頃の娘に成長したドラキュラの娘メイヴィス(声・川島海荷)は
城の外に出たくてたまらない。

そんなとき
人間の若者ジョニー(声・藤森慎吾)が
偶然ホテルに迷い込んでくる。

あろうことかメイヴィスは
彼に一目惚れをしたようで――?!

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ソニー・ピクチャーズ製作の
3Dアニメーション。

「ファーストキッチン」の店頭に貼られているポスターを見て
「へえ、こんなのあるんだ」くらいの認識で、
正直、期待してなかったんですが(失礼!)

絵も話のバランスもうまく出来ててよかった。

「メリダの~」より数段いい出来ですよ。


絵のレベルも高いし、

なにより
娘可愛さで起こす父親ドラキュラの行動に無理がなく、
背景となる出来事にも整合性がある。

ドラキュラが変身するコウモリも可愛いしね(笑)


モンスターが集まるホテルだけに
さまざまなモンスターたちを造型で魅せる面白さもあって、

笑いがちゃんと絵に伴っているなど、
道筋がきちんとしている感じを受けました。

ただ、
ヒロインのハートを掴む少年役に
オリラジの藤森氏のチャラいキャラが
そのまんまはめれているんですね。

しかもこれ、選択肢ナシの吹き替え版オンリー。

なので
そこに引っかかってしまう人には
ちっと辛いのかな・・・とも思う(笑)

ま、ワシも最初は
「きゃわい~~ね」キャラにちょっと閉口しましたが、
いや、トータルでみたら許容範囲かなと。

お子さんと観ても楽しめると思いますよ。


★9/29(土)から公開。

「モンスター・ホテル」公式サイト
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ハンガー・ゲーム

2012-09-24 23:42:47 | は行

いやはや
こんなにおもしろいとは思わなんだ~。

「ハンガー・ゲーム」75点★★★★

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北米のある独裁国家。

ここでは毎年、国の12の地区から
12~18歳の男女がクジ引きで“プレイヤー”として選ばれ、

最後の一人になるまで強制的に殺し合いをさせられるという
「ハンガー・ゲーム」が行われていた。

そして今年もやってきた「ハンガー・ゲーム」の季節。

少女カットニス(ジェニファー・ローレンス)は、
12歳の妹の身代わりとして
この死のゲームに自ら参加することになる。

果たして彼女を待ち受ける試練とは――?!

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日本人なら誰でも
「バトル・ロワイアル」を想起しそうな話。

より大がかりになった
えげつない殺人ゲーム話かと思いきや、

これが
予想に反してグイグイ引き込まれて面白かった!

「バトル~」とは全然違って
過剰に残忍な血みどろ描写もなく、

倫理観もわきに置けるほど、
架空の世界に没頭する楽しさを久々に体感しました。


このゲームの模様は全国民にテレビ中継されていて、

プレーヤーとして選出されたカットニスは

ゲームがスタートするまでのプロセスや
観客へのアピール
そのためのプロデュースなどの過程を経験する。

その部分が深く描かれているのもいいし、

観ている我々が、まんまその視聴者になっているという
からくりがあり

眉をひそめながら、でも結局若者たちの生き死を
食い入るように観ている我々も共犯者なんだよ、という皮肉にハッとさせられる。


それになんといっても
ヒロイン、ジェニファー・ローレンスの魅力の勝利ですね。

10代にして天性の母性というか
おかんらしさを持っていた彼女ですが

本作ではその肝っ玉ぶりをさらに増幅させていて、
そんな彼女がサバイバルする姿は
もう応援したくなるでしょ!(笑)

ムスッと顔がここまでキュートな女優もそういませんわ。
でももう22歳なのね?意外だわ~

とにかく。
いい歳して、なんだか中学生のように
ファンタジー文学に夢中にさせてくれる作品。
確かに『ハリー・ポッタ-』を追うヒット小説というのもよくわかります。

お試しあれ。


★9/29(土)から全国で公開。

「ハンガー・ゲーム」公式サイト
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ボーン・レガシー

2012-09-23 18:00:21 | は行

ジェレミー・レナーはがんばっている。
彼は悪くない。

「ボーン・レガシー」58点★★☆

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CIAが作り上げた最強の暗殺者ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)。
だが、暗殺者は彼だけではなかった。

ボーンをしのぐ“最高傑作”である
アーロン・クロス(ジェレミー・レナー)は
CIAによる人格・肉体改造計画で作り上げられた人間兵器。

任務に備えて、
一人黙々と訓練を積んでいる彼だが
しかし最近、組織の何かがおかしいと感じていた。

そんなとき、事件が起こる。

アーロンの体調を管理しているマルタ博士(レイチェル・ワイズ)の勤務先で、
無差別の銃乱射事件が起こったのだ――!

辛くも生き延びたマルタだが、
しかしさらなる危険が彼女に迫り――。

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ボーンと同じ人間兵器が、
ボーンと同じ時期に、別の動きをしてたという
アナザーストーリー的な展開す。

アクション重視というより
人の心を人為的に操作する薬とか、
正義なはずの権力の暴走の怖さなんかを描いています。


なんですが、
まず話がちゃんと動き出すまでが長い!

さらにボーンに引きずられすぎ!

出演しない人を「ボーンを探せ!」的に、
あちこちに散りばめて盛り上げてもなあ。

これじゃ悪いパターンの「ボーン、部活やめるってよ」だよ(苦笑)。


監督のトニー・ギルロイ氏は
ボーン三部作の脚本を書いてきた人。

初監督作でG・クルーニー主演の「フィクサー」は好きだったけど、
ジュリア・ロバーツの「ディプリシティ~スパイはスパイに嘘をつく~」は
よくわかんなかったし、
ちょっと、とっちらかりがちなのかなア。

そもそも大ヒットシリーズの繋げ方として、
無理があるようにも思えました。

ジェレミー・レナーには何の落ち度もありゃしませんが、

不在のマット・デイモンの影の大きさを
あっさり許してしまう、その扱いが気の毒でした。

がんばれジェレミー!


★9/28(金)から全国で公開。

「ボーン・レガシー」公式サイト
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