エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

黒岳 (1984m)~凌雲岳 (2125m)

2016年05月21日 | 山紀行 (十勝・大雪)
カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)で一日満喫
大雪 黒岳 (1984m)凌雲岳 (2125m)
■ 山 行 日     2016年5月20日(金)  日帰り
■ ル ー ト      層雲峡~黒岳~凌雲岳 往復
■ メ ン バ ー     夫婦登山№14
■ 登 山 形 態     ツボ足(ブラブーツ)&アイゼン 登降
■ 地 形 図     1/25000地形図   「層雲峡」
■ 三角点・点名   黒岳 三等三角点  点名「温泉岳Ⅰ オンセンダケ」
             凌雲岳 三角点・点名無し

■ コースタイム   登り 4時間45分  下り 2時間35分
<登り>
07:00        黒岳ロープウェイ乗車
07:07        5合目駅下車
07:15        登山開始
07:55~8:15   7合目リフト駅終点
08:50~55     休憩
09:45~10:05  黒岳頂上
11:05        凌雲岳取付き
12:00        凌雲岳頂上

<下り>
12:25        下山開始
12:50        取付き点
13:20        黒岳石室通過
13:45~14:00  黒岳頂上
14:40        7合目リフト終点駅
15:00        5合目ロープウェイ駅
15:20        乗車
15:27        下車



※ GPSログではありません。こんな感じでルートを辿りました。ご参考まで・・

★ プロローグ・・・
私たちにとって5月、6月はマラソンモードの強い期間で休みの多くは練習に費やす事が多い。
とは言っても、すべての休みをマラソン三昧ではストレスが溜まり精神面で良くない。
そんな時は何と言っても「山」である。
そして運良く休みと好天予報が重なり絶好の登山日和となりそうなのが19日と20日だった。
北海道では記録的な暑さが予想され道東の内陸では30℃以上の真夏日もありそうだった。

こういう時は、癒し系の山が良い・・・
山の選択肢は大雪山系の残雪狙いと決めて未踏の山を求めた。

最初の計画は、テントを背負って山中1泊。のんびり未踏峰狙いと思い「旭岳~後旭岳と熊ヶ岳」
だったが、急遽の一泊計画は準備不足で慌ただしくなり中止。
次は一日目はゆっくり出発、富良野でお花見して層雲峡温泉と生ビールでのんびり車中泊。
二日目、日帰りで早朝から黒岳経由で未踏の「凌雲岳」を往復しようかと計画を変更する。

残雪の大雪山系は初めて・・
色々とネット情報を調べて計画を煮詰めて行く。
宿泊は、いつもの「層雲峡駐車場」。お風呂は「黒岳の湯」しっかりと割引券もゲットで500円。
ロープウェイは7:00運行開始、5合目駅まで所要7分、運賃は往復1950円。
下り最終便は17:00だった。
5合目~7合目までのリフトは夏リフト交換作業のため5月末まで運行中止。
コースタイムは登り4時間、下り3時間と予想し無理をせず明るい内の下山を目指し計画する。

大雪山系にはまだまだ未踏峰が多いが、その中でも「熊ヶ岳」「後旭岳」「小旭岳」「中条岳」「五色岳」
「小白雲岳」「烏帽子岳」などは、残雪期が登行最適時期と考えている。
これらの中には自然保護などを理由に夏の登行を制限している山もあるので、時間があれば山中泊
しながら一つ一つ踏破していくのも楽しみになっている。

日高トヨニ岳以来、約ひと月振りの夫婦登山は、こんな感じで決まって行った。


【5月19日(木)】  快晴
★ 快晴のドライブ日和・・・
午前中は夫婦で10キロRUNをして汗を流しす。
出発はお昼。
平日のドライブは車の通りも少なく順調にそしてのんびりと楽しんだ。
富良野の富田ファームに立ち寄りラベンダーの無いお花畑を散策する。
いつもながら来場する観光客の8割位はアジア系の外国人だった・・・。

層雲峡温泉には16時過ぎの到着。
いつもの駐車場に入るが今回は2階の屋上駐車場に駐車した。
ナイター中継をラジオで聞くためだったが携帯したラジオの受信が悪く
結局、感度の良いスマホラジオで聞き応援することにしたが、その前に
「黒岳の湯」で温まり生ビールの出前を取ってのんびりした時間を過ごした・・。
コンビニに寄り車に戻ってからは早々の二次会&夕食&ラジオ応援。
夕食はハンバーグカレーとビール。
野球はファイターズ vs ソフトバンク 結果は8:6でカード勝越しだったが
野球が終わる前に二人とも爆睡体勢・・結果は翌朝知った始末。

【5月20日(金)】  快晴

★ 下着一枚・・・
ロープウェイ駅まで車を移動し、出発準備をする。
快晴も朝の温度は6℃くらい。さすがの山の奥は涼しかった。
第一便は7:00発車。同乗したのは8名だった。
単独の男性が2名内一人はカメラマン風、プライベートツアー風の2名、観光客風の夫婦らしき2名
そして私たちの計8名がその内訳。

7分で5合目ロープウェイ駅終点に着く。
なんと異様な暑さ。持参の温度計は23℃を示していた。上に上がれば下より寒いと思ったがなんとも
大きな間違いだった。早々に着ていたフリースを脱ぎ長袖の下着一枚で歩くことにする。

ここから7合目まではリフトがあるが、5/9~31までは夏リフトの交換作業のため運行を中止して
いるので残雪のスキー場コースをツボ足で歩く事なる。
朝から燦々と照り付ける暑い太陽と眩し過ぎる残雪の照り返し、ゆっくり歩いても汗は噴き出る。



7合目までは整備された残雪のスキーコースを登る・・・


目指す黒岳と7合目リフト終点駅の見えるビューポイントだ!


ロープウェイ駅終点~リフト終点駅までは整備された残雪のルート(スキー場コース)を登る


7合目リフト終点駅から辿って来たルートを振り返りニセカを望む

★ 標高差400m以上の急斜面・・・
7合目リフトまでは比較的緩斜面で整備されたスキーコースをとことこ歩いて約40分で着いた。
ここからは見上げる首が痛くなるほどの急斜面が続きその差は400m以上ある。
ほぼ全面残雪で覆われた斜面、途中でこけたら止まらないほどの斜度がある。

先行者は2名、単独の若者は7合目からスノーシューを履いて登ったようだ。
もう一人の先行者はカメラマン風で軽装備。私たちのすぐ前で休憩中に追い着き少し話をした。
黒岳までは登りたいと言っていたがその後私たちの後から登って来たのはプライベートツアーらしき2名
だけだったのでカメラマンの登頂は確認出来なかった・・。

ルートの選択は、とにかく上を目指せだったが先行者のトレース泥棒をしたのは言うまでもない。
アイゼンを付けてジグを切りながら登り始めた・・・。
途中からトレースを離れて夏道の頂上直下の出口へ進路を取り斜めに登る事にした。
下りの事を考えて中腹からテープを付けながら登る。アイゼンが程良く利いて恐怖感は無かったが
直下の登りだけは絶壁を感じる斜度で慎重に登った・・この山行の核心部である。

7合目から丁度1時間半・・・黒岳頂上に着きホッとする。



7合目からアイゼンを履いて黒岳を目指す途中から・・・


7合目からの登りは1時間30分で黒岳頂上に着く


カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)は正に絶景・・・


黒岳から石室を目指すルートには夏道が出ていた・・・

★ カムイミンタラを実感・・・
9:45 黒岳頂上
目の前に広がる自然の造形、白と黒の見事なコントラストに言葉を失う。
夏を感じる暑さながら吹く風の爽やかさはなんとも心地良い。
貸切の頂上から今、先住民のアイヌが呼んだ「神々の遊ぶ庭」を両手広げて仰いでいる。
芸術センスなどまるで無い私だが、この景色をなんと表現したら読者に伝えられるだろう。
とにかく写真を撮って見てもらうしか術は無いがその写真もコンデジだから申し訳ない。

青い空、爽やかな風、広大な大雪を一望する白と黒の世界・・・
この景色を見れただけでもう満足だったが、せっかく頂いたチャンスなので未踏の「凌雲岳」を
目指すべく重い腰を上げて歩き始める事にした。

カムイミンタラにお邪魔して歩ける幸せを噛みしめながらまずは黒岳石室へ向かった。

先行者のトレースは石室付近から北海岳方面に付いていてその姿は確認出来なかったが、健脚そうな
若者だったので日帰りでも白雲岳くらいまでは行けるだろうと想像していた。トレース泥棒のお礼も
言えず心残りだったが、彼の安全登山を祈ってお礼に代えさせて頂いた。

10:05 黒岳発 石室へ

石室手前までは残雪が無く夏道が顔を出してルートを導いてくれる。
再び残雪に覆われると目の前に石室の屋根だけが見えて積雪はまだ3m以上あるのか?と驚く。



石室は雪に埋もれて手前から雪原が広がる・・・


雪に埋まった黒岳石室と目指す「凌雲岳」は近い

★ 期間限定の凌雲岳・・・
近づく凌雲岳を見ながら何度も登るルートの選択を検討する。
最初は、正面(東斜面)に見える大きな残雪を登る予定だった。
しかし、近づくにつれその斜度は半端ない急斜面で、もしこけたら白水川の沢底まで落ちるかもと
恐怖心が先行してしまった。
次に少し南東側に細く残る残雪を注視する。上部の一部が見えないが頂上直下まで雪が繋がっている
ように見えたし、斜度も少しは緩い。そしてこけた場合も滑落する距離は短いだろうと思った。
西側斜面も選択肢はあるが、同じ様な斜度であれば行く時間を考慮して外した。

こんな感じのルート選択。
取付きコルは白水川の源頭部、凌雲岳南東斜面1900m付近だ。

11:05 凌雲岳取付き (約1900m付近)

凌雲岳には夏道(登山道)が無いので一般的に登山を許された期間はこの残雪期に限られるだろう。
ただ記録的には白水川やリクマンベツ川からの沢登りルートもあるが、登山道から外れて凌雲岳に
登る夏山登山は禁止されていると聞く。
禁止の理由は分からないが、自然保護は無論として山容から登山の安全面を考慮すると
後旭岳や熊ヶ岳などと同様に急な岩場の多い山である事が共通している。多くのハイカーが訪れる
大雪山に於いて危険な登山道を開削せずとも充分カムイミンタラは堪能出来るので、自分としては
これで良し・・と納得する。



凌雲岳南東斜面の途中からカムイミンタラを見下ろす絶景に足を止めた (中央奥が白雲岳)

★ 初登頂「凌雲岳 2125m」・・・
12:00 凌雲岳頂上
取付きから約1時間の登りだった。
急斜面の登りにも少し慣れたのか恐怖心も無く淡々と登る事が出来た。
直下で残雪が切れてアイゼンをデポしツボ足で登る。低いハイ松と岩場が混じる頂上部。
藪を漕ぐことも無く上を目指すとケルンが見えだし頂上に来た事を実感する。
姿の見えないナキウサギの声だけが聞こえる。頂上には標識棒?と小さな標石があり
その周りにいくつかのケルンで囲まれている感じだった。残雪は無く広く平らな頂上。

芸が無いがいつもの山頂コーラで乾杯する。

気温は18.5℃、快晴微風。絶景のパノラマ。これ以上の贅沢は言えない。
あわよくば上川岳まで行けないか?・・と北側の稜線を覗き込むが、険しい岩稜の痩せ尾根は
自分たちのレベルでは無理と分かり諦めた。(時間も足りなかった・・)

時間の許す限り心地良き山頂に残りたいと思うのはいつものわがままと言うもの。
僅か25分の滞在だったが、最後にもう一度絶景を目に焼き付け下山する事にした。



凌雲岳頂上にて・・・


5/20 初登頂 「凌雲岳2125m」


凌雲岳から北に延びる尾根上に未踏の上川岳があるが、厳しそうで近くて遠い


チーヤンが未踏の「愛別岳」をズーム


西隣の大雪第二峰「北鎮岳」は2244m

★ ありがとうカムイミンタラ・・・
12:25 下山開始
ありがとうカムイミンタラ・・・感謝の意を込めて頂上を後にする。
頂上から残雪に残したアイゼンデポ地まで少し距離があり、下からしっかりとテープを付けて来ていた。
回収しながら降りるがテープが無ければ迷いそうな場所だったので安堵してデポ地に着く。
再びアイゼンを付けて雪渓を下る。

登り1時間も下りは20分程で取付き点に着く。
自分たちのトレースを辿りながら時々振り返ると北鎮岳にスキーで登っていた後続者が降りて来る
ところだった。北鎮岳はほぼ全面残雪で覆われているが見えている東斜面は急斜面である。
そこを一気にシュプールを描きながら降りて来た!「格好良いぃ~!」とつい歓声が上がる。

あれを見ると自分たちもスキーを持って来れば・・・と後悔するが、体力と技術が無い事を
肝に銘じてあっさりとため息をつくだけである。

そのスキーヤーには石室付近で追いつかれそうになったが、最終的に出合ったのは7合目~5合目の
スキー場コース内だった。結果スキーヤーは2人で一人は外国人の女性だった。



急斜度の下りもアイゼンが利いて楽々下降・・・


雄大なカムイミンタラを眺めながらも暑い下りだった・・・


再び黒岳への登り返し・・・


「まねき岩」・・夏道の登りでは黒岳頂上が近い事を知らせる目印でもある


ちょっとビビった下りもようやく景色を見る余裕が出来た・・・

★ ビビった黒岳の下り・・・
13:55 黒岳から下山開始
いよいよ絶景に別れを告げて下山に入る。
降り口でアイゼンを付けて降りようとするが、予想以上の急斜度にビビってしまった・・。
沢山のトレースがあるが基本自分たちのトレースを一歩ずつ慎重に辿り高度を下げて行く。
アイゼンが雪団子になって滑らせたら大変だ。こんな場所で足を滑らせたら絶対に止まらない。
そう思えば思うほど足がすくみそうだった。正直早く降りたくてしょうがない・・と願う。

下りの汗はほとんど冷や汗だ。
ホッとしたのは1700m位だろうか? 7合目リフト終点駅や層雲峡温泉が見え始める頃
斜度も緩んで恐怖感は消えた。あとはトレースを無視して直線的にリフト終点駅を目指した。

ロープウェイ駅には15:02位に着いた。
もう少し早ければ15:00発のロープウェイに乗ることが出来たのにと悔やむも立ち直りも
早い。自販機で冷たいコーラを買いグイグイと飲み干す。見上げる空はまだ青くそして白い
世界に身を置いていた事が嘘のように今日を振り返るひと時・・。

15:20発 ロープウェイ乗車。
15:27着 ロープウェイ下車。



下山してすぐに再びここで汗を流す・・・

20:20 無事自宅に到着。


※ 5/25 アップ終了