エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

トノカリシベツ山 (1151.5m)

2010年03月15日 | 山紀行 (十勝・大雪)
十勝連峰の東側、奥深き山・・・
トノカリシベツ山 (1151.5m)
HYMLの仲間とテント泊、初同行・初登頂に超人を知る・・・
■ 山 行 日    2010年3月6日(土)~7日(日)   1泊2日
■ ル ー ト    トノカリ林道~トノカリシベツ山南東尾根~南面直登 往復
■ メンバー    ko玉、エバ
■ 登山形態    山スキー
■ 地 形 図    1/25000地形図  「オプタテシケ山」
■ コースタイム  1日目 駐車地からテン場まで2時間45分
          2日目 テン場から頂上  登り1時間55分  下り47分
              テン場から駐車地 1時間13分


トノカリシベツ山と聞いてもすぐにその山容や場所が頭に浮かぶ人は少ないと思う。
興味を持っていただけた方は地形図を片手に場所の確認をしよう。十勝連峰オプタテ
シケ山の東に約3キロ、大雪山への縦走路途中にあるコスマヌプリ(1626m)の大きな
南尾根1150m台地状にある三角点が今回登ったトノカリシベツ山である。その東側約
2.7キロ地点には東トノカリ沢を挟んで同じ様な山容の三股山(1212.0m)がある。
いずれの山も夏道は無く奥深き目立たぬ山なので知る人は少なくネット上で検索しても
この時期の記録は皆無に等しい。私が唯一参考資料となったのは、八谷和彦氏著書の
新版・「ガイドブックにない北海道の山々」で紹介されている記録だけだった。

この山を選定し今回始めてパーティーを組んだko玉さんは、北海道で数百座はあると
いう700m超峰の山の完登まで30数山を残すだけという超人的な山やさんで、とに
かく毎週のように未踏の山を目指してきた結果が今の成果に至っているというから凄い
方でした。

ko玉さんとは、HYML(北海道の山メーリングリスト)の定例オフミ(通称つぼ岳)で知り
合い、互いに登っていない山を一緒に登ろうと以前から約束していて早々今回の計画と
なった。エバとしては、光栄の至りである。

当初のルートは、八谷氏と同じ三股山の南東尾根から取り付き三股山を経由して東トノ
カリ沢を渡渉しトノカリシベツ山の東斜面から登るものだと思い込んでいたが、ko玉さ
んの構想は全く違っていた。


【 3月6日(土) 】

エバ宅で合流しエバ車で登山口を目指した。日勝峠を越え清水町からトムラウシ温泉へ
向かう道道を辿る。秘湯ヌプントムラウシ温泉へ向かう分岐点に「曙橋」がありここを
渡ってすぐに左折する林道に入る。車一台がようやく通行できる範囲で除雪され十勝川
に沿って延びている。約4.4キロ走ると「殿狩橋」を渡りすぐに右折する林道に入る。
トノカリ林道と言って今回の登山口となる林道である。どこまで除雪がされているかで
行動時間に大きく左右されるが900m進んだところで終了していた。林道右手には、
トノカリウシュベツ川が流れ大きな砂防ダムのあるところで除雪が終わっていた。

本日のテン場予定地は、トノカリシベツ山の南東約1.3キロ地点のC832だったの
で距離にして約4.5キロ、久しぶりの重装備での歩行が待っていた。

11:30出発する。



トノカリ林道に入って900m程走ったところで除雪終了(砂防ダムの地点)


しっかりした広い林道で平坦な道が続く・・・


気温が高く湿った雪でシールが濡れ、早々に雪がへばり付く始末だ。

12:27 約2キロの平坦な林道を歩いてトノカリ2の沢林道分岐に着く。
先頭を交代しながらも互いにペースがつかめず苦慮したが次第にペースを落としながら
快晴の林道をひたすら歩いた。2の沢林道に入ると一端下りとなりトノカリウシュベツ
川に架かる橋を渡る。左岸沿いに林道は伸びていてしばらくは楽をさせてもらうが、地
形図にない林道が更に延びていてC642の三股沢二股にも橋がありその林道は正に南
東尾根の末端に位置していた。迷う事無く利用させてもらうが、結局目標のC832の
すぐ東側をかすめ更に奥へと延びていて810m付近で平らな広い植林帯の場所に着き
二人とも力尽きた。
14:15ここをテン場と決め、早々設営に掛かる。



15:15 設営を終了し安着の儀へ移行した。

★ 気が合うかも・・・
雪舞う中で、重いザックをほうり投げ設営地を踏み固めてからスコップとノコで
ブロックを掘り起こし、テン場の周りに壁を作っていく。
しかし最初一段目は良かったが二段目以降は雪が柔らかくてすぐに崩れ作業がはかどら
なかった。そんな時、「疲れたから一杯やるか!」の発声はko玉さん。・・・なんて気
の合う人なんだろうと思うと同時にザックから缶ビールを取り出して「プシュッ!」と
やるのはエバだった。
何度かある至福の一杯目を互いに感じながら「旨い」と言って雪の壁作りは中途に終えた。


★ 最重要 装備・・・
もう頂上は目の前で、雪の中から薄っすらとトノカリシベツ山の頂上台地を望んでいた。
明日もそう焦ることも無くたっぷり時間があるのでゆっくりしようか・・・という
リーダーko玉さんの頼もしい声に互いが描いたものは、アルコールしかなかったようだ。
テントの中では早々に持ち寄ったビール、ウイスキー、日本酒を出して始めて組む
パーティーとは思えない人生と山談義は絶えなかった。その中で、もっとも重要な
装備は何か・・の話題で「アルコール」という共通認識がまとまり残り一滴まで続
いた。
次第に外は風が強くなり吹雪模様となっていたが大して気にする事もなく
22:30頃就寝した。
ちなみに今夜のメイン料理は、エバ夫婦の定番「具沢山つみれ野菜鍋」だったが
これがko玉さんに大好評でとても嬉しかった。



【 3月7日(日) 】 雪のち晴れ

5:30 夜中に何度か風の音で目を覚ましていたが、起床時間もはっきり決めていな
かったので明るくなってから起き始めた。
外は相変わらず雪模様で新雪が10cmほど積っていた。のんびりと朝食を済ませ出発
したのは7:15だった。


★ 読図

地形図を見れば明らかですが、トノカリシベツ山の頂上は1150mの平らな台地状で
湿原地帯になっている。

しかし、テン場からそこに登るにはどの方向からも急斜面で標高差300mを登らなく
てはならない。東トノカリ沢沿いのルートを辿り東斜面の比較的緩やかな斜度を選ぶか
反対の西側タテヤ沢からの緩斜面を選ぶことも可能だったが、ko玉さんは最短の南直登
斜面のルートを選んだ。地形図上では、一番等高線が狭く急斜面が想像出来るルートで
ある。テン場から頂上のある北北西に進路を取り900m付近から顕著な沢形を巻くよ
うに降りて南斜面の僅かに尾根を見つける。地形図通り沢形から急斜面が立ち塞がり一
度登ろうとした斜面は雪崩の巣だったので止め、その先に登れそうな斜面を見つけて取
り付いた。標高差で30m位だろうかko玉さんが常にリード役でエバはいつも後方から
着いて行くだけだった。ジグを巧みに切りながら上り切ると一端平坦なテーブル状とな
り休める場所があった。その先(上)も見上げるような急斜面が続いたが50mほど登る
度にテーブル状の平坦な場所があり積雪も深くなって登りやすかった。地形図では読み
取れない微妙な曲線や等高線のマジックをko玉は知っていて最高のルートだった。
頂上台地の直下ではダケカンバの大木にカバノアナタケを発見し帰路で忘れないようテ
ープで印した。台地への乗っ越しでは大きく張り出した雪庇を見てびっくりしたが、偶
然に一箇所だけ雪庇の切れていた登りやすいところを見つけ難なく登りつめる事が出来
た。



沢から取り付いた最初の急斜面を巧みに登るko玉さん・・・


間もなく頂上台地に乗っ越す1150mの直下の斜面

★ 頂上直登の乗っ越しだった・・・

9:10 トノカリシベツ山 頂上
これも偶然なのか、乗っ越したその場所が一番の高みでGPSで確認すると正にその
場所だった。遠望は利かなかったが平坦な台地に神秘的な針葉樹林帯が広がり別世界に
飛び込んで来たような錯覚さえ覚える場所だった。テン場から僅か1時間55分だった
ので拍子抜け・・という感もあったが、それもリーダーの巧みな読図と林道のお陰と感
謝する。



奥深き念願の頂上 「トノカリシベツ山」にて

★ 一時のパウダー・・・

9:25 下山開始
下りもほぼ往路を辿るが、1150m台地から1000m位までの斜面は、昨夜の新雪が
パウダーで深くシールを付けたままでも最高の滑降を楽しめた場所だった。しっかりと
カバノアナタケもゲットして僅か47分でテン場に戻った。





カバノアナタケ


左の平坦な山がトノカリシベツ山です。(810m付近のテン場から望む)

★ 日帰り可能・・・
帰路では、テン場からシールを外し林道に残した自分たちのトレースに沿ってスキーを
滑らせた。
2の沢林道の橋から上り返しがちょっと辛かったが1時間13分で無事車に着いた。
くったり温泉で汗を流し、清水町でラーメンを食べて帰路に着く。
久しぶり妻以外のパーティーだったが、有意義に色々学んで楽しい山行だった。

ko玉さんありがとうございました。