カトリック情報 Catholics in Japan

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(書評)日本神話

2024-04-11 03:04:33 | 書評


 日本神話を聞きました。全てが本当にひどい話です。イザナギ、イザナミ、スサノオ、大国主、ニニギ・・・。彼らの人格は、我々俗人と同レベルか、それ以下です。少しも聖なるところがありません。

 イザナミは自分の腐敗した死体を夫に見られて怒り、夫を呪い、あの世の亡者たちと共に夫を追いかけ、夫が逃げ延びてしまうと、仕返しに毎日1000人、人を呪い殺してやると宣言します。

 スサノオも大国主もニニギも、乱暴で自分本位で、イザナミと方向性において大差がありません。
 
 要するに、彼らは、私達俗人と同レベルかそれ以下の人格であり、徳において少しも優れていないのです。先日紹介した聖人の言葉を、まさに思い出します。

人々は自分達が崇拝する神々を模倣する。そのような惨めな人達においては、自分達の犯罪が宗教となるのである。

聖キプリアヌス


 このような堕落した神々を模範にすれば、善人ではなく、悪人が育ちます。


【書評】三体

2024-03-14 14:12:41 | 書評


【書評】三体

 今回読んだのは、中国人のIT技術者の書いた近未来~超未来の宇宙SF小説です。もうすぐ読み終えますが、少なくとも2編『三体II』まではいい小説です。最終編『三体III』になると、少し世界観が崩壊しています。

(内容)

 地球の隣の星系、プロキシマ・ケンタウリにも知的生命体が住んでおり、あることがきっかけで、地球への侵攻を開始し、いろんな問題が起きる、という物語です。

 少し詳しく書くと・・・

(物語の前提)

・三体星系

 太陽系の隣の星系、ケンタウルス座α星系には、3つの恒星があるが、互いに不規則に動く。その周りを回る12の惑星も不規則な動きを余儀なくされ、1つ、また1つと恒星に飲み込まれて滅びていき、いつしか一つの惑星が残るのみになっていた。

 その惑星の公転周期は、惑星が3つの恒星のうちのどれか一つに捕まって、その周りを規則正しく公転する恒紀と、3つの恒星の間を不規則に動く乱紀に分かれる。恒紀には気候は安定するが、乱紀には灼熱地獄になったり、酷寒の世界になったりと、それはそれは過酷な環境であり、そこで育った生物、特に知的生命体 三体人は、独特の進化を遂げた。乱紀が来ると脱水して、全身の水分を抜いて仮死状態になり、灼熱や酷寒に耐えながら、次の恒紀が来るのを待つのである。

 また、そんな環境下では、全体主義の国家が続きやすく、地球の20世紀、三体星系では、厳格な階級制と労働年齢を過ぎると強制的に脱水させられ、焼かれてしまう極端な国家が成立していた。ただし、知的生命体の発祥は、地球と比べて、数百万年早く、極端な環境下で既に200以上の文明が栄えては滅んだが、科学技術では、地球の人をはるかに凌駕していた。

 そして、3つの恒星の動きは、基本的に不規則なので、その惑星もいつかは他の星のように、恒星のどれかに進路を乱され、飲み込まれてしまうだろう。そうなる前に、脱出しなくては・・・。そう考えていたところに、地球からの通信が届く。

・地球との接触

 強力な電波でメッセージを送ってきたのは、1970年代の地球外文明探査プロジェクトが進む地球。地球から4.2光年の三体星系では、その受信に成功して、メッセージを返す。三体の監視員は善意で「侵略の企図がある。決して返信するな」と送信するが・・・。

 文革で家族ともどもひどい弾圧を受け、政治にも人生にも絶望していた研究者の葉文潔は、「助けてほしい。人類文明は危機に瀕している」と、あらぬメッセージを返してしまう。

 メッセージを受信して、地球の正確な位置を知った三体文明は、その距離が近いことに狂喜し、移民船団(=侵略艦隊)を派遣する。ただし、それでも4.2光年はあるので、彼らの能力で400年近くはかかる、

 というストーリーです。

 以後、地球の側は、さまざまに準備して、迎撃なり避難なりの努力をするのですが。優秀な学者や軍人を冬眠させて、200年後に送ったり、あの手この手で頑張りますが、大航海時代、中南米の古代文明が西洋人にかなわなかったように、どうやっても、勝つことはできません。その後、二転、三転するのですが・・・。

(感想)

 1巻にあたる『三体』から3巻目の『三体II下』までは、かなりバランスよく書かれています。冬眠覚醒後の未来都市やそれまでの歴史も、毎回克明に描写されたり、登場人物の会話を通じて紹介されており、時間旅行をしている気分になれます。

 ただ、最終編の『三体III』あたりになると、他のいろんなSFにも似て、世界観の崩壊が起きており、残念な要素も多く、それはマイナス点です。

 例えば、相対性理論を中途半端に肯定した結果、おかしなことになっていたり・・・

 相対性理論は、光の速度を一定としますが、この小説では理論は不完全であり、可変であった、とします。それで、最終巻では、しばしばいろんな場所で光の速度が変わったりするのですが、そのくせ登場人物は相対性理論の別の法則には縛られます。あらゆる物体もエネルギーも、光速を超えられない。だから、光速が遅くなった世界では、えらいことになってしまいます。物体の移動速度が、遅く縛られたりするのです。

 いや、これ、あり得ないでしょ(笑)と、突っ込みを入れたくなる設定です。光の速度不変を変えるなら、他の箇所も変えないと・・・。例えば、光の速度を亀の速度にした場合、人は殆ど歩くことができなくなります。そんなこと、起こり得ますかね? 相対性理論は、光の速度不変を含め相対性理論の前提で成り立っているんだから、前提が壊れた世界では、他の箇所も適宜調整しないとおかしくなるでしょ、と思うのですが。

 他にもいろいろ、突っ込みどころはあったのですが、それはSF小説ですから、仕様上、当然ですね。

 ただ、あともう一つ、目だった不満点、というかこの物語の特徴が。

 この小説では、異星人からの侵略なり、さらに全く別の異星人からの地球破壊などに備えて、人類の太陽系脱出が何度も計画されますが、そのたびに「逃亡禁止法」などが制定されて、組織的な地球脱出は禁止になってしまいます。このあたりは、作家のお国柄を感じさせてくれました。

 この作家は、何が何でも、地球人を太陽系の外に避難させたくなかったようです。地球から外宇宙への大移住ができれば、それはそれで、ストーリーが広がって、物語も面白くなり、続編も余分に書けて、作家は儲かると思うのですが、なんでと思ってしまう設定ではありました。この辺は、ちょっと普通のSFの作りじゃない。最近は、中国政府がSFにも多少の規制をかけていると聞きます。そうした影響があるのでしょうか、と勘繰ってしまうような作りでした。



【書評】『ドイツ誕生 神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世』菊池良生

2023-12-19 17:40:45 | 書評

 この本は、ある歴史学者が、神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世の全生涯を、その背景や影響を分析しながら、紹介する形になっています。著者は明治大学の教授で、退職後は名誉教授です。

 当然に教皇庁とのやり取りや確執も出てきますし、はじめて知った驚くこともありました。一応、私も史学科卒なのですが、専攻から大幅に離れた時期の話は、疎くはなります。

 さて、神聖ローマ帝国やオットー1世について、読んだことの要約や感想を書いてもいいのですが、その前に、教会について知って驚いたことを。

 当時のカトリック教会は腐敗を極めており、教皇を含め聖職者がしばしば公然と内妻を持っていた。その子が、そのまた聖職者や時には教皇になるケースさえあり、さらには、その内妻がバチカンで公然と権力を振るい、このようなあり方を、その後の歴史家たちは、ポルノクラート=婦妾政治 と呼ぶ。

 そんな中、教会の伝統を破って17歳で教皇に即位したヨハネ12世に至っては、人妻との情事を楽しむ中で、心臓麻痺で命を落としてしまった。さらに、この教皇は突然死をする前に廃位されたり、復位(自称)したりしているが、彼が廃位された後、代わって即位した教皇レオ8世は、枢機卿はおろか、司教でも司祭ですらなく、一介の平信徒だった。それが、オットー1世の指示で、毎日、一段階ずついろんな聖職に叙階されて、教皇に即位した。

 そういえば、この時期は、かの有名なクリュニーの大改革の直前に当たるんですね。もう大学に入る前から、クリュニー改革前のカトリック教会がひどく乱れていたことは、中央公論社の『世界の歴史』を読んで知ってはいましたが・・・。 しかし、ここまでとは驚きました。

 オットー1世が皇帝に即位したのは962年、今に限らず、千年紀の前後は乱れるものなのでしょうか・・・と思ってしまいました。

 その他、オットー1世は、ドイツの統合と分解の原因を同時に作ったというのが、著者の評価で、これには同意です。

 東フランク帝国(今のドイツ)を統合し強化し、結果的にドイツ人のような意識をもたせ、その意味でドイツ統合の要素を作った。

 一方で、ドイツ分解の下地も作ってしまった。それは、オットー1世がローマ帝国皇帝に即位したことで、ところで皇帝とは、ローマ千年の歴史からして、必ずしも世襲とは考えられておらず、むしろ、建前上は、元老院や人民に選ばれる最高職だった。そして、世襲以外で皇帝が選ばれることは、当たり前的に、ローマ・東ローマの歴史では起きていた。つまりは、皇帝選挙制度と相性が良すぎてしまい、以後しばらくして、神聖ローマ帝国の帝位は、諸侯による選挙制になってしまい、これがドイツ大分解の原因になってしまった。

 というもので、これにはまったく同意です。




(感想)超訳 資本論

2023-12-05 07:58:34 | 書評
(感想)超訳 資本論

 資本論の要約を読み(聴き)終えました。

 原書(の訳)を読む気は、勿論、ありません。非常に難解ですし、経済学部でも研究者でもない私に、そこまで時間と根性を使ってまで読む価値があるのか、確信が持てないからです。非常に著名な先行研究ですが、さすがに古いでしょう。

 剰余価値の再投資/福利によって富める者はますます富んでいき…とか、考えさせられることは多かったです。何年も前から、マルクスの良い要約本を探していて、人に尋ねたりもしていました。目的通りの本が見つかってよかったです。



【書評】ホーキング博士の遺言(『ビッグ・クエスチョン』)

2023-09-26 00:42:51 | 書評


ホーキング博士の遺言を纏めた『ビッグ・クエスチョン』、ブラックホール以後の章は、要約するのが難しいですね。とりあえず、前3分の1の要約。というか、記憶に残ったこと(笑)

宇宙の始まりなど

 ビッグバンの前に何があったか問うことには意味がない。ビッグバンの後に時間が始まったのであり、その前にはそもそも時間が存在しなかった。よって、その前はあり得ない。南極点より南には何があるのか、という質問に似ている。

人類の行方

 DNAによって、生物は生まれた。そして、DNAは生物の遺伝と進化に大きな役割を果たした。書き言葉の発生は、第二のDNAと言える。一つのDNAに保存できる情報量はハリーポッターの小説50冊分である。対して、一般的な国立図書館には500万冊の本が存在する。また、DNAと違って書き言葉は、更新や追加が容易である。書き言葉の発生が、人間という生物の進化のスピードを幾何級数的に高めた。過去1万年前から、人間という生物の進化のスピードは、まったく別次元の段階に入った。

 私たちの脳は、ダーウィン的なDNAの進化のスピードでしか進化しない。対して、文章文化の情報量の増加のスピードはその比ではない。増えすぎた情報量のごくごく一部しか人には理解する時間がないために、人の専門分野は時代を経るごとに狭くなっている。要するに、DNAと文字文化との進化のギャップが問題となっている。

 その解決として、人類は自己設計してDNAの限界を超えて進化を試みるだろう。たとえ法で禁じようと、必ずそれは一般化するし、そうなれば、人類の中でそうした「進化」を拒んだ人たちは、絶滅するか劣等種の地位に貶められるだろう。

 また、このような宇宙時代、新種の生命ができるかもしれない。もし電気信号だけの、プログラムだけの新種の生命体が誕生すれば、それは我々炭素生命体を遥かに凌駕するかもしれない。

宇宙人は存在するか

 なぜ宇宙人は地球を訪れないのか。地球にしか生物が存在しないのか、生物は比較的発生しやすいが知的生命体に進化する率が限りなく低いためか、どちらもクリアできるのだが、その後、一定の率で起きる隕石落下、小惑星衝突で宇宙移住が起きる前に絶滅してしまうのか。それとも、知的生命たちはある段階まで来ると不安定になりやすく、やがて自ら戦争などによって自滅してしまうのか。

 私のお気に入りは、これらどれでもない次の可能性だ。すなわち、宇宙に知的生命体は存在する。しかし、その出会いは必ず劣った側にとって不幸な結果になるだろう。

未来を予言することは可能か

 仮に全ての粒子が法則的に動き、未来が確定しているとしても、解かなくてはいけない法則が多すぎるために事実上、不可能になっている。一匹の蝶が羽ばたいたために、連鎖的に変化が起き、どこかで大雨が降ることもありうる。量子力学的にあまりに多い粒子と動きの為、100%未来を予想することは、事実上、不可能。

 そして、全ての粒子が必ずしも法則的に動くとは限らない。もっとも小さな粒子となると、それがあまりに軽すぎるため、しばしば離散的な、どうやら非法則的な動き方をする。ハイゼルベルグの不確定性原理であり、「神はサイコロを振らない」の否定である。宇宙には、非法則的なランダムな動きが存在する。これでは、未来の予測は到底不可能だ。位置と速度の両方を予測しようとすると、不確定性が生じる。また、最新の研究では、時空が歪む時があり、私たちの法則が当てはまらない空間が存在する。こうしたものを考えると、未来を予言することは非常に難しい。