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『大江健三郎全小説9』

2024-05-31 | 大江健三郎

 

大江健三郎全小説9


2019年5月10日 第一刷発行
株式会社講談社

--------(抜粋)

 

危機にある男を励ます女―『「雨の木(レイン・ツリー)を聴く女たち』
大きな悲哀を負った女性の再生―『人生の親戚』
障害を持った兄との生活を通して家族・社会・時代、人間の未来を考える妹―『静かな生活』
美しい国際派女優をめぐる過去の事件と新たなもくろみ―『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』
女性的なるものの力に宿る希望と再生を主題にした4つの傑作長編小説

【収録作品】
 「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち
 人生の親戚
 静かな生活
 臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ


──女性的なるものの力

 

著書について

大江健三郎
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞、94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
 


--------

抜粋した最後の『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』
こちらは改題され『美しいアナベル・リイ』となっている。



・「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち

頭のいい「雨の木」

--------(抜粋)


「僕」はハワイで行われた文学シンポジウムに参加した(注:大江は実際に1977年にハワイ大学の東西文化研究所で開かれたセミナー「文学における東西文化の出会い」に参加している)
迎賓のパーティーが民間の精神療養施設で行われた。そこで「僕」はアガーテという女性から庭に立つ「雨の木」を教えてもらう。パーティーは施設の収容者によって開催されていたことが判明する。アガーテも施設の患者であった。


--------



「雨の木」を聴く女たち

--------(抜粋)


大学時代の旧友の英文学者くずれで虚言癖がある高安カッチャンが、ハワイ滞在中の「僕」を訪ねてくる。重度のアルコール依存で独特のパーソナリティの高安に「僕」は散々に振り回される。帰国後に「僕」は高安の妻の中国系アメリカ人のペネロープ・シャオ=リン・リー(ペニー)から手紙を受け取る。一通目の手紙で、アルコール依存の高安の再生のために、高安の構想をもとにした小説の合作を依頼される。二通目の手紙で高安がアルコール依存の果てに事故死したことを伝えられる。


--------



「雨の木」の首吊り男

--------(抜粋)


「僕」が数年前メキシコの大学で教鞭をとっていたときにアシスタントをしてくれた日本文学研究者のカルロス・ネルヴォが末期癌であると知らされる。知らせに悄然としながらも「僕」はメキシコ時代を回想する(注:大江は1976年、メキシコの国立大学コレヒオ・デ・メヒコで客員講師をつとめている)
カルロスの奇態な人物像、エキゾチックな異国の街での出来事が語られる。帰国の際の送別会の挨拶でカルロスは、自分が病気で痛みに苦しむことになった時は自殺をするのでその手伝いをして欲しいと述べていた。


--------



さかさまに立つ「雨の木」

--------(抜粋)


「僕」は日系人の主宰する反核集会に参加するために再びハワイに出向くが、集会は中止となる。ペニーが「僕」を訪ねてきて高安について話し、成り行きで性交する。帰国後ペニーから手紙が届く。同封された写真には精神病院の火災で焼失した「雨の木」の前に立つペニーとアガーテが写っていた。手紙でペニーは核の大火による先進各国の破滅は避けがたいと述べる。そして彼女とアガーテは大火後の「原水爆荷物カルト運動」に身を投じるためメラネシアに出向くという。


--------



泳ぐ男――水の中の「雨の木」

--------(抜粋)


「僕」が東京で通っているプールの常連の学生玉利くんはプールのサウナで、やはり常連のOL猪之口さんから性的な挑発を受けている。ある日猪之口さんが強姦されて殺害される。「僕」と同窓の高校の英語教師が犯人で、彼は犯行後すぐに自殺しているが、玉利くんが事件に関与している可能性を「僕」は想像する。


--------



読書会タイムオーバー!








言葉を持たない私・・


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『大江健三郎全小説4』+

2024-05-11 | 大江健三郎

 

 

大江健三郎
『なぜ詩ではなく小説を書くか、というプロローグと四つの詩のごときもの』







『大江健三郎全小説4』収録

初出
『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』(1969年4月)巻頭に「第一部」として掲載

 

---


詩には、読みおえるということがない。いったん人間が詩に遭遇すると、その出会いはつねに進行中である。



ぼくの内部における燃えるトゲには二週類があると分類しなければならない。その第一は、ブレイクや、とくに深瀬基寛博士のみちびきによるオーデンの詩である。


---







*二つの中編をむすぶ作家のノート

初出
『みずから我が涙をぬぐいたまう日まで』および『月の男(ムーン・マン)』
巻頭に掲載(1972年10月)

この上記二編のヒーローたちをむすぶ 結ぶ

---


考えてみれば、この二夏のあいだ僕は、これらふたりのヒーローと、作者自身との三人で、車座をくみ、あのいつまでもやって来ないゴトーを待ちながら、語りあう者らのように、純粋天皇について繰りかえしまきかえし噂話をしながら、待ちつづけていたような気がする、いつまでもあわられぬ純粋天皇を‥‥‥


---

正気であるか狂気であるか

その当時の大江さんの小説はどれほどの影響力を持っていたのか?知的刺激

沖縄「集団自決」裁判







「戦争とは負けるための戦いである」

 


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『大江健三郎全小説4』完読

2024-04-28 | 大江健三郎

 



『大江健三郎全小説4』

 

2018年12月10日 第一刷発行
株式会社講談社

最後の一編『水死』です。
集大成と言える長編になります。
なんと74歳で生み出されたとは驚き!

フィクションでありながら、現実味がある。
今回の主人公は「娘」目線 そこの意外性もおもしろく。
 
 
--------抜粋
 
 
「今度の中篇集で、癌か狂気してか死の床にある男が、子供のころ父親と加わった、天皇の名のもとの反乱を再現しようとする。また、月への打ち上げを恐怖して、宇宙船基地を逃げた男が、現人神(アラヒトガミ)に救われることを夢みる・・・・・これらの、自由をおしつぶされる悲鳴と救済をもとめる叫び声を、時にはユーモラスにあげている男たちが、僕にとっての「同時代」なのです(著者・『みずから我が涙をぬぐいたまう日』)
 

【収録作品】
走れ、走りつづけよ / 生け贄男は必要か / 狩猟で暮らしたわれらの先祖 / 核時代の森の隠遁者 / 父よ、あなたはどこへ行くのか?/ われらの狂気を生き延びる道を教えよ / みずから我が涙をぬぐいたまう日/月の男(ムーン・マン)/ 水死

──父と天皇制

 
著書について

大江健三郎
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞、94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
 
 
 
--------
 
 
 
・水死


--------(抜粋)

ノーベル賞作家、生涯の主題
「父、水死」に立ち向かう。

まさに小説としての面白さを平易な文章で達成した、新しい代表作

終戦の夏、父はなぜ洪水の川に船出したのか?
母が残した「赤革のトランク」には、父親関係の資料が詰まっているはず。
それらを手がかりに、父のことを小説に書こうとする作家・長江古義人
過去を持つ若い劇団女優との共同作業を通じて、
自らの精神の源流としての「深くて暗いニッポン人感覚」を突きつけられる長江
そして、やがて避けようもなく訪れる、壮絶で胸を打つクライマックス!

初めて読む人にも、もう一度読んでみたい人にも、新しいOeがここにある。


--------

 

第一部  「水死小説」
   序章   冗談
   第一章  「穴居人(ザ・ケイヴ・マン)」来たる
   第二章  演劇版『みずから我が涙をぬぐいたまう日』のリハーサル
   第三章  「赤革のトランク」
   第四章  冗談はつらぬかれた
   第五章  大眩暈


 第二部  女たちが優位に立つ
   第六章  「死んだ犬を投げる」芝居
   第七章  余波(アフタマス)は続く
   第八章  大黄(ギシギシ)
   第九章  「晩年の仕事(レイト・ワーク)」
   第十章  記憶あるいは夢の訂正
   第十一章 父は『金枝篇』に何を読み取ろうとしていたか?

 第三部  こんな切れっぱしでわたしはわたしの崩壊を支えてきた
   第十二章 コギーの伝記と憑坐(よりまし)
   第十三章 「マクベス問題」
   第十四章 あらゆる手続きが演劇化される
   第十五章 殉死

--------

 

 

 

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夏目漱石『こころ』大江健三郎の最後の作品にこの『こころ』が引用されていた。実は本箱に未読本として持っていたので、これを機に読んでみた。--------(抜粋)あなたはそ...

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この『水死』に演劇の一場面として出てくる、夏目漱石の『こころ』
内容を知りたいため途中離脱して読んでみて正解
読書会では先生に対して突っ込みどころ満載で、時代の流れを感じる一作

 


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『大江健三郎全小説4』

2024-04-24 | 大江健三郎

 



2018年12月10日 第一刷発行
株式会社講談社

この全集の中でも難解そうな「父と天皇制」
五十歳で亡くなった父について描こうとしていた大江さん。
尾崎さんの解説「復元された父の肖像」にあるように「父」を主題としている。

今まで以上に難解で、正直うんざり気味にもなった一冊
なので再読はしたくない(苦笑)


--------(抜粋) 
 

「今度の中篇集で、癌か狂気してか死の床にある男が、子供のころ父親と加わった、天皇の名のもとの反乱を再現しようとする。また、月への打ち上げを恐怖して、宇宙船基地を逃げた男が、現人神(アラヒトガミ)に救われることを夢みる・・・・・これらの、自由をおしつぶされる悲鳴と救済をもとめる叫び声を、時にはユーモラスにあげている男たちが、僕にとっての「同時代」なのです(著者・『みずから我が涙をぬぐいたまう日』)
 

【収録作品】
走れ、走りつづけよ / 生け贄男は必要か / 狩猟で暮らしたわれらの先祖 / 核時代の森の隠遁者 / 父よ、あなたはどこへ行くのか?/ われらの狂気を生き延びる道を教えよ / みずから我が涙をぬぐいたまう日/月の男(ムーン・マン)/ 水死

──父と天皇制

 
著書について

大江健三郎
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞、94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
 
 
--------
 
 
 
・走れ、走りつづけよ

 
--------(抜粋)
 
外部からおそいかかる時代の狂気、あるいは、自分の内部から暗い過去との血のつながりにおいて、自分ひとりの存在に根ざしてあらわれてくる狂気にとらわれながら、核時代を生き延びる人間の絶望感とそこからの解放の道を、豊かな詩的感覚と想像力で構築する。「万延元年のフットボール」から「洪水はわが魂に及び」への橋わたしをする、ひとつながりの充実した作品群である。
 
--------
 
「狂気」とは?
主人公の「僕」と従兄には30代から発狂したという祖父がいた。

米国のグラマー女優ベネロープ・マンダリンの交通事故死

血は争えないのか・・
 
 

・生け贄男は必要か


巨漢の男善太郎 「善」と呼ばれる男

魯迅の『狂人日記』

*岩波版『魯迅選集』

---

「自伝っぽぃ」
 
---
 
 
 
・狩猟で暮らしたわれらの先祖か
 
 
「山の人」 流浪する一家 「当たり屋」
 
---
 
「しかし新たに人肉ですね」
「指・・・流浪一家」
 
---

 
 
・核時代の森の隠遁者


---冒頭

きみは「自由」をもてめて森を抜けだし、地方都市から大都市へとなおも「自由」をさがしもとめて跳びだしてゆき、そしてついにはアフリカへまで出かけたのだが、「自由」は見つかったかね?ぼくはアフリカどころか森の奥の谷間にじっと住みついているばかりだが、しかもなお、ぼくもまたなにをさがしもとめて生きてきたかといえば、それは「自由」なのだ。

---

合言葉は「自由」!!

 

・父よ、あなたはどこへ行くのか?


難解も難解で、どうにも理解しがたい。

***蹶起
 
---

お父さん!お父さん!あなたはどこへ行くのですか?
ああ、そんなに早く歩いて!僕らは迷子になってしまいました、この不信と恐怖の土地で。
僕ら、すなわち僕と息子とは、それぞれの躰いちめんについている枯草や乾いた泥をはらいおとし、湧き水で涙と汗に汚れた顔を洗い、それから電車の駅にむかって歩きはじめた。
 
---

ブレイクの詩句 父の伝記を書こうとする試み。



・われらの狂気を生き延びる道を教えよ


何だか仰々しい題名
つい構えてしまったけど、イーヨー登場でほっこり

大江さんとイーヨーのルーティン
排骨湯麺とペプシ・コーラ
 
---
 
―—イーヨー、排骨湯麺とペプシ・コーラおいしかった!
 
---
 


・みずから我が涙をぬぐいたまう日


--------(抜粋)
 
天皇に殉じて割腹、自死を遂げた作家の死に衝撃を受けた、同じ主題を共有するもう一人の作家が魂の奥底までを支配する<天皇制>枷をうち破って想像力駆使して放つ”狂気を孕む同時代史”の表題作

―全く異なる二つの文体により、
現代人の危機を深刻、ユーモラスに描く中篇小説


--------

「遺言代執行人」


大江さんはこの作品について「『みずから我が涙をぬぐいたまう日』は、その前に書いた『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』という小説をつないで、自分のなかで父親的なものがどういうかたちをとっているかを考えようとした。父親的なものというのは、僕には神秘主義的にいえば天皇制そのものにつながっています。」

そう天皇制について考えさせられる作品



・月の男(ムーン・マン)


最初に雑誌に掲載された時は『死滅する鯨の代理人』
「鯨」

--------(抜粋)


宇宙船基地よりの逃亡男が日本の現人神による救済を夢見る「月の男」

―全く異なる二つの文体により、
現代人の危機を深刻、ユーモラスに描く中篇小説


--------




今回はここまで。
残りは中編の『水死』です。

 
「年譜やっと1997年まで来ました。
 62歳 伊丹十三って自殺なんですね。」

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大江健三郎『不満足』

2024-02-14 | 大江健三郎

 

大江健三郎
『不満足』


前回の読書会で再読するかもしれないと言った『不満足』


--------(抜粋)

P149
---

―—鳥(バート)、おれは怖かったんだよ!

---

菊比古が何に怖がっていたのか、怖かったのかが気になる・・
前後を読み直してもはっきり分からず。
再読するかもしれない。

--------

 

『大江健三郎全小説3』完読 - ◆BookBookBook◆

 

『大江健三郎全小説3』完読 - ◆BookBookBook◆

『大江健三郎全小説3』2018年7月10日第一刷発行株式会社講談社今回の読書会は、幸福な若いギリアク人からです。最近は三時間近く語っていることが多い。あっという間のこの...

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たくさんの物語があり再読する機会は稀だけど、今回再度直近で読んでみて、
気づかなかった点や引っかかりについて着目することにより、主人公達の動向を自然と意識
ただ納得するかと言えばあまりはっきりとはしていない(笑)
集中力はもとよりこの難解さをどう読み解くか。
確かに少しずつ慣れてきたとは言え、毎度苦笑させられるある意味おもしろい作品群です。

 

 

 

この全小説3には「大江健三郎年譜」が付いていて、少しずつ読み進めている。
作成はもちろん納得の尾崎真理子さんです。

現在1990年(平成2年) 大江健三郎55歳まで。

---

1994年度のノーベル文学賞を大江健三郎に授賞すると発表
授賞理由は「詩的な想像力によって、現実と神話が密接に凝縮された想像世界を作り出し、
読者の心に揺さぶりをかけるように現代人の苦境を浮き彫りにしている」

---



それと巻末
「政治少年死す」若き大江健三郎の「厳粛な綱渡り」ある文学的時代精神の“考古学”
日地谷=キルシュネライト・イルメラ
(この方はドイツ人日本文学研究者)

こちらもまだ未読
中々読書に集中出来ない日々。。










💚💚💚



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『大江健三郎全小説3』完読

2024-01-19 | 大江健三郎


『大江健三郎全小説3』


2018年7月10日 第一刷発行
株式会社講談社

今回の読書会は、幸福な若いギリアク人からです。
最近は三時間近く語っていることが多い。
あっという間のこの読書会 勉強になります。
 
 
--------抜粋
 
 
1961年の雑誌発表以来、一度も書籍化されることのなかった「政治少年死す」を含む1964年までの初期短編群その3
性、政治、青年の苦悩を真正面から赤裸々に描く。


【収録作品】
セヴンティーン/ 政治少年死す──セヴンティーン第二部/ 幸福な若いギリアク人/ 不満足/ ヴィリリテ/ 善き人間/ 叫び声/ スパルタ教育/ 性的人間/ 大人向き/ 敬老週間/ アトミック・エイジの守護神/ ブラジル風のポルトガル語/ 犬の世界

──初期作品群その3
 
 
著者について

大江健三郎
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞、94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
 
 
--------
 
 
 
・幸福な若いギリアク人

まずこの「ギリアク人」が本当に存在する民族なのか?

特に調べることなく読み進む。
アメリカ・インディアンのように皮膚が黒く硬いのでインディアンとよばれている二十歳の製材工が主人公
今やインディアンは差別?禁止用語?

ニヴフ - Wikipedia

樺太から終戦後に母親と二人引き揚げてきた青年
ある時「おまえは、ギリアク人だ」と言わたのをきっかけに、自分の出生について興味を持つ。
自分のアイデンティティー

この作品が発表された1961年
大江さんは北海道の礼文島をを訪れている。
その時の経験を基に描いたのかな。

(ラストの・犬の世界に通ずる)



・不満足

鳥(バード)、菊比古が登場
そう『個人的な体験』(2年後)の主人公と同じ名前
特にこの菊比古って名付けは大江さんらしい(苦笑)


P149
---

―—鳥(バート)、おれは怖かったんだよ!

---

菊比古が何に怖がっていたのか、怖かったのかが気になる・・
前後を読み直してもはっきり分からず。
再読するかもしれない。



・ヴィリリテ

同性愛を扱った短編

もう何が来ても驚かない。同性愛やら何やら(説明は省略)
ある程度の展開には馴れたとしてもやはり辟易してしまう。。

一体何がまともなんだろうか?

ぼんやりしていてオチがあるようでない。



・善き人間

上記同様 同性愛物語が続く。。

この題名から「誰が善き人間?」と話題にのぼったけど、

---


「誰が悪いやつらだ?」
「みんな本当に悪い人間ですよ。大学教授も、学生も、教師の奥さんも。おたがいに、ひどいことをしていますよ、そして今日はもう忘れているんです」
「しかし、みんな、おたがいに苦しんでいたよ、あの女だってウィスキーで酔うまえは苦しんでいたろう?結局ああいう連中のほうが他の健全な人間よりとくに悪いということはないんだよ」と老人はいった。



「みんな善い人間だよ、そしてたいていの善い人間にできることは、昨日みたいなことをひきおこすか犬の主人になるかすることくらいだよ、おまえさんみたいに、沢山の犬をあつかって、その犬どもの王になることくらいだよ」


---

かならず犬が出てくる。
善い人間 題名は善き人間



・叫び声 こちらも代表作


---


一章  友人たち
 
ひとつの恐怖の時代を生きたフランスの哲学者の回想によれば、人間みなが遅すぎる救助をまちこがれている恐怖の時代には、誰かひとり遥かな救いをもとめて叫び声をあげる時、それを聞く者はみな、その叫びが自分自身の声でなかったかと、わが耳を疑うということだ。

戦争も、洪水も、ペストも大地震も大火も、人間をみまっていない時、そのような安堵の時にも、確たる理由なく恐怖を感じながら生きる人間が、この地上のところどころにいる。かれらは沈黙して孤立しているが、やはり恐怖の時代においてとおなじく、ひとつの恐怖の叫び声をきくとその叫びを自分の声だったかと疑う。そしてそのような叫び声は恐怖に敏感なものの耳にはほとんどつねに聞えつづけているのである。


---

この冒頭の一文が主要

現代を生きる孤独な青春達の夢と挫折を鋭く追求

僕を巡る登場人物、アメリカ人のダリウス・セルベゾフと二人の友人呉鷹男と虎

僕はフランス文学を専攻する大学生で、梅毒への恐怖に悩
ダリウス・セルベゾフはスラヴ系アメリカ人で同性愛者
呉鷹男は朝鮮人を父親に持つ18歳の在日朝鮮人の少年
虎はアフリカ人の父と日本人の母を持つハーフでアル中

色濃い仲間とパトロンが夢に向かって同居生活をしている。
何とも説明だけでも濃い。



この物語をきっかけに知ったおぞましい事件
小松川事件 - Wikipedia




・スパルタ教育

なぜに「スパルタ教育」!!??
中身から読み取れなかった題名でした。

この作品は現実の大江さんの状況を描いた作品
宗教団体からの脅迫となっているが、現実はもっと厳しいものだった。。

ただ救いがある物語でありよかった。



・性的人間 出た!!!大問題作である(^▽^;)

主人公はJ
前半と後半に分かれた、それも全く世界観が違う物語である。
もうヤケクソなのか?これ以上のタブーのネタが尽きたのか!?

どうしようもない物語です。
題名からもそう思いますよね?

それもわたくし朝の通勤時に後半を読みました。wow



・大人向き

記載するには微妙?・・こちらはホモセクシュアルの物語です。

東大法学部のエリート学生が陥った兄のトラウマからの新たなる世界
新宿二丁目
青髭の取った行動が矛盾だらけである。そこはスッキリしない。
そもそもスッキリを求めてはいけない(笑)

最後は大人な対応で「大人向き」かしら。



・敬老週間

永いあいだ閉じこもっていた余命いくばくない老人に対して、
アルバイトに雇われた学生3人が20年後の理想の世界を話して聞かせる物語
描かれている世界が1960年代だから、20年後って言うのが1980年代
そこの乖離が今読むとおもしろい。

ユーモア溢れた短編です。good!



・アトミック・エイジの守護神

主人公は大江さん本人を思わせる作家
その目の前に現れた怪しげな経歴を持つ胃癌の中年男
原爆孤児を10人集めて救済し、現在はアラブ式健康法道場を開いている。
と書くとかなり胡散臭い人物ではあるが・・憎めない。
不思議と惹き込まれた。

難は何ヵ所か汚描写

保険金300万(1960年当時)今だと×3ぐらい?
こうゆう数字に時代を感じる。



・ブラジル風のポルトガル語

題名がインパクト!!(笑)


冒頭
---


ジープに乗ったぼくと森林監視員とは、香りたてる深い森を暗渠のようにつらぬく道を疾走し、カーブでは落葉をかぶった赭土をえぐりとっては弾きとばした。落葉は黒く赭土は朱く、数しれないイモリを轢いて疾走するみたいだった。やがれ、われわれは不意に、視界のひらける高台に出た。われわれは夏の終わりの真昼の光に輝く深い森に囲繞された紡錘形の窪地を見わたした。


---

もちろん舞台は四国の山の中
もう定番中の定番ですな。

消えた村人達の行方を捜す森林監視員

オ・セニョール・コンプレエンデ?
ナウン・セニョール・ナウン・コンプレエンド!

いいえ、小生は理解しません!

この掛け合いがツボ

めずらしく平和な誰も死なない物語



・犬の世界

大江さんのテーマの一つとして兄と弟の物語
生き別れした弟との再会ではあるが夫婦で「にせ弟」と呼んでいた。
本当の弟か?それとも他人なのか?そこまあまり重要ではない。

最初の短編、幸福な若いギリアク人に通じる共通点
ここではオロッコ人の祈祷師に会い、そこで弟の生霊をよびだしてもらう予定だった。
しかし突然現れた弟を優先して家路に着く。

このにせ弟は歌を歌えなかった。
ラスト
---


人が歌う歌によって、かれを判断してはならない、というモラルにぼくは賛成だ。しかし二時間の練習のあと、なお《夏は来ぬ》を歌うことができない若者に、ぼくが再び出会うことがあれば、それによってぼくはかれがどういう人間であるかを判断せざるをえないだろうと思うのである。


---

納得の一文である。

「残酷な暴力にみちた世界」

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大江健三郎全小説3

2024-01-05 | 大江健三郎

 



2018年7月10日 第一刷発行
株式会社講談社
 
 
--------抜粋
 
 
1961年の雑誌発表以来、一度も書籍化されることのなかった「政治少年死す」を含む1964年までの初期短編群その3
性、政治、青年の苦悩を真正面から赤裸々に描く。


【収録作品】
セヴンティーン/ 政治少年死す──セヴンティーン第二部/ 幸福な若いギリアク人/ 不満足/ ヴィリリテ/ 善き人間/ 叫び声/ スパルタ教育/ 性的人間/ 大人向き/ 敬老週間/ アトミック・エイジの守護神/ ブラジル風のポルトガル語/ 犬の世界

──初期作品群その3
 
 
著書について

大江健三郎
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞、94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
 
 
--------
 
 
 
・セヴンティーン

初期の中編傑作と言われている作品
「文學界」文藝春秋新社 1961年1月1日

 
題名の通り17歳に少年の内側から見た世界
その世界とは1960年代
右翼団体の一員となっている過程が描かれている。
「天皇」を題材としている。

この作品は前回も時代考証で記載(抜粋)していた、
1960年10月に日比谷公会堂で催された自由民主党、社会党、民社党の立会演説会
そこで起こった浅沼委員長の殺害事件と同年である。
どちらが先か?
なんとこちらの作品が先なのです。
予測していたかのよう・・
 
冒頭
---


今日はおれの誕生日だった、おれは十七歳になった、セブンティーンだ。


---

そこで「センティーン」って言う!?突っ込みたくなる(笑)
(後日ヴとブの違いに気づく。。)
セブンティーンのイメージは雑誌
ついこの作品の題名「十七歳」じゃダメなの?って。

で、やはり十七歳(大江さんの作品の場合年齢は関係ないけど)
エロからスタート
もう驚くことはないけど、リアルな描写には辟易
 


問題作はこの二作目です。

・政治少年死す(「セヴンティーン」第二部)

浅沼委員長の殺害事件の犯人である山口二矢にかなり近しい内容になっている。

読んでみても心情を真似て描かれている錯覚に陥った。

初出 
「文學界」文藝春秋新社 1961年2月1日


これはリアルにヤバイ思想を持つ17歳を描いた作品です。

政治的理想と個人的な性向との落差、ズレ・・




今回はここまでです。
 

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『大江健三郎全小説2』完読

2023-12-27 | 大江健三郎

 



『大江健三郎全小説2』


2018年11月9日 第一刷発行
株式会社講談社
 
 
--------抜粋
 
 
「リアリスチクに現代日本の青年をえがきだすこと、それを、現実から疎外された青年をえがくべく試みるということとして、この作品のテーマの位置においたことを、私は決してまちがっていたとは思いません。しかし、達成された作品がはたして日本の現代の青年をリアリスチクにえがきだしているかの批判は、それも否定的な批判は、この作品の上梓にあたって再び激しくおこなわれるだろうと思います」(著者・『孤独な青年の休暇』)

【収録作品】
ここより他の場所/共同生活/上機嫌/勇敢な兵士の弟/報復する青年/後退青年研究所/孤独な青年の休暇/遅れてきた青年/下降生活者

──初期作品群その2
 
 
著書について

大江健三郎
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞、94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
 
 
--------
 
 
ラスト 結構な長編(P284 と言ってもこの全集でのページ数)

・遅れてきた青年
 
「新潮」1960年9月1日
毎月掲載連載ってこともあり、長々と無駄な描写が続くように感じた。
やはり連載物はその都度都度の状況(世相)も関係してくるのか、ブレを多少感じなくもない。
 
--------(抜粋)


地方の山村に生れ育ち、陛下の勇敢な兵士として死ぬはずの戦争に、遅れてしまった青年
戦後世代共通の体験を描いた半自伝的小説


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第一部 一九四五年夏、地方
第二部 一九五*年 東京

早過ぎた敗戦 この二部構成となっている。

ちょうどこの“浅沼委員長刺殺事件”が起こった時代
 

S - ◆BookBookBook◆

 

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沢木耕太郎『テロルの決算』★★★新装版(あとがきが3つもある)週末は江國香織のハードカバーでまったり過ごそうかと思っていた。が・・邪魔が入った。強烈な本を手にしてし...

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第一部 一九四五年夏、地方

題名はそのままで敗戦で終わった戦争に参戦出来ず「遅れてしまった」と絶望する青年(主人公)の物語である。
子供の頃から天皇を敬うなんて今の時代じゃ考えられない。
四国の山奥(定番)では敗戦後、進駐軍の噂がひとたび流れ始める。
軍隊の立てこもりが起こっている市の中心部へ、朝鮮人集落の友と隠し持っていた自動小銃を持ち仲間に入れてもらおうと向かうが、警察に捕まってしまう。
「ぼくはもう子供じゃない」
・・いや十分子供です。
 
第二部 一九五*年 東京

時は流れ・・
教護院の演壇に立つ主人公
現在は大学で政治学を勉強している身である。

 
 
 

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『大江健三郎全小説2』

2023-12-04 | 大江健三郎

 



『大江健三郎全小説2』

 
2018年11月9日 第一刷発行
株式会社講談社
 
 
--------抜粋
 
 
「リアリスチクに現代日本の青年をえがきだすこと、それを、現実から疎外された青年をえがくべく試みるということとして、この作品のテーマの位置においたことを、私は決してまちがっていたとは思いません。しかし、達成された作品がはたして日本の現代の青年をリアリスチクにえがきだしているかの批判は、それも否定的な批判は、この作品の上梓にあたって再び激しくおこなわれるだろうと思います」(著者・『孤独な青年の休暇』)

【収録作品】
ここより他の場所/共同生活/上機嫌/勇敢な兵士の弟/報復する青年/後退青年研究所/孤独な青年の休暇/遅れてきた青年/下降生活者

──初期作品群その2
 
 
著者について
 
大江健三郎
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞、94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
 
 
--------
 
 
 
・ここより他の場所
 
---

暑い夏の真昼だ、汗みずくの老人がホテルの前の陽にてらされた舗道を行ったりきたりして待伏せしている。

---

冒頭の一文
何やら怪しい雰囲気
しかし単純に結婚から逃れたい男性の心情物語
誰にでもある逃避願望
 


・共同生活
 
猿との生活
主人公の青年の狂気と妄想

四匹の猿の上手い具合に死角がないその目線を辿ってみたり・・
 
こちらも結婚を迫られてる恋人からの逃避願望
(・ここより他の場所同様)

ただ妄想からだと、少し前に読んだ引きこもりの少年の話に似ている(・鳥)



・上機嫌
 
ある夏の日にオートバイ事故を目撃したことから始まる。
作家のわたしと映画女優K、そしてその事故をきっかけに出逢った青年

ラストの心中が意外だった。
 
救いのない物語
 
自由 嫉妬 憤怒
そして 心中
 
---
 
 
こうしてわたしはこの現実世界にひとりぼっちでのこされた。


---



・報復する青年
 
超短編

自室から見える女の部屋を覗き見する青年



・勇敢な兵士の弟

こちらも超短編

勇敢な兵士→特攻隊だった兄
その弟→憂鬱な青年

母が無念でその兄の霊を呼び出すのに、霊媒師の元へ。

---


―—兄さんは水泳がうまかったし好きだったけど、と戻って来た憂鬱な青年に母親はいった。死んでもやはり毎日、海を泳いでいるんだねえ。


---

ラストのおかしみがよき。




・後退青年研究所

題名からして時代を感じる。

GIO(ゴルソン・インタビュー・オフィス)
ミスター・ゴルソンという社会心理学者が登場
怪しさ満点



・孤独な青年の休暇

Ⅰ 浮浪者
Ⅱ 解放
Ⅲ 地方都市
Ⅳ 性関係
Ⅴ 陥穽
Ⅵ 自由が!
 
この陥穽(かんせい)とは?
陥穽(かんせい)とは? 意味や使い方 - コトバンク


--------(抜粋)


「リアリスチクに現代日本の青年をえがきだすこと、それを、現実から疎外された青年をえがくべく試みるということとして、この作品のテーマの位置においたことを、私は決してまちがっていたとは思いません。しかし、達成された作品がはたして日本の現代の青年をリアリスチクにえがきだしているかの批判は、それも否定的な批判は、この作品の上梓にあたって再び激しくおこなわれるだろうと思います」
(著者・『孤独な青年の休暇』)


--------




・下降生活者

偽りの自分 本当の自分とは?

「下降の主人公まとも?」
「なんか、踏み外すっしょ 助教を」
「あぁやっぱりそういう展開!?」
期待を裏切らない大江さんです。。




今回はここまで///
「何だか『大江健三郎全小説2』暗黒時代ですね」

 


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『大江健三郎全小説5』完読

2023-11-16 | 大江健三郎


大江健三郎全小説5

 

株式会社講談社
2018年10月10日 第一刷発行



残二作『個人的な体験』と『新しい人よ眼ざめよ』です。


 
--------抜粋
 
 
障害者の息子との共生を描く作品群。「ぼくはすでに自分の言葉の世界にすみこんでいる様ざまな主題に、あらためて最も基本的なヤスリをかけようとした。すなわち、個人的な日常生活の癌のように芽ばえた異常を核にして、そのまわりに、欺瞞と正統、逃亡することと残りつづけること、みずからの死と他者の死、人間的な性と反・人間的な性というような命題を結晶させ、再検討することを願ったのである」(著者・『個人的な体験』)
 


【収録作品】
空の怪物アグイー
個人的な体験
ピンチランナー調書
新しい人よ眼ざめよ

──共生


著者について

大江健三郎
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
 
 
--------
 
 
・個人的な体験
 
 
--------(抜粋)
 
奇形に生れたわが子の死を願う青年の魂の遍歴と、絶望と背徳の日々
狂気の淵に瀕した現代人に再生の希望はあるのか? 力作長編
 
--------
 
これはもはや私的小説なのか?
そう想像してしまうにはリアル過ぎる気がしてしまう。
この生かすか殺すか的葛藤は本当にあったことなのか!?
 
 
「鳥バードが主人公?」
「また異常な赤ちゃん!?OMG」
「ジョニーウォーカーをジョニイって記載しているのが大江さんっぽい」
「火見子 当て字ですね~」
「ウィリアム・ブレイク出た!」
「そしてヘミングウェイ」
 
 
やはり火見子が精霊っぽく・・現実味のない女性である。
大江さんの女性は女性らしさが欠けている。
それは初期作品から目に付くところ。
 
 
 
・新しい人よ眼ざめよ ★★★★(私的に好きな作品 イーヨーが癒し)
 
 
 
--------(抜粋)
 
 
障害を持つ長男イーヨーとの「共生」を、イギリスの神秘主義詩人ブレイクの詩を媒介にして描いた連作短編集
作品の背後に死の定義を沈め、家族とのなにげない日常を瑞々しい筆致で表出しながら、過去と未来を展望して危機の時代の人間の<再生>を希求する、誠実で柔らかな魂の小説
大佛次郎賞受賞作
 
 
--------
 
 
下記に分かれている。
 
・無垢の歌、経験の歌
 
 イーヨーが父が死んだと思って発狂!?家族に暴力を振るう。
 包丁を持って佇むイーヨー 目線はガラス窓の外にあった。
 でもそれは家族を守る行動であった。
 
 足、大丈夫か? 善い足、善い足! 足、大丈夫か?
 痛風、大丈夫か? 善い足、善い足!
 
 マジこれは読んでほしい一作である。
 
 
・怒りの大気に冷たい嬰児が立ち上がって ★★★★
 
 
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《人間は労役しなければならず、悲しまねばならず、そして習わねばならず、忘れねばならず、そして帰ってゆかなければならぬ/そこからやって来た暗い谷へと、労役をまた新しく始めるために。》
 
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・落ちる、落ちる、叫びながら‥‥‥
 
イーヨーがスミングスクールに通っていた時のちょっとした!?事件
水を怖がらずどんどん沈んでゆくイーヨー

時代を感じる怪しげな集団

右翼と左翼 今じゃ考えらない時代


・蚤の幽霊
 
この衝撃は検索したわたしが悪い・・
そうMさんの生首です。。


 
・魂が星のように降って、跗骨のところへ
 
イーヨー音楽劇を演出するの巻~
才能ってどこで生まれるか分からないね。
 
 
・鎖につながれたる魂をして

イーヨー誘拐事件
大江さん・・波乱万丈ですね。
 
 
・新しい人よ眼ざめよ

イーヨー寄宿舎に入る。
戻って来たその夜に決意表明
 
イーヨーは、そちらへまいりません!イーヨーは、もう居ないのですから、ぜんぜん、イーヨーはみんなの所へ行くことはできません!
 
イーヨーの成長物語である。
もう出来た弟と妹よ。感動物語でもある。
 
 

ラスト巻末の「大江健三郎の小説をめぐる最初の覚え書」
中々読めずに苦痛だった。。


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