金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】個人投資家の株離れ 原因と対策 その3

2019-02-28 07:12:18 | 金融マーケット
 アベノミクスの施策の効果は、民主党政権下の日経平均株価7000円台と、現在の21000円台を比べるだけでも明らかであり、総じて有効な施策だったと評価できます。
 ただし、皆さんも感じられているように、成長戦略もデフレ脱却施策も道半ばというのが実態でしょう。本日は、まず成長戦略に対する評価からお話しします。

 今、日本企業の中ではコーポレートガバナンス改革の真っ盛りで、社外取締役・女性取締役などが引っ張りだこになっています。また低ROEのままでは経営陣に対する再任議案が難しくなるなど、世相は様変わりになっています。「カリスマ経営者」と呼ばれていた有名な経営者ほど、その実態はとんでもなく専制的で自己中心的なパワハラオジサンだった‥という話は珍しくなくなってきました。常に資本コストを意識した近代的な経営へと変化するスピードは益々高まっていくと思います。
 また機関投資家による議決権行使が、例え相手が重要な取引先だったとしても、明確に「NO!」を突き付けるケースが当たり前になってきました。さらにエンゲージメント活動(実際に企業経営者やIR責任者との議論によって、会社施策そのものを修正させる活動)も本格的なステージになりつつあります。したがって、コーポレートガバナンスコード・スチュワードシップコードといわれる世界は、着実にこの国に浸透しつつあると実感しています。

 それでも、日本企業の成長スピードと米国企業のそれとは、まだまだ差があると感じざるを得ません。その決定的な違いは何か?
 それは「ゾンビ企業」の存在です。ゾンビ企業とは、生産活動やサービス提供は続けているものの、すでに競争力は失いつつあり、長期の存続は難しい企業を指します。確かにこうした企業も多くの雇用を抱えており、彼らを退場させるとその直後は地域経済にかなりの痛手を発生させますが、それよりも問題なのは、新たな起業家たちが本来は得る筈だった「日光」や「養分」を、彼らから奪い取っている存在だということです。
 森林において新しい樹木を早く育てるためには、死にゆく樹木の伐採は欠かせない作業ですが、これを一切許さないのが今の日本です。金融円滑化法という名のもとで、日本の金融機関はゾンビ企業に対して延々と資金を入れ続ける義務があるのです。

 一方、アメリカは分かりやすい。先般もシアーズ・ローバックという20世紀のアメリカに流通革命を起こした小売の老舗企業を、あっさり倒産させました。ちなみに、シアーズは30年前まではダウ30種採用銘柄だった会社です。同じく30年前までは世界のフイルム業界を牽引したイーストマン・コダック、もちろんこれもダウ30種銘柄でしたが、今はもう存在しません。デジタル化の波に遅れたため、存在価値を失い市場から退場しました。

 日本でゾンビ企業を残すのは政治的な理由です。地方で票が取れなくなるからです。GPIFがベンチマークをTOPIXに拘る理由も同じです。東証上場の中にいるゾンビ候補を生き永らえるためです。
 日本の成長戦略に足りないものは「退場ルールの明確化」。起業家の育成と同時に、ゾンビ企業を早期に退場させるルール作りが急務だと思います。




 

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【金融】個人投資家の株離れ 原因と対策 その2

2019-02-27 07:38:43 | 金融マーケット
 昨日は、なぜ個人投資家が株から離れていったか、その原因をお話ししました。
 第一の原因が「株の魅力低下(期待成長率の低下)」、第二の原因が「デフレ」でした。2012年末に発足した第二次安倍政権は、この状況から日本を救うための施策として「アベノミクス」を打ち出します。(以下、多少デフォルメして整理しています)

 第一の原因である「期待成長率の低下」に対しては、以下の成長戦略を打ち出しました。
①資本コストを上回る利益を生み続けていける企業統治改革=コーポレートガバナンスの強化
②企業統治改革を正しく評価する機関投資家としての責任強化=スチュワードシップの強化
③その他、国際競争力強化のための法人税率削減、東京オリンピック・パラリンピック・ラグビーW杯・大阪万博の誘致など

 第二の原因である「デフレ」については、日銀の専権マターとしたうえで、
①リフレ派の代表格だった黒田総裁を指名
②黒田日銀は「CPI2%」をターゲットとするインフレターゲット施策がスタート

 さらに、国民に資産形成意識を定着させるとともに、株式の相対的な魅力を維持拡大させるために、
①確定拠出年金制度の拡充(個人型DC=IDECOの対象範囲拡大、企業型DCでの個人拠出開始=マッチング拠出開始)
②NISA口座の新設/つみたてNISAの追加
と矢継ぎ早に施策を打ち続けています。

明日からは、それぞれの施策の評価を行って参ります。

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【金融】個人投資家の株離れ 原因と対策 その1

2019-02-26 07:31:10 | 金融マーケット
 本日は、日本において、なぜ個人投資家が株式投資から離れてしまったのか、その原因についてお話します。

 結論から申し上げれば、株式を保有する魅力が急激に落ちてしまったということ。そして、現金を保有する魅力が格段にアップしていったこと。この2つが理由です。

 1989年12月に、日経平均株価は38000円台に到達しました。その時のPERは60倍とか70倍が当たり前で、今で言えば、多くの日本株がGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)と同じような評価をされていた訳です。このようなPER水準は、一株当り利益(EPS)の今後の成長率が、他の先進国企業の2倍から3倍レベルで10年以上は続くと思われていたからですが、実際はこのあと、暗黒の20年の時期を迎えることになり、むしろ歴史的な低成長時代に陥ることになりました。
 当然ながらPER水準は他の先進国よりも低い評価へ向かって低下していくこととなり、現在の日経平均株価PER12倍は、米国のSP500のPER15倍よりも、かなり下の水準となっています。

 また、この間の日本の物価上昇率は、消費者物価指数(CPI)ベースでもマイナスに陥る年が多く発生しました。いわゆる「デフレ経済」が続いた訳ですが、このデフレ経済下では「現金こそ無敵!=cash is king!」の時代でした。株式をはじめ、リスク資産の価格は上がらないばかりか、乱高下を繰り返すのに対して、デフレ下の現金は、物価が低下した分、その価値を安定的に増やせる、「無敵」とも言える資産だったのです。

 デフレ経済=暗黒の20年の間、個人投資家たちは現金という安住の地に落ち着くことで、何の不満もない時代が続き、株式投資から遠く離れていってしまったという訳です。

(次回からは、この状況からの脱出策として登場した「アベノミクス」について、お話しします)


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【金融】個人投資家の株離れ もったいない!

2019-02-25 07:25:14 | 金融マーケット
 金曜日に続いて、株式投資をテーマにします。

 日本取引所グループが発表している個人投資家の株式保有比率は、2016年で17%だそうです。1970年が35%超だったそうですから、長期低落傾向にあります。もちろん、投資信託等を通じて株式を保有しているケースもありますが、信託銀行・生保などの機関投資家の保有比率が25%前後で安定しているところを見ると、やはり長期的に個人の株離れが進んでいると考えて良さそうです。
 逆に保有比率を増やしているのが外国人・外国法人等で、1970年は5%程度だったものが2016年は30%を超えてきており、こちらは長期的に上昇傾向が止まっていません。

 日本株式のバリェーションですが、日経平均株価ベースでPERが12倍前後、PBRが約1倍と、けして割高な水準にはありません。国債や定期預金の利回りがほぼ0%の状況下、配当利回りが3%や4%も珍しくなく、人気がないのが不思議なくらいです。確かにここ30年間、日本株を持っていてもあまり良いことはなかったという成功体験の無さが背景にあるとは思いますが、株式投資の利益を外国人投資家にドンドン持っていかれている状況は少し残念でなりません。

 例えばメガバンクに代表される大手金融機関・生保の株式を3~4つ保有するのはいかがでしょうか?
 メガや大手生保のPBRは約0.5倍、配当利回りは4%前後です。ディープディスカウント債券を買うつもりならば、利回り4%で御の字の投資だと思います。確かに成長期待はできませんので株価の上昇はないかもしれませんが、配当だけでも十分なリターンだと思います。万が一、M&Aの対象にでもなれば、いきなり株価が倍になるチャンスも秘めています。

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【競馬予想】がんばれオルフェーヴル産駒! 中山記念で巻き返せ!!

2019-02-24 08:31:11 | 競馬
 今年は、正月の金杯からステイゴールド産駒の活躍が目立ちます。厳しい寒さと京都の重い芝がステイゴールド産駒の「闘争心」に火をつけているのかもしれません。しかし、ステイゴールド産駒は今の4歳が実質ラストクロップですので、このままでは日本の「闘争心」が弱体化する恐れがあります。

 そこでステイゴールドの代表産駒であるオルフェーヴルには、種牡馬として頑張って貰わねばなりません。種牡馬初年度から皐月賞馬エポカドーロ、阪神JF馬ラッキーライラックと、2頭のGⅠを輩出する活躍ぶりではありますが、何といっても同じ年に種牡馬デビューしたロードカナロアに圧倒的な差をつけられている状況。しかも、2年目の産駒では今のところ、クラシックの有力候補は見当たらず、サートゥルナーリアなどを出しているロードカナロアには大きな差をつけられた格好です。

 今週の中山記念には、そのエポカドーロとラッキーライラックの2頭が出走します。有力馬の中にはカナロア産駒のステルヴィオもいますので、ここではオルフェーヴル産駒の頑張りに期待したいところです。
 日本の馬が、欧州の重い馬場、厳しい天候条件を跳ね返して「凱旋門賞」を勝つためには、この「闘争心」が最も大切なエネルギーになるはず。オルフェーヴルには、日本のサイアーラインの主軸を形成していく期待がかかっています。

【中山記念】
 中山の芝1800mのGⅡレースですが、豪華メンバーが揃いました。ほぼGⅠと言っても良いレベルです。
 人気になっているディアドラ・スワーヴリチャードやステルヴィオの本番は次のレースですので、ここはオルフェーヴル産駒の巻き返しに期待します。⑨エポカドーロを頭固定で、相手は①ウインブライトと③ラッキーライラック、⑤⑦⑩はヒモ付けに。⑨⇒①③⑤⑦⑩

【阪急杯】
 阪神の芝1400mのGⅢですが、3月末の高松宮記念の前哨戦で、ここも好メンバーが揃いました。短距離の方が切れ味が増してくる⑪ロードクエストに期待します。お父さんのマツリダゴッホは中長距離のGⅠで活躍しましたが、産駒はなぜか短距離活躍馬が多いです。ここは⑪ロードクエストの単複で。

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