金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【為替相場の乱高下】 これからどうなるのか? と聞かれることが多いのですが・・ <再掲>

2024-05-10 02:08:13 | 金融マーケット

 為替相場の乱高下。

 ゴールデンウィークの前後で、おそらく当局による大規模な為替介入が2回ほど入ったと思われます。各方面から「これから円/ドル相場はどうなるのか?」と聞かれるので、5月1日付の当blogの記事を再掲させて頂こうと思います。

 当局による為替介入以外に、何も外部環境は変化していませんので、基本的な環境認識は「あの時と同じ」で良いと考えます。

 

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 為替市場が大きく動いています。

 日本国内が休場だった4月29日(月)には、円/ドル相場が158円台⇒160円台⇒154円台⇒156円台と、短時間に目まぐるしく変動いたしました。急スピードで160円台に乗せたところで、恐らく日本当局による為替介入があったと考えられています。

 ところで、金融担当大臣がよく「投機筋の動きを注視。急速な相場変動には強い姿勢で臨む」と言って、マーケットを牽制していますが、ここまでの円安の動きは本当に「投機筋」が主導していたのでしょうか?

 

 少なくとも、マーケットを近くで見ている身としては、ほとんど「投機筋」が相場を作っている様子は感じられません。むしろ、国内の機関投資家や資産運用会社は、ここ10年以上、政府日銀から睨まれるような行動を一切控えているのが現実。そんなことはお構えなしの海外のヘッジファンドや機関投資家でさえ、為替相場を短期間で動かそうとしている気配はありません

 じゃなぜ、こんなに、しかも安定的に、円/ドル相場が円安に進んでいるかというと、これはもう「実需」が原因としか言えません。

 

 「実需」の意味、は2つに分類できます。

 まず第1の「実需」が、海外の原油や穀物あるいは製品・原材料を購入するために「円を売ってドルに換える」という動き。エネルギーや食料品などを海外に依存せざるをえない日本としては減らしようがない「円売りドル買い」行動であり、またコロナ禍やウクライナ戦争の影響で、原油や穀物が値上がりしたことも、この第1の「実需」が増加している要因となっています。

 次に第2の「実需」。これは、海外投資が盛んに行われることから発生する「実需」です。新NISAがスタートして、「オールカントリー投信」「SP500投信」に個人マネーが大量に流れ込んでいますが、これらは全て「円売りドル買い」の要因になっています。

 また同じく、海外の投資家たち(ヘッジファンドを含む)は、金利の低い円で資金を調達して、金利が高く成長率が高い海外への投資を盛んに行っているため、ここでも「円売りドル買い」が発生いたします。ちなみに、この動きは「投機」ではなく、当たり前の「投資」のプロセスであり、第2の「実需」の中に含まれるものであります。

 

 以上のように、今の円安の流れは「実需」が牽引している流れなので、これに対して「当局による為替介入」を行っても、一時的な効果しかありません。そのうち、また「実需」の「円売りドル買い」のパワーが溜まっていって、為替相場を動かすことになってしまうからです。

 

 この流れを本格的に止めようとすれば、北米並みに「金利水準を上げていくこと」と「名目成長率を上げていくこと」が必要。こうなってくれば、国内外の投資家たちも、ドルを売って円を買い、そして国内の株式や債券を購入する流れが出来上がり、今度は円高への流れが復活することになります。

 しかし、今は日銀も「金利を上げる速度には慎重な姿勢」を保っています。これは国内景気がまだまだ盤石ではないこと、および国の財政への影響があまりにも大きいから。特に後者については、少しでも市場の信頼が揺らいでしまうと、このリスク自体で「円安を加速する危険」があります。

 この話題は金融当局・財政当局も、けして口にすることはありませんが、日本の財政事情があるため、思い切った金融政策変更の舵が切れないというのが、今の為替相場の深層事情

 

 こうした状況下、上記の「実需」要因によって、着々と、そしてゆっくりと、円安が進んでいるということ。

 簡単には、この流れは止まらない気がいたします。

 

 


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