金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【「野暮」の反対言葉は・・「通」!】 ところで「通」って何⁉

2024-03-01 02:48:46 | 言葉

 昨日は「野暮」の語源についてお話しました。

 本日は、「野暮」の反対語である「通」についてであります。

 

 

 「野暮」の反対語「通」「あの方は、なかなかのワイン通ですね」などと「通」というのは、今やちょっと気取ったイメージで使われることが多い気がいたしますが、「物事に通暁(つうぎょう)している人」を指す言葉であります。

 この言葉も「野暮」同様、実は遊里や花柳界などの遊びに詳しく、その世界で生きる花魁や芸者たちの人情をよく心得た人に対して使われた、「通人(つうじん)」あるいは「通り者(とおりもの)」が語源らしい。

 そして、この「通人」「通り者」の中にも、「大通」「小通」といって、そのレベルに段差をつけて呼ぶ習慣も生まれたようです。「大通」とは、江戸時代で言えば、日本橋に大棚を構える商店や問屋の旦那衆を指す言葉だったようで、お金に糸目をつけずに粋に豪勢に遊ぶ人たちのこと。さしずめ、紀伊国屋文左衛門などはその代表例のでしょう。一方、「小通」「大通」に比較して、未熟な年若い者を指す言葉だったようで、あまり遊びに金をかけない者(かけられない者)をそう呼んだ様子。

 

 

 ところで、先々週のNHK特集で、島根県安来市にある「足立美術館」が紹介されていました。

 「足立美術館」は、数多くの横山大観の日本画を展示していることでも有名でありますが、それより何より、その日本庭園の美しさが世界に轟いている観光名所であります。21年連続で日本庭園NO.1の称号を得ている庭園は、外国人観光客をはじめ、来訪した人たちに「日本の美」「日本の文化」の奥深さを、驚嘆と感動を持って伝える唯一無二の存在になっています。

 この足立美術館を創立したのが、安来市出身の実業家である足立全康氏。足立全康氏は明治32年に生まれ、14歳の時から地元で炭売りの商売を始めます。その後、さまざまな事業に手を広げたあと、戦後は大阪で繊維問屋と不動産事業で大成功を収めます。事業のかたわら、幼少より興味を持っていた日本画の収集家となって、昭和45年の71歳の時、郷土への恩返しと島根県の文化発展の一助になればと、足立美術館を創設しました。「大きく稼いで大きく遊ぶ」ことが足立全康氏の生き様だったようです。

 

 まさに「大通」とは、この足立全康氏のような人物を指す言葉であります。

 なお、今日でいえば、IT産業の若手経営者などは、一部の例外を除き、六本木や麻布台のタワーマンションへの投資には積極的でありますが、足立氏のような豪快な遊びには手を出さない様子が伺えます。このように粋ではない遊びしかしない人たちのことを、江戸時代では、さしづめ「小通」と呼んでいたのだと思います。

 

 まぁ、いろいろご意見はあろうかと思いますが、ワタクシは、「大通」「小通」といった江戸時代のこの感覚を「粋」だと感じてしまいます。

 


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【野暮なことを言いなさんな・・】 ところで「野暮」って何⁉

2024-02-29 00:26:13 | 言葉

 

 「野暮なことを言うな」とか「あいつは野暮な奴だ」とか、よく使う言葉であります。

 

 

 「野暮」とは、世情、人情の機微を理解できない人を指す言葉であり、特に男女間の微妙な機微に対して配慮が利かない人田舎っぽい行動が目立って洗練された振舞いが出来ない人に使われる言葉です。不粋(ぶすい)という言い方になる場合もあります。

 いろいろ辞書などを調べてみると、もともとの語源は、江戸時代の「遊里=遊郭などの水商売」の事情に疎い人を指す言葉であった由。

 江戸の「遊郭」という場所は、さまざまな「お作法」や「仕来り」が定着していて、花魁などの高級娼婦に限らず、普通の遊女と言えども稼ぎ手である以上、相応に「リスペクト」されている世界でありました。そんな所へ、地方から出てきたばかりのケチ臭い武士が遊びに来て、高い料金や毅然とした遊女の態度に不満を漏らし、偉そうに怒鳴り散らして暴れる奴のことを「野暮」と呼んだらしい。当然ながら、こんな相手に対して遊女はフン!と袖にすることもしばしば。

 なお「野暮」は「野夫」から来ているという説もあるそうで、ちなみに「野夫」とは「田舎者」を指す言葉だそうであります。まぁ、江戸の遊郭に初めて出かけてきた、ケチで横柄な侍を指した言葉が語源ということなのでしょう。

 

 

 ところで、自分は50年来の競馬ファンでありますが、競馬をよく知らない方から最初によく聞かれるのが、

 

「競馬って儲かるの?」

 

 という言葉。これこそ「野暮」な質問の最たるものであります。

 馬券というのは、あらかじめ胴元であるJRAが売上げの15%、国も売上げの10%を差し引いて、残り75%を当たった人に配分する仕組みですから、期待値が75%に過ぎない世界長くやればやるほど期待値75%に収れんしていくのが理屈ですから、儲かる訳がありません競馬とは、買った馬券の1/4程度を損し続けるゲームであり、それが「お楽しみ料」になっている訳です。

 ゴルフ好きな人に「ゴルフって儲かるの?」と質問しませんよね。それと同じで、競馬好きの人間に「競馬って儲かるの?」と聞くのは「野暮」であります。

 「競馬を知らない」という事実は仕方のないことなのですが、よく知らないにも関わらず、質問の背景に「競馬ファンを蔑む」潜在意識が隠れていると感じてしまいます。競馬ファンにとっては、「江戸の遊郭」へ来て「したり顔で遊女を蔑む」横柄な侍と変わりません。

 

 そういうワタクシも、63歳と年を重ねていますから言動には気をつけないといけません。野暮なことは言うと、自らの品格や人間性を疑われることだってあり得る年齢ですから。

 自戒 自戒・・

 

 

 


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