金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【日本に多過ぎるものシリーズ③】 「県」だけでなく「地銀」の数も多過ぎる!

2024-05-17 01:04:45 | 金融マーケット

 日本に多過ぎるものシリーズ第3弾であります。

 

 前回は「県が多過ぎる」というテーマでしたので、それと呼応するように「地銀が多過ぎる」が今回のテーマです。

 以前にも申し上げましたが、ワタクシが大学を卒業した1984年の段階で、全国銀行というのは都銀13行、長信銀3行、信託銀行7行で23行も存在しておりました。これが今や6つの銀行グループに集約しております。この間、バブル崩壊もありましたが、何と言っても強い行政指導および政治指導があった結果であります。ちなみに、証券会社も4大証券が3大証券に減少、また中堅といわれた証券会社群がひとまとめに括られて、みずほ証券三菱モルガンスタンレー証券なりました。

 

 ところが、各地域に存在していた地銀、および第二地銀は、あの頃とほとんど数が変わっていません。もちろん、幾つかの第二地銀は、破綻して国有化後に吸収されてしまったところもありますが、多くは名前を変えて現存しています。

 地域経済への貢献という意味では、全国に点在する信用金庫ほどには地域経済に密着しておらず、一方で比較的大きな地域系プロジェクトファイナンスについては、全国銀行の6大銀行グループの後塵を拝しているため、存在感はどんどん薄くなってきています。

 生き残るために、というよりは、当局からの厳しい指導を搔い潜るために、地銀同士で持株会社を作って各行がブラ下がる形=「疑似合併」に見せるケースもありますが、実態は何も変わっていません。

 業を煮やした金融当局が、SBIグループを使って、地銀統合を強引に推し進めていますが、各地銀の経営改革は道半ば。いよいよ追い詰められています。

 

 ただ、これも前回の「県」同様、地銀の抵抗パワーは政治と結託しており、これがどうしようもなく「変化」を遠ざけています。「県」が減ると議席が減らされることと同様に、「地銀」が減ると各地域議員が頼っている「集票パワー」が減ることと同義となっており、これが前に進まない理由

 

 本当に困ったもんであります。

 結局、改革が進まない一番の障害は、地域選出の衆議院議員・参議院議員・県知事・県議会議員の存在。

 既得権益者の権化が地域の政治家というのは、もう救いがない状況なのであります。

 

 


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【日本に多すぎるものシリーズ②】 「地方公共団体=県」の数が多過ぎる!

2024-05-16 01:13:11 | 金融マーケット

 日本に多過ぎるものシリーズ第2弾であります。

 

 本日は、これを言うと「炎上」必至と分かっているテーマ

 すなわち「地方自治体=県」の数が多過ぎるということ。いや、正確には「都道府県」でしょ!と言う人が多いと思いますが、「都」は東京都、「道」は北海道、「府」は大阪府と京都府ですから、これらは別に減らす必要を感じませんので、敢えて「県」が多いと申し上げております。

 

 当然ながら、「県」というのは、その地域特性だったり、人口だったり、丁度良いところで区切って、行政単位にしたもの今の都道府県は、江戸時代の「藩」を失くして「県」を置いた「廃藩置県」の際に、その枠組みが出来上がりました。あの時には、数が多かった「藩」を相当数統合して、今の「県」にまとめ上げた訳ですが、特に朝敵となった旧藩に文句を言わせませんでしたから、強引な藩統合を成し遂げることができましたこの合理化施策は、明治政府の実績の中でも特筆すべき成果だったと思います。

 「地方自治体=県」の数を減らすということは、県知事や県庁・県議会、またまた地方裁判所などの公的組織を劇的に合理化できる効果があります。明治以来、交通機関や高速道路整備、あるいは過疎化による人口減少などを理由に、いまや一つの「地方自治体=県」である必要がなくなった「県」が数多く存在しています。

 ここに手をつけようとした「行政改革案」は過去に何回か提言されていますが、対象となった自治体組織=県庁・県議会からは大反対運動が巻き起こり、その都度潰されてきました。

 

 本来、県民にとっても、住民税などの地方税が減少する効果がある行政改革なのに、なぜか地元住民からすると「故郷の格下げ」のような気分になって大反対運動が起こってしまいます。冷静に考えれば、地元住民にとっても良い話なのに

 現実には、議席を失う県議会議員や県知事、あるいは衆議院議員・参議院議員などがタッグを組んで、地元の反対運動に火を点けているから、この行政改革は進みません。彼らは自分の居場所がなくなる話ですから、本気の反対モードとなります。これが一番の既得権益者といえますね。

 

 ちなみに、よく例に出されるのが、鳥取県と島根県。人口は両県合わせても130万人程度であり、川崎市や神戸市の人口にも及びません。また地域特性がよく似ている上、来訪客から見ても同一視できる「観光地域」となっています。統合できない理由は見当たりません。

 またもう少し、思い切った統合候補と言われるのが、東北六県(宮城・岩手・青森・秋田・山形・福島)。東北六県はすべて新幹線が整備されていて、仙台をキーステーションにして、どこに行くにも便利なインフラが出来上がっています。東京に本社がある会社の多くが、いまや東北には支社は一つ(仙台に置く)で、仙台から各県に日帰り出張で仕事をこなしに行くのが当たり前になっています。

 観光客もまずは仙台に入って、そのあとに岩手・青森・秋田などへ移動していくケースが多く、観光地域として一つに扱われています。こうなると地方自治体を分けて置くよりも、大合同の上で、各地域の特性をどう生かすかという観点から諸施策に取組む方が効果的な資源配分ができるはず。

 

 冒頭に申し上げたとおり、こういうテーマを取り上げると、各地域から猛反発が起こるのは承知の上

 これを成し遂げるには、また「明治維新」みたいな革新的出来事がないと難しい。しかし、そうやって、各県が内にこもった対応に終始しているが故に、ジリ貧の流れを変えることは出来ず、しかも無駄な補助金が、乾いた砂に吸い込まれるように消えていくばかりになっています。

 縦割りで、内側にこもる発想だけでは何も変わりません。まずは現状を壊すことから始めるしかないと思います。

 

(続く)

 


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【日本に多すぎるものシリーズ①】 メディアの数が多過ぎる⁉ <再掲>

2024-05-15 02:15:12 | 金融マーケット

 

 2024年3月28日の当blogの記事「日本に数が多すぎるものシリーズ①」を<再掲>いたします。

 というのは、ここからシリーズ②③もお届けする予定ですので。

 

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 本日より日本に多すぎるものシリーズを始めたいと思います。

 

 第1回は、メディアの数であります。ここで言う「メディア」とは、新聞の全国紙や雑誌、地上波TVなどを指します。

 東京などの三大都市圏に住んでいると、新聞は全国紙で6つ(朝日・読売・毎日・サンケイ・日本経済・東京=中日)地上波TVも6つ(NHK・日テレ・TBS・TV朝日・フジ・TV東京)が存在します。地方になると、この数が半分くらいになることが珍しくありませんが、その替わりに、独自色が強い地方紙や地方局が存在感を出しております。

 

 ちなみに、あの民主主義の盟主国アメリカのメディアってどうなっているのでしょう。

 まずは地上波は、ABC・NBC・CBSの3大ネットワーク。FOXまで加えて4ネットワークというケースもあるようですが、存在感は低いと言わざるを得ません。また3大ネットワークといっても、地域によっては存在感のないTV局もあり、かえってニュース専門のCNNの方が存在感を出しています。ザックリいうと、地上波はCNNと合わせて3つという地域が多いと思います。

 そして新聞。最近は新聞を購読していない家庭も多くなっているように、日刊新聞の存在感が落ちている状況。だいたい、ニューヨークタイムスもワシントンポストも地方紙でありまして、全国紙と言われる新聞は、経済紙のウォールストリートジャーナルくらい。

 

 という訳で、人口3億5千万人のアメリカ合衆国よりも、1億2千万人の日本の方が、地上波TVも全国新聞も、数が圧倒的に多いときています。それはなぜか?

 答えは簡単で、地上波TV・新聞社ともに、国に認可されることを前提にしている「規制業種」だから。つまり、規制によって国が守っている業界なのです。ですから完全な競争ではなく国に守られている分、会社の数も多くが残れる体質がある業界だということ。

 新聞も雑誌も、そして地上波TVも、いまや構造不況産業となっており、普通ならば、経営統合などを選択して合理化を図るところ。それが規制によって守られているが故、何も起こらない

 数が多過ぎるが故に、どうでも良いバラエティ番組や、追いかける必要のないスキャンダル記事が多過ぎる原因になっていると言うと、言い過ぎになりますかね?

 

 どうでしょう。思い切って、数を減らすように、行政指導をしてみたら?

 ちなみに金融業界では、昭和50年代には日本に全国銀行は23行ありましたが、強い行政指導の下、いまや6つの銀行グループに集約されてしまいました。

 新聞社やTV局も、少なくした方が充実する気がするのですけどね。いかが?

 

(続く)

 

 


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【為替相場の乱高下】 これからどうなるのか? と聞かれることが多いのですが・・ <再掲>

2024-05-10 02:08:13 | 金融マーケット

 為替相場の乱高下。

 ゴールデンウィークの前後で、おそらく当局による大規模な為替介入が2回ほど入ったと思われます。各方面から「これから円/ドル相場はどうなるのか?」と聞かれるので、5月1日付の当blogの記事を再掲させて頂こうと思います。

 当局による為替介入以外に、何も外部環境は変化していませんので、基本的な環境認識は「あの時と同じ」で良いと考えます。

 

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 為替市場が大きく動いています。

 日本国内が休場だった4月29日(月)には、円/ドル相場が158円台⇒160円台⇒154円台⇒156円台と、短時間に目まぐるしく変動いたしました。急スピードで160円台に乗せたところで、恐らく日本当局による為替介入があったと考えられています。

 ところで、金融担当大臣がよく「投機筋の動きを注視。急速な相場変動には強い姿勢で臨む」と言って、マーケットを牽制していますが、ここまでの円安の動きは本当に「投機筋」が主導していたのでしょうか?

 

 少なくとも、マーケットを近くで見ている身としては、ほとんど「投機筋」が相場を作っている様子は感じられません。むしろ、国内の機関投資家や資産運用会社は、ここ10年以上、政府日銀から睨まれるような行動を一切控えているのが現実。そんなことはお構えなしの海外のヘッジファンドや機関投資家でさえ、為替相場を短期間で動かそうとしている気配はありません

 じゃなぜ、こんなに、しかも安定的に、円/ドル相場が円安に進んでいるかというと、これはもう「実需」が原因としか言えません。

 

 「実需」の意味、は2つに分類できます。

 まず第1の「実需」が、海外の原油や穀物あるいは製品・原材料を購入するために「円を売ってドルに換える」という動き。エネルギーや食料品などを海外に依存せざるをえない日本としては減らしようがない「円売りドル買い」行動であり、またコロナ禍やウクライナ戦争の影響で、原油や穀物が値上がりしたことも、この第1の「実需」が増加している要因となっています。

 次に第2の「実需」。これは、海外投資が盛んに行われることから発生する「実需」です。新NISAがスタートして、「オールカントリー投信」「SP500投信」に個人マネーが大量に流れ込んでいますが、これらは全て「円売りドル買い」の要因になっています。

 また同じく、海外の投資家たち(ヘッジファンドを含む)は、金利の低い円で資金を調達して、金利が高く成長率が高い海外への投資を盛んに行っているため、ここでも「円売りドル買い」が発生いたします。ちなみに、この動きは「投機」ではなく、当たり前の「投資」のプロセスであり、第2の「実需」の中に含まれるものであります。

 

 以上のように、今の円安の流れは「実需」が牽引している流れなので、これに対して「当局による為替介入」を行っても、一時的な効果しかありません。そのうち、また「実需」の「円売りドル買い」のパワーが溜まっていって、為替相場を動かすことになってしまうからです。

 

 この流れを本格的に止めようとすれば、北米並みに「金利水準を上げていくこと」と「名目成長率を上げていくこと」が必要。こうなってくれば、国内外の投資家たちも、ドルを売って円を買い、そして国内の株式や債券を購入する流れが出来上がり、今度は円高への流れが復活することになります。

 しかし、今は日銀も「金利を上げる速度には慎重な姿勢」を保っています。これは国内景気がまだまだ盤石ではないこと、および国の財政への影響があまりにも大きいから。特に後者については、少しでも市場の信頼が揺らいでしまうと、このリスク自体で「円安を加速する危険」があります。

 この話題は金融当局・財政当局も、けして口にすることはありませんが、日本の財政事情があるため、思い切った金融政策変更の舵が切れないというのが、今の為替相場の深層事情

 

 こうした状況下、上記の「実需」要因によって、着々と、そしてゆっくりと、円安が進んでいるということ。

 簡単には、この流れは止まらない気がいたします。

 

 


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【注文住宅の坪単価】 調べてみると・・爆上りしていました!

2024-05-02 01:15:59 | 金融マーケット

 

 「終活」の一環として、「お墓」を建立したことは以前、このblogでもご紹介いたしましたが、本日は「自宅の敷地内に『離れ』を増築する」プロジェクトを進めていることと、併せて「住宅建築費の直近の高騰」についてお話いたします。

 

 ワタクシの持病である「間質性肺炎」の5年生存率は38%。昨年9月に正式に診断されてから、すでに8カ月が経過しておりますこのままでは、多額の相続税を国にぶんどられるのが明らかなため、まずは「お墓の建立」、そして「自宅の敷地内に『離れ』を増築」することで、相続税対策をしておこうという算段

 まずは「お墓の建立」で総額550万円ほど使いましたが、このお墓の建立代というのは、死ぬ直前に建立したとしても相続時に相続財産としてカウントされません。相続非課税のシロモノなのであります。

 そして「自宅の敷地内に『離れ』を増築」すると、この建物の評価額は、同居している家族に相続される限りは、8割減額=2割評価となります。死ぬ直前にバタバタと増築したとしても、建築費用の大部分は相続非課税にすることが可能であります。

 

 という訳で、『離れの増築』にこれから取り掛かろうとしております

 早速、今の自宅を1990年に建てた時に、設計から建築をお願いした「Mホーム」の坪単価(2×4建築)を調べてみました。当時は確か、坪単価55万円とそこそこの高級価格帯だったのですが、2022年度の平均坪単価はなんと90万円程度に値上がりしていました。まぁそれでも、32年で1.6倍ですから、こんなもんかなぁと思いきや、驚いたのはこれから。

 たまたま我が家の横の敷地に、兄の娘(すなわちワタクシの姪)の一家が注文住宅を建てるということで、3つ4つの注文住宅メイカーから見積書を出させたのですが、この坪単価が120万円~140万円という水準に。もちろん、かなり贅沢な造りにする予定らしいので単純比較はできないのですが、2022年から比較してもう1.4倍以上に爆謄しているとの由。

 ここ2年間で、人件費と資材費などが爆謄しているのが原因とのこと。そしてこの値段は、今後数年「上がることはあっても下がる可能性はまずない」と説明を受けているらしい。

 

 自分の場合は、総面積20坪ちょっとの『離れの増築』ですから、この価格上昇の影響は軽微と言えます。かつ、もともと相続税を少しでも減らすことを企図しているため、建築費の値上がりはそれほど気にはなりませんが、これから住宅を造ろうという若い方々にとっては死活問題になります。

 タワーマンション価格の高騰だけでなく、戸建て住宅についても、人件費・資材費の上昇の影響が猛烈に顕在化しているということ。こればかりは、地方に行けば安くなるという訳にはいかないので、全国的に国民の不満は溜まる傾向になっていると思います。

 

 このあたりも、先般の補欠選挙結果には影響しているよなぁ、実際・・

 


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