ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

「デ・キリコ展」を観に行く

2024年06月04日 | 美術

上野の東京都美術館で開催中の「デ・キリコ」展を観に行ってきた、ネットでチケットを事前購入、シニア料金で1,500円、入場の際は年齢を証明するものの提示を求められた、ここまでやるのは珍しいが必要なことでしょう。平日なのでそれほど混んでいなかった。主催者は東京都美術館と朝日新聞社。

デ・キリコという画家は知らなかった、展覧会のwebページを見ると面白そうなので行ってみようと思った。また、webページには動画でこの展覧会の内容を紹介しており、有難い取り組みだと思った。

デ・キリコ(1888-1978)は、美術館の説明では

  • イタリア人の両親、ギリシャで誕生。父の死後、母、弟とともにミュンヘンに移り、そこでニーチェの哲学などに大きな影響を受ける。
  • 1910年頃から、簡潔明瞭な構成で広場や室内を描きながらも、日常の奥に潜む非日常を表した絵画を描き始め、後に自ら「形而上絵画」と名付け、シュルレアリスト等の前衛画家たちに知られるようになる。
  • 1919年以降は伝統的な絵画へ興味を抱くようになり、古典的な主題や技法を用いた作品を手がけるようになる一方で、過去に描いた「形而上絵画」の再制作や、「新形而上絵画」と呼ばれる新たな作品も生み出す。
  • 彼は、90歳で亡くなるまで絵画や彫刻、挿絵、舞台美術など幅広く活動し、多くの作品を残した

展覧会のwebページで見どころとしているのは3つ

  1. デ・キリコ芸術の全体像に迫る大回顧展
  2. 初期の「形而上絵画」の作品も出品
  3. 彫刻や舞台芸術、挿絵など幅広い創作活動を紹介

会場では以下の区分に従い、それぞれ部屋が分かれていた、そして鑑賞して自分が良いなと感じた絵の題名を記載した(カッコ内は作品番号、制作年)、残念ながら写真撮影禁止のため写真はない、但し、末尾に*がついている絵は展覧会のwebサイトで写真が載っている

セクション1 自画像・肖像画

  • 自画像のある静物(5、1950年台半ば)
  • 女性の肖像(エリデの肖像)(8、1921頃)
  • 秋(9、1935)

セクション2 形而上絵画

  • 山上への行列(10、1910)
  • 大きな塔(12、1915)
  • バラ色の塔のあるイタリア広場(13、1934)*
  • 横向きの彫像のある形而上的室内(20、1962)
  • 形而上的なミューズたち(28、1918)*
  • トロイアの前のヘクトルとアンドロマケ(33、1968)*
  • 詩人と画家(36、1975)

セクション3 1920年代の展開

  • 緑の雨戸のある家(45、1925-26)*

セクション4 伝統的な絵画への回帰、秩序への回帰からネオ・バロックへ

  • 横たわって水浴をする女(アルクメネの休息)(55、1932)

セクション5 新形而上絵画

  • オデュッセウスの帰還(64、1968)*
  • 城への帰還(68、1969)
  • 瞑想する人(70、1971)*

以上に加え、トピックとして、セクションの毎の展示室に挟まって特別なスペースが確保されていた

トピック1 挿絵(神秘的な水浴)

  • 神秘的な水浴(87、1936)
  • 白鳥のいる神秘的な水浴(88、1958)
  • 神秘的な水浴(89、1965)

トピック2 彫刻
トピック3 舞台美術

こうしてみてくると、自分は形而上絵画のところに気に入った作品が多かったことになる

また、舞台美術についても手掛けていたというが、具体的にはオペラや演劇の衣装などのデザインを描いていたそうだ。いろんな仕事をやっていたので感心した。そして、展覧会場の中にはヨーロッパの地図があり、彼が住んでいた場所が示されている

それを見ると、いろんな国に住んで創作活動をしていたことがわかる、ニューヨークにも住んだことがあるそうだ、もうこの時代からグローバルな舞台で活躍していたということでしょう、そういう意味では、モーツアルトなどもグローバル人材であったと言えよう、才能のある人は常に狭い世界から飛び出し飛躍するものだ。

さて、先にも買いたが、この展覧会では写真撮影は全面禁止だ、いろんな理由はあるのでしょうが、主催者はどのくらい強く出展者と交渉したのだろうか、「写真撮影可能で良いですか」、「それはだめです」、「わかりました」で禁止となったのではないか

日本国内で開催される他の美術展や海外の美術館でも撮影OK、あるいは一部OKが多くなっているのが最近のトレンドだ。撮影OKの展覧会では撮影している人が多くいる、ということはそのニーズが高いということでしょう。日本は美術展覧会マーケットでは有力マーケットではないのか、そうであるならば交渉で一部の作品でもいいから撮影OKを勝ち取る努力ができるのではないか、一層の努力をお願いしたい。


信楽のMIHO MUSEUMに行く

2024年05月24日 | 美術

京都旅行に行ったとき、滋賀県甲賀市信楽町にあるMIHO MUSEUMに行ってみた、前から行きたいと思っていた美術館だ、美術館を紹介する雑誌や本に、必ず紹介されている美術館だからだ。ただ、場所が不便なところで、車で行かないと時間がかかるし、閉館している期間も長いためで、なかなか都合が合わなかった。


(両手付小壺、東地中海地域、前2-前1世紀)

今回、京都旅行を計画し、その時期を5月にしたのも、その時期は開館していることと、美術館が森の中に位置しており、新緑のときに訪問するのが良いと思ったからだ。

京都旅行の2日目、朝食を食べて、車でホテルを出発、高速道路を使用して約1時間程度で到着した、近くのインターを降りてから結構走ったので、本当にこんな山中に美術館があるのだろうかと、そういう雰囲気のところだ。


(レセプション棟を出たところ、この先のトンネルに続く道)

MIHO MUSEUMは、1997年に開館。ルーブル美術館ガラスのピラミッドで知られる中国系アメリカ人のI.M.ペイによって設計され、中国の詩人、陶淵明の『桃花源記』に描かれた理想郷である桃源郷をモチーフにした、敷地面積は100万㎡とあるから驚きだ、18ホールのゴルフ場で大体50万㎡から100万㎡の間だから、その広さがイメージできよう


駐車場からレセプション棟に入り、チケット1,300円を買い、アプローチロードをいくとトンネルが出てくる、そしてトンネルを出ると吊り橋があり、その先に美術館棟が見えてくる

ここでは環境を保護するため美術館全体の80%が地中に埋設され、山に溶け込んでいる、同じような発想の美術館が箱根にあるポーラ美術館であろう。

美術館棟に入ると、正面に広いロビーがあり、そこはガラスの屋根から降り注ぐ光とベージュ色のライムストーンの壁面で包み込まれ、彼方まで穏やかな山々が連なる大空間となっている、窓外の山林の景色が借景になって目の前に広がっている

写真をご覧いただければわかる通り、このロビーはルーブル美術館のガラスのビラミッドの規模を大きくしたような感じだ。

この日の企画展は北館全部を使って「古代ガラス-輝く意匠と技法」が開催されていた、ガラスが宝石であった時代の貴重な作品が展示されており、ファラオ頭部、獅子頭形杯、古代地中海のコアガラス香油瓶やビーズの数々、繊細の極致であるモザイクガラス、色とりどりに銀化したローマンガラス、正倉院にも伝わったカットガラス、中国で瑠璃や玻璃と呼ばれた玉類などが展示されていた、きれいなものが多く、また、古代にこんなに精巧なものが作られていたことに驚く

館内は写真撮影禁止だが、企画展の一部の作品のみ撮影可能だった。
(アラバスター文壺、東地中海地域あるいはイタリア、1世紀)


(碗、東地中海地域、前2-前1世紀)


(円筒形容器、ササン朝ペルシア、7世紀)

南館は展示室がいくつかあり、エジプト、西アジアとギリシア・ローマ、南アジア、古代中国、ペルシャなどの古代美術作品(像、彫、リュトン、鉢、モザイク画、フレスコ画など)が展示してあった。

展示作品はいずれも古代のもので、日ごろあまり鑑賞することがないので、興味を持って観られた。個人的な好みは16世紀以降の絵画にあるので、作品としてどうしても観たかったものが観られたということはなかったが、美術館自体が一つの美術作品となっているので、そこを訪問して鑑賞できたということだけで満足だ。

さて、この美術館については、詳しいことはあまり調べないで来たが、実際に鑑賞してみて、その広さ、豪華さ、雄大さなどに驚き、いったいこの美術館の所有者は誰だろう、と思った。入口を入ったところのロビーから見える信楽の森林の少し先に、何か大きな建物と塔のようなものがくっきりと見える、あれは何ですか、とスタッフの方に聞くと、「あれはこの美術館のオーナーの作った宗教団体の本殿とベルタワーである」とのこと。

ネットで調べると、この宗教団体とは、神慈秀明会(しんじしゅうめいかい)、教祖は、世界救世教の教祖である故岡田茂吉氏であり、この教団の立教者(開祖)は、世界救世教秀明教会の会長であった小山美秀子(みほこ)氏である。この教団は、世界救世教の分派教団の中では最大規模の団体であり、公称信者数は35万人とされている、そして小山美秀子はこの美術館の創立者である

どうりで金があるわけだ、ロビーから見える本殿は富士山をイメージした屋根で、霊峰富士の景色が美術館の借景としてロビーから見えるというわけだ、美術館のほうが後からできたそうで、こう見えるように美術館を設計したようだ

しかし、宗教団体がこんなすごい財産を持っているとは、いやはや・・・そういえば、創価学会も東京の八王子に東京富士美術館を持っている

複雑な気持ちになって美術館を後にした


「笠間日動美術館」に行く

2024年04月29日 | 美術

ゴルフの帰りに笠間日動美術館に立ち寄った。久しぶりであるが、何回か来たことがある。全てゴルフの帰りに寄ったものだ。

この美術館は1972年(昭和47年)に日動画廊創業者・長谷川仁氏によって郷里である笠間市に開館したもの。

敷地は広く、敷地内には鴨居玲(1985、57才没、洋画家)の部屋、ピカソや藤田嗣治をはじめとする国内外の著名画家の展覧会を開催する企画展示館、 おもにフランス美術を常設するフランス館、金山平三・佐竹徳記念室を併設し、画家が愛用したパレットを常時200点以上展示する日本館 、日本の著名彫刻家によるブロンズ像が佇む野外彫刻庭園がある。

この日に開催中の企画展は「岩合光昭写真展 ねこづくし」、猫の写真を撮ることで有名な写真家の岩合光昭氏の作品展である。我が家も随分長く猫を飼っていたので、観てみようと思った。ただ、写真撮影は禁止のため具体的な内容は紹介できないのは残念だ。岩合氏が瀬戸内海の島や街などを訪ねて撮影した猫たちの写真に癒やされた。

ここは画廊の営む美術館でコレクションを保有しており、その一部を常設展として展示してあるのがうれしい。せっかく来たのだから常設展も当然観ることに。企画展の建物から常設展の建物には敷地内の庭園を経由して行くが、その庭園には彫刻の作品群がある。また、よく手入れされた竹藪があり風情をそそる。

この日はゴルフの後で疲れているので欲張らないでフランス館を中心に鑑賞した。素晴らしい絵ばかりでじっくり時間をかける価値が充分あるが、ある程度のスピードでざっと観た。今回特に印象に残った作品からいくつか紹介しよう。なお、常設展は写真撮影はOKであるが一部の作品だけ撮影Noとなっている、これは有難い。


ゴッホ「サン=レミの道」(1889-90)


マティス「窓辺にすわる女」(1919-20)


カンディンスキー「活気ある休息」(1923)


岸田劉生「夏の道(鵠沼海岸)」(1922)


ルノワール「花梨の木」(1908)


ルノワール「泉のそばの少女」(1887)


モネ「チャリング・クロス橋」(1900頃)

この美術館全体は実に贅沢な作りだ。庭園も展示室も余裕があり、よく手入れされている。今は新緑の季節であり緑がまぶしい。ゆったりとした気持で鑑賞できた。笠間は泊まりがけで来ても良いくらいの見所の多い土地である。我が家の今年の初詣も笠間稲荷神社であった。笠間焼の窯元などを訪ねて歩くのも良いだろう。

楽しめました。


「国立西洋美術館」の常設展を観る

2024年03月12日 | 美術

上野の国立西洋美術館の常設展を観てきた。本家ぽん多で昼食を取った後、歩いて行こうと思って公園の入口に来ると、桜の花が咲いていた。ソメイヨシノとは違う品種なのかよくわからないがそこだけ咲いており、通りがかる人は写真を撮っていた。

入口でチケットを買うため列に並ぶと、チケットオフィスの上に値段表が出ている、確か500円だったなと思い見ると、割引料金のところに65歳以上は無料となっている、「あれっ」そうだったのか、去年来たときは事前にネットでwebチケット500円購入して入ったが、無料だったのかと驚く。

以前から主張しているが、こんな年寄り優遇はやめるべきだ、年寄りの方が金を持っているのになぜ優遇するのか。免許証などで65歳以下を証明したら無料にし、65歳以上の人には通常料金を払ってもらうべきだ。年配者で住民税非課税証明書を出した人には無料にすればよい。美術館や国立劇場などに来る人は金に余裕がある人が大部分だろう。若い世代を優遇すべきだ。それに国立や県立、市立の施設は利用料が安いのだ、余裕のない年配者でもそのくらい払えるだろう。

そんなことを感じながら中に入り、順に展示を観ていく。私はコレクションを持って常設展を開催してる美術館が好きだ。国立新美術館、東京都美術館などはコレクションを蒐集していないので常設展を開けない。その意味で、この国立西洋美術館は素晴らしい。常設展を何度も観に来ていれば必然と作品に対する知識や親しみが増してくる。この常設展を観た翌日、本屋で偶然「常設展へ行こう」(奥野武範著)という本を見つけた。最近出た本だ、その中に西洋美術館も入っていた。

さて、鑑賞だが、館内の展示は年代順になっており、最初のうちは14世紀、15世紀くらいの絵から始まる。この時代は聖母子像など宗教画や古代神話のような題材の絵が多い。あまり好きではないのでいつもはざっと観て18世紀くらいの絵からじっくり観るのだが、今回はちょうど高階秀爾氏の「名画を見る眼Ⅰ」を読んでいるところで、この時代の絵画の解説に触れ以前よりも若干知識が増えたので、いつもよりは少しだけ時間をかけて観た。

館内はそれほど混んでなく、平日観に来れるありがたさを感じる。若い人も結構来ていた。また、前回も述べたが写真撮影がOKなのは評価できる。撮影禁止の作品も若干あるがそれには禁止の張り紙が出ている。ただ、休んだり、じっくり見るための椅子がなかった気がする。検討してもらえればありがたい、美術館賞は結構疲れるからだ。

今回の鑑賞で特に良いなと感じた作品の写真を張り付けておきたい。


踊るサテユロスとニンフのいる風景、クロード・ロラン、1646年


セゴビアの窪地、シャルル・コッテ、1904、昨年行ったゴルフ場セゴビアクラブインチヨダ、そのセゴビア(スペイン)が題材の絵


収穫、カミーユ・ピサロ、1882年、彼の風景画が大好きだ


雪のアルジャントゥ、モネ、1875年


黄色いアイリス、モネ、1914-17、昨年観たゴッホの展覧会に同じアイリスを描いた絵があった、下の写真の左側、アイリスの色は青だ


マルセイユのプティ・ニース、アルベール・アンドレ、1918年


男と女、ピカソ、1969年、男と女が何人いて何をしているのか全く分からない

ゆっくり鑑賞できました。


上野の森美術館で「モネ(連作の情景)」展を観る

2023年12月20日 | 美術

上野の森美術館で開催中の「モネ(連作の情景)」展を観た、2,800円。海外も含めいろんなところから作品を借りたので費用もかかり、高い値段設定になったのだろうが、随分高くなったものだ。

モネ(1840〜1926、86才没)は好きな画家なので観に行かなければなるまい、と思って来てみた。上野の森美術館に来るのは久しぶりである。展示されている作品は総てモネの作品だけという珍しい展覧会だ。作品リストを見ると全部で75点ある。

展示は次のテーマに分類して、それぞれ展示室が別れていた。

  1. 印象派以前のモネ(作品番号1~10)
  2. 印象派の画家、モネ(11~25)
  3. テーマへの集中(26~43)
  4. 連作の画家、モネ(44~59)
  5. 「睡蓮」とジヴェルニーの庭(60~75)

館内は撮影禁止だが、上記の4の途中からと5の展示室のみ撮影可能であった(4は展示室が2つに別れている)。

鑑賞してみて、特にこれは良いなと感じた物を記録しておきたい。写真撮影したものは貼付けた。

  • サン=タドレスの小屋(作品番号5、1867年、ジュネーブ美術歴史博物館)
  • ルーブル河岸(6、1867、デン・ハーグ美術館)
  • ザーン河の岸辺の家々(9、1871、シュテーデル美術館)
  • モネのアトリエ舟(14、1874、クレラー・ミュラー美術館)
  • プールヴィルの断崖(29、1882、トゥヴェンテ国立美術館)
  • ヴァランジュヴィルの教会とレ・ムーティエの渓谷(32、1882、コロンバス美術館)
  • ラ・マンヌポルト(エトルタ)(37、1883、メトロポリタン美術館)
  • エトルタのラ・マンヌポルト(38、1886、同上)
  • ヴェンティミーリアの眺め(41、グラスゴー・ライフ・ミュージアム)
  • 雨のベリール(44、1886年、モルレー美術館)
  • ジヴェルニーの積みわら(47、1884、ポーラ美術館)
  • クルーズ渓谷、日没(52、1889、ウンターリンデン美術館)
  • 国会議事堂、バラ色のシンフォニー(54、1900、ポーラ美術館)
  • チャリング・クロス橋、テムズ川(56、1903、リヨン美術館)
  • ウォータールー橋、曇り(57、1900、ヒュー・レイン・ギャラリー)
  • 芍薬(66、1887、ジュネーブ美術歴史博物館)
  • 睡蓮(67、1897、ロサンゼルス・カウンティ美術館)

鑑賞し終わった感想などを書いてみたい

  • 今回の展覧会はモネの作品だけを展示するという珍しいものだ。普通、同時代の他の画家の作品もいくつか展示されるものだが、今回はそのものズバリの作品だけで、これだけの作品を全世界から集めるのはさぞかし主催者は苦労しただろうと思う。その労を多としたい。
  • モネの作品はいずれも素晴らしいものだった。やはりモネは風景画家で、空、木々、水面の描写が素晴らしいと思った。
  • 来館は事前予約制であり、30分毎に時間が設定してある。2時からの予約枠で行ったが、館内は大変混雑しており、特に若い女性客が多かった。美術館は広くないので鑑賞する環境はあまり良くないと感じた。とにかく狭いところに人が多すぎる。このため、今日は1時間もいれなかった。
  • 室内が暗すぎると感じた。作品リストを見ながら鑑賞しているが、部屋が暗くて作品リストが読めない。作品の保有者からいろいろ制約を課されているのだと思うが、海外の美術館ではこんなに暗くしている例は記憶にない。何とかならないものだろうか。
  • 写真撮影できる作品が少なすぎる。これも何とか交渉してなるべく多くの作品を撮影可能としてもらいたい。日本人は交渉がヘタだから難しいかもしれないが。

モネにかかわる事項として、

  • モネは晩年、ジヴェルニーに庭をつくって、睡蓮の絵の連作を何枚も描いた。そのジヴェルニーのモネの庭を日本でそのまま再現したのが高知県北川村にある「モネの庭」である。なかなか高知県に行く機会がなかったが、昨年遂に訪問することができた。天気も良く良い思い出になった。その時の写真を1枚。
  • モネの絵の中で一番有名なのは印象派という呼び名がつく原因となった「日の出」であろう。この作品はパリのマルモッタン美術館にあるが、これはパリ旅行に行ったときに観ることができたのは良い思い出である。が、写真撮影はNGだった。

目の保養になりました。


「ゴッホと静物画、伝統から革新へ」展を観に行く

2023年11月20日 | 美術

SOMPO美術館で開催中の「ゴッホと静物画、伝統から革新へ」展を観に行った。2,000円。日時指定予約制が導入されているが、平日でもあり、予約しなくても大丈夫だと思い、いきなり行ってみた。SOMPO美術館に来るのは久しぶりである。結構若い人が来ていた。女性が多かった。

予約すると、個人情報を入力させられ、クレジットカード番号も入力が必要となるから心配になる。たかが美術館の予約をするのに生年月日や自宅の住所などなぜ必要なのか、最近の企業はやりすぎである。一流企業でも情報セキュリティーのレベルは驚くほど低い、ハッカーなどの攻撃に無防備で個人情報がよく漏洩しているではないか。過度な個人情報取得は有料にすべきではないか。

今回の展覧会のテーマはゴッホの静物画であり、展示作品は大部分ゴッホの作品である。当美術館所蔵の作品の他、オランダのクレラー・ミュラー美術館の作品も多く展示されているのがうれしい。ゴッホが生まれたオランダにはゴッホの絵を中心に展示している2つの美術館がある。1つはゴッホ美術館であり、もう一つはクレラー・ミュラー美術館である。私は現役時代、アムステルダムに出張する機会があり、週末を利用してゴッホ美術館を2回訪問したことがある。しかし、クレラー・ミュラー美術館には行ったことがないので、今回は同美術館のゴッホ作品を見る良い機会だと思った。

展覧会の説明資料によれば、ゴッホは生涯850点の油彩を描き、そのうち静物を扱ったものは190点近くあるという。展覧会では、ゴッホは人物画を描きたかったが、静物画はその練習のために描いたと書いてあった。作品を見ていくと、ゴッホはこんな静物画を描いていたんだと気付かされる作品も多かった。が、何と言っても「ひまわり」が最大の眼目であろう。

館内は原則、写真撮影OKだったのは評価できる。撮影できた作品のうち、特に印象に残った作品をアップしてみたい。スマホなので細かい所までは写らないがご容赦を。


ラトゥール、「花と果物、ワイン容れのある静物」(1865、国立西洋美術館)


ドラクロア、「花瓶の花」(1833、スコットランド・ナショナル・ギャラリー)


ルノワール、「アネモネ」(1883から1890頃、ポーラ美術館)


ラトゥール、「プリムラ、洋ナシ、ザクロのある静物」(1866、クレラー・ミュラー美術館)


ゴッホ、「青い花瓶にいけた花」(1887、クレラー・ミュラー美術館)、こんなきれいな絵を描いていたなんて驚いた。


ゴッホ、「アイリス」(1890、ゴッホ美術館)


ゴッホ、「ひまわり」、14輪。オリジナルのロンドン・ナショナルギャラリーの「14輪のひまわり」のレプリカ


ゴッホ、「カーネーションをいけた花瓶」(1886、アムステルダム市立美術館)


ゴッホ、「レモンの籠と瓶」(1888、クレラー・ミュラー美術館)


ゴッホ、「皿とタマネギのある静物」(1889、クレラー・ミュラー美術館)

ゴッホは好きな画家だ。存命中には一枚も売れなかった、苦しい生活を強いられ、画商の弟テオ夫婦の支援で生計が成り立っていた。37年の短い生涯に多くの絵を残した、特にオランダからパリに出てきた1886年以降の絵に素晴らしいものが多い。一目見れば直ぐにゴッホの絵だとわかる強烈な、個性的な作品が多いのが良い。

生存中にテオとの往復書簡など多くの手紙を残し、それが翻訳されて「ゴッホの手紙」(岩波文庫)として3冊の本になっている。これを読むとゴッホの人物像や苦労がよくわかる。そしてゴッホは日本の画家に影響を受けており、かつ、尊敬していたこと、読書家であることが興味をそそられる。

じっくりと鑑賞して楽しめた。


ミュンヘン「アルテ・ピナコテーク(美術館)」に行く

2023年11月03日 | 美術

ミュンヘン旅行中に、市内中心部にある「アルテ・ピナコテーク」美術館を訪問した。このアルテ・ピナコテークというのは、Alte Pinakothekと書き、独語で「古い絵画館」という意味の国立美術館。「ピナコテーク」という単語はギリシア語に由来している。世界でも最古の部類に属する公共美術館である。もとはバイエルン王家ヴィテルスバッハ家の収蔵品を市民を対象に展示する目的で作られた。

当館は中世からバロック期にかけての作品を陳列の中心にし、ホルバイン、クラーナハ、デュラーなどのドイツ絵画のほか、ルーベンス、ブリューゲルらを始めとするフランドルやネーデルラントの絵画、さらにはフランス、スペイン、イタリア絵画にも多くの優品があることで知られる(ウィキより)。

この美術館は市内の公園の中にあるような雰囲気、館のまは芝生の庭になっており市民がくつろいでいる。正面玄関から中に入り、チケット売場でモダン・ピナコテークとの共通チケットを購入。料金は15ユーロ位だったか。

旅行者がよく持っているポシェットなどは手荷物検査を受ける、写真はOK。最初に2階から観るが、2階に上がる階段が建物そのものとして素晴らしい、が体力が無いと観光もできないことがわかる。

上記で紹介したとおり、古い年代の作品を展示する美術館で、主な作家として上に書いた人は知らない人も多い。古い年代の絵画はあまり親しみがわかない。それは君主や王家の家族の肖像画や宗教関係の絵画が多いからだ。特にキリスト教徒でもない一般日本人としてはマリア様やキリストの磔刑の絵を観ても感動しない。

その時代の中でも、中には良いな、と感じる作品もあるの。現在、どちらかと言えば私の好む年代の作品が展示されているノイエ・ピナコテークが改修のため閉館中だったが、その主な作品はアルテの方で展示されているというので、有難いと思った。

館内は十分に広く、じっくり見ていくといくらでも時間が必要だろうが、そのような鑑賞の仕方は日本でもできないし、まして、海外旅行中はできない。イギリスのナショナル・ギャラリーのように、市内の一番便利な所にあり、入場料無料ということであれば、旅行中、隙間時間ができたときに何回ものぞいてみることはできるだろうが、それは例外だ。

とにかく、一度訪問して、観た、と言うために順路に従って順番に駆け足のようにして観ていき、自分の知っている好きな作家のところで、しばし時間をとってじっくり鑑賞する、これしかできないのが現実だ。その中から、気に行った作品や好きな作品の一部を写真とともに紹介したい。


デューラー、ニュルンベルクで見たのは模写であった、本物はここにあった


レオナルド・ダ・ビンチ


エル・グレコ


ベラスケス(左)、ヴァン・ダイク(右)


ブリューゲル(父)


フランソワ・ブーシェ


ルーベンスの部屋、彼の作品数がもっとも多かったように思う、一部屋には収まりきらない


Max Liebermannとある、ミュンヘンのビアガーデン、ルノアールの「ムーラン・ドラ・ギャレット」みたいだ


クロード・ロラン、これと同じような景色の絵を多く描いた仏画家


ゴッホがパリに出てくる前の作品


マネ、初めて観た絵


セザンヌ、これも初めて見た


エゴン・シーレ、彼らしい作品


ゴッホのひまわり、これは12輪。今までナショナル・ギャラリーとファン・ゴッホ美術館で14輪のひまわりを観たが写真撮影禁止だった。

まだまだ紹介したい作品も多くあるが、きりが無いのでこの辺でやめておこう。

ヨーロッパの美術館、例えばナショナルギャラリー、の内部はここと同じように、いくつかの部屋に区切られていて、各部屋ごとに赤とかグレーとか異なる色の壁紙になっていることが多い。この雰囲気は大好きだ。

今年訪問した軽井沢安東美術館がナショナル・ギャラリーと同じイメージであったことを以前のブログで書いた(こちらを参照)。日本の美術館がヨーロッパの真似をする必要も無いが、自分はこのイメージが落ち着いて好きだ。

良い美術館であった。


ミュンヘン「モダン・ピナコテーク(美術館)」に行く

2023年11月02日 | 美術

ミュンヘン旅行中に「モダン・ピナコテーク」 (Pinakothek der Moderne) に行ってみた。場所はアルテ・ピナコテークの隣。

ミュンヘンには、バイエルン王家のコレクションを展示するアルテ・ピナコテーク(旧絵画館、古典巨匠から18世紀までの絵画)、19世紀に当時の「現代美術」を展示するために建てられたノイエ・ピナコテーク(新絵画館、18世紀から19世紀の絵画を展示)がすでに存在していた。ピナコテーク・デア・モデルネはこれらに続く第3のピナコテークとして2002年に開館した。

ウィキによれば、ピナコテーク・デア・モデルネは、単なる絵画館ではなく、現代美術・グラフィックアート・建築・デザインの4分野の美術館の集合。建物はシュテファン・ブラウンフェルスの設計で、中央に巨大な吹き抜けを配し、天井から自然光を取り入れている。地下1階にデザイン部門、1階に建築部門とグラフィックアート部門、2階に美術部門の展示がある。

入館してみると、確かに非常にユニークな館内設計になっている、建物内部全体がサークル、円形になっており、そのサークルのまわりに展示室が区分して、あるいはオープンな形で配置されている。しかし、単純な設計ではない、いろんな奇抜なアイディアに満ちた内部空間になっており、美術館の建物自体が美術作品である。

実際に観て歩くとその膨大な作品数に驚かされる。アルテと同様、ゆっくり観ていたらとても1日でも観られないスケールだ。現代美術にはあまり興味がわかないが、しかし、観ていると面白い。難しい理屈や知識はいらない、と思う。これが芸術かと思われる作品も多く、面白い。

良いなと感じた作品をいくつか紹介したい。


よくわからないが、足場の向こうの壁に向かって作品を製作中、それも芸術として展示


この1枚の写真が日本人、河原温氏(1932-2004)の作品、作品としては2つ、書いてある日付が作品名のようだ


1階の通路からこんな感じで地下の展示室の一部が見える


ピカソ

日本にも江東区に東京都現代美術館があり、決してここに負けていないと思うが、こちらもたいへんユニークな、面白い美術館であった。ただ、ピカソなどは今生きている我々の目から見ると既にだいぶ前の画家で、当時はたいへん前衛的であったろうが、今ではそれを遙かに超える現代アートが出現しているので、同じ場所に展示されるのは若干の違和感を覚えた。

観に行く価値は十分あると思った。


上野の「黒田記念館」に行く

2023年10月10日 | 美術

先日藝大オペラ公演を観に行った際、時間があったので藝大の直ぐ近くにある「黒田記念館」に久しぶりに立ち寄ってみた。無料である。

黒田記念館は現在は国立博物館の管轄下に入っているが、元は画家の黒田清輝(1866-1924、57才没)の遺産と遺言(遺産を美術の奨励に役立てる)によって建てられたものである。

黒田清輝は慶応2年、薩摩藩士の子供として生まれ、東京外語学校を経てフランスに留学し法律を勉強していたが、パリで日本の画家や美術商と出会い、画家になること決意、ラファエル・コランに師事した。「読書」や「朝妝(ちょうしょう)」が展覧会で入賞し、1893年に帰朝、美術教育者として活躍を始める、印象派の影響を取り入れた外光派という作風を確立した。

その後、裸体像の1893年作「朝妝(ちょうしょう)」や1899年作「智・感・情」、1900年作「裸体婦人画像」などを国内の展覧会や博覧会に出品すると賛否両論の論争を巻き起こし、社会問題になった。当時の日本では裸体画は芸術ではなく猥褻物であるという認識があったためであろう。黒田の代表作である「智・感・情」と「湖畔」はともに1900年のパリ万国博覧会に出品されたが、博覧会で銀牌を得たのは裸体画である「智・感・情」の方だった。

1910年に帝室技芸員に選ばれ、1917年に子爵に、1920年貴族院議員になり栄達した。日本画壇の大御所と言えよう。

以前のこの記念館を訪問したとき、「智・感・情」を何回か観たことがあるが、今日は展示されていなかった。また、上に述べた「裸体婦人画像」は東京の静嘉堂@丸の内の所蔵であるが、公開された当時、警察によって咎められ、絵の下半分が布で覆われる「腰巻事件」となったことは今年静嘉堂文庫美術館を訪問してこの絵を初めて見たときのブログに記載した(こちらを参照)。

展示室は大きな部屋一室だけだが十分な作品が展示してあり、写真撮影もOKであった。オペラ鑑賞の前にゆっくりと日本の偉大な画家の作品を鑑賞できて有意義であった。


アーティゾン美術館で山口晃の展覧会を観る(その3、完)

2023年09月30日 | 美術

(承前)

山口氏の作品を鑑賞して大いに感心したが、違和感を覚えたものもある。

例えば、「当世壁の落書き 五輪パラ輪」という作品だ。これは2020東京オリンピック・パラリンピックのポスター制作を国から依頼されたとき、引き受けるべきか断るべきか、氏の心の葛藤をメモしたものだ。オリパラの政治利用に協力したと言われたくないようだ。

国から依頼された仕事をするのが画家の立場を危うくすると思っているようだが、そのような考えを持っているなら断るべきでしょう。引受けておいてこのような言い訳がましいことを展示することの方が画家の評価を下げるでしょう。

また、愛知トリエンナーレについて、「平和の少女像」をめぐって悪質な曲解による妨害等相次ぐ、などのメモが展示されている。慰安婦像を少女像と言い、昭和天皇の写真を焼いて足で踏みつけるビデオを流してそれらが芸術として展示された。これは芸術の政治利用ではないのか。

 

さて、同時開催の展覧会は「創造の現場、映画と写真による芸術家の記録」と「石橋財団コレクション選」だ。これらも全部観て歩いたが、鑑賞時間は2時間になり疲れた。1,200円でここまで見せてくれるのだから有難い。が、全部ゆっくり観ていたら1日つぶれるでしょうが、それも現実的ではないだろう。当日券は1日の中で入退場自由にしてくれたら、昼食を挟んで午前と午後に分けて観られるのだが。

1,200円で十分楽しめた展覧会であった。

(完)